カテゴリ:クリスマス・ソング( 56 )
(ちょっと遅い)クリスマス・ソング・サンプラー・パッケージ
 
(この記事は本日12月23日のあいだにももう一度更新し、ファイルを追加する可能性があるので、お時間があれば、そして、ボビー・ヘルムズが気になる場合はとくに、夜にでもまたチェックしていただければ幸いです)。

(17:40追記 ボビー・ヘルムズの2曲を別ファイルで追加しました。)

昨日は時間がなくてなにもできず、今朝、なにかしようと思いましたが、やっぱり朝はいろいろあって落ち着かず、とりあえず遅ればせながらクリスマス・ソング・サンプラーをアップすることにしました。ちゃんとした更新は、夜、時間があったらがんばってみることにします。

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後述のリストにあるクリスマス・ソング26曲をZipでくるんであります。したがってZipを解凍できる環境が必要です。ホストはmediafireで、当家のお客さんのなかには不慣れな方もいらっしゃるでしょうが、簡単かつ高速なので今日はこちらを使います。ふだんmediafireを使わないのは、ストリーミング機能がないからであり、わかりにくい、遅い、などということはありません。ただし、時間帯によって大きく速度が変動します。日本時間の午後が最適、日本時間の夜から朝は低速になる傾向があります。

サンプル Christmas Song Sampler Package

以上のリンクは2010年12月31日いっぱい有効とし、元旦には削除します。ファイルそのものは残すので、リンクをメモしておいて、あとでナニすることは可能です。

それから、クリスマスにはジム・ゴードンを、という約束ではなかったのか、とおっしゃるジム・ゴードン・ファンがいらっしゃるかもしれないので、ここに予告を書いておきます。ジム・ゴードンは正月三箇日限定でやることにしますので、そのときにおいでいただければと思います。

ソング・リスティング
01_Billy May_Rudolph The Red Nosed Reindeer Mambo
02_Al Caiola with Riz Ortolani-Jimmy McGriff_Sleigh Ride-Jingle Bells
03_Dean Martin_Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!
04_Billy May with George Shearing_Snowfall-Snowfall Cha-Cha
05_Al Caiola & Riz Ortolani_Holiday On Skis
06_Julie London_I'd Like You For Christmas
07_Johnny Mercer_Jingle Bells
08_Percy Faith_Silver Bells
09_The Drifters_White Christmas
10_Dean Martin_I've Got My Love to Keep Me Warm
11_The Andrews Sisters_Christmas Island
12_Bing Crosby & The Andrews Sisters_Mele Kalikimaka
13_Jackie Gleason with Jack Marshall_I'll Be Home For Christmas-Baby, It's Cold Outside
14_Temptations_Rudolph The Red-Nosed Reindeer
15_Henry Mancini_Medley (a)Jingle Bells (b)Sleigh Ride
16_Julie London_Warm December
17_Booker T. & The MG's_Silver Bells
18_Bing Crosby_I'll Be Home For Christmas
19_Dean Martin_Baby, It's Cold Outside
20_Chet Atkins_White Christmas
21_Al Caiola & Riz Ortolani_The Christmas Song
22_Bing Crosby_White Christmas (1942 alt)
23_Booker T. & The MG's_We Wish You a Merry Christmas
24_Nat King Cole_The Christmas Song
25_Les Paul With Dick Haymes_What Are you Doing For New Years Eve
26_Bing Crosby_Let's Start The New Year Right

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◆ 注釈、弁明、その他 ◆◆
自分用につくったものなので、いくつか当家やわたしの他のブログで取り上げた重要な曲がオミットされています。たとえばボビー・ヘルムズのJingle Bell Rockやアヴァランシェーズのアルバム収録曲などです。

ボビー・ヘルムズはあとでバックアップが見つかったら、シングルのAB面をアップするかもしれません。アヴァランシェーズはアルバム丸ごとというわけにはいかないので、これもバックアップが見つかったらということにします。

ほとんど、あるいはすべての曲について過去の記事で言及しているので、なにか気になることがあったら、右のメニューにある(小さいので見逃しそうになる)検索ボックスをご利用になるか、または本ページの上のほうにある曲名インデクスをご利用ください。

内容について少々。わたしの好みだから、当然、ものすごく偏っています。

・1980年以降のものは採らない。
・ギター・インストを重視する。
・アル・カイオラ&リズ・オルトラーニのクリスマス・アルバムをフィーチャーする。
・ディーン・マーティンを重視する

といった傾向があります。ジュリー・ロンドンも大々的に重視したいのですが、彼女のクリスマス・ソングはこの二曲ですべてです。メー盤犬みたいな大仰な言辞がゆるされるなら、これは「ジュリー・ロンドン・クリスマス・ソング大全集」にもなっているのです。いや、メー盤犬ならそういうたわけたことをいいかねないというだけですが。名盤だの傑作なんてものがそんなにごろごろ転がっていたら、名盤も傑作も一山いくら、二束三文の価値しかないことになると、そろそろ気づけばよかろうに、と思います。よほど盤屋や盤製造会社から金をもらっているのでしょう。

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クリスマス・アルバムの名盤(稀にわたしもメー盤犬をやることがある)といえば、ディーン・マーティン盤とアル・カイオラ盤、わたしにとってはこの二つです。

編集盤ではどなたもご存知であろうUltra Lounge Seriesのクリスマス篇3枚があります。少なくとも50年代から70年代にかけてのハリウッド産クリスマス・ソングを集めたものとしては、あれ以上のものを編集するのはきわめて困難、と断言できる最高峰です。わたしのパッケージも、このシリーズからのトラックをいくつか収録しています。

正午間近なので、とりあえずアップし、なにかあればまた補足することにします。

以下は追加分(12月23日17:40) ボビー・ヘルムズのクリスマス・シングルのAB面。Jingle Bell Rockはいまやどこにでもありますが、B面のCaptain Santa Clausが編集盤に収録されたのは見たことがありません。

サンプル Bobby Helms "Jingle Bell Rock"

サンプル Bobby Helms "Captain Santa Claus"

metalsideをフォローしましょう


Ultra Lounge Christmas Coctailsシリーズ
Christmas Cocktails 1
Christmas Cocktails 1


Ultra Lounge
Ultra Lounge


Ultra Lounge: Christmas Cocktails 3
Ultra Lounge: Christmas Cocktails 3


ディーン・マーティン CD
My Kind of Christmas
My Kind of Christmas


ディーン・マーティン MP3アルバム(I've Got My Love to Keep Me Warmは入っていない)
The Dean Martin Christmas Album
The Dean Martin Christmas Album


ディーン・マーティン A Winter Romance(アルバムとしてはこれがベスト、ただし中古しかない)
Winter Romance
Winter Romance


Booker T. & the MG's
In the Christmas Spirit
In the Christmas Spirit

ボビー・ヘルムズ
Frauelein
Frauelein
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by songsf4s | 2010-12-23 11:48 | クリスマス・ソング
正月映画 Let It Snow! by the Glenn Miller Orchestra (『あなたが寝ている間に』より その2)
タイトル
Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!
アーティスト
The Glenn Miller Orchestra
ライター
Sammy Cahn, Jule Styne
収録アルバム
Swingin' Santa with the Glenn Miller Orchestra
リリース年
19??年
他のヴァージョン
Dean Martin, Bing Crosby, Frank Sinatra, Andre Kostelanetz, Eddie Dunstedter, Woody Herman, Jackie Gleason, Aaron Neville, Andy Williams, Vaughn Monroe, Wayne Newton, Smokey Robinson & the Miracles, the Temptations, Johnny Mathis, Marie Osmond, the Ray Charles Singers, Chet Atkins, Herb Alpert & the Tijuana Brass, the Three Suns
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いったんシノプシスを書きはじめると、まとまりのつくまではやめられないのが困りもので、どこまで書くべきか考え込んでしまいました。前回の大晦日のパーティーでは「切れ場」になっていないので、もうすこしつづけます。

前回、書き落としたことがありました。一家の友人であり、相談役でもある人物だけは、ルーシーがフィアンセではないことを知っています。でも、おばあさんの心臓の具合がよくないので、ショックを与えたくないから、これまでどおりフィアンセのふりをつづけるようにと強いるのです。これをいっておかないと、なぜ、適当なおりに、まちがいを正さないのかわからなくなってしまいます。

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やはり大晦日、病院でも職員たちがナース・ステーションで簡単なお祝いをしている最中に、ピーターは目を覚まします。すぐに家族が駈けつけ、ルーシーもやってきます。ピーターがみんなの顔を見渡して、ちゃんとわかったのに、ルーシーがだれだけわからなかったために、家族全員が、たいへんだ、記憶喪失だ、と納得してしまうところは馬鹿馬鹿しくておおいにけっこうです。

ここから、ピーターの「快復」(すでにしているのだが!)の努力やら、ルーシーとジャックの微妙なやりとりやらがあります。つまり、クリスマスの後半、元旦からの六日間がそういうあれこれの背景となるわけです。

◆ 宴のあとで ◆◆
六日の顕現祭にたどりつかなければいけないので、結末の半分ぐらい、最後の一歩手前ぐらいのところを書きます。そういうことを知りたくない方は、つぎの見出しにジャンプしてください。

クリスマスの十二日間は波瀾万丈のうちにすぎ、ルーシーはすべてを失って、ふりだしに戻ってしまいます。あーあ、がっかり、という顔でクリスマス・トゥリーを片づけるのが、そうとは明示されませんが、きっと六日、顕現祭の日なのでしょう。

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われわれが松飾りをとるところを見れば、今日は松がとれる日だから、などとわざわざいわずとも、七日だな、と思うのと同じで(と書いてから、泥縄で調べたら、七日までを「松の内」とするのは多数派ではあるけれど、六日や八日、あるいは三日や十日など、地方や考え方によってさまざまだそうな。しかし、最大公約数として、特段の説明がないかぎりは、やはり多くの人は七日と受け取るだろう)、トゥリーを片づけていれば六日とわかるのではないでしょうか。

はじめからそのつもりでシナリオを書いたのでしょうが、クリスマスの始まりと物語の始まり、クリスマスの終わりと物語の終わり(の一歩手前)をきちんと一致させてあるのがこの映画の特徴で、いってみれば「完璧なクリスマス映画」になっているのです。

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ヤドリギの下に並んで立った男女はキスをする、という伝承も物語に取り込んでいる。クリスマス・ソングにもヤドリギは欠かせないアクセサリーであることは、2007年のクリスマス・スペシャルで何度も書いた。

クリスマスがはじまるのは十二月二十五日(二十四日はあくまでも前夜祭だということをお忘れなく。まだクリスマスははじまっていないのである)、終わるのは一月六日なので、冒頭にクリスマスをもってくる映画はよくあります。どちらかというと、クリスマスはクライマクスではなく、オープニングに使われることのほうが多いのではないでしょうか。

でも、そのようにはじまっても、クリスマスの終わりを描いた映画というのは、わたしはこのWhile You Were Sleeping以外に知りません。クリスマス・トゥリーの飾りつけをする場面はよく見ますが、それを片づける場面となると、さてどうでしょうか、わたしはほかに見た記憶がありません。

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結婚祝いの家具を二人でピーターのフラットに運び込んだあとで、ジャックはルーシーをアパートまで送ってくるが、アイスバーンで二人ともまともに歩けなくなってしまう。このシーンはなかなか笑えると同時に、ロマンティックな味わいもある。

この六日のシーンは、偽りの上に築いた空中楼閣とはいえ、フィアンセと家族を同時に得るという幸福な十二日間が終わり、「ハレ」から「ケ」の時間に戻るという、夢の終わりにふさわしいもので、このあとにハッピーエンドがあるな、と予感させる甘みもあります。あとは、どういう終わり方にするか、その方法さえまちがえなければいいだけです。そこまでは書かずにおきますが。

なお、この映画には猫が活躍するシークェンスがあるのですが、それは丸ごとカットして、猫ブログの「善猫、悪猫、金持ち猫――映画のなかの猫たち その3」という記事にしました。まだつづきがあって、あちらの記事も二回に分け、続篇を書く予定です。

◆ 2曲目のむずかしさ ◆◆
さて、音楽です。タイトルで流れるナタリー・コールのThis Could Beは、オープニングにふさわしいアッパーなサウンドで、けっこうな選択だと思います。ただし、どの映画でもそうですが、うまくはじまったときの切所は、つねに二曲目です。オープニングがうまくいけば、そのぶんだけ、二曲目の困難は増します。この映画も、あちゃあ、という、大失敗のつなぎです。

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たとえば、アヴァン・タイトルで、回想部分を前に出し、そのあとでThis Could Beを流し、タイトルに入るという処理が考えられます。たぶん、監督と編集者は、そういう処理も試みたでしょう。でも、うまくつなげずに諦め、タイトルのあとに回想シーンを置いたのだと思います。

思うに、音楽を生かすためにもっとも重要なことは、いかにうまく無音部をつくるかなのです。わたしがサウンド・エディターだったら、回想部分は音楽なしの処理を監督に進言します。気持ちのよいグルーヴのタイトルの直後に、べつの曲を入れるのは下策です。アヴァン・タイトル案を採用しないのなら、次善の策は、二曲目をThis Could Beの直後に置かず、数秒(プラス、関係のないつなぎのショットで目玉も移動させる)でいいから、あいだに無音部をはさむ処理をすることです。つながらない曲をつなげるよりは、無音のほうがずっとマシです。

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なぜ、曲をつなぐのがむずかしいか? キーとテンポとグルーヴの三つの次元に配慮し、どの次元でもイヤなズレによる軋みを起こさずに、きれいにつなげなければいけないからです。

ここに回避策のヒントがあります。次元を減らす方法です。キーのない音、つまりドラムやパーカッションだけの小節をはさむ方法がひとつ。逆にグルーヴやリズムがわかりにくいもの、たとえば、ストリングスだけのキューを間にはさむ、という方法もあります。

音のつなぎというのは、音楽監督よりもむしろサウンド・エディターの職掌なので、音楽監督がだれだからどうこうとは言いにくい面があります。そして、むずかしさはたぶんそこにあります。音楽監督は、このシーンにはこのキューという風に録音するだけで、挿入曲とスコアのキーやテンポのことまでは考えてくれないでしょう。

かくして、このWhile You Were Sleepingのタイトルと回想シーンのような、それとはっきりわかる大きな段差につまずいて、客が居心地悪げにイスのなかで身じろぎしてしまうような音のつなぎが生まれます。もっと神経をとぎすませて、細部に細心の注意を払って編集してちょうだいね。

◆ ディノのための曲 ◆◆
いや、そんなことを書く予定ではありませんでした。前回からずっと、一昨昨年のクリスマス・スペシャルで取り上げたLet It Snow!の補足をしようと思っているのに、なかなかそこにたどりつけなくて、いや、参りました。しかも、たどりついたと思ったらもうほとんど時間切れ、ゆっくり書いている余裕はありません。

まず申し上げておくべきことは、ディーン・マーティン盤が飛び抜けてよい、という以前の考えにまったく変わりはないということです。ディノがベストという考えはより強固になり、いまでは微細にディノ盤のすぐれた点を語ることができますが、まあ、お客さん方にとっては幸いなことに、その時間はありません。Let It Snow!を聴くならディノ、これだけご承知おきあれ。



いやまったく、ディノのために誂えたようなキャラクター(つまりメロディーよりも、歌詞に描かれた語り手のキャラクターがこの曲のもっとも重要なポイントなのである)で、このヴァージョンを知っていたら、ふつう、カヴァーしようなんて考えは失せると思うのですが。

一昨昨年の記事でも、ディノのLet It Snow!には別テイクがあることを書きましたが、ほめませんでした。なぜ褒めなかったかといえば、いや、これはサンプルにしましょう。

サンプル Dean Martin "Let It Snow!" (alt. ver.)

プロダクション面から聴く方なら、一聴たちどころにオルタネート・ヴァージョンの欠点がおわかりでしょう。トラックが凝りすぎなうえに、ミキシングのバランスが悪いのです。とくに後半のストリングスが、ラインの出来がいいぶんだけ、ディノを押しのけて前に出てくるのが、歌伴としては大失点です。

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逆にいえば、これがディノではなく、わたしの嫌いなシンガーのトラックであったら、ストリング・アレンジと女声コーラスが素晴らしいと絶賛していたでしょう。ぜんぜん聞こえなくてまったくかまわない歌手というのは山ほどいますが、ディーン・マーティンは残念ながら、そのなかには入りません。

いま、突然、ディーン・マーティンのカラオケをたくさんもっていることを思いだして、Let It Snow!がないか見たら、ちゃんと入っていました。これはリリース・テイクのトラック・オンリーです。

サンプル Dean Martin "Let It Snow!" (track only)

わたしのようにすぐにその気になる方は、これでディノごっこにいそしんでください。わたしなんか、ディノのタイミングでletのところを歌っちゃっていますもんね。

いや、馬鹿はおいておくとして、トラック・オンリーを聴くと、アレンジャーとプロデューサーとエンジニアがどれほど素晴らしい仕事をしたかがよくわかるものです。このトラックもすんげえ音をしていますぜ。This is THE Hollywood sound!!!

◆ オーケストラ ◆◆
ディノのことに終始してしまいそうで、困ったものです。まあ、それでもかまわないのですが、もうちょっとだけ。一昨昨年の記事では、なぜかこの曲のオーケストラものはないと書きましたが、その後、いくつか聴きました。

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まず、典型的なポップ・オーケストラ・ヴァージョンといえる、アンドレ・コステラネッツのものです。これがどういうわけか速い4ビートでやっていて、なんだかSleigh Rideでも聴いているような気になってきます。録音もアレンジもいいのですが、Let It Snow!を聴いた気だけはしない不思議なヴァージョンです。褒めてるのか貶しているのか、といわれても困ります。自分でもどっちなんだかわからないのですから。

ジャッキー・グリーソンも、いかにも彼らしい、ナイス&イージー・スタイルでこのLet It Snow!をカヴァーしています。さすがはハリウッド録音という、広がりのあるサウンドはすばらしいものです。



落語の「長短」じゃありませんが、なかなか音が出てこなくて、聴くほうは思わず身体が前にのめってしまいます! この遅さを面白いと感じないと、ジャッキー・グリーソンは楽しめません。「長短」の気短な兄貴分はジャッキー・グリーソンが嫌いでしょうねえ。

ロニー・オールドリッチとロンドン・フェスティヴァル・オーケストラの共演というのもあります。オールドリッチのピアノが主役なので、オーケストラによるシンガーのバッキングと大差がなく、ポップ・オーケストラによるヴァージョンとはいいかねます。オーケストラは後半で活躍します。なかなかいいラインをつくっていて、後半だけは楽しめます(ロニー・オールドリッチが好きとか嫌いではなく、ピアノは聴かないだけ)。

◆ 他のヴァージョン ◆◆
オーケストラではなく、ビッグバンドのものとしてはウディー・ハーマンのLet It Snow!があります。わたしはビッグバンドが好きなのですが、ただしダウン・サイドがあります。専属歌手による歌があることです。ビッグバンド・サウンドは楽しいのですが、歌は歌、サウンドはサウンド、べつべつに聴きたいなあ、というか、歌はいらないなあ、としばしば思います。ウディー・ハーマンのLet It Snow!もそのタイプで、サウンドは楽しいのですが、歌は凡庸が凡庸の羽織を着て凡庸の披露目にきたという趣で、眠ってしまいます。まあ、眠りそうになるとバンドが前に出てくる仕掛けになっていますが。

今回改めて聴き直し、Let It Snow!ではなく、なにかべつの歌詞が載っている曲だとしたら、悪くないのだが、と思ったものがいくつかあります。とりわけ、アレンジとサウンドがすごいと思ったのはビング・クロスビー盤です。ビングのLet It Snow!は少なくとも2種類あるようですが、これは(たぶん)新しいほうのステレオ録音ヴァージョンです。



間奏は微妙なエキゾティカ味があるし、ライド・ベルのプレイはお見事。じつに気持のいいグルーヴです。

フランク・シナトラのヴァージョンは一昨昨年はあまり褒めなかったような気がします。今回聴き直して、パイド・パイパーズ風のコーラスが以前より面白く感じられました。コーンのところを、lots of cornと替えていることにも今回初めて気がつきました。たしかに、「たっぷりもってきたぜ」のほうがいいと思います。



まだ、ほかにも悪くないものがありますが、もう余裕はゼロ。このへんで切り上げるとします。

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ディーン・マーティン ア・ウィンター・ロマンス
A Winter Romance
A Winter Romance

DVD
あなたが寝てる間に… [DVD]
あなたが寝てる間に… [DVD]

ビング・クロスビー
Bing Crosby's Christmas Classics
Bing Crosby's Christmas Classics

フランク・シナトラ
Christmas Songs by Sinatra
Christmas Songs by Sinatra

ジャッキー・グリーソン
Snowfall
Snowfall

OST
While You Were Sleeping: Original Motion Picture Score
While You Were Sleeping: Original Motion Picture Score

ナタリー・コール
Greatest Hits, Vol. 1
Greatest Hits, Vol. 1
OSTには挿入曲は収録されていない。タイトルで流れるのはナタリー・コールのThis Will Be。

グレン・ミラー
Swingin' Santa with the Glenn Miller Orchestra
Swingin' Santa with the Glenn Miller Orchestra
ルーシーが訪ねた夜、キャラハン家の居間にはグレン・ミラーのLet It Snow!が流れている。

ロニー・オールドリッチ
Christmas with Ronnie Aldrich
Christmas with Ronnie Aldrich
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by songsf4s | 2010-01-05 23:56 | クリスマス・ソング
What Are You Doing for New Year's Eve? by Les Paul with Dick Haymes
タイトル
What Are You Doing for New Year's Eve
アーティスト
Dick Haymes
ライター
Frank Loesser
収録アルバム
Christmas Wishes
リリース年
194?年
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当家のクリスマス映画特集に手がかかったために、FC2の三つのブログの更新が滞ってしまいましたが、今日は簡単なものながら、三カ所とも更新したので、ご訪問いただければ幸いです。

黄金光音堂 Q&Aソングス その7 I'll Just Walk On By by Margie Singleton
猫町ぶらり 日なた猫
散歩やせんとて 「名残の秋(には遅すぎるが!)」

◆ ディック・ヘイムズ&レス・ポール ◆◆
一昨年のクリスマス・スペシャルのときに、26日以降、どんなことを書いたのかと眺めてみて、What Are You Doing New Year's Eveを取り上げたことを思いだしました(この曲のタイトルは二種類あり、forがあったりなかったりする)。

すっかり忘れていましたが、いい曲なのに、つまらない解釈ばかりで困ったものだ、ちゃんと歌っているヴァージョンを見つけたい、といったことを(例によって行儀悪く)書いていました。そして、女の歌ではない、若い男がちょっとためらいながら歌うといい、などといっています。

さて、二年たって、そういうヴァージョンが見つかったか? 理想的なレンディションとはいえませんが、これならこの曲の解釈としてフェアウェイからはずれていないと感じるものはありました。

サンプル Les Paul with Dick Haymes "What Are You Doing for New Year's Eve"

歌詞の解釈については、一昨年の記事をご覧になっていただきたいのですが、「知り合ったばかりで、こういうことをいうのは早すぎのはわかっているんだよ、でもね」というように、ちょっとテレながら「いっしょに新年を迎えられたらうれしいな」と誘う歌なので、テンポを落としてしみじみ歌うのには向いていません。

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そこのところがわかっていないノータリンな歌い手ばかりで、一昨年はヴェテラン女性シンガーをひとまとめに山姥呼ばわりするほど怒ってしまいました。まあ、シンガーというのは知的人種ではないので、こういうときはプロデューサーやアレンジャーが舵取りをするべきであり、山姥たちに責任をおっかぶせたのは陳謝して撤回します。どのベンチもアホだったのです。

だいたい、女性が歌うと可愛げのない曲になってしまうので、これは断じて世慣れない若い男の歌です。ということで、レス・ポールはあまり活躍しないけれど、ディック・ヘイムズのヴァージョンは、わたしが考えるWhat Are You Doing for New Year's Eveのありように、もっとも近いものだと感じました。

◆ ヘンリー・マンシーニ ◆◆
一昨年は聴いていなかったWhat Are You Doing New Year's Eveとしては、もうひとつ、ヘンリー・マンシーニのヴァージョンがあります。



べつに悪いところはないのですが、さすがはヘンリー・マンシーニ、と感心するほどの出来でもなく、微妙なところです。よくあるパターンなのですが、Auld Lang Syneにつなぐのは、この曲の場合はどうでしょうかねえ。

歌詞は「いま大晦日のことをいうなんて、頭がおかしいと思われちゃうだろうけれど」といっています。ということは、この歌の「現在」からすると、大晦日はかなり先のことなのでしょう。そういう歌に、大晦日を象徴する曲だからといって、Auld Lang Syneをつなげてしまうと、時間感覚が狂ったようで、あまり気持よくありません。

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しかし、ふと思いました。作詞家はこの曲の「現在」をいつごろと想定したのでしょうか。改めて考えると、これは難問です。わたしがアメリカ人の生活感覚を理解していないせいなのでしょうが、そもそも、なぜ大晦日が重要なのかがわかりません。たとえば、サンクス・ギヴィングや、それこそクリスマスではいけないのか、そこで悩んでしまいます。

まあ、サンクス・ギヴィングもクリスマスも家族が集まる行事であって、恋人たち向きではないということでしょうかね。それに対して、大晦日は家族の行事というニュアンスがあまりないのかもしれません。

どのあたりを想定しているかなどということは気にせず、勝手に解釈すればいいのですが、それにしても、どこにすればいいのかわからず、変なところで考え込ませる曲でした!

ディック・ヘイムズ
Christmas Wishes
Christmas Wishes

レス・ポール
Isle of Golden Dreams: The Decca and Capitol Years
Isle of Golden Dreams: The Decca and Capitol Years

ヘンリー・マンシーニ
Greatest Christmas Songs
Greatest Christmas Songs
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by songsf4s | 2009-12-27 23:34 | クリスマス・ソング
クリスマス映画11 Adeste Fideles (映画『素晴らしき哉、人生!』より)
タイトル
Adeste Fideles
アーティスト
OST
ライター
unknown
収録アルバム
N/A
リリース年
1946年
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クリスマス・イヴなので、しごくまっとうな映画を、ごく簡単に書きます。あれこれこじつけるまでもなく、クリスマス映画の古典としてずっと昔から評価が定まっている、フランク・キャプラの『素晴らしき哉、人生!』です。

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邦題はまあけっこうなのですが、まだこの映画をご覧になっていない方が、まちがった先入観をもたないように念押ししておけば、Life Is Wonderfulではなく、It's a Wonderful Lifeです。あなたやわたしの人生ではなく、この映画の主人公の人生が素晴らしいといっているので、その点、誤解なきよう。

ついでにいうと、lifeという言葉には、つねに「生命」の意味が寄り添っていることをお忘れなく。死なずにいることは素晴らしい、というタイトルでもあるのです。

トレイラー


◆ 天使のためのブリーフィング ◆◆
フランク・キャプラの映画なので、どんなに悪いことが起きても、最後には万事めでたく収まるようになっています。やはり、クリスマスだから、そういうもののほうがいいでしょう。

ジェイムズ・ステュワートはベドフォード・スプリングスという小さな町で生まれ育ち、父親の跡を継いで、ささやかな信用金庫のようなものを経営しています。貧しい人のための金融機関兼開発業者とでもいうべき組織です。当然、町を支配するシャイロック的銀行家(ライオネル・バリモア)と対立関係にあり、これがプロットの軸になっています。

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話はあるクリスマス・イヴに、ベドフォードの人びとの祈りが天に届き、神と天使のあいだで協議がおこなわれる、というところからはじまります。クラレンスというまだ羽のない「二級天使」がこの問題を解決するべく派遣されることになり、出発前に、ジェイムズ・ステュワートの人生についてブリーフィングを受けます。

このブリーフィングをわれわれも見ることになります。つまり、ジェイムズ・ステュワートの子ども時代のことからはじまり、青年になり、ヨーロッパ旅行に出発しようとしたその日に父親がみまかり、志に反して父親の金融機関を継ぎ、やがて結婚し、四人の子どもたちをもうける、というライフ・ストーリーが全体の7、8割を占めています。

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善意の人フランク・キャプラが、家族、友人、町の人びとから愛された人物の半生を描くのだから、そりゃもう気持のいい話です。ライオネル・バリモア扮するシャイロック的町のボスが、全身丸ごと人間の善意に対するアンチ・テーゼのように描かれているのも、図式的すぎると気になったりはしません。大昔の芝居のようなもので、「世界」ができているから、能や歌舞伎を見るように、自然にそういう枠組を受け入れてしまうのです。

◆ たかが8000ドルの悲劇 ◆◆
12月24日、ジェイムズ・ステュワートの会社に勤める叔父(『ポケット一杯の幸福』でブレイク判事を演じたトーマス・ミッチェル、というか、『駅馬車』のドク・ブーンないしは『風と共に去りぬ』のジェラルド・オハラといわないと怒られてしまうかもしれないが)が銀行に8000ドルの現金を預けに行き、金の入った封筒を脇に置いて帳票に書いているところに、ライオネル・バリモアのシャイロックがやってきます。

ちょうど、ジェイムズ・ステュワートの弟が戦功章かなにかを大統領から授与されたことが新聞で大きく報道されたところで、大嫌いなライオネル・バリモア扮するポッター氏に、どうだ、うちに甥っ子はたいしたものだろう、とその記事を突きつけます。

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バリモアが執務室に入り、苦々しげに新聞を広げると、そこから封筒があらわれ、札束が出てきます。正直者ならここで金を返して、この映画はなかったことになってしまいますが、バリモア=ポッター氏はもちろんシャイロックだから、してやったり、これでジェイムズ・ステュワートは破滅だ、と北叟笑みます。

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そして、必死で金を探す叔父と甥の様子やら、絶望して家に帰ったジェイムズ・ステュワートが荒れて家族に当たり散らしたり、ポッター氏に支援を求めて嘲笑されたり、酒場で荒れたりといった、必要なシーンがつづきます。

このあたりまでが二級天使クラレンスへの「ブリーフィング」で、彼が派遣されるにいたった経緯の説明です(ただしわたしは、このあとのドラマより、ここまでの田舎町の生活のていねいな描写自体に魅力を感じる)。

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かくして天使が派遣され、絶望的な状況に置かれたジェイムズ・ステュワートをいかに救うかがクライマクスとなります。典型的な「クリスマス・イヴの奇蹟」で、そういう善意のお話が嫌いでなければ、この『素晴らしき哉、人生!』をおおいに楽しめるでしょう。

もうすこしだけ先の展開を書きます。天使クラレンスが、ジェイムズ・ステュワートに取り憑いた死神を落とすところがなかなかいいのです。紛失した8000ドルを生命保険で補填をしようと決意したジェイムズ・ステュワートが、橋の上から濁流を眺めていると、人が転落して、助けてくれ、といっているのが耳に入るのです。自殺も、先にやられると気が抜けるのでしょう!

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天使が登場したのだから、当然、ジェイムズ・ステュワートは絶望的状況を大逆転で覆して、町中の人が集まって大騒ぎのクリスマス・イヴとなって映画は終わります。天使が派遣されてからの展開の詳細については、書かないでおくほうがいいでしょう。

◆ 挿入曲 ◆◆
スコアはディミトリー・ティオムキンで、それなりに楽しめますが、クリスマス映画だから、挿入曲のほうが気になります。しかし、時期が時期だし、話の内容からいってもそれが当然かと思うのですが、クリスマス・ソングといえるのは、二曲の賛美歌とスコットランド民謡だけです。

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どれも有名な曲で、Adeste Fideles、Hark! The Herald Angels Sing、そしてAuld Lang Syneです。三曲ともカヴァーはたくさんあるのですが、ほとんどが大まじめに歌っていて(こういう曲を茶化すと、不買運動やら抗議やらで苦労することになるので、当たり前)、わたしのような非宗教的人間はちょっともてあましてしまいます。

このなかでいえば、Adeste Fidelesがいちばん好ましいような気がするのですが、数種類聴いただけで、わけがわからなくなってきました。グルーヴなんかないので、だんだん区別がつかなくなっていくのです。Auld Lang Syneだけは、ポップ系のサウンドのものがいくつかありますが、この曲はべつの機会に取り上げたほうがいいように思います。

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ということで、クリスマス・イヴでもあるし、今日は恒例のヴァージョン聞き比べはなしということにします。目下、例によってアル・カイオラとリズ・オルトラーニのクリスマス・アルバムを流しています。これとフィル・スペクターのクリスマス・アルバムがあれば、とりあえずほかのものはいらないかもしれません。

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by songsf4s | 2009-12-24 23:55 | クリスマス・ソング
クリスマス映画10 Christmas (Baby Please Come Home) by Darlene Love(映画『グレムリン』より)
タイトル
Christmas (Baby Please Come Home)
アーティスト
Darlene Love
ライター
Phil Spector, Ellie Greenwich, Jeff Barry
収録アルバム
A Christmas Gift for You from Phil Spector
リリース年
1963年
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人間の注意力には限界があって、気づかないときにはどうやっても気づかないのだと思います。今日、何度も聴いたことのある曲を聴いていて、ああ、これがあれの元か、などとボケたことをいって、自分で嗤ってしまいました。

なにがなにの元かというと、アヴァランシェーズのSnowfallのベースになったのは、ジョージ・シアリングのSnowfallではないか、ということです。アヴァランシェーズ盤Snowfallの魅力は、なんといってもアル・ディローリーのきらきらと燦めくようなピアノです。今日、クリスマス・ソングを並べて聴いていたら、ジョージ・シアリングがアル・ディローリーのプレイの下敷きのような気がしてきました。

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影響関係を無視していえば、この曲のベストはアル・ディローリーのピアノが美しいアヴァランシェーズ盤だと思います。ただし、アル・ディローリーは、ジョージ・シアリングの解釈を聴いて、惜しい、もっと角をとがらせて、キラキラを強調したプレイにすれば決定版になったのに、と思ったのではないでしょうか。

◆ 先に腹を立てたヤツの勝ち ◆◆
さて、今日は見直す必要のない映画でご機嫌伺いです。『グレムリン』という映画自体は、まあ、どうでもいいと思います。金返せと叫んだりはしませんでしたが、不機嫌になって映画館を出ました。

金返せといわなかったのは、わたしの数列前に、金返せー、馬鹿やろーと叫んでいた子どもがいたので、二人で合唱することもないか、と思っただけです。腹を立てるのも、先を越されると気が抜けるものですな。

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いえ、こういうことです。わたしの近くで母親と幼児が見ていたのです。ところが、ジューサーでグレムリンがミンチになるシーンで、大泣きに泣きだしてしまったのです。お母さんも戸惑ったでしょうねえ。ふだんなら、どういう事情であれ、映画館のなかで声を立てたり泣いたりする子どもには腹を立てるのですが、このときばかりは、たしかに泣きたいほどひどい映画だよな、俺も泣きたいくらいさ、とこの母子に同情しました。

あんな汚いものを見せられたら、幼児が泣くのは当たり前です。そういう映画なのだということを伏せて、家族で楽しめるような宣伝をした輸入会社におおいなる非があります。商売は正直にやりましょうよ。近ごろ、不正直な商人ばかりで(とくにウェブ・ビジネスは!)、商人の息子としては慨嘆にたえません。商人は正直であることがなにより大事です。

◆ わが黄金の法則を破壊した例外映画 ◆◆
話があらぬほうにいきました。映画だの音楽だのというのは、何年たっても恨みを忘れないものですな。それにくらべれば、食べ物の恨みなんて軽いもんですよ。まずかったメシ屋のことなど、ほとんど忘れてしまいましたが、腹を立てた映画や盤のことは全部覚えています。

いや、いいところもあるのです。そうじゃなければ、ここで取り上げたりましません。はじめのほうの絵と音はものすごくいいのです。途中から、あれよあれよと崩れていったのです。はじめからダメなら、失礼しました、勝手にチケットを買ったわたしがいけませんでした、二度とあなたの映画は見ないということで手打ちにしましょうや、なのですがね。

どこで乗ったかはおわかりでしょう? ちゃんとこの記事のタイトルに書きました。Christmas (Baby Please Come Home)がものすごくよかったのです。

見直さないで書きます。サンフランシスコかどこかの中国人街で、白人の男が見慣れない動物を買います。真夜中を過ぎてから食べ物を与えてはいけない、それだけは守るように、とかなんとかきつく注意されます。男はその動物を、クリスマス・プレゼントとして故郷の息子に贈ります。

ここで画面溶暗。

画面黒みのまま、Christmas (Baby Please Come Home)のイントロが流れたときは、寒気がするほどうれしかったのですねえ。ロードショウ館だったので、ベースがうちとはまったくちがう響きだったのも、ほほう、でした。

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最高のクリスマス・ソングではじまる映画ですからね、きっとすごく面白いにちがいない、と思って当たり前じゃないですか。いい音楽ではじまる映画は、まずまちがいなく楽しめるという絶対的なルールがあるのです。

このルールの例外は、と考えても、この『グレムリン』ぐらいしか思いつきませんよ。よりによって、フィル・スペクター=ハル・ブレインの曲を使って、大ハズレにはずすとは、ジョー・ダンテというのはほんとうに悲しいまでのトンチキ野郎です。

でもねえ、そこで思いだすのですよ。この乾坤一擲のクリスマス・シングルを、乗りに乗っていた1963年のフィル・スペクターがはずしたんですよね。すばらしい仕上がりなのに。いえ、スペクターはいいものをつくったのに対して、ジョー・ダンテはダメなものをつくったのだから、同じ扱いをするわけにはいきませんが。

◆ スウィッチを切るとは失礼な! ◆◆
先日の『L. A. コンフィデンシャル』の記事で、曲の聴かせどころを切ってしまう監督はろくなものではない、当然、そういう映画はダメと相場は決まっている、ということを書きましたが、ジョー・ダンテはそれをやっているます。ひょっとしたら、映画が崩れたのも、そのせいかもしれません。

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この曲については、ハル・ブレインのドラミングを分析したAdd More Music掲載の記事、そして一昨年のクリスマス・スペシャルの記事、さらには最近、黄金光音堂でやったエリー・グリニッチ追悼でも書いていて、また繰り返すのは恐縮ですが、話の運びの都合なのでご容赦あれ。

Add More Musicの記事で分析したように、後半に登場する、ハル・ブレインがスネアの四分三連を四小節にわたって叩きつづけ、そのサスペンドが解決すると、こんどは四台のピアノのユニゾンによる上昇するフレーズに突入し、これがまた強力なサスペンスを生み出して、その巨大な位置エネルギーの蓄積を、最後の解決へ向かって怒濤のように放出する圧倒的な展開には、フィル・スペクターじゃなければこういうものはつくれない、と感嘆します。

ハル・ブレインも最後の解決にいたって、ようやく四分三連のくびきを解き放ち、フリースタイルのフィルインをここぞとばかりに投入します。この時期のシグネチャー・プレイだった(といってもアール・パーマーと共有だったが)「ストレート・シクスティーンス・アゲインスト・シャッフル」(straight sixteenth against shuffle)すなわち「シャッフル・グルーヴと対比を成す16分のパラディドル」も、当然、豪快にキメています。

ところがですね、ジョー・ダンテは、主人公にカーラジオのスウィッチを切らせて、この曲の山場をまるごとカットしているのです。わかっているのかと思ったら、わかっていなかったのです。こういう粗雑なことを平気でやれるのは、芸事万般に通じる基本理念を理解していない証拠であり、当然、映画の見せ場もきちんとつくれません。だから、音楽の使い方は映画の出来の指標となりうるのです。すべてはセンスと見識です。

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◆ 自前の再編集 ◆◆
まったく、惜しいことをしました。大魚は水面に顔を出したのに、あっさり針をはずして逃げていきました。

フィル・スペクター=ハル・ブレインの代表作を利用しようと思いたったところまでは上出来だし、じっさい、Christmas (Baby Please Come Home)が流れているあいだは、画面にも気持のいいグルーヴがあります。

ところが、基本的なセンスがない人の悲しさ、音楽の使い方の要諦を知らなかったために、傑作クリスマス・ソングをみごとに画面に嵌めこんだ、という名声を得るチャンスを、あたらカー・ラジオのスウィッチひとひねりで逸してしまったのだから、やんぬるかな、です。

でも、わたしは人間がおめでたくできているのか、惜しいなあ、と思うと、ありえたかもしれないオルタナティヴ・ヴァージョンを頭のなかでこしらえてしまいます。いや、『グレムリン』という映画自体は、いじってもムダな出来ですが、タイトルだけなら、ちゃんとエンディングまで流れる完璧なものを頭のなかで編集することができます。やっぱり、雪景色で聴きたい曲ですからね。諸兄姉もひとつお試しあれ。

フィル・スペクター クリスマス・アルバム
A Christmas Gift for You from Phil Spector
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by songsf4s | 2009-12-23 23:26 | クリスマス・ソング
クリスマス映画9 Dark Eyes (映画『The Shop Around the Corner』〔『街角』〕より)
タイトル
Dark Eyes a.k.a. Ochi Chornya
アーティスト
OST
ライター
traditional
収録アルバム
N/A
リリース年
1945年
他のヴァージョン
Chet Atkins, Les Paul (2 versions), the Spotnicks, the Atlantics, 80 Drums Around the World with Mallet Men, Esquivel, 101 Strings, the Ventures
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この映画の邦題はよくわかりません。どうやらフルネームは『街角 桃色〔ピンク〕の店』というようです。なぜピンクなのか、映画を見ても理由はわかりませんでした。モノクロですからね。どうやってピンクにしたのかと考え込んでしまいます。アメリカから送られてきたプロモーション・キットに、なにかそういうことが書いてあったのか、あるいは、わたしが注意散漫でなにかを見逃したのか、「桃色」がどこから出てきたのか、ついにわかりませんでした。

まあ、邦題というのは作物の正しいアイデンティファイアとしての資格のない、地域通貨みたいなものだから、考察するほどの重要性はありません。時間をムダにしたくないので、これでおしまい。

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◆ 黒い瞳を聴けるシガレット・ボックス! ◆◆
小津安二郎はエルンスト・ルビッチのファンだったようで、しばしばルビッチの映画に言及しています。戦後の小津はちょっとちがいますが、戦前の小津映画のスタイルからいうと、この映画ならどこを褒めるか想像がつきます。シガレット・ボックスの使い方でしょう。

以下は当時の劇場用予告篇のようです。なんともめずらしいスタイルで、「すぐそこの店」(The Shop Around the Corner)の店主であるマトゥチェック氏自身が、登場人物を紹介します。



最後にはエルンスト・ルビッチ監督まで登場してサービスにこれつとめています。これはルビッチ自身がみずから手がけた予告篇なのかもしれません。

ジェイムズ・ステュワートという俳優は万年青年(おもととし、などと読まないように。「まんねんせいねん」)みたいなところがありましたが、この映画ではほんとうに若くて、ブタペストにあるマトゥチェック商会の店員という役です。

この予告篇では、マトゥチェック氏に呼ばれ、問屋から持ち込まれたこのシガレット・ボックスをどう思うか、と問われ、言下に、そんなものは売りものになりません、と断言し、いけるのではないかと思ったマトゥチェック氏をガッカリさせるシーンが使われてます。

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このシガレット・ボックスはオルゴールになっていて、蓋を開くと、「オチ・チョーニャ」(と発音しているように聞こえる)というか、われわれは「ダーク・アイズ」ないしは「黒い瞳」として知っている曲がかかります。これが気に入らないジェイムズ・ステュワートは、タバコを吸うたびにオチ・チョーニャを聴きたがる人間などいるはずがない、しかも、ホンモノの革ですらない模造皮革の安物、問題外です、とこき下ろします。

◆ ダメ製品も別人の手にかかれば…… ◆◆
シガレット・ボックスでおおいに揉めた直後に、若い女性(マーガレット・サリヴァン)がやってきて、仕事をもらえないだろうかとジェイムズ・ステュワートに頼みます。しかし彼は、いまは人手を必要としていないし、そもそも主人は目下(シガレット・ボックスの一件で)おおいに不機嫌だと断ります。

そこにマトゥチェック氏が奥から出てきて、彼女はオーナーに嘆願しますが、ジェイムズ・ステュワートがいったとおり、けんもほろろ、とりつく島もありません。そこへ、ご婦人のお客があり、ここが勝負と、マーガレット・サリヴァンはいきなり脇から出て行って、くだんのシガレット・ボックスを、キャンディー・ボックスだといって(無意識につまんで食べ過ぎにならないように、ダーク・アイズのオルゴールが警告する!)、たくみに売りつけることに成功します。

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これで彼女はマトゥチェック商会に職を得、話は一気に半年後、もうすぐクリスマスという時季に飛びます。溶暗から戻った画面の主役はあのシガレット・ボックスです。

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小津安二郎がしきりにエルンスト・ルビッチを賞賛したのは、こういう小道具の扱いのうまさゆえでしょう。台詞では一言も説明されませんが、なぜあのシガレット・ボックスが大量にあり、なぜ大安売りになっているかは、観客はひと目で察します。映画の話の運びというのは、こうでなくてはいけません。

◆ すれちがいロマンティック・コメディー ◆◆
シガレット・ボックスの一件が尾を引いたのか、ジェイムズ・ステュワートは、ことあるごとにマーガレット・サリヴァンと対立し、ケンカばかりしていることが、クリスマス直前の店頭の場面で手際よく説明されます。

ジェイムズ・ステュワートはどこかの女性と文通をしています。手紙を読むかぎりでは、知的でチャーミングな女性で、じっさいに会ってみたいと思っていることが、冒頭、やはり店頭で同僚に相談するかたちで説明されています。

さて、シガレット・ボックスです。マトゥチェック氏は、判断ミスの象徴であるシガレット・ボックスがウィンドウに大量に飾られているのが気に食わず、今夜は残業で飾り付けをやり直す、と宣言します。

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終業後に予定のある店員たちはみなあわてふためきます。とくにジェイムズ・ステュワートは、文通の相手とはじめて会うことになっていたので、マトゥチェック氏に残業を勘弁してもらおうと懇願し、感情的に対立してしまいます。マーガレット・サリヴァンもデートの予定があり、ジェイムズ・ステュワートにおべっかを使いますが、そこからまたひと揉めがあります。

そして、その夜、残業でクリスマスの飾り付けをしている最中に、ジェイムズ・ステュワートは、主人に首を言い渡されます。その直後、電話を受けた主人は、残業は終わりだ、残りは明日片づけようといい、みな帰し、ひとり店に残ります。

ジェイムズ・ステュワートは同僚とともに近くのカフェに行きます。相手がどんな女性かわからないので、同僚に外から店内をのぞいてもらうのですが、すでにおおかたの人がお気づきのように、ブラインド・デートの相手は、ほかならぬ店でのケンカ相手、マーガレット・サリヴァンだとわかります。

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ジェイムズ・ステュワートは、自分が文通の相手なのだとは明かさず、偶然に来合わせたかのようなフリをして、彼女と話そうとしますが、やはりすぐに口げんかになってしまいます。

いっぽう、店に残った主人は、探偵を迎え、報告書を読みます。妻の行状を疑っていたのです。匿名の密告によれば、店員のひとりと浮気しているということで、それがジェイムズ・ステュワートだと思い、感情的に対立したのを機縁として馘首してしまったのですが、探偵の報告書には別人の名前が記されていました。

妻に裏切られたマトゥチェック氏が自殺しようとしたところに、使いにいっていた見習い店員がもどってきて、危うく救います(それた弾丸が電球の笠に命中する演出はうまい)。シノプシスをダラダラと書きつづけるのもなんなので、ここらで手じまいとします。ここからが前半の種まきの結果を収穫する段階になるのですがね。

以上でおわかりでしょうが、トム・ハンクスとメグ・ライアンの『ユー・ガット・メール』(You've Got Mail)は、この『ザ・ショップ・アラウンド・ザ・コーナー』を現代的装いで脚色し直したものです。

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◆ 小道具の技 ◆◆
『黄色いロールスロイス』のロールスロイスのように、シガレット・ボックスが主役というわけではないのですが、エルンスト・ルビッチはじつにうまくこの小道具を使って、最後の一滴までムダにしません。

ジェイムズ・ステュワートは自分が文通の相手なのだということを、マーガレット・サリヴァンに教えません。当然ながら、それが笑いを生む仕掛けになっていますが、なによりも可笑しいのは、シガレット・ボックスを利用したくすぐりです。

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店頭から店内に移された売れ残りバーゲン品のシガレット・ボックス

マーガレット・サリヴァンは、クリスマス・イヴに文通相手と会うことになった、ということをジェイムズ・ステュワートにそっと漏らします。クリスマス・イヴだから、なにかプレゼントしようと思い、あのシガレット・ボックスはどうだろうか、というのです。

もちろん、ひと目でこんなものは売れないと断言したジェイムズ・ステュワートは、それをきいて、ウォレットのほうがいいだろうと薦めるのですが、なにしろ、ことごとく意見が対立する相手だからうまくいきません。

そこで一計を案じ、同僚に話を持ち込みます。この同僚は、マーガレット・サリヴァンから相談を受けると、じつにうまく話をもっていき、結局、ジェイムズ・ステュワートがほしがっているウォレットをプレゼントする決心をさせてしまいます。

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「ウォレットのいいところは写真を入れられることでね、わたしはこちら側に妻の写真、こちら側には子どもの写真を入れているんだ」

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「クラリック、ウォレットはきみのものだよ」

最初から最後まで、一貫してシガレット・ボックスに狂言まわしをさせたエルンスト・ルビッチの演出には、おおいに感銘を受けました。ここまで上手に、そして徹底的に小道具を使える人は、そうたくさんはいないでしょう。

クリスマス・イヴには、一致団結した店員たちの努力の甲斐あって、マトゥチェック商会は記録的な売上げを達成し、一時は自殺にまで追い込まれたマトゥチェック氏も精神の危機を乗り越え、どうにも噛み合わなかったジェイムズ・ステュワートとマーガレット・サリヴァンもついに結ばれ、万事めでたしめでたしの大団円になります。

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『聖メリーの鐘』では、万事めでたすぎるとケチをつけたのに、『ザ・ショップ・アラウンド・ザ・コーナー』では、めでたすぎると文句をいわないのは、レオ・マケアリーとエルンスト・ルビッチでは力量に大きなちがいがあるからです。こしらえごとというのは、上手につくってこそ楽しめるものです。

シガレット・ボックスのおかげで、いや、エルンスト・ルビッチのウィットと才覚のおかげで、最後まで楽しく見ることができました。おみごと。

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◆ チェスター&レスターの黒い瞳 ◆◆
ほかに適当な曲があればいいのですが、『ザ・ショップ・アラウンド・ザ・コーナー』に使われた音楽にはオーセンティックなクリスマス・ソングはなく、もっとも「活躍」するのは、ほかならぬシガレット・ボックスに仕掛けられたオルゴールから流れるオチ・チョーニャ、すなわちDark Eyesです。わが家にあるダーク・アイズの棚卸しをしてみます。

やっぱり、チェット・アトキンズから行きましょう。



恐れ入りました。チェット・アトキンズとくれば、つぎはもちろんレス・ポール。当然ながら、こちらもちょっとしたものです。



ディック・デイルがMisirlouでやったようなことは、レス・ポールがとうの昔にやっていたわけで、知らないというのは幸せなことですな。知っていたら猿真似などできなくなります。

このクリップはライヴですが、レス・ポールはDark Eyesを少なくとも二度録音しています。ひとつは戦前のトリオ時代のもの、もうひとつは戦後の多重録音によるものです。どちらかというと戦後の録音のほうが楽しめます。

◆ ギター・インスト・バンド篇 ◆◆
つづいてスプートニクス。わたしと同世代の方は、スプートニクスのヴァージョンでこの曲を知ったか、または、彼らに刺激を受けた日本のバンドのヴァージョンで知ったのではないでしょうか。



わざとなのでしょうが、リードギターのピッキングが引っかけ気味で、スムーズでないところが好みではありません。

ドラムのタイムが悪く、突っ込み気味なので、これまたあまり好きではありませんが、ヴェンチャーズもやっています。



おかしなことに、ヴェンチャーズより、アトランティックス盤のほうがすぐれた出来です。スプートニクスとくらべても、こちらのほうが数段上でしょう。といって、クリップを探したのですが、見あたらなかったのでbox.netにサンプルを置きました。

サンプル Dark Eyes by the Atlantics

◆ ラテンもまた黒い瞳 ◆◆
非ギターものは3種類あります。もっとも面白いのは、80ドラムズ・アラウンド・ザ・ワールド・ウィズ・マレット・メン(というアーティスト名。もちろん、ハリウッドのスタジオ・プロジェクト)のヴァージョンです。これもクリップがないので、サンプルをどうぞ。

サンプル Dark Eyes by 80 Drums Around the World with Mallet Men

やっぱりなんですかね、スナッフ・ギャレットの50ギターズの向こうを張ったのでしょうか? どうであれ、これはいい、と手を叩いて喜んでしまいました。チャチャチャでくるとはね! ホンモノのラテンの濃厚な味はありませんが、ハリウッドには洗練という武器があります。なにをやらせても、ピシッと仕上げてくるところはすごいものです。ちょっとエキゾティカ味があるのもハリウッドならではです。もちろん、録音も文句なし。

エスクィヴァルも当然ながらラテン風味のレンディションです。これまたサンプルでどうぞ。

サンプル Dark Eyes by Esquivel

わたしはロシア民謡なんて、文字を見ただけで怖気をふるってしまいますし、ロシア語も音が汚くて大嫌い、ロシア映画など死んでも見たくありません(タルコフスキーは二本だけ見たが)。だから、ロシアのロの字もない、80ドラムズやエスクィヴァルのアレンジには大拍手です。とくに前者は軽快を通り越して痛快といいいたくなります!

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街角 桃色の店 [DVD] FRT-143
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チェット・アトキンズ
Pickin on Country
Pickin on Country

レス・ポール・トリオ
California Melodies
California Melodies

ウルトラ・ラウンジ 第9集(80ドラムズを収録)
Ultra-Lounge, Vol. 9: Cha-Cha De Amor
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アトランティックス
Complete CBS Recordings Vol 1
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The Spotnicks
ザ・スプートニクス・プレミアム・ベスト
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by songsf4s | 2009-12-22 23:38 | クリスマス・ソング
クリスマス映画8 Mele Kalikimaka by B. Crosby & the Andrews Sisters(『LAコンフィデンシャル』より)
またしても、タイトルが長すぎるから削れといわれたので、以下に正しいタイトルを書いておきます。

クリスマス映画8 Mele Kalikimaka by Bing Crosby with the Andrews Sisters (映画『L.A.コンフィデンシャル』より)

タイトル
Mele Kalikimaka
アーティスト
Bing Crosby with the Andrews Sisters
ライター
R. Alex Anderson
収録アルバム
A Merry Christmas with Bing Crosby & The Andrews Sisters
リリース年
1949年
他のヴァージョン
Alfred Apaka & the Hawaiian Village Serenaders
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『L.A.コンフィデンシャル』をクリスマス映画などというつもりはありません。例によって「クリスマスを背景にした映画」だというだけです。

とはいうものの、クリスマス・ソング含有率はそうとうなもので、このクリスマス・スペシャル2で取り上げた映画のなかでもっとも多数が使用されています。映画はクリスマス・イヴからはじまるので、LAPDの警官までがSilver Bellsを「合唱」したりするのです。

◆ ジョニー・マーサーで開幕 ◆◆
『L.A.コンフィデンシャル』の音楽監督はジェリー・ゴールドスミスです。しかし、挿入曲の選曲がいいというか、1952、3年という時代設定のおかげか、ちょっとした顔ぶれなので、スコアのほうはどうしても霞んでしまいます。

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タイトルで流れるのは、ジョニー・マーサーのAc-Cent-Tchu-Ate the Positiveです。もう音だけでいきなり乗ってしまいます。ジョニー・マーサーがつくった会社、キャピトル・レコードは、西海岸初のメイジャー・レーベルになるわけで、ハリウッド・サウンドのセンター・ピラーです。たんにジョニー・マーサーがすぐれたシンガーで、Ac-Cent-Tchu-Ate the Positiveが作詞家としてのマーサーの代表作だというだけでなく、彼が背負っている重みをも利用した選曲に(結果的に)なっていて、じつに据わりのいいタイトルです。こういう風にビシッとキメてくれると、これはいけそうだ、という気分になり、すっと映画に入れます。



ケヴィン・スペイシーとダニー・デヴィートが登場するパーティーの会場に流れているのはOh! Look at Me Now、署内では警官がSilver Bellsを歌っています。そして、このクリップの最後、ラッセル・クロウとキム・ベイジンガーが出会う酒屋に流れているのが、Mele Kalikimakaです。アンドルーズが活躍するセカンド・ヴァースまで入れてくれたのにはうれしくなりました。曲の聴かせどころを平気でカットするのは、たいていダメな映画です。

映画ではよく聞こえるようにミックスされていますが、このクリップはレベルが低めなので、あらためてMele Kalikimakaだけどうぞ。

ビング・クロスビー&ザ・アンドルーズ・シスターズ メレ・カリキマカ


◆ またしても「あんた、発音なまってるよ」 ◆◆
タイトルのジョニー・マーサーもいいのですが、Mele Kalikimakaには、いい曲を使ったなあ、とニコニコしてしまいました。一昨年のクリスマス・スペシャルでは、アンドルーズ・シスターズのChristmas Islandを取り上げましたが、やはりトロピカルなクリスマス・ソングというのはいいものです。



Christmas Islandと、Mele Kalikimakaはまんざら無関係ではありません。クリスマス島があるキリバス共和国のスペルが、なぜKiribatiという珍妙なものになるかというと、キリバスの言葉にはSをあらわす文字がないので、tで代替するのだということを、一昨年のChristmas Islandの記事に書きました。

さて、Mele Kalikimakaです。これもそのつもりで眺めると、意味が見えてくるのではないでしょうか。Christmas Islandの記事で「クリスマス島を現地ではKiritimatiと書き、kee-rees-massと発音するというのだから、カタカナにすると“キーリースマス”あたりということになります」と書きましたが、Mele Kalikimakaもこれと似たようなことなのです。

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キリバスの言葉と縁戚関係にあるハワイ語(両者とも大きくいえば「ポリネシア諸語」という分類でいいのだと思う)では、やはりSの音がないので、Kで代用されるのだそうです。日本語同様、Rの音もなく、Lで置き換えるそうで、結局、メレ・カリキマカとは「メリー・クリスマス」のことのようです。なーんだ!

わが家にはこの曲のカヴァーは2種類しかありません。そのうちのひとつ、アルフレッド・アパカのヴァージョンをサンプルにしました。Jingle Bellsとつなげているのですが、このJingle Bellsがハワイの言葉になっていて、Mele Kalikimakaばかりでなく、そちらもおおいに楽しいヴァージョンです。

サンプル Alfred Apaka "Jingle Bells/Mele Kalikimaka"

◆ ディノの2曲 ◆◆
ディーン・マーティンは2曲も使われています。ひとつはクリスマス・ソングです。

ディーン・マーティン クリスマス・ブルーズ


わたしはディノが大好きですが、やっぱりダウナーな曲は看板に立てにくいのです。ほかにいい曲がなければディノを看板にしたでしょうが、Mele Kalikimakaをさしおいて、とはいきません。

クリスマス・ソングではないのですが、ディーン・マーティンのもう1曲はじつにけっこうなもので、クリスマス・スペシャルでなければ、こちらを看板に立ててもよかったと思います。

ディーン・マーティン パウダー・ユア・フェイス・ウィズ・サンシャイン


この曲は、バド・ホワイト(ラッセル・クロウ)がジョニー・ストンパナート(実在のギャングで、ミッキー・コーエンのボディーガードだった。また、ラナ・ターナーの愛人であり、後年、ターナーの娘に刺し殺された)を脅して情報を得る酒場のシーンで流れます。

◆ メロドラマ化 ◆◆
映画としての『L.A.コンフィデンシャル』は、総じて悪くない出来で、ジョニー・マーサーやビング・クロスビーやディーン・マーティンのおかげもおおいにあって、気持よく見ることができました。

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ジェイムズ・エルロイの原作は複雑で奥行きのある話なので、ふつうに考えると映画にするのは無理に思えます。当然、ものすごい量の「枝打ち」をして、ほとんどプロットの幹だけの坊主にまでやせ細らせたうえで、かろうじて映画にした、という印象です。したがって、エルロイの小説を読むなら、映画のあとにしたほうがいいでしょう。小説を読んだあとだと、映画は不満足に感じます。

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なによりも、ウォルト・ディズニーをモデルにしたと思われる人物が、映画ではまるごと抹消されていることに、ブツブツいいたくなりました。この人物にまつわるあれこれこそが、「暗黒のLA四部作」という集合体を貫いて流れる都市の遺伝子であり、これをまるごと切った結果、都市の物語としての側面は薄まってしまいました。いや、それどころか、最初に見たときは、小説とはぜんぜんちがう物語に感じられたほどです。

まあ、エルロイの『L.A.コンフィデンシャル』そのままでは、どう逆立ちしても映画になどなるはずがないので、ドラスティックな改変が不可欠なのはたしかです。だから、小説とはまったく無関係な物語だと思えば、映画『L.A.コンフィデンシャル』もまずまずだと思います。

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しかし、情緒的なエンディングは、客に媚びていて、映画の限界を感じてしまいます。ああいう風に甘く終わらせたために、人物像も一貫性を失い、プロットのロジックも乱れてしまったのが最大の欠点です。

エルロイの小説にはりっぱな人物は登場しませんし、友情などというものは存在しません。「一時的な利害の一致」はどこまで行っても友情に化けることはないのです。しかし、それでは観客のマジョリティーは感情移入できないからと、ああいう人物関係に改変したのでしょう。映画の限界とはそういう意味です。

f0147840_012141.jpg同じ時期のLAPDを扱った映画としては、『マルホランド・フォールズ』があります。わたしは、『L.A.コンフィデンシャル』の湿ったタッチより、『マルホランド・フォールズ』の乾いたタッチのほうが好きです。暴力描写にも甘さがなく、ニック・ノルティーが柄の大きさと重さを生かした身体の動きで、弱さを隠すための酷薄な鎧を着た警察官を好演しています。無表情にブラックジャックをふるう姿は美しいとすらいいたくなります。

ともあれ、頭のてっぺんのほうで考えるのとはまったく異なったレベル、視覚と聴覚を刺激するものとしては、『L.A.コンフィデンシャル』はよくできた映画です。わたしには善し悪しは判断できませんが、時代考証も手を抜いていないことが、がっしりとした実体の感じられる映像からも伝わってきます。

そして、はじめに戻っていえば、最初と最後にジョニー・マーサーの歌を入れたこと、ビング・クロスビー、アンドルーズ・シスターズ、ディーン・マーティンらの曲も、的確に配置されていることも、この映画の印象をおおいによくしています。

次回は、たんにクリスマスを背景にした映画ではなく、いかにもクリスマスらしい映画を、と思っています。


ビング・クロスビー&ザ・アンドルーズ・シスターズ クリスマス・アルバム
A Merry Christmas with Bing Crosby & The Andrews Sisters
A Merry Christmas with Bing Crosby & The Andrews Sisters


OST (better selection)
L. A. Confidential (1997 Film)
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OST (alternate)
L.A. Confidential
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DVD
L.A.コンフィデンシャル 製作10周年記念 (初回生産限定版) [DVD]
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ブルーレイ
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文庫上
LAコンフィデンシャル〈上〉 (文春文庫)
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文庫下
LAコンフィデンシャル〈下〉 (文春文庫)
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L.A. Confidential
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by songsf4s | 2009-12-21 23:56 | クリスマス・ソング
クリスマス映画7B The Bells of St. Mary's by Bing Crosby (映画『聖メリーの鐘』より その2)
タイトル
The Bells of St. Mary's
アーティスト
Bing Crosby
ライター
Douglas Furber, A. Emmett Adams
収録アルバム
N/A
リリース年
1945年
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(12月20日追記 昨日はソフトウェアのエラーでWAVの変換ができずに断念した、ビング・クロスビー歌うThe Bells of St. Mary'sの映画ヴァージョンのサンプルを追加しました。リンクはすこし下にあります。)

前回、『聖メリーの鐘』のOSTはもっていないと書きましたが、あちこち見ても、とりあえず存在を確認できませんでした。昔の映画にはよくあることです。いや、そもそも、1945年にはまだLPが存在しないので、「アルバム」というのは、SP盤のセットのことでした。文字どおり「アルバム」になっていたのです。『聖メリーの鐘』のOST盤が存在するとしても、映画の公開よりずっとあとに誕生したことになります。

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『聖メリーの鐘』は記録的な大ヒット作だったそうですし、テーマ曲は非常に魅力的につくられているうえに、歌うはビング・クロスビーなのだから、世が世ならすぐさまOSTがリリースされたでしょう。

◆ 「イフェクト付きの新ヴァージョン」 ◆◆
前回は省略してしまった、映画のなかで歌われるオリジナルThe Bells of St. Mary'sは、なかなかたいした出来で、やはり全盛期のビングをナメてはいかんと、おおいに感じ入りました。

当家の過去の記事では、Moon of ManakooraStormy Weatherをはじめ、楽曲をちゃんと元までたどって出自をたしかめないまま書いてしまったものがいくつもあります。性分として、そういうのはどうも気に入りません。ミスをする可能性が高くなりますから。そういう意味で、今回はThe Bells of St. Mary'sの元までたどることができて満足しました。そして、やはりオリジンは重要だということを確認しました。

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映画のなかで、この曲はセイント・メアリー教会付属初等学校の「校歌」として歌われます。それで、なるほど、と納得がいったことがあるのですが、その話はあとにして、まず、オリジナルの歌詞をご覧あれ。最初の2行はダイアローグです。

サンプル The Bells of St. Mary's by Bing Crosby with the Nuns of St. Mary Church

Bing "How about the school song?"
Bergman "Sister has a new version with effects."

Ding-dong, ding-dong
Oh, bells of St Mary's
We always will love you
With your inspiration
We never will fail
Your chimes will for ever
Bring sweet memories of you
So proudly ring out
While we sing out
Hail! Hail! Hail!
So proudly ring out
While we sing out
Hail! Hail! Hail!
Ding-dong ding
Won't you ring them bells?

「イフェクト付きの新ヴァージョン」というのが妙に可笑しくて、歌の冒頭に台詞を置いてみました。なにが「イフェクト」かというと、尼さんたちのコーラスによるding-dong、すなわち「キンコンカンコン」のことです。日本語のオノマトペで書くと馬鹿みたいですが、これがなんともきれいなコーラスで、おおいに気に入りました。

もうひとつ。この曲をご存知の方は、後年のカヴァーとは歌詞がまったくちがうことにお気づきでしょう。あのyoung loves, true lovesなんかどこにも出てこないのです。ビングが「校歌はどうかな?」といったとき、わたしは、ええ、あのyoung loves, true lovesは校歌にはまずいでしょう、と思ったのですが、そんなものはチラとも出てきませんでした!

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Bing Crosby & the Singing Nuns sing the main title of The Bells of St. Mary's

音としてはいい出来なのに、クリスマス・ソングとしてカヴァーされることがあまりないのは、この曲のこうした出自と無関係ではないでしょう。クリスマス・ソングとして書かれていないことはいいとして(そういう曲で、後年、クリスマス・ソングに繰り入れられてしまったものは掃いて捨てるほどある)、冬の曲ですらなく、元の歌詞でクリスマスと結びつけられる要素は、教会の鐘のみというのでは、クリスマス・ソングとして扱うほうに無理があります。

そもそも、どこでこの曲にああいう歌詞がつけられ、クリスマス・ソングとして歌われるようになったのか、そこのところがわかりません。出自までたどって、ひとつ解決したのですが、ひとつ新しい疑問が生じて、結局、差し引きゼロでした。

山勘をいっておくと、映画のプレスコとはべつに、ビング・クロスビーが盤にするときに、一般性をもたせるためにべつの歌詞がつけられたのではないでしょうか。ビングのリリース用録音が手に入らなかったのは痛手でした。

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子どもたちが自作の芝居をリハーサルするところを、ビング・クロスビーとイングリッド・バーグマンが見る。

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出し物はもちろんベツレヘムでのキリスト生誕劇。『聖メリーの鐘』も典型的なクリスマス映画というわけではなく、クリスマスが扱われるのはこの前後のシークェンスのみ。

これはテーマ曲なので、何度もさまざまな変奏曲にアレンジされて登場しますが、やはりタイトルのインスト・ヴァージョンが、アレンジもよく、弦の厚味もあり、映画のはじまりにふさわしい音になっています。映画から切り出したロウ・ファイ・ファイルですが、いちおうサンプルを置いておきます。後半の台詞は、教会に着任したビング・クロスビーと家政婦のような女性との対話で、前任の司教のことを話しています。可哀想に、尼僧たちにいじめられて体調を崩したのです!

サンプル The Bells of St. Mary's Main Title

◆ 弱コントラスト ◆◆
映画としてどうかということをくわしく書こうと思ったのですが、それほど力を入れるほどの出来でもありませんでした。ご家族向けではあるでしょうし、万事、めでたく解決するので、クリスマスに見るにはいいだろうと思います。しかし、欠点もそこにあります。万事めでたすぎるのです。

「ちきり伊勢屋」という落語があります。長い人情噺で、高座にかけられる人はもう一握りしかいないでしょうが、なかなか面白い話です。伊勢屋のまだ若い旦那が、名人といわれる八卦見に占ってもらったら、まもなくあなたは死ぬといわれてしまいます。旦那は、どうせすぐに死ぬならと遊び暮らすいっぽうで、巨富をなげうって困っている人たちにおおいに善行を施します。死ぬ日まで定められていて、自分で葬式を出そうとするのですが、予定の刻限が来て、すでに棺桶に入って待っているのに、どういうわけか死ねません。結局、葬式はお流れになり(そりゃそうでしょう。死びとがいないんじゃ弔いはできない!)、すっかり財産を失った旦那は落魄して駕籠かきになる――とここまでが前半。後半は謎解きと旦那の「カムバック」となります。

『聖メリーの鐘』という映画は、プロットの柱が三つあり、ひとつは学校ものの定石である「問題児」の運命、ふたつは新任のオマーリー司教(ビング・クロスビー)と、尼僧の代表であるシスター・ベネディクト(イングリッド・バーグマン)の友情ある対立です。

そして三つめが、セイント・メアリー教会の隣に新社屋を建設している会社の社長の話で、これが「ちきり伊勢屋」なのです。子どももなく、友もなく、財産と事業だけしかない人物と設定されています。

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隣の社長。この場面はまだスクルージのはずなのに、こんな好々爺然とした顔では、もう社屋は丸ごとイングリッド・バーグマンに渡してしまったも同然!

いっぽう、セイント・メアリー教会と付属学校は老朽化や資金不足のために、閉鎖を検討されています。その判断をするのが新任司教の役割なのです。シスター・ベネディクトは、教会の隣につくられている建物は理想の学校になると思い、他のシスターたちとともに、新しい校舎が恵まれますようにと祈りを捧げています。

まあ、わたしのような人間は「ちきり伊勢屋」を連想しますが、ふつうはチャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』を連想するでしょうね。隣の社長はスクルージで、怪異を見て、己の半生を悔い、善根を施すことで人生を取り戻そうとする人間です。

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社長は隣の教会をわが社の駐車場にしたいという抱負を語る。

それはけっこうですし、理解もできますが、スクルージにしてはじつに弱い人物設定で、どちらかというと「ちきり伊勢屋」の旦那のように、ふわふわとしたキャラクターに描かれています。スクルージであるには、酷薄でなければいけないのですが、この社長ははじめから口でいうほどの金の亡者には思えず、イングリッド・バーグマンが「これなら社屋をせしめられる」と考えるのも無理はないと思わせる好人物になっています。

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いっぽう、イングリッド・バーグマンは隣の社屋は理想の新校舎だと夢を描く。

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もうもらったも同然という満面の笑み。

さらにいうと、どの時点で自分の半生を悔い、残りの時間を他人に善根を施すことに捧げようと決心したのかもわかりません。ビング・クロスビーが町で出会ったら、すっかり好人物になっていたのです。そういうのはドラマの手法にはありません。わたしはおおいに面食らいました。

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まあ、そのような軽いキャラクターに設定されているおかげで、イヤな味がしなくていいのかもしれませんが、残り少ない人生、人から愛される人間でありたいと願って教会に新社屋を寄付しても、前半での位置エネルギーの蓄積がないので、転換によるエモーションの盛り上がりもなく、いたってコントラストの弱いプロットになっています。

◆ イングリッド・バーグマンの映画 ◆◆
もうひとつ、エンディングに関しても不満があるのですが、そこまで書いたものかどうか……。そもそも、複合的な欠陥だし、ちゃんと指摘するにはもう一度映画をはじめから見なければ確認しようがないので、簡単に片づけます。

イングリッド・バーグマンを転任させるにあたって、医者から変な理由で、転任の原因を話してはいけないと口止めされたビング・クロスビーが、結局、耐えきれずにバーグマンに理由をいってしまいます。これでバーグマンはすっかり安心して、はいハッピーエンドとなります。

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自分が説いた非暴力の教えを遵守したために、手ひどく殴られた生徒の自尊心を取り戻してやろうと、イングリッド・バーグマンは町のスポーツ用品店に出かける。バットの構え方がなんとも可愛らしい!

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スポーツ用品店で1ドルで買ってきた理論書を読んで、懸命にボクシングの要諦を勉強する!

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あとは実践あるのみ。このシークェンスのイングリッド・バーグマンはすばらしく魅力的で、レオ・マケアリーが不必要に長くキャメラをまわしてしまった気持はよく理解できる。この映画のなかでもっとも生彩のある場面。

でも、見ているほうは、おいおい、それはないだろ、でした。そもそも、理由をいわずに転任させる原因が医者の考えひとつというのが弱すぎるのです。わたしは、医者が口止めした時点で、そんなことはまったく理由にならないじゃないかと憤慨しましたが、案の定、ビングは、たいした理由もなしに医者との約束を反故にしてしまいます。だったら、はじめからきちんとバーグマンに説明すればいいじゃないか、という典型的なイディオット・プロットです。

以上、プロットは非常に出来が悪いのですが、それでも腹を立てずに最後まで見てしまうのは、イングリッド・バーグマンの生き生きとした表情のおかげです。『カサブランカ』や『ガス燈』などより、ずっと美しく、また、魅力的に撮られています。わたしはイングリッド・バーグマンのファンではないのですが、尼僧の衣裳のおかげで怒り肩も見えないこの映画は、彼女のベストではないかと感じました。


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リー・アンドルーズ&ザ・ハーツ
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by songsf4s | 2009-12-19 23:39 | クリスマス・ソング
クリスマス映画7A The Bells of St. Mary's by Bing Crosby (映画『聖メリーの鐘』より)
タイトル
The Bells of St. Mary's
アーティスト
Bing Crosby
ライター
Douglas Furber, A. Emmett Adams
収録アルバム
N/A
リリース年
1945年
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またしても、つぎの映画を見終わっていないので、今日は変則的スタイルでいってみます。映画の話をしてから音楽の話、というこれまでの順番を逆にして、『聖メリーの鐘』という映画はあとまわしにし、そのテーマ曲であるThe Bells of St. Mary'sの話から入ります。なんたって、たった5ヴァージョンしかないのだから、左団扇です。

おっと、これは勘定が微妙なのでした。5ヴァージョンの内訳は、サム・クック、ボビー・ソックス&ザ・ブルー・ジーンズ、リー・アンドルーズ&ザ・ハーツ、チェット・アトキンズ、エアロン・ネヴィルです。

ほんとうは、ここにオリジナルのビング・クロスビーを加えて、わが家にあるThe Bells of St. Mary'sは6種類といいたいのです。でも、ビング・クロスビーのヴァージョンは、もっているといえばもっているし、もっていないといえばもっていないのです。つまり、映画で聴くことはできるけれど、そのOST盤はもっていないのです。

トレイラー


◆ チェット・アトキンズ盤 ◆◆
どのヴァージョンから行きましょうか。もっとも書きやすいのは、チェット・アトキンズです。

チェット・アトキンズ


いつもながら、大変けっこうなものを聴かせていただきました、なんてお辞儀をしそうになってしまいます。とくに後半、高速アルペジオが登場してからが楽しめます。

1953年あたりの録音で、ごく初期のものだから、後年のような洗練されたプレイではなく、スムーズにいっていないところもありますが、そこがかえって魅力的に感じます。ささやかなミスのおかげで、すごくいいパッセージがよりいっそう引き立って聞こえるのです。

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しかし、これは「典型的なThe Bells of St. Mary's」とはいえませんねえ。ビング・クロスビーのオリジナルとは似ても似つかないアレンジです。このトラックを楽しんでいる理由はなにかと考えると、楽曲に負うところは小さく、チェット・アトキンズのプレイ自体のせいなのだと感じます。

◆ フィル・スペクター=ハル・ブレイン=ボビー・ソックス&ザ・ブルー・ジーンズ盤 ◆◆
これまた典型的なThe Bells of St. Mary'sではありませんが、フィル・スペクター=ボビー・ソックス&ザ・ブルー・ジーンズのヴァージョンも、やはりおおいなる魅力があります。

ボビー・ソックス&ザ・ブルー・ジーンズ


乗りまくっている人間のパワーというのはおそろしいものです。1963年とはどういう年だったか? わたしの定義では「The Year of Hal Blaine」です。まだ洗練されていないところがあるし、ときおりタイムが乱れることすらあるのですが、それでも、ついにハリウッドのドラマーのキングになったハル・ブレインのプレイは、多くのトラックでまばゆいばかりの光彩を放っています。

フィル・スペクターのアルバム、A Christmas Gift for You from Phil Spectorのアレンジャーはジャック・ニーチーです。しかし、ハル・ブレインの回想によれば、リズム・セクション、とくにドラム、ベース、ギターにはコード・チャートが渡されるだけのことが多く、たいていは自分で譜面を書いたといいます。アレンジャーの職掌は、基本的には弦と管なのです。

となると、このunusualなドラム・アレンジはどこから出てきたのでしょうか。たぶん、スペクターが例によって、「ハル、なにかやってみせてくれ」といい、ハルが思いついたスタイルをいくつか提示し、そこからスペクターが取捨選択していったのではないでしょうか。

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結局、2&4はなし、フィルインのみで構成される、世にもヘンテコリンなドラミングができあがりました。ハル・ブレインはunusualなドラミング・スタイルを大量生産しましたが(彼よりうまいドラマーはいるが、彼ほど華やかで、彼ほどクリエイティヴなドラマーはほかにいない)、なかでも、このThe Bells of St. Mary'sはスクルーボール・ドラミングの最右翼といえるでしょう。

でも、結局、エンディングはまごうかたなき「ハル・ブレイン印」にたどり着くのです。フェイドアウト直前の二分三連のキックの踏み込み。やっぱり、これが出ると、ハルだ! という雰囲気が横溢します。

◆ サム・クック盤 ◆◆
しかし、この曲はもともとはバラッド、ハル・ブレインがフィルインを叩きまくったり、チェット・アトキンズが高速アルペジオをするためのヴィークルとして生まれたわけではありません。

f0147840_022033.jpgとなると、やはりサム・クックのヴァージョンあたりがオーセンティックなThe Bells of St. Mary'sといえるのではないでしょうか。もともとソウル・スターラーズのリード・シンガー、いわば宗教が商売のタネだったので、こういう曲をやると、ゴスペル臭、宗教臭が鼻につくおそれがあるのですが、さすがはサム・クック、臭みのまったくない、すっきり、あっさりのオーセンティックなサム・クック・スタイルで歌っています。

わが家にあるこの曲が収録されたアルバムは、後年、オーヴァーダブされたトラックが大量に含まれている、じつにもって信用ならない盤です。よって、ヴォーカル以外は元からあったかどうか確認できないため、アレンジとサウンドについては黙して通りすぎることにします。いちおう、アマゾンで見つけた盤をあげておきましたが、わたしが聴いたヴァージョンと同じかどうかは保証できません。いえ、わが家の盤はひどい音なので、最悪でもわたしが聴いたものと同等、たぶん、もっとマシな音だろうと思います。

◆ エアロン・ネヴィルおよびリー・アンドルーズ ◆◆
わたしはエアロン・ネヴィルが好きなのですが、ほんとうに好きなのはTell It Like It IsやWrong Numberなど、ごく一握りの曲にすぎず、結局、声のよさを十全に生かせなかったと感じます。

以前にも書きましたが、ひとつまちがうとライオネル・リッチーになってしまう声とシンギング・スタイルなので、つねに臭い穴に落ちこむ危険を抱えています。The Bells of St. Mary'sはどうか? もろに臭い穴に落ちています。悪臭紛々のライオネル・リッチー化したエアロン・ネヴィルです。くどいヴィブラートには辟易します。

それにくらべれば、ピッチは乱れまくるとはいえ、リー・アンドルーズ&ザ・ハーツ盤The Bells of St. Mary'sは、嫌味なところがありません。

リー・アンドルーズ&ザ・ハーツ


いやまあ、もうちょっとピッチを整えてくれると助かりますがね。でも、ドゥーワップというのは、うますぎると感じが出ないものなので、当時の「文化」としては、こんなものだったのでしょう。

もうひとつ、これはもっていないのですが、クリップがあったので聴いてみたら、面白かったので、貼りつけておきます。

ローレンス・ウェルク


クラリネットをまじえた木管のアンサンブルというのは、ロック・エラになると流行らなくなりますが、そのせいでノスタルジックな感触を獲得したと感じます。たまに聴くと、いいサウンドだなあと思います。これは単なる偶然でしょうが、人数の少ないストリング・セクションが薄くミックスされた結果、面白い響きになったのも、このパフォーマンスの魅力的なところです。

それでは、次回はセイント・メアリー教会の奇蹟について、見てきたようなホントを書くべく、映画のほうを必死に見ることにします。


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サム・クック
Songs by Sam Cooke
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by songsf4s | 2009-12-18 23:47 | クリスマス・ソング
クリスマス映画6C 『ポケット一杯の幸福』補足 『一日だけの淑女』のこと

f0147840_23115722.jpg当たり前のことと独り合点し、大事なことを書き忘れてしまうことがあるものです。駆け足で『ポケット一杯の幸福』を書き終わり、やれやれと一息ついてから、いかん、と叫びました。

前回、オリジナルの『一日だけの淑女』と、リメイクの『ポケット一杯の幸福』のどこがどう違うなどという話をしましたが、もっとも肝心なことを忘れていました。

『ポケット一杯の幸福』はクリスマスを背景としているのに対し、『一日だけの淑女』はそうではないのです。わたしは両方とも見て知っているからいいのですが、当家の記事をお読みになっただけの方は、この点がおわかりになるはずもないのでした。

◆ おなじみのワルたち ◆◆
ということで、さらに書き落としや勘違いがあってはいけないと、昨夜、『一日だけの淑女』を再見しました。やはり、クリスマスの描写はありませんでした。代貸(オリジナルでは「シェイクスピア」と呼ばれている。これは二つ名かもしれない。ジョニー・ザ・シェイクスピアとかね!)が「子どものころはサンタ・クロースなんか信じられなかったけれどね」と呟くのが、唯一のクリスマスへの言及です。

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くどくなりますが、一昨年のPocketful of Miraclesの記事に書いたように、デイモン・ラニアンの原作「マダム・ラ・ギンプ」もクリスマス・ストーリーではないということを改めて確認しておきます。

『ポケット一杯の幸福』が、『一日だけの淑女』より40分も長くなり、その増加分はどこに消えたかといえば、冒頭におかれたシカゴのギャングとの取引だと書きましたが、これも見直して確認しました。アップル・アニーがスペインで暮らす娘からの手紙を受け取るあたりからは、キャプラはリメイクにおいて愚直なまでに忠実に自作をなぞっています。



些細なことですが、ヤクザ者を集めて紳士に仕立て上げるシーンでは、ラニアン・ファンにはおなじみの人物たちが登場します。ハリー・ザ・ホース、ラスト・カード・ルイ、そしてブッチです。

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ハリー・ザ・ホース

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ラスト・カード・ルイ

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ブッチ

いや、ルイも、ブッチも、あのルイや、あのブッチ(「ブッチの子守歌」の赤ん坊を抱いた金庫破り)かどうかはわかりません。でも、ハリー・ザ・ホースを出したということは、フランク・キャプラは明らかにラニアンの世界を意識していたことを示しています。だから、ルイはラスト・カードにちがいないし、ブッチはあの恐妻家の金庫破りにちがいないのです。

◆ 元からあったクリスマス・ストーリー的味わい ◆◆
久しぶりに『一日だけの淑女』を再見し、コンパクトにまとまっていて、話の展開に渋滞が少なく、グッド・グルーヴがある、と思いました。ただし、『一日だけの淑女』は傑作であり、『ポケット一杯の幸福』は駄作である、などというような、隔絶した印象はありませんでした。たんに、『ポケット一杯の幸福』はオリジナルよりすこしだけ贅肉が多いと感じるにすぎません。せめて15分ほどカットしてくれれば、濃密な映画になっただろうと思います。

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『ポケット一杯の幸福』ではセットだった入港シーンは、『一日だけの淑女』では少なくとも半分ほどはロケのように思われる。

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船もセットではなく実物に思える。

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横浜の大桟橋と同じように屋内に待合所がある。

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俳優たちの引きの絵はなく、寄ったショットのみ。つまりここでスタジオにつないでいる。

『一日だけの淑女』はクリスマス映画ではなかったのに、リメイクにあたってキャプラが『ポケット一杯の幸福』の背景をクリスマスにしたのは、ごく当然のことに感じられます。リメイクを見たあとでオリジナルを見れば、クリスマス・ストーリーにしなかったことのほうが不自然に感じられるのです。

クリスマス・ストーリーというのは、超自然現象や怪異が織り込まれているほうがそれらしい雰囲気になります。まあ、チャールズ・ディケンズが敷いた線路に乗ってものをいっているにすぎませんが、やはり『クリスマス・キャロル』の影響は巨大なのです。

『クリスマス・キャロル』のように怪異は起こらないものの、『一日だけの淑女』の代貸、シェイクスピアが述懐するように、これはクリスマスに起きそうなフェアリー・テールなのです。『素晴らしき哉、人生』を撮ったあとで、キャプラは、しまった、『一日だけの淑女』で一カ所ミスをした、と思ったのでしょう。その結果が『ポケット一杯の幸福』なのだと思います。

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by songsf4s | 2009-12-17 23:53 | クリスマス・ソング