カテゴリ:日本の流行歌( 1 )
花よりタンゴ 日本のタンゴ名唱集 市丸、服部富子、山口淑子、灰田勝彦ほか
 
今日はちょっとビリー・ストレンジ・ストーリーを一時棚に上げ、箸休めのひとくさり。

発端は古今亭志ん生の出囃子「一丁入り」でした。肝心なのは出囃子なので、そこだけをお聴きあれ。いや、むろん、お暇なら、聴いても損のない噺ですが。

古今亭志ん生「三枚起請」


この曲が好きで、よくギターをもって志ん生を聴いていました。「一丁入り」のファンはずいぶんいらっしゃるようで(わたしがツイッターでフォローしている方は、留守電にこれを使おうとなさったのだとか!)、こんなクリップが見つかりました。

佐藤允彦「一丁入り」


ちょっと笑いました。半ば本気、半ばシャレなのでしょう。佐藤允彦というピアニストは、見た目は実直そうですが、ジャズ・プレイヤーの例に漏れず、かなりシャレのきつい人だということが、書いたものを読むとわかります。

しかし、ギターでしじゅうなぞっていた人間としていわせていただくなら、これはピアノよりギターでやったほうがずっと盛り上がるはずです。ファズよし、ワウよし、シタール・ギターよし、どれでもいけるはずです。

なんてことをツイッターでしゃべくっていたら、いくつかツイートがあって、三味線の話になりました。この曲にはシタール・ギターが最適だということから、シタール・ギターの響きは、シタールより三味線に似ている、というほうへと頭が流れたのです。

で、思いだした曲のひとつがこれでした。服部良一作曲、佐伯孝夫作詞。

市丸「三味線ブギウギ」


三味線のサウンドがワイルドで、邦楽というか、端唄、小唄のニュアンスではないのです。服部良一だから、曲もシンコペーションを利用しているし、管はごくふつうに西洋音楽しています。

話は脇に流れますが、子どものころに浴びるように見た、昭和三十年代の大映や東映の時代劇のスコアというのは、こういうニュアンスのものが主流でした。西洋的なオーケストラ音楽なのに、リード楽器は三味線で、パーカッションが活躍する、というタイプです。

閑話休題。

でまあ、そんな話をしていたら、ここがツイッターらしいところですが、市丸姐さんといえば、この曲をお忘れじゃござんせんか、とべつの曲を指摘されたのです(FLVのクリップからWAVファイルを起こし、それを切り分けてMP3に変換したものながら、もともとダイナミック・レンジは狭く、低音質なので、これでも十分に聴けるものになっていると愚考)。

服部良一作曲、村雨まさを(服部良一の変名)作詞、服部良一編曲、唄と三味線は市丸姐さん。1952年リリース。

サンプル 市丸「花よりタンゴ」

うーむ。考えてみれば、これ、CDでもっていたのですが、改めて聴いてみて、すごいなあ、と感心してしまいました。

だいたい、市丸という人は、芸者出身の歌手のなかでもナンバーワンだったわけで、それもむべなるかな、声よし、ピッチよし、ヴォイス・コントロール抜群なのです。

かてて加えて、服部良一の曲とアレンジの微妙さ! 小唄の名手が唱うというのが大前提。だから、そういう小唄的なニュアンスを織り交ぜて、「花よりタンゴ」という駄洒落タイトルらしいノヴェルティー・ソングの味わいももたせつつ、しかも、やっぱりタンゴだという、このとんでもないトゥール・デ・フォルス! 服部良一という人の曲作りには、この洒落っけが根本にある、と改めて感じ入りました。

ユーチューブにはこの曲単独のクリップはなくて、日本のタンゴ名唱集という編集盤の全曲をひとまとめにしてしまった、とんでもないクリップがあるだけです。いちおう、それを貼りつけます。全21曲、70分弱の長尺です。

日本のタンゴ名唱集(戰後編)


これがじつに面白い編集盤で、結局、全曲通して聴いてしまいました。そして、前述のように、これをダウンロードして切り分けたわけです。

いい曲が目白押しなのですが、もうひとつ、服部良一の曲を。服部良一作編曲、村雨まさを(服部良一)作詞、1951年のリリース。当然ながら、ドヴォルザークのユーモレスクのメロディーもコラージュされています。

サンプル 服部富子「思ひ出のユーモレスク」

服部富子は、服部良一の妹です。大成功したとはいえないでしょうが、この曲をお聴きになればわかるように、なかなか魅力的な声をしているし、ちょっとひっくり返りそうになる一瞬は、じつに魅力的です。「幼心に知る」とか「ヴァイオリンの甘い唄」なんてあたりのヴォイス・コントロールがまたよろしいのです。

楽曲としては、メイジャーとマイナーの行き来、その遷移におおいなる魅力があります。

つぎもまた、メイジャーへの転調が魅力的な曲です。仁木他喜雄作曲、野上彰作詞。

サンプル 山口淑子「暗い部屋」

戦前戦中の李香蘭=山口淑子は、流行歌を歌うにはベル・カントの残滓が強すぎたと思いますが、戦後はすこしそれが薄れていき、むやみにうまいな、と思う程度に落ち着いていきます。好ましい変化に感じます。

時間がなくなってきたので、ゴタクは減らして、できるだけたくさん曲を紹介します。

利根一郎作編曲、坂口淳作詞、タイトルは似ていますが、「我が懐かしのブエノスアイレス」とは異曲です。

サンプル 渡辺はま子「なつかしのブエノスアイレス」

渡辺はま子もけっこうですが、わたしとしては、間奏のギターも気に入りました。この時期、ギターをリード楽器にすることは非常に稀だろうと思います。

どういうわけか、ヴァースはマイナー、中間部はメイジャーに転調というパターンの曲が多くて、まるでお約束のようです。コンチネンタル・タンゴやアルゼンチン・タンゴの場合もそういう傾向があるのかどうかは、わたしの知識の外なので、ご容赦を。

ふたたび服部良一作編曲、白井鉄造(宝塚歌劇の人ですな)作詞、1948年リリース。

サンプル 灰田勝彦「恋はバラの花か」

最後にもう一曲。細川潤一作編曲、横井弘作詞、1956年のリリース。

サンプル 松島詩子「追憶」

この「日本のタンゴ名唱集」というのはじつにいい編集盤で、ほかにも、竹山逸郎と藤原亮子「誰か夢なき」、近江俊郎と二葉あき子「黒いパイプ」、若原春江「ダリアの雨」、淡谷のり子「青い瞳の踊り子」なども、サンプルにしたかったほどです。これで興味が湧いた方は前掲のクリップを通してお聴きになられんことを。


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by songsf4s | 2012-03-25 23:53 | 日本の流行歌