カテゴリ:七月をテーマにした歌( 1 )
4th of July by the Beach Boys
タイトル
4th of July
アーティスト
The Beach Boys
ライター
Dennis Wilson
収録アルバム
Good Vibrations
リリース年
1993年(録音は1971年)

f0147840_2031064.jpg予定してなかったのですが、気がつけば本日は7月4日、アメリカ独立記念日、今日を逃すと一年間待たなくてはならない彦星と織女みたいな歌を思いだしたので、それを取り上げます。

この4th of Julyは、ビーチボーイズにとってはどん底の時期だった1971年に録音され、その時点では発表されず、1993年、Good Vibrationsボックス・セットでやっと日の目を見ました。

正直にいって、歌詞はすぐれたものには思えませんが、「季節もの」ですし、サウンド面では注目すべき点もあるので、まあ、よろしかろうと考えます。

◆ 観念性の勝った歌詞 ◆◆
準備不足で、あわてて聴きなおしたのですが、なんだかボンヤリとした歌詞で、ミックスのせいもあってよく聴き取れず、歌詞サイトに助けを求めました。でも、やっぱり意味のよくわからないラインが多く、はてさて、です。

ヴァース/コーラス/ヴァース/コーラスという構成ですが、最初のヴァースは以下のようになっています。

Born of the age
Flagged hopes
Censored rage
The black clad box
Bombs bursting in air
Bleed white red and blue
Cried dawn's early light
For the hope

最初の3行は、「希望が失われ、怒りが検閲される時代に生まれ」というあたりでしょうか。つぎからはもう五里霧中になりますが、もっともわからないThe black clad box bombは、わからないものと棚上げして解釈を試みると、「黒々とした爆弾が宙で爆発し、希望を求めて、白と赤と青(=アメリカ国旗の色)の血を流し、国歌(dawn's early lightはアメリカ国歌の一節)を叫ぶ」ぐらいでしょうか。いやはや。たんなる感触にすぎませんが、独立記念日の花火のイメージが重ねられているようにも思います。

それはともかく、意図するところは反戦のメッセージのようです。観念的で、ピンとこないのですが、国旗や国歌のイメージを援用しているので、アメリカ国民にはそれなりに了解できるのかもしれません。

直後のコーラス。

Oh where has it gone
Brothers sisters stand firmly and try
Reaching the spacious skies
Fourth of July

Itという代名詞が指すのは、ファースト・ヴァースの末尾にあるhopeでしょう。「希望はどこへいってしまったのだ、兄弟姉妹たちよ、立ち上がれ、そして、広大な天へと手を伸ばせ」というところでしょうね。なんだか、突然、「インター」(といっても通じないでしょうが、「インターナショナル」の略で、「一八七一年、フランスで作られた革命歌」と広辞苑は説明しています)というか、「立て万国の労働者」(これも皆様お忘れでしょうね)みたいになって、おやおやです。

セカンド・ヴァースも、また国旗と国歌のイメージを利用していますが、これは略します。ヴァースひとつを、なんとか意味の通じる日本語にしようと悪戦苦闘して、すっかり疲労困憊してしまいました。

のちにビーチボーイズの独立記念日のコンサートは恒例行事になり、彼らは愛国心の発揚に寄与することになりますが、この曲が録音された1971年にはまだ、ヴェトナム戦争が終結していなかったことを思いださねばいけないでしょう。

いや、それにしても、ビーチボーイズには似つかわしくない歌詞で、いくら時代の趨勢に添ったものとはいえ、これはやりすぎと、お蔵入りした事情が透けて見えます。こういう姿勢を示さなければならないほど、この時期の彼らは時代遅れのレッテルに苦しんでいたのもたしかなのですが……。

◆ デニス・ウィルソンの軌跡 ◆◆
世評の悪かったものですが、この翌年、1972年にビーチボーイズは、Carl and the Passions - So Toughというアルバムをリリースしています。このアルバムには、Make It GoodとCuddle Upという2曲のデニス・ウィルソン作品が収録されていますが、どちらも、それまでは知らなかった彼の意外な一面を見せるもので、おおいに感銘を受けました。海に陽が落ちる土地に暮らしていたので、この2曲を聴きながら夕陽に染まった海を見ていると、なにか根源的なものにふれるような気がしたものです。このような音楽スタイルは、後年の彼のソロ・アルバム、Pacific Ocean Blue(1977年)へと継承されていきます。

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Carl and the Passions - So Tough

4th of Julyを聴いて思うのは、歌詞のことではなく、デニスがはじめて、後年のようなスタイルのソングライティングとサウンド作りをここで試みた、ということです。いや、楽曲というのは、その気になればどのようにでも加工できるので、サウンド作りのほうが重要ですが。

脳天気なサーファー・ボーイ、バンドのセックス・シンボル、というイメージで見られていたデニスが、Cuddle Upのような思索的、内省的傾向を、風景のメタフィジックスとでもいうべきサウンド・スケープをその内面にもっていたことが明らかになったのは、わたしには心地よい驚きでした。人は見かけによることもしばしばありますが、やっぱり見かけによらないこともあるのです。

未発表曲というのは、未発表のうちが華で、「手に取るな、やはり野に置け蓮華草」であることが多いものです。この4th of Julyも、これだけを取り出せば、やはり例外ではないかもしれません。しかし、デニス・ウィルソンのキャリアのなかにおいてみると、またちがった意味をもってきます。

1966年までビーチボーイズを支えた、兄ブライアン・ウィルソンの「引きこもり」以降にはじまった、デニスのソングライティングとサウンド作りが、ここで内省的な方向へと「転舵」しはじめたことが、あとになるとよくわかります。そう思って聴くと、4th of Julyのオルガンやシンセサイザーが使われているところは、あとでオーケストラに置き換えることを念頭にしたもので、この曲はデモのままお蔵入りしたようにも思えてきます。オーケストラを重ねれば、後年の彼のサウンドに酷似するのではないでしょうか。

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デニスのソロ・アルバムPacific Ocean Blue

70年のForever、71年の4th of July、72年のCuddle Upと並べると、彼がたどった軌跡はすっきりと見えます。4th of Julyが録音の時点で発表されなかったために、ミシング・リンクができてしまったと感じます。

この曲ではウィルソン家の三男、カールがリードをとっていますが、汐風に焼かれたようなデニスのしわがれ声で聴けば、またちがった色合いをもったことでしょう。久しぶりにPacific Ocean Blueが聴きたくなりました。
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by songsf4s | 2007-07-04 20:18 | 七月をテーマにした歌