Uncle John's Band by Grateful Dead その1
タイトル
Uncle John's Band
アーティスト
Grateful Dead
ライター
Robert Hunter, Jerry Garcia
収録アルバム
Workingman's Dead
リリース年
1970年
他のヴァージョン
various live versions of the same artist, Phil Lesh & Phriends
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これまでにもいろいろ大物を取り上げてきましたが、書きはじめたいまも、ほんとうにこの曲をやるのかよ、と自分自身に確認しています。なんたって、デッドヘッズにとっては「国歌」みたいな曲で、これが流れたら、起立、脱帽、直立不動で斉唱、てなものなんですからね。

先月の馬鹿ソング特集では、当ブログの三役である、グレイトフル・デッド、キンクス、プロコール・ハルムの曲をまったく取り上げませんでした(特集が終わってから、ハルムのHomburgは馬鹿ソングだったことに気づいた)。今月は、ハルムは登場しないものの、キンクスは登場の予定ですし、デッドにいたっては山ほどあり、絞りに絞り込んで、やっと三曲まで減らしましたが、これ以上は無理なので、いまは三曲とも取り上げる気でいます。よって、そろそろとりかからないと、今月下旬は屍累々のデッドだらけになってしまいそうなのです。

この曲には長い年月のあいだに、デッドの歴史とともにいろいろな属性が付与されてきましたが、そうしたことはあとにして、まずは歌詞を見ていくことにします。といっても、今日じゅうに最後までたどり着ける見込みは立たず、ひょっとしたら、歌詞だけで二日がかり、20種におよぶヴァージョンの検討にまた二日、なんてことになるのではないかと心配しています。デッドがやっても短い曲ではなく、時代が下ると10分台に突入しますが、フィル・レッシュ&フレンズのカヴァーにいたっては20分を超えるため、ただ聴くだけだって、ただごとではないのです。

You Tubeに1980年のレイディオ・シティー・ミュージック・ホールでのライヴ・ヴァージョンがありますので、よろしかったらどうぞ。すでにキーボードはブレント・ミドランドなので、わたしの好まない時期のものですが、公平にいって、いいほうの出来です。すくなくとも、いつもは外しまくるボブ・ウィアが比較的まともに歌っているので、デッドに不慣れな方でも大きな違和は感じないだろうと思います。警告しておきますが、デッドの場合、ハーモニーは「外すためにある」ので、ピッチがどうこうという批評は、はじめから無効です。

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◆ バック・ダンサーズ・チョイス ◆◆
ではファースト・ヴァース。例によって、デイヴィッド・ドッドの注釈入りデッド歌詞サイトに掲載されているものをそのまま使います。行の区切り、大文字小文字の使い分け、カンマなど、まったくいじっていません。

Well, the first days are the hardest days,
don't you worry anymore
When life looks like Easy Street
there is danger at your door
Think this through with me
Let me know your mind
Wo-oah, what I want to know
is are you kind?

「最初のうちがいちばんきついものさ、だから心配することはない、生活が楽になったと思ったときこそ、すぐそこに危険が近づいているものだ、いっしょにこのことをよく考えてみよう、きみの気持を教えてくれないか、ぼくが知りたいのは、きみがやさしい心の持主かどうかということだ」

f0147840_2131640.jpg歌詞のいっていることとは逆に、ファースト・ヴァースがいちばん楽です。問題になるのはeasy streetぐらいでしょう。辞書には「《口》 裕福な境遇、金に困らない身の上」とあります。日本語の「生活が楽」「暮らし向きがよい」というニュアンスより、もっと金がある状態でしょう。また、チャップリンの映画にEasy Streetというタイトルのものがあるとも出ています。ロバート・ハンターはしばしばいろいろなものを引用するので、そういうこともつねに念頭に置かなくてはいけないのです。

言葉の表面的な意味はむずかしくないのですが、なにをいわんとしているかとなると、むずかしいヴァースです。この曲は反戦歌として解釈することもできるので、そういう前提で読み直すと、その方向に沿った解釈も可能だとわかりますが、とりあえず、いまは限定せずにおきます。

セカンド・ヴァース。

It's a Buck Dancer's Choice, my friend,
better take my advice
You know all the rules by now
and the fire from the ice
Will you come with me?
Won't you come with me?
Wo-oah, what I want to know,
will you come with me?

「これはバック・ダンサーズ・チョイスなんだ、ぼくのアドヴァイスをきいておくほうがいいと思うよ、もうこれですべてのルールはわかったはずだし、火と氷の区別もつくだろう、さあ、いっしょに来るかい? 頼むから来たまえよ、きみがいっしょに来るかどうか、それが知りたいね」

f0147840_1571249.jpgBuck Dancer's Choiceについては、いろいろな説が入り乱れています。Buck Danceというのは、19世紀終わりに登場したダンスで、シンプルなタップ・ダンスのようなものだそうです。buck-and-wingともいうそうで、このほうの語義は、リーダーズでは「黒人のダンスとアイルランド系のクロッグダンスの入りまじった複雑な速いタップダンス」となっていて、「シンプル」という他の辞書の定義と矛盾します。ともあれ、まずこれが一説。

他の意見としては、Buck Dancer's Choiceというタイトルの曲があり、それを指すというのもあります。これはfiddle tuneだというのだから、フォーク・ダンスのようなものだと思われますが、この曲が演奏されたら、buck=男鹿、つまり、男のほうがパートナーを選べるのだそうです。ほかにもさまざまな意見がありますが、わたしには、これがこのヴァースの文脈に合う、もっとも妥当な解釈のように思えます。

◆ 潮の満ちてくる川の畔 ◆◆
以下は、なんといえばいいのかよくわからない部分。ヴァースではないし、コーラスでもないのです。ということは、消去法でブリッジということになってしまいますが、それにしては位置が奇妙です。でも、現にそこにあるのだから、ああだこうだいってもはじまりません。

Goddamn, well I declare
Have you seen the like?
Their walls are built of cannonballs,
their motto is Don't Tread on Me

「なんてことだ、こいつは驚いた、これに似たものを見たことがあるか? 壁は砲弾でできている、連中のモットーは『俺を踏みつけるな』だ」

はじめからよくわかっていないのですが、ここにきていよいよ脈絡を失った感じです。デイヴィッド・ドッドの注釈では、Don't Tread on Meというのは、アメリカの愛国者、クリストファー・ギャズデンがデザインした「ギャズデン・フラグ」という旗に書かれたモットーなのだそうです。サンプルをいただいてきたので、ご覧あれ。

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つまり、踏みつけてみろ、ただじゃおかないからな、という威嚇なのでしょう。この旗のヘビは、ヤマカガシなんかではなく、ガラガラヘビだそうです。独立戦争のとき、バハマのイギリス基地を襲ったアメリカ海兵隊のドラムにも、このシンボルが描かれていたそうです。以上、砲弾でできた壁と平仄は合っています。

意味はなんだ、といわれると、口ごもらざるをえませんなあ。ひとつだけいえることは、このUncle John's Bandが書かれたとき、アメリカはヴェトナム戦争の泥沼でもがいていた、ということです。「これに似たもの」の「これ」はヴェトナム戦争を指しているのではないでしょうか。この線に沿って解釈すると、theirが指しているのは、アメリカの戦争推進派ではなく、ヴェトナムのことである可能性もあるように思います。アメリカはガラガラヘビを踏んでしまった、と。

つづいてコーラス。ここにコーラスがくるのです。ヴァースのあと、コーラスのまえなんていうところにブリッジがあるはずがない、というので、まえの4行をなんと呼べばいいのかわからなくなったのです。

Come hear Uncle John's Band
by the riverside
Got some things to talk about
here beside the rising tide

「この川の畔に来て、アンクル・ジョンズ・バンドを聴かないか、この満ちてくる潮のそばで話し合いたいことがあるんだ」

川の畔なのに、潮が満ちてくるということは、河口に近いということになります。どこか特定の川を指していたのかどうかはわかりません。ポトマック河だったりして? いや、これはただの思いつき。あの時代、戦争推進派のバンドなんていうのはめったになく、デッドも当然、戦争反対派でした。「話し合うべきこと」とは、戦争のことなのか、それとも、そんなふうに限定しないほうがいいのか、なんともいえません。仮に、あくまでも仮に、ヴェトナム戦争の文脈で捉えるなら、セカンド・ヴァースのwill you come with meという問いかけは、きみは戦争についてどちらの側に立つのだ、と解釈できるような気が、ここまでくるとしてきます。

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◆ 風のごとく去る ◆◆
サード・ヴァース。

It's the same story the crow told me
It's the only one he know
like the morning sun you come
and like the wind you go
Ain't no time to hate,
barely time to wait
Wo-oah, what I want to know,
where does the time go?

「それはカラスに聞かされたのと同じ話、あいつはこの話しか知らないんだ、きみは朝の太陽のようにやってきて、風のように去る、憎んでいる時間なんかない、待てる時間もほとんどない、ぼくが知りたいのは、時はどこへいってしまうのかということ」

カラスねえ。単純に伝承を探ると、たとえば世界大百科のカラスの項には、西洋の伝承として「カラスは不気味な鳴声、黒い姿から不吉な鳥とされ、死と関係づける俗信が多い。家のまわりをカラスが飛ぶのは死の前兆とされ、カラスの群れがけたたましく空中を飛びかうのは戦争を予言するのだという」とあります。また、ギリシャ神話には、告げ口をするおしゃべりな鳥として出てくるそうです。さらに、ジョニー・ホートンの1964年のシングルに、Same Old Tale The Crow Told Meという曲があるようです。そして、カラスといえば、エドガー・アラン・ポーの『大鴉』も無視するわけにはいかんだろう、という意見も当然ながらあります。

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「風のように去る」というと、日本人の場合、「風林火山」の「疾きこと風のごとし」を思い浮かべます。そんなの関係ないだろう、なんて頭から否定しないほうがいいのです。ロバート・ハンターは日本文化にも関心があり、歌詞のなかに「招き猫」を登場させたり(いや、断定はできないが、そう考えることができる)、芭蕉にインスパイアされたと思われる歌詞も書いています。

◆ この曲はどう進むのか? ◆◆
フォースにして最後のヴァース。

I live in a silver mine
and I call it Beggar's Tomb
I got me a violin
and I beg you call the tune
Anybody's choice
I can hear your voice
Wo-oah what I want to know,
how does the song go?

「ぼくは銀の鉱山に住んでいて、ここを乞食の墓穴と呼んでいる、ヴァイオリンをもっているんだけれど、なにか曲をあげてくれないか、だれのお好みでもかまわない、君たちの声は聞こえているよ、ぼくが知りたいのは、その曲がどういう風になっているかということだけさ」

むずかしいですねえ。デイヴィッド・ドッドのサイトにも、このヴァースについてはなんの意見も寄せられていません。文字通りに受け取ると、ここは戦争とは関係ないように読めるのですが、どうですかね。ロバート・ハンターの歌詞は、しばしば音楽、バンド、聴衆について語っています。そういう流れからいうと、ここはデッドとデッドヘッズのことを歌っているように、わたしには思えます。でも、silver mineとはなんのことなのか? beggar's tombはなにを指すのか……見当もつきません。

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最後のコーラス。

Come hear Uncle John's Band
by the riverside
Come with me or go alone
He's come to take his children home
Come hear Uncle John's Band
playing to the tide
Come on along or go alone
he's come to take his children home

「アンクル・ジョンズ・バンドよ、この川の畔に来ないか、ぼくといっしょに来るか、それともなければ、ひとりでいくか、彼は自分の子どもたちを連れ帰りにやってきた、アンクル・ジョンズ・バンドよ、潮の満ち干に合わせてプレイしてくれ、いっしょに来るか、ひとりでいくか、彼は自分の子どもたちを連れ帰りにやってきた」

何度いっしょに歌ったかわからないコーラスですが、いざ、意味を考えてみると、なんのことなのか、さっぱりわかりません。シングアロングした経験からいうと、ここは音としてうたって楽しいくだりです。高校生のときは、「潮の満ち干に合わせてプレイする」というのは、きれいなイメージだと思いました。いまでも悪くないと思いますが、そんなことをいっても解釈にはなんの多足にもなりませんな。

これでなにかを書いたことになるのかどうか、いたって心もとないのですが、まあ、とにもかくにも、よろめきつつではあれ、最後までたどり着けたので、諒としてください。本日は歌詞を見るだけで精いっぱいだったので、音の検討は明日以降にさせていただきます。

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by songsf4s | 2008-05-11 23:30 | 風の歌