Twilight Zone by CBS Television Orchestra
タイトル
Twilight Zone
アーティスト
CBS Television Orchestra
ライター
Marius Constant
収録アルバム
Brain In A Box: The Science Fiction Collection
リリース年
1960年
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いろいろ聴いているうちに面白くなってきたので、もうすこしテレビドラマのOSTをつづけます。

つらつら考えてみると、60年代はじめに見たアメリカのテレビドラマは、連続ものとはいえ、どれもみな一回完結だったようです。「サーフサイド6」も、「サンセット77」も、中心人物たちは毎回同じ顔ぶれでも、事件そのものはその日のエンディングまでに解決しました。たとえば「24」のように、えらいことだ、どうなるんだ、というところで、また来週、なんてことにはならないのです。

f0147840_1155769.jpgこうした一回完結でありながら、同時に連続性も維持するシリーズものとはべつに、設定も人物もプロットも、すべてが毎回新しくなる、短編小説のようなドラマー・シリーズというのもありました。その代表が、アルフレッド・ヒチコックのイントロがつく「ヒチコック劇場」であり、そして、本日取り上げるTwilight Zone、すなわち本邦では「ミステリー・ゾーン」として放送された番組です。

あの時代、「ヒチコック・マガジン」という雑誌が日本でも発行されていましたが、「ヒチコック劇場」に登場する物語は、「ヒチコック・マガジン」に掲載されるような話柄でした(といっても、もちろん、わたしはリアルタイムの「ヒチコック・マガジン」の読者ではない。あとから集めた)。どちらも監修者としてヒチコックの名前があり、テレビのほうには、毎回、登場して、今日の物語の紹介をしましたが、もちろん、関与はそこまでのことでしょう。自分自身をブランドとして十全に活用しただけのことで、雑誌にせよ、番組にせよ、それぞれのスタッフを「監修」しただけでしょう。あの時代、ヒチコックはまだ第一線の映画監督であり、そちらのほうでむちゃくちゃに忙しかったはずです。

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いっぽう、「ミステリー・ゾーン」に登場する物語は、「ヒチコック・マガジン」や、さらには先行する「エラリー・クイーン・ミステリ・マガジン」、通俗ハード・ボイルドの「マンハント」(くどいようだが、リアルタイムの読者ではない。すべて、後年、「足で稼いで」集めた)にはあまり載らないタイプの物語で、しいていえば、「SFマガジン」タイプの話でした(ただし、宇宙ものというのはなかったと思う)。

すでにおわかりであろうように、こうしたテレビ番組と雑誌の関係は、当時のアメリカの雑誌ジャーナリズム事情から導きだされたものだったと考えますが、それはまたべつの話なので、そろそろ音楽のほうに話を進めます。

◆ 音楽界のミステリー・ゾーン ◆◆
わたしは「ミステリー・ゾーン」の熱心な視聴者でした。というか、わたしにはチャンネル決定権はなかったので、兄が好んでいただけでしょうけれど(ついでにいえば、一家全員が合意していたのは「ローハイド」だった)。ほかのドラマは物語に関する記憶がないのに、「ミステリー・ゾーン」は忘れがたいエピソードがあり、のちに再放送されたときは、それにぶつかるまで、我慢強く付き合いました。ヴィデオがない時代というのは、面倒なものだったのです。

「ミステリー・ゾーン」は、音楽も他の番組とはまったくちがう異様なサウンドで、やはり忘れがたいものです。ミュージック・コンクレートというか、アヴァンギャルドですから。

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で、本日は、あの曲は当時にあっては唯一のアヴァンギャルド・テーマだった、といって、簡単に終わりにする予定だったのですが、どこにでも罠は待ちかまえているもので、そうはいきませんでした。今回の罠は「作曲者不明」です。

ソングライター・クレジットがはっきりしないという例は意外に多いものですが、Twilight Zone Themeほどややこしいのはほかに知りません。しかし、ここまで話がもつれていると、ちゃんと研究している人がいるもので、そして、いまはウェブの時代だからして、ちゃんとそれを公開してくれていました。わたしが調べた範囲では、このページがもっとも詳細で、整理されています。

なぜ調べる気になったかというと、わが家にある3種類のTwilight Zoneのカヴァー・ヴァージョンの作曲者が異なっていたためです。オリジナルのテレビ・サントラはもっていないので、ウェブで作曲者を調べようとしたのですが、さっぱり名前が出てこなくて、焦りました。いや、出てこないというのは逆でした。作曲者が多すぎるのです。ヴァージョンごとに、みなクレジットがちがっていて、調べれば調べるほど名前が増えていってしまったのです。

もう一度、わが家にあるものを眺めると、アルバムIn Spaceに収録されたヴェンチャーズ盤の作曲者はマーティー・マニングとなっています。マーティー・マニングのTwilight Zoneというアルバムが存在することもウェブで確認し、音も聴けました。そいつはけっこう毛だらけ、この二者は兄弟とわかりました。

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わからないのは、バディー・モロウのアルバムDouble Impactに収録されたTwilight Zoneという曲の作曲者は、バーナード・ハーマンとなっていることです。しかもこの曲は、不気味なナレーションが入っていること以外、Twilight Zoneには無関係なものに聞こえるのです。いったい、これはなんなの?

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やむをえず、allmusicで検索しました。Twilight Zoneというタイトルの曲には、無数の作曲者の名前がついている、ということがわかっただけでした。しかも、アーティスト名から、オリジナルと見当をつけられるヴァージョンも見あたりませんでした。バーナード・ハーマンやマーティー・マニングの名前もちゃんとありました。

◆ 異次元にも種類というものがあり…… ◆◆
調べものでひどい目に遭うのは慣れていますが、今回は、そもそも、わたしが知っているTwilight Zoneのテーマがどれなのか確定できないという不確定要素まで加わって、これじゃあ、ミステリー・ゾーンじゃなくて、アウター・リミッツじゃないか、とボヤきが出ました(アウター・リミッツなんかもちだしても、わかる人は一握りだろうが。60年代なかばに放送されたミステリー・ゾーンの後継といったおもむきの番組)。

前述のページを見つけられなかったら、あまりにも不明なことが多すぎるため、この曲を取り上げるのは断念したでしょう。それでは、解決篇へと移ります。ほとんど問題篇みたいな解決篇ですが……。

オリジナル・シリーズのTwilight Zoneには2種類のテーマがありました。ひとつは、1959年の第一シーズンに使われたものです。この作曲者がバーナード・ハーマン。その曲がこれです。これはパイロット版だそうなので、絵はじっさいに放送されたものとは異なるかもしれませんが、音楽はそのままだと思います。じっさいに放送されたエンド・タイトルにも使われています。おっと、じっさいに放送されたものもありました。

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アルフレッド・ヒチコックとバーナード・ハーマン

日本ではどのシーズンから放送されたのか知りませんが、わたしが記憶していた「ミステリー・ゾーン」のテーマは、このバーナード・ハーマン作曲のものではありません。いえ、ハーマンのものがよくないということではありません。たとえば、このシークェンスのスコアなんか、テレビにはもったいないくらいで、ヒチコック映画のサントラかと思ってしまいます。ハリウッドがまるごとテレビに乗り込んだ時代ならではのことでしょう。クレーンやドリーを使ったカメラワークも本編そのままで、ビックリ仰天です。

さて、好評によって第二シーズンがつくられることになりましたが、その際に、バーナード・ハーマンのテーマは、不気味すぎると切り捨てられ(たしかにお茶の間向きではないし、ハイブロウすぎる)、オープニング・シークェンスとそれに付される音楽が新たにつくられることになりました。できあがったのがこれです。

たしかに、わたしが記憶しているテーマはこの曲なのですが、絵のほうはひどくあっさりしていて、あれえ、こんなだったっけ、となります。あれこれみてみたところ、これがわたしの記憶にあるものでした。「なんか、いろいろ飛んでいたはずだ」と思ったのです。

◆ 異邦人三号 ◆◆
これで一件落着なら、楽勝とはいわないまでも、ミディアム・レアぐらいのトラブルだったのです。ところがどっこい、まだ終わりませんでした。なんとなれば、シーズン2以降に使われたテーマの作曲者を確定できなかったからです。

もう一度、前述のウェブ・ページにお世話にならなくてはなりません。ちょっと込み入った話をできるだけ簡単にまとめてみましょう。

まず、前提として、CBS放送とアメリカ音楽家組合(AFM)とのあいだの取り決めというものを理解しておく必要がありそうです。どういう取り決めかというと、どんな音楽も、再利用する場合には、オリジナル・セッション料金の100パーセントにあたる料金を組合に支払う、というものです。つまり、古いものを使いまわそうが、新しいものを録音しようが、費用は同じだということです。

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サンセット・ブールヴァードに建つハリウッドのCBS。1930年代か?

ということなら、だれも古い音楽を使いまわしたりしない、新しいものを録音するに決まっている、といいたくなります。じっさい、会社の意図はそう仕向けることにあったそうです。ところが、どんなルールにも抜け穴があります。これはあくまでもCBSとAFMのあいだの取り決めにすぎず、いわば内部のグラウンド・ルールでした。その外側、たとえば、外国の音楽については、このルールは適用されないのです。

「ライブラリー音源」というものをご存知だと思います。使いまわしのきく効果音や、ちょっとした短い音楽の断片のストックのことです。同じようなものをくりかえしつくらなくていいようにするためのもので、有名な曲にも使われた例があります。たとえば、ビートルズのGood Morningの動物の鳴き声や馬が走る音などは、すべてEMIのライブラリー音源だというのは有名な話でしょう。

f0147840_1758548.jpgCBSには「Foreign Library」と題された音源があるそうです。AFMとの取り決めに抵触しない、外国のミュージシャンが録音したライブラリーです。その外国のミュージシャンがつくったもののなかに、フランスのアヴァンギャルド作曲家マリウス・コンスタンの"Etrange 3 (Strange No. 3)"と"Milieu 2 (Middle No. 2)"という断片がありました。

第二シーズンの準備に入ったところで、新しい音楽がつくられることになり、バーナード・ハーマンからの二種類をはじめ、ジェリー・ゴールドスミスやリース・スティーヴンズなどから、新曲が提供されました。しかし、いずれも採用を見送られ、「ライブラリー」にしまわれて、後日、Twilight Zoneのスコアの一部として利用されることになります。

それにしても、バーナード・ハーマンがやってもダメ、ジェリー・ゴールドスミスがやってもダメとは、なんともぜいたくというか(もっとも、このとき、ゴールドスミスは駆け出しだが)、まあ、それがあの世界の日常茶飯事だったのでしょうが(アレックス・ノースによる『2001年宇宙の旅』のオリジナル・スコアがCD化されてわかったが、全編のスコアが完成したあとでボツになっている)、こういうやり方をしていれば、最終的に放送されるもののレベルは確実に保証されることになります。

Twilight Zoneの音楽監督、ラド・グルースキンは、おそらくタイムリミットが迫ったせいでしょう、ライブラリー音源を編集することを思いつきます。それが前述の"Etrange 3"と"Milieu 2"です。この2曲、というか、音の断片がテープ編集で接続され、わたしが知っている第二シーズン以降のTwilight Zoneのテーマができあがりました。

多少とも著作権のことをご存知の方なら、ライブラリーが登場したところで、トラブルのにおいを嗅ぎ取ったのではないでしょうか。マリウス・コンスタンの名前はもちろん、だれの名前も、1979年までは登録されなかったのだそうです。自分の名前を貼りつけないだけの良識が、ラド・グルースキンやCBSの音楽部のボスにあったのはラッキーでした。そんなことをしていたら(そういう例は音楽界にはたくさんある)、あとでとんでもないことになっていたでしょう。

というしだいで、現在、オリジナル・スコアとその後のリメイク盤にはマリウス・コンスタンが作曲者として記載されているようです。

◆ 出発点に戻って…… ◆◆
わたしのほうの「オリジナル」の疑問も、これで解決というか、事情を推測できる段階にまでたどり着きました。オリジナルの疑問というのは、ヴェンチャーズのTwilight Zoneにはマーティー・マニングの名前があるのに、なぜサントラ盤にはマニングの名前がないのか、ということです。

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"(The) Ventures in Space" なぜ定冠詞がパーレンの中に入っているのか?

Twilight Zoneのテーマの著作権が登録されたのが1979年ならば、60年代に録音されたマニングやヴェンチャーズのTwilight Zoneに、作曲者の名前は書けません。こういう場合、トラッド曲に準じて、パブリック・ドメイン扱いにし、アレンジャーなどの名前をクレジットするのはよくあることです。そもそも、マニング盤とサントラに共通するのは、冒頭のE-G-Ab-Gというギターリックぐらいで、あとはべつの曲といっても差し支えないくらいです。

さらに推測するなら、マニングはCBSと関わりの深いアレンジャーで、コロンビア・レーベルのアーティストの仕事をたくさんしていた(トニー・ベネットのI Left My Heart in San Franciscoはマニングのアレンジ)というのだから、このマニングのTwilight Zoneというアルバムは、勝手につくったものではなく(レーベルはコロンビアなのだから、当然だが)、おそらく、プロモーションの一環として、CBSに依頼されたものなのでしょう。それならば、E-G-Ab-Gというリック以外にはオリジナルとは関係のない曲に、マニングが自分の名前をつけることに、CBSとしても異論はなかったにちがいありません。

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さらにもうひとつ推論を積み重ねると、以後、これが基準になって、だれがあのリックとTwilight Zoneというタイトルを使っても、べつの作曲者クレジットがつけられることになったのだろうと思います。E-G-Ab-Gの四音の繰り返しに著作権があるかどうかは微妙ですが、Twilight Zoneというタイトルまでつけるとなると、法廷の判断もどちらに転がるか予測できないところで、まだ火種を抱え込んだ曲なのかもしれません。

それはともかく、ヴェンチャーズのTwilight Zoneは、マーティー・マニングのTwilight Zoneのカヴァーであって、ドラマのOSTのカヴァーではない、ということで、ようやく一件落着です。The Ventures History Box Vol.2のライナーには、テレビドラマのテーマであると書いてありますが、したがって、これは不正確な記述といわざるをえません。正確には、マーティー・マニングによるTwilight Zoneのヴァリアントをカヴァーしたものです。

マニングのTwilight Zoneには、オンディオリンやサーペントといった楽器が使われているそうですが(冒頭のフレーズは、左が女性ヴォーカル、右がオンディオリンで、両者のユニゾンのように聞こえる)、ヴェンチャーズ盤もなにやらわけのわからない楽器の音がします。ムーグやテレミンの兄弟や従兄弟にあたる、オンディオリン類似の電子楽器が動員されたのでしょう。

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サーペント。まさにサーペント(ヘビ)という形状をしている。音も見た目のとおりで、バスーン、ファゴット、チューバなどを連想する。

このあたりにくると、初期のシンプルな編成のヴェンチャーズではないし、ドラマーもハル・ブレインには聞こえません(ただし、ボックスのライナーにはハルが参加したとある。大量動員されたパーカッションをジュリアス・ウェクターといっしょにプレイしているのだろう)。メル・テイラーがストゥールに坐るようになったと考えています。

Twilight Zoneはのちに映画化されていますが、そちらのサウンドトラックはわが家にはありません。映画館で見ましたが、オムニバスというのはつまらないと思っただけでした。タイトルやテーマ曲は第二シーズン以降のものに近かったと思います。

80年代の新シリーズでは、グレイトフル・デッドがテーマを依頼されました。例によってE-G-Ab-Gのリックにもとづくインプロヴ(ライヴでよくやる無調のインプロヴSpaceに近い)で、いいとか悪いとかというほどのものではありません。しいていうと、無調のアヴァンギャルドのくせに、妙に予定調和的で、怖さがないといえるかもしれません。このテーマの作曲者クレジットは、マリウス・コンスタンではなく、デッドの全員になっています。インプロヴだからということでしょう。

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◆ そして、限界の向こう側 ◆◆
もう終わりにしてもいいのですが、ちょっとだけ疑問が残っています。Twilight Zoneが終わったあとで、60年代なかばに「アウター・リミッツ」という番組がありました。「ミステリー・ゾーン」によく似たプログラムで、ちがうのは、「ミステリー・ゾーン」が30分番組だったのに対し(あとのほうのシーズンには一時間に拡大されたらしいが)、「アウター・リミッツ」は一時間番組だったことぐらいです。

さて、ここにマーケッツのOut of Limitsというインスト曲があります。この曲はTwilight Zoneのテーマに関係があります。あのE-G-Ab-Gというリックが使われているのです。自分で書いたように、このリックだけでは著作権侵害で裁判に勝てる見込みは薄いでしょう。本体のメロディーもTwilight Zoneとは関係がありません。しかしですねえ、子どものころは、このへんの関係がよくわからなくて、どうなっているんだろうと思いましたよ。ドラマについていえば、「ミステリー・ゾーン」≒「アウター・リミッツ」という印象でした。音楽についても、Twilight Zone≒Out of Limitsという印象をもっています。

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だから、ずっと後年、記憶を失ったドラマ「アウター・リミッツ」のテーマはどうなっていたのかとたしかめたら、これがぜんぜんちがう曲で、なーんだ、でした。いやはや、まったくもって奇々怪々のミステリー・ゾーン。ドラマの冒頭でロッド・サーリングがいいます。

「あなたは異次元の旅をしています。視覚や聴覚だけでなく、精神の異次元でもあります」

まったくねー! 今回はちょっとしたwalking distanceでしたよ。とりかかったときは、ちょっと角のコンビニに買い物に出かけたはずが、結局、郊外のホームセンターまで行くはめになり、あげくの果てに、広大なスペースで迷子になってしまったみたいな長旅でした。

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by songsf4s | 2008-07-13 18:43 | 映画・TV音楽