2014年 01月 16日 ( 1 )
大滝詠一、フィル・エヴァリー、そして2パート・ハーモニー その11
 
以前、はっぴいえんどを最初に見たのは神田共立講堂でのことで、寒い時だったと書いたが、tonieさんに、該当するものは記録には見あたらないとのご指摘を受けた。

このあいだ、よくよく考え直してみたら、代々木駅から遠くないホールだったような気がしてきた。オープニング・アクトは遠藤賢司だった。

人が少なくて、寒かったという印象ばかりが残っている。あれこれバンドが入れ込みのショウではなかったので、みなLPを聴いた人ばかりだったのだろう、イントロでの反応は早く、悪い雰囲気ではなかったが、とにかく寂しかった。

そして、マイクは三本立っているのに、大滝詠一だけが歌い、細野晴臣はまったくリードをとらず、たしかエンディングで、鈴木茂とともに「いらいら」のハーモニーを歌っただけだった。

いま考えると、デビュー盤の細野晴臣の曲は、歌いやすそうなものはなく、ベース・プレイヤー、とりわけ、ルートから離れたがるメロディックなスタイルの人には、音程のとりにくそうなものが多く、ライヴで歌わなかったのも無理はないと思う。

いや、大滝詠一の曲も歌いやすいとは言い難いし、スタジオで彼自身が重ねた、あの変なハーモニー・パートを細野晴臣がライヴで歌うなんていうのは、いま振り返ると、ありそうもないことだ。

さて、『風街ろまん』のつづき。

前回みた「暗闇坂むささび変化」のつぎにおかれているのは、大瀧詠一作の「はいからはくち」だ。デビュー盤の「いらいら」に対応するもので、はっぴいえんどの曲としてはめずらしいストレート・ロッカーである。

はっぴいえんど「はいからはくち」


「ハイカラ白痴」と書いたクリップがあったが、そういう意味であると同時に「肺から吐く血」でもあるので、解釈を限定する表記はしないほうがいい。

なぜ「肺から吐く血」などという意味ももたせたかといえば、当然、これは結核を意味し、この病気はかつて文学的サブジャンルを形成したからである(たとえば堀辰雄『風立ちぬ』を想起されよ)。

松本隆の「都市の記憶」は、彼が育った、オリンピックによって街並みが破壊される以前の東京(「暗闇坂むささび変化」)を突き抜けて、大正をも射程におさめていたのだろう。

インスピレーションとなったのはこの曲だと考えられる。

Buffalo Springfield - Uno Mundo


つぎの曲もいくぶん加味されているかもしれない。鈴木茂のギターにそれを感じる。モビー・グレイプは双頭リードなので判断がむずかしいが、この曲は(Miller's Bluesでのプレイやトーンを参照して)ジェリー・ミラーのプレイと推測する。

Moby Grape - Can't Be So Bad


さて、ハーモニーである。

ライヴでも「いらいら」の時には、細野晴臣と鈴木茂がハーモニーに参加したのと同じように、この曲もまた、ライヴ録音でもつねに「はいからああ」のところで三人が歌っているのを聴ける。「いらいら」同様、この曲もコードがシンプルで、ハーモニーを歌いやすいからだろう。

つまり、逆に云うと、複雑な味わいのあるハーモニーではないということだ。ロック・バンドにはこういうレパートリーも必要なのだ。

よけいなことだが、「唐紅」という言葉を聞くと、どうしても落語の「千早ぶる」を思い出してしまう。あちらも「おからをくれないから」と「から」の音を使っているが、まあ、関係ないだろう!

なお、この曲には「はいから・びゅーちふる」という、スロウ・ダウンしたコーダがつけられている。

はっぴいえんど「はいから・びゅーちふる」


コーダをつけるという発想は、バッファロー・スプリングフィールドへのうなずきだろうが、この曲自体はどこかべつのところでヒントを得たようだ。原型を探しなさい、と云われながら、見つけられなくて、残念。ブルース風で、1コードなので、特定の楽曲とは関係がないのかもしれない。

サイドをひっくり返し、B面の一曲目。

はっぴいえんど「夏なんです」


楽曲そのものに近縁性があるわけではないが、サウンドの基調、とくに鈴木茂のギターは以下の曲にヒントを得たのだろう。イントロのギターにご注意を。

Moby Grape - He


これほど執拗に、アメリカ音楽をもとにして自分たちの音楽をつくったことを示す手がかりを配置しておいたのはなぜか。それは最後のアルバムまでいってから考えたい。

まず、コーラス(話がこんがらかるが、ハーモニーのことではなく、楽曲の構成を指す「ヴァース/コーラス/ヴァース/コーラス」などという場合のコーラス)部での「ギンギンギラギラの」のあたりで上にハーモニーが付されていて、セカンド・ヴァースからは、ヴァースでもハーモニーが加えられている。

残念ながら、LPをリップして、クレジットをスキャンせずに手放したために確認できないが、上のパートを歌っているのも細野晴臣自身のように聞こえる。

好き嫌いでいえば、とりわけヴァースは好ましい響きのハーモニーだが、ハーモニーの「半採譜」に疲労困憊してしまって、これもちょっととりかけてみたが、やはりお経のようでわけがわからなくなり、放棄した。申し訳ない。ひょっとしたら、後日、部分的に採譜してみるかもしれない。

ギンギンギラギラのあたりは穏当なハーモニーだが、ヴァースのハーモニーは、やはり部分的に妙なところに行っているように聞こえ、「はっぴいえんどらしい」と感じる。ということで、今回は採譜による検証は省略!

ギターコードは、かつて素晴らしく耳のいい後輩に教わったのを途中まで思い出したのだが、どうしてもわからないところがあるので、書き留めるのはやめておく。以下のようなコード譜を見つけたが、わたしが弾いているコードとはまったく似ていない。呵々。

「夏なんです」コード譜(残念ながら、ほとんど合っているところがないと思うw)

次回もまだ『風街ろまん』に留まる。


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by songsf4s | 2014-01-16 22:42 | 60年代