本日から、数回にわたって、つい先日没したアール・パーマーの追悼特集をします。
そういうことになると、いちおうの伝記的記述が必要かもしれませんが、その点については、「音楽の都ハリウッド」という記事ですでに詳細に書いたので、ご興味がおありの方はそちらをどうぞ。ほかに、Backbeat: Earl Palmer's Storyというアールの伝記と、The Big Beatというドラマーのインタヴュー集に収録されたアールのインタヴューが参考になるでしょう。
『音楽の都ハリウッド』では、「Track 1 ブルー・バイユーに生まれて」と「Track 2 ア・ワッバッパルー・マッパラッバン・ブーム!」という章で、ニューオーリンズ時代のアール・パーマーを描いています。
◆ 候補曲リスト ◆◆
そのようなしだいで、伝記的記述はすっ飛ばし、ここではあくまでも楽曲およびプレイを中心に話を進めていきます。
アール・パーマーのプレイヤーとしてのキャリアは、大きく三つに分けられるでしょう。ニューオーリンズ時代、ハリウッドのエース時代、そして「その後」です。最後はツアーに戻るので、録音は減り、わが家にもほとんどないため、ここでは主として、アール・パーマーがニューオーリンズとハリウッドのスタジオ・エースとしてすごした、およそ四半世紀ほどの期間に録音されたものを取り上げます。
ベスト・オヴ・ジム・ゴードンでは、好みのプレイをランダムに並べましたが、今回のベスト・オヴ・アール・パーマーでは、彼の歴史的貢献を重視して、おおむね年代順に楽曲を並べることにします。まず、ざっとリストアップし、資料として並べてみた楽曲のリストをご覧いただきましょう。以下は第1部のニューオーリンズ時代の楽曲です。
1. Fats Domino - The Fat Man (1949)
2. Tommy Ridgley - Boogie Woogie Mama (1949)
3. Fats Domino - Detroit City Blues (1949)
4. Joe Turner - Jumpin' Tonight (1950)
5. Tommy Ridgley - Looped (1950)
6. Fats Domino - Every Night About This Time (1950)
7. Jewel King - 3 x 7 = 21 (1950)
8. Dave Bartholomew - That's How You Got Killed Before (1950)
9. Dave Bartholomew - Good Jax Boogie (1950)
10. Lloyd Price - Lawdy Miss Clawdy (1952)
11. Smiley Lewis - The Bells Are Ringing (1952)
12. Dave Bartholomew - Little Girl Sing Ding a Ling (1952)
13. Antoine 'Fats' Domino - Mardi Gras In New Orleans (1952)
14. Shirley & Lee - I'm Gone (1952)
15. Smiley Lewis - Big Mamou (1953)
16. Antoine 'Fats' Domino - Rose Mary (Version 2) (1953)
17. Spiders - I Don't Want to Do It (1954)
18. Earl King - I'm Your Best Bet Baby (1954)
19. Spiders - You're The One (1954)
20. Antoine 'Fats' Domino - Poor Me (1955)
21. Antoine 'Fats' Domino - Bo Weevil (1955)
22. Fats Domino - I'm In Love Again (1955)
23. Roy Montrell - (Every Time I Hear That) Mellow Saxaphone (1955)
24. Antoine 'Fats' Domino - My Blue Heaven (1955)
25. Smiley Lewis - I Hear You Knockin' (1955)
26. Little Richard - Tutti Frutti (1955)
27. Shirley & Lee - Feel So Good (1955)
28. Little Richard - The Girl Can't Help It (1956)
29. Charles Brown - I'll Always Be In Love With You (1956)
30. Roy Brown - Saturday Night (1956)
31. Art Neville - Oooh-Whee Baby (1956)
32. Little Richard - Slippin' And Slidin' (Peepin' And Hidin') (1956)
33. Amos Milburn - Chicken Shack Boogie (1956)
34. Antoine 'Fats' Domino - When My Dreamboat Comes Home (1956)
35. Little Richard - Ready Teddy (1956)
36. Little Richard - Long Tall Sally (1956)
37. Shirley & Lee - Let the Good Times Roll (1956)
38. Little Richard - Rip It Up (1956)
39. Lee Allen - Rockin' At Cosimo's (1956)
40. Johnny Moore's Three Blazers (vocal Charles Brown) - Merry Christmas Baby (1956)
41. Antoine 'Fats' Domino - I'm Walkin' (1957)
42. Little Richard - Lucille (1957)
43. Little Richard - Jenny Jenny (1957)
アール・パーマーは1957年にハリウッドに移住します。したがって、この年のトラックは、どちらで録音されたか不明のものもあります(そもそも、移住後も何度かニューオーリンズに戻って録音した形跡がある)。したがって、このへんはどちらに繰り込むか微妙なのですが、とりあえず、上記までをニューオーリンズ時代とみなし、話を進めていくことにします。
◆ 再び自分自身のための広告 ◆◆
じつは、上記の曲のリストアップ、CDのリップと圧縮、そしてタグ入れと年代順のソートをするのがやっとで、いまはまだ伝記の再読中です。いちおう、上記40曲あまりを2度通して聴き、すでにどれを残すかの検討をはじめていますが、まだ記事を書ける段階ではありません。
ただ、ニューオーリンズ時代については、ドラミングのありようはそれほど変化に富んだものではなく、3分の2ほどは、プレイの内容より、楽曲やアーティストの重要性を優先しても問題ないでしょうし、こちらがあれこれコメントすることもあまりないだろうと思います。したがって、ジム・ゴードンのときのようにむやみに手間取ることはなく、すくなくともニューオーリンズ時代については、簡潔にすませられるだろうと予測しています。
以上、予習をしといてね、といっているような、ヘンチクリンな話でした。いや、わたしのほうが予習が足りなくてまだ本題に入れない、もうちょっと待ってちょうだいな、というのが今日の記事の眼目です。
しかしですね、そういってはなんですが、「音楽の都ハリウッド」はわれながら感心するほどの出来で、同じ人間とはいいながら、アール・パーマー研究の深さにおいて、もう一度わたしがあのレベルに到達するのはきわめて困難です。ただ調べただけではダメなのです。調べたことを頭に叩き込み、いつでもそれを取り出せる状態で音を聴き、判断を下していかなくてはいけないのです。
この「頭に叩き込む」というのがいまのわたしにはむずかしく、過去の自分の記事よりいいものを書けるとはとうてい思えないのです。あれはわたしのアール・パーマー研究がピークにあったときに書いた記事なので、アールの業績、とりわけロックンロール・ビートの発明者としてのアールにご興味のおありの方には、ぜひあちらの記事を読んでいただきたいと思います。
それでは次回から楽曲およびプレイの検討に入ります。