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(ヤング・)ラスカルズ全曲完全アップ計画 その02 プロデュースとスーパヴァイズ

子供のころ、よくジャケットの裏表やレーベルを隅々まで読んだが、ヤング・ラスカルズのエポニマス・タイトルのデビュー盤はずいぶんあとに買ったので、そんなことはついこのあいだまでしていなかった。

すべてのアルバムを動画に変換して、クレジットを入れながら確認したが、どの盤にもProduced by The Young Rascalsまたはby The Rascalsと明記されている

ただし、最初の2枚には、プロデューサー・クレジットのほかに、Supervisionというクレジットがべつにあるのが変わっている。「統括指揮」あるいは「監督」とでも訳せばいいのか、どうであれ、ちょっとほかに例のなさそうなクレジットだ。

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ヤング・ラスカルズのデビュー盤のクレジット。LPのバック・カヴァーをそのまま縮小したCDスリーヴをスキャンしたため、非常に読みにくく、申し訳ない。

これはなんなのか?

それを考えるのに、まず、彼らの生年を書いておく。ついでなので、メンバー紹介を兼ねて、パートも書いた。名前でわかるように、アイリッシュのジーン・コーニッシュをのぞいて、あとの三人はイタリア系。ここでもまた同じNJ出身のイタリア系グループ、4シーズンズが思い起こされる。

  • フィーリクス・カヴァリエーレ 1942年11月29日生。ヴォーカル、キーボード、ギター
  • ジーン・コーニッシュ 1944年5月14日生。ヴォーカル、ギター、ベース
  • ディノ・ダネリ 1944年7月23日生。ドラムズ、パーカッション
  • エディー・ブリガティー 1946年10月22日生。ヴォーカル、パーカッション

1965年秋に、ヤング・ラスカルズがアトランティック・レコードからデビューしたとき、最年長のフィーリクスがやっと社会人の年齢、ジーンとディノは大学を卒業しようかという年齢。最年少のエディーはまだ十代である。

芸能界ではこんなことはめずらしくない。めずらしいのは、こんな子供たちにアトランティック・レコードが「プロデューサー」クレジットを与えたことだ。名目だけならともかく(いや、たとえそうだとしても異例だが)、じっさいにプロデューサーとしての権限が与えられたふしがある。

なんだか、今回も長い話になりそうなので、箸休めとしてクリップをおく。といっても、ラスカルズのクリップをおくと、それについて書かねばならないことになるので、かわりに、いま作業用に流しているBGMの再生リストを。まだアップしたばかりで、わが4ビート・チャンネルの最新クリップである。

Gary Burton - Something's Coming! (1963)


◆ 「このミックスをどう思う?」 ◆◆
デビュー・シングル、I Ain't Gonna Eat Outがリリースされたあと、彼らははじめてカリフォルニアを訪れ、ジョニー・リヴァーズのレジデンシーで有名になった、サンセット・ストリップのウィスキー・ア・ゴーゴーに出演した。

むろん、遠路はるばる訪れたわけで、ワン・ショットではなく、2週間ないしは4週間のレジデンス、彼らによれば、ウィスキーの一晩の観客動員記録をやぶったという。

ジーン・コーニッシュは所用があって、他の三人より一足先にNYに帰ったが、そのとたん、アーメットとネスーイーのアーティガン兄弟、ジェリー・ウェクスラー、トム・ダウド、アリフ・マーディンという、経営陣プラス現場担当者たち、この5人が同じ飛行機に乗って墜落すれば、そのとたんにアトランティック・レコードは消滅するという顔ぶれに呼びだされてしまった。

この5人がジーンになにを要求したかというと、Good Lovin'のミックス・ダウンを聴かせ、これでリリースしてよいと承認してほしい、というのだった。

大学を出たかどうかの年齢の若者が、レイ・チャールズやコースターズやドリフターズやボビー・デアリンらとともにアメリカ音楽の歴史をつくってきたヘヴィー級に取り囲まれ、「このミックスをどう思う?」と云われて、「いいと思います」以外のことを云えるはずがない!

ジーン・コーニッシュの「承諾」を得たこのミックスはすぐにリリースされ、その3カ月後にはビルボード・チャート・トッパーになる。

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アトランティック・レコード経営陣とボビー・デアリン 左から、ジェリー・ウェクスラー、ひとりおいてボビー・デアリン、ひとりおいて、アーメットとネスーイーのアーティガン兄弟

ジーンはあとで、フィーリクスとディノに、なぜ勝手にOKを出した、と非難されたというが、そんなことよりずっと大きな問題がここにはある。

そもそも、なぜアトランティック経営陣はバンドのメンバーの承認など必要としたのか?

この時代の通念で云うと、会社は実績のない若い新人シンガーの判断だの、承認だのといったものはまったく必要としなかった。なにをどう売るかは会社が決めることであり、アーティストは会社の云うとおりにしていればいい、それがイヤならよそへ行け、だった。

◆ 時代が生んだ「事件」 ◆◆
昔の音楽ファンなら、われわれ子供でも知っていた有名な事件がある。ジーン・コーニッシュがアトランティック首脳陣に責めたてられていたころにリリースされたシングル盤をめぐって、同じNYのべつの会社で起きた一件だ。

サイモン&ガーファンクルがデビューLP用に録音した、アコースティック・ギターとアップライト・ベースだけで二人が歌ったThe Sound of Silenceに、会社が二人の承諾を得ずに、ドラムやエレクトリック・ギターなどのバックトラックをオーヴァーダブして、シングルとしてリリースしてしまったのだ。

f0147840_10442452.jpgこれは1965年秋、ちょうどジーンがミックスにOKしろと云われて困っているころにリリースされ、翌年一月にビルボード・チャート・トッパーになった。あとはご存知の通り。このヒットがなければ、サイモン&ガーファンクルは解散するはずだったとも云われる。

イギリスに行っていたポール・サイモンは、帰国してこのことを知ると、会社に抗議したが、当時のレコード会社が新人歌手の不平不満なんかに耳を貸すはずもなかった。そもそも、会社が目論んだとおり、「商品」は売れていたのだ。なんの権利もない人間の抗議なんかで、ビジネスを台無しにする馬鹿は音楽業界にはいなかった。

このCBS対サイモン&ガーファンクルの先例を踏まえると、アトランティック首脳陣の慎重さ、形のうえだけのことだったのだろうが、とにかく、メンバーの承認を得た証拠を残そうとした努力は、なおいっそう不可解に思えてくる。

名目上であったか否かに拘わらず、ラスカルズはデビューの時からプロデューサー・クレジットを与えられ、じっさいの録音でも、一定の裁量権も与えられていたふしがある。このアルバムの曲のうち、Supervisionのクレジットのないものは、彼ら4人が主導権を握り、トム・ダウドやアリフ・マーディンは、その場にいても、あまり口を出さずに録音されたのだろう。

彼らに任せておくわけにはいかないと、現場をあずかるダウドやマーディンが判断した時は、プロデューサーより大きな権限をもつ「スーパーヴァイザー」としてラスカルズの4人からレコーディング指揮権を奪ったのではないか。それがSupervision byというクレジットの実態だと想像する。

前述のように、ジーン・コーニッシュはあとでフィーリクス・カヴァリエーレとディノ・ダネリに、ひとりで勝手にGood Lovin'のミックス・ダウンに「承諾」を与えたことを非難された。

これを裏返すと、ラスカルズのメンバーは、会社が勝手なことをしないように、その「製品」に対して一定のコントロールをできる権利を与えられていた、ということになる。そうじゃなければ、ジーンが勝手なことをした、などと非難する根拠はない。自分たちに与えられた権利を行使するチャンスをジーンが奪った、というのが彼らの非難の前提に違いない。

これで、ラスカルズとアトランティックの契約がどのようなものだったか、だいぶ見えてきた。あとで、きちんと整理するが、ここで追求は一休み。

◆ 「貧困の犠牲者」 ◆◆
やっと切れ場にきたので、このアルバムから一曲貼りつける。ラスカルズのプロデュース・クレジットのみで、トム・ダウドやアリフ・マーディンのクレジットはない。

The Young Rascals - 02 Baby Let's Wait (remastered mono mix, HQ Audio)


ラスカルズに与えられた異例の権利の話にはまたあとで戻るとして、この曲について少々。

〈バージ〉でのライヴがよほど印象的だったのか、はたまたアトランティックがR&Bの会社だったからか、デビュー盤は、R&B、ロックンロールのカヴァーが多数、フォーク・ロック系のカヴァーも2曲があるが、会社はR&B路線に拘泥していたように見える。

そのなかでこのバラッドBaby Let's Waitは目立つ。最初に聴いた時は、グルーヴのよくないR&B曲にはあまり興味が湧かず、稚拙なカヴァーより、オリジナルのほうがずっといいと感じたので、Baby Let's Waitを含めて2曲だけ収録されたバラッドに慰めを見いだした。

1980年代半ば、ライノ・レコードがラスカルズのほぼ全カタログをLPでリイシューしたころ、同社はNuggetsというコンピレーション・シリーズを出していて、そのなかのNuggets Volume Four: Pop Part TwoというLPで、この曲のべつのヴァージョンに遭遇した。

The Royal Guardsmen - Baby Let's Wait (HQ)


ロイヤル・ガーズメンは子供の時にSnoopy vs. Red Baronという曲が大ヒットして、国内でも相当のエアプレイがあったが(邦題「暁の空中戦」)、あの曲はいわゆるノヴェルティーで、軽く笑いをとる歌、こっちのBaby Let's Waitは、歌詞がちょっとなあ、と思うほどシリアスなバラッド、水と油だが、彼らとしてはコミカルな歌は売るための苦し紛れ、こっちのほうを本線と考えていたのかもしれない。

ヤング・ラスカルズ盤もロイヤル・ガーズメン盤も、ともに66年のリリース、接近していて、オリジナルがどっちで、カヴァーはどっちなのか、長年わからなかった。これを機会にまた検索してみたところ――

The Young Rascals: March 28, 1966 (First release)
The Royal Guardsmen: October 1966

とするサイトを見つけた。半年違うのだから、どっちがオリジナルかなどと悩むほどの謎でもなかったのだが、そうは云っても、昔はこういうデータが手に入らなかったのだからしかたない。

パフォーマーの境遇によっては、強く共感する歌詞なのかもしれないが、ポップ・ミュージックとしての一般性ということになると非常にきびしく、シングル・カットはまず無理だとふつうは思うだろう。

だが、ロイヤル・ガーズメンはBaby Let's WaitをA面にしたシングルでデビューした。いろいろなことが起きるものだ。むろん、音も立てずに消えたらしいが、68年にもまたこのシングルを再発していて、この執念はなんなのだ、である。

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この男はなにを「ベイビー、いまは駄目だ」と云っているのかというと、二人の結婚。それはいい。ポップ・ソングにはそういう歌もけっこうある。

だが、その理由が困る。ぼくたちの子供には胸を張って生きて欲しい、ぼくらのようなvictim of poverty、貧困の犠牲者であってはならない、いま結婚したら、ぼくはどこにもいきつけない、駄目だ、いまは結婚できない、なーんて歌だから、これはポップ・ソングとしてはキツい。

いや、これに共感する層は確実に存在する。NJで育ったラスカルズの連中も実例をたくさん見ただろう。しかし、この歌詞に「まったくそうだよな」とうなずく人びとでさえ、これを改めて聴きたいかというと、そこは微妙だ。そんなことはわかっている、歌になんかするな、と思う人間も少なからずいただろう。

メロディーは悪くないし、じっさい、ラスカルズのデビュー盤のコンテクストにおくと、おおいに目立つ。だから、かまわないのだけれど、まだどこへ行くのか、目標地点がはっきりとは見えていなかったのだろうな、とも思う。

◆ 明日のリズミック・センス ◆◆
話題を戻す前にもう一曲、アルバム・オープナーをおく。オリジナルはラリー・ウィリアムズだが(この時期のウィリアムズのドラムはほとんどアール・パーマー)、いちばん有名なヴァージョンは、もちろん、ジョン・レノンがリードをとったビートルズのカヴァー。

The Young Rascals - 01 Slow Down (remastered mono mix, HQ Audio)


まだまだだなあ、という仕上がりで、これをオープナーにするのはどうだろうかとも思うが、2:37あたりからの数秒、シンバルが消えて、ベースがグルーヴを担うところは、ちょっと4ビートに移行しそうになる感じが魅力的だ。後年の目で見ると、このあたりのセンスは未来のラスカルズの予告篇と感じる。

◆ 契約金より大事なもの ◆◆
さて、話をアトランティック・レコードとラスカルズの関係に戻す。

ラスカルズの契約金は1万5000ドル。小さい額ではないが、目の玉の飛び出る額でもない。しかし、ディノ・ダネリは、〈バージ〉に出演していた時にいくつかの会社にアプローチを受け、もっと大きな額を提示されたこともあったが、アトランティックがいちばん魅力的だった、と云っている。

まずなによりも、アトランティックは彼らが好むR&Bの会社であり、フィーリクスの好きだったレイ・チャールズとともに大きくなったレーベルだった。かつて多くの野球少年が、長嶋茂雄のチームでプレイしたいと思ったのと同じことだ。たとえば、リック・ネルソンは、彼の最初のレーベル、インペリアル・レコードを「ファッツ・ドミノの会社」と云った。

そして、ディノ・ダネリは、「Ahmet had the best rap.」といっている。ラップといっても、べつにマラソンやカーレースをしているわけではなく、「話が上手かった」というあたり。悪くいえば「言葉でたらし込む」のが得意だった。

しかし、ディノ・ダネリはその「rap」がどういうものだったかは云っていない。次回はその中身のことから。


The Young Rascals (Original Album Series)
The Young Rascals (Original Album Series)

グッド・ラヴィン(紙ジャケット仕様)
グッド・ラヴィン(紙ジャケット仕様)

Young Rascals [12 inch Analog]
Young Rascals [12 inch Analog]

The Big Beat: Conversations With Rock's Great Drummers
The Big Beat: Conversations With Rock's Great Drummers

The Best of the Royal Guardsmen
Best of


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by songsf4s | 2016-09-15 10:51 | YouTubeクリップ
(ヤング・)ラスカルズ全曲完全アップ計画 その01 ビッグ・デビュー
 
前回の「(ヤング・)ラスカルズ全曲完全アップ計画 その00 前日譚」」でお知らせしたとおり、今回からは本題に入って、(ヤング・)ラスカルズのアルバムを聴いていく。

いつも話が長いので、先にひとつクリップを埋め込んでおく。

正確にはクリップではなく、「再生リスト」というもの。いずれゆっくり説明する(かもしれない)が、とりあえず、アルバムのようなものと考えていただきたい。ヤング・ラスカルズのデビュー盤収録の全10曲が、CDの曲順通りに収めてある。ただし、モノ・ミックスである。ステレオ・ミックスはまだアップロードしていない。

The Young Rascals - The Young Rascals (Remastered Mono Mix) 1966


◆ ひどい音楽だ? それがどうした ◆◆
そういってはなんだが、このLPをはじめて聴いた時は失望した。他の盤よりずっとあとに買ったので、技術的な未熟さに耐えられなかったし、一曲をのぞき、あとはすべてカヴァー曲で、ラスカルズの大きな魅力である、フィーリクス・カヴァリエーレのソングライティング能力もまだ発揮されていない。

(ヤング・ラスカルズとラスカルズが混在する経緯、なぜフェリックス・キャヴァリエではなく、フィーリクス・カヴァリエーレと書くか、など、いろいろお思いだろうが、そういう細かなことは、このシリーズが進捗していけば追々説明するので、しばらくは静観を願う。)

しかし、盤の出来不出来は、重要なことではあるものの、最優先事項ではない。

序列をつけずにまず音を置く、それがこちらの役割。序列をつけるのはお聴きになるひとりひとりがおやりになればいい。究極においては、当方の関知するところではない。音楽のような嗜好物は、誰がなにを好むかなんて、神のみぞ知る、だ。

いや、むろん、こちらがどのアルバムを、どの曲を、どう考えているかは書く。しかしそれはあくまでも、「そうそう、そう思う」とか、「えー、そんなことないだろ」というように、肯定したり、否定したりして、「遊んで」いただくための材料にすぎない。いや、もうひとつ。自分のブログだ、好きなことを云う権利はある、という面もある。呵々。

この段階で云っておきたいのは、このアルバムに記録されたバンドは若くて、拙くて、ひょっとしたら不快かもしれない。しかし、彼らの力はこんなものではないので、せめてサード・アルバムを聴くまでは、判断保留にしていただきたい、ということ。

まあ、お客さんの多くは、ヤング・ラスカルズをすでに知っていてこの記事をお読みと思うが、なかには、名前は知っているけれど、聴いたことはなかった、という方もいらっしゃるだろうから、それをちょっと心配してのこと。

◆ 業界ビッグ・ショットとわんぱく小僧ども ◆◆
ヤング・ラスカルズがブレイクしたのは、セカンド・シングルでのこと。前回も貼ったが、この曲を外すわけにはいかないので、同じクリップを貼る。上記の再生リスト中にも同じものがあるが。

The Young Rascals - 06 Good Lovin' (remastered mono mix, HQ Audio)


後年の目で見ると、10曲のなかで、シングルになりそうな曲の筆頭はこれ。ほかの曲がデビュー・シングルになったことのほうがよほど不可解なのだが……。

最初のシングル、I Ain't Eat Out My Heart Anymoreをリリースした時点では、まだGood Lovin'は録音していなかったらしいが、それは理由にならない。

以下、Eストリート・バンドのドラマー、マックス・ワインバーグのディノ・ダネリ・インタヴュー("The Big Beat"収録)に依拠して、ことの経緯をまとめる。

地元NJの〈チュー・チュー・クラブ〉でデビューしたラスカルズは、ロング・アイランドのイースト・ハンプトンに新しくできた〈バージ・クラブ〉から出演依頼が受け、この〈バージ〉の時期に、フィーリクスとディノはハーレムのレコード屋でオリンピックスのGood Lovin'を見つけ、カヴァーしてみたところ、おおいにウケた。

The Olympics - Good Lovin' (HQ)


そして、ここからが肝心なのだが、ここで「ビートルズをアメリカに連れてきた男」シド・バーンスティーンが登場する。どこで情報を得たのかはわからないが、ある日、バースティーンが〈バージ〉にやってきて、俺が君たちをマネージしようと云った。

それから一週間後(とディノは云う)、アトランティック・レコードの社長、アーメット・アーティガンほか、ハンプトンに避暑に来ていた音楽関係者が〈バージ〉にやってきて、ラスカルズを見た。

ディノ・ダネリは、シド・バーンスティーンが〈バージ〉でラスカルズを見たことと、アーメット・アーティガンが〈バージ〉にやってきたことの因果関係にはふれていない。たんにハンプトンが避暑地で、アーティガンは避暑客で、〈バージ〉はその土地で評判のクラブだったから、と。

しかし、これはどうにも無理筋。f0147840_1093371.jpg

シド・バーンスティーンが、このバンドは金になりそうだと考え、誰に売りつけるか、と思った時、たまたまハンプトンにいたアーメット・アーティガを思いだしたとか、あるいは、以前から、アーティガンがビートルズのようなグループを探していることを知っていたとか、そんな背景があってのことと解釈する。つまり、バーンスティーンが声をかけたから、アーティガンが〈バージ〉に来たのだ。

アトランティック・レコードが必死だった、あるいはすくなくともビジネスにきわめて積極的だった形跡もあるし、シド・バーンスティーンが豪腕だった可能性もあるが、とにかく、ラスカルズは、あとで説明するある意味で非常な「好条件」でアトランティック・レコードと契約し、シド・バーンスティーンの会社とも正式にマネージメント契約を結ぶ。

この思い出話の中で、ディノ・ダネリは、アーメット・アーティガンは〈バージ〉でラスカルズを見て気に入った、なにしろGood Lovin'を聴いたのだから、と云っている。

Good Lovin'こそがクラブのダンス・バンドとしてのラスカルズの最大の売り物であり、アーティガンはそのパフォーマンスと客の反応を目撃して、契約を決断した、とパラフレーズしてよいだろう。

それなら、どうして最初のシングルをGood Lovin'にしなかったのだ、誰が聴いても、I Ain't Gonna Eat Out My Heart Anymoreより百万倍はいい出来じゃないか、と思うのだが、後者のソングライター・チームや、現場のトム・ダウド、アリフ・マーディンたちは、社長とはべつの考えを持っていたのかもしれない。

しかし、おそらくは最初のシングルが駄目だったせいだろう、Good Lovin'がセカンド・シングルに選ばれて、歴史の謬りは訂正され、ラスカルズは本来約束されていたもの、ビルボード・チャート・トッパーをデビューまもなく獲得した。

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いま、この曲を聴いてどう思うか、どう響くか、それは聴く人それぞれの問題である。クリップをアップしたのは、たんによそよりいい音質のものをもっていたので、ラスカルズ・ファンにそれを提供しようと考えてのことにすぎない。

以上を前提として、このシングルについて思うことを少々。

日本ではラスカルズの紹介が遅れ、デビュー・アルバムは当時はリリースされなかったと思う。セカンドからスタートしたし、Good Lovin'のシングルは1968年にやっとリリースされた。

それでも、ラジオで知っていた中学生は即座に買った。それぐらい「格好いい曲」(語彙が貧弱だった!)だと思っていた。

それはやはり胸躍るグルーヴのおかげであり、そのグルーヴはディノ・ダネリのドラミングを中心に、随所で攻め込んでくるフィーリクスのオルガンとジーンのコードが生みだすものだった。

前述のように、デビュー盤のラスカルズは未熟きわまりない。しかし、Good Lovin'だけは万事がうまくいき、ディノもほとんどビートをミスっていない。なによりも、バンドが一体になってゴールへ突き進むエキサイトメント、昔のロック・グループの最大のセールス・ポイントが明確な輪郭を持ってここにはある。

これがヒットしなかったら、ビルボード・チャートなんてものには意味などないことになる。だから、大ヒットした。

なんど当てが外れても悲観しない人間で、今回は2、3曲できるつもりでいた。デビュー前後の事情を書かねばならないのは覚悟していたが、それにしても1曲とは。次回はすこしスピード・アップしたいが、まだ「非常に有利な契約」のことなど、音以外の材料がかなりあって、どうなることやら。


The Young Rascals (Original Album Series)
The Young Rascals (Original Album Series)

グッド・ラヴィン(紙ジャケット仕様)
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Young Rascals [12 inch Analog]
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The Big Beat: Conversations With Rock's Great Drummers
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by songsf4s | 2016-09-13 10:21 | YouTubeクリップ
(ヤング・)ラスカルズ全曲完全アップ計画 その00 前日譚

最後の更新から一年半以上にわたって休止し、自分でも、もうこのブログについては、メインテナンス以上のことはしないだろうと思っていたのに、あれこれあって、ふと、再開しようと思いたった。

面倒な経緯をできるだけ簡略に云うと――

  1. もともと、このブログ用に自前のユーチューブ・クリップをアップしたいと思っていたのだが、ブログを休止してのち、じっさいにチャンネルをつくり、相当数のクリップをアップロードした。
  2. はじめのうちは「つまみ食い」が多く、好きな曲で、よそのクリップと衝突しないものを狙って落ち穂拾いをしていたが、最近、考えを変えた。
  3. 古いクリップにはひどい音質のものがたくさんあるし、アルバム・トラックをオミットして、シングル曲しかあげていなかったりするため、たとえばツイッターなどにペーストしようとすると、しばしば不便な思いをさせられた。
  4. アルバム全体をアップするべきだ、と考えるほど好きなものは、先行クリップのあるなしに拘わらず、手元にいい音質のエディションがあれば、まるごとアップをしようと思いたち、じっさいに、すでに30枚かそこらの盤を高音質で丸ごと浚いあげた。

ついこのあいだまでに起きたのは以上のようなこと。

ここで休憩。文字ばかりでは、お読みになるほうはもちろん、書いているこちらも疲れるので、8ビート・チャンネル開設当初にアップロードした曲を貼りつける。

そもそもこれも当家ですでに取り上げた曲。残念ながら、元からして高音質ファイルではないので、ただ聴けるというにすぎない。

New Riders of the Purple Sage - Whiskey


この曲のよくできたストーリーについては、当家の過去の記事「Whiskey by New Riders of the Purple Sage」をお読みいただければ幸いである。

ユーチューブ(以下「チューブ」と略)自体がいわば独立したメディアで、そのなかでの「パブリシティー」のようなものもあるけれど、そんな交際で視聴回数を増やす気もせず、とりあえずはツイッターに貼りつけたり、あるいはそのまま放置したりしてきた。

しかし、考えてみれば、このブログに使いたい曲を探したけれど、見つけられなかった、ということも多く、それがチューブ・チャンネルをやってみようかと思ったそもそもの出発点。それなら、チャンネルを開設したいま、こんどはブログに戻るか、というので、トンビがぐるっと輪を描いた、というしだい。

すでにたくさんアップロードしているし、チャンネルも三つある。最初が4ビート用、つぎが8ビート用、そして最後にエキゾティカ/ラウンジ・ミュージック/OST用という3種。

これを次回以降、順次紹介していこうというわけだが、どこからはじめるかはむずかしいところ。しかし、(ヤング・)ラスカルズ関係が、無駄なほどに充実させてあり、手間はかかるけれど、これから取りかかるのが順当かと思う。

ただし、すぐに飽きる人間なので、ラスカルズの途中でいろいろ挟んでしまう可能性は高く、そういう行ったり来たりが起きたら、どうかあしからず。

では、その(ヤング・)ラスカルズ大河物語予告篇として、一曲、自分のアップしたクリップを以下に。

The Young Rascals - 06 Good Lovin' (remastered mono mix, HQ Audio)



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by songsf4s | 2016-09-11 10:10 | YouTubeクリップ