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The World Is Waiting for the Sunrise by Les Paul with Mary Ford
タイトル
The World Is Waiting for the Sunrise
アーティスト
Les Paul with Mary Ford
ライター
Eugene Lockhart, Ernest Seitz
収録アルバム
The Best of the Capitol Masters
リリース年
1951年
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クリスマス・ソング特集のおかげで大幅に増加したお客さんは、クリスマスがすぎるとともに激減すると予想したのですが、どういうわけかかなりの方がお残りになったようです。とくにこの土日はお客さんが多くて、大掃除のほうは大丈夫なのだろうか、なんて、よけいなお世話の心配までしてしまいます。

寄席だと、ここで「よほどうちにいられない事情がおありなんでしょうね」となるんですが、掛け取りもなくなり、年を越すの越せないのという騒ぎは絶えて久しく、そもそも、大部分のみなさんがご自宅からご覧になっているわけで、世の移り変わりの激しさを思ったりします。

さらに寄席の話をすると、今日あたりは『穴どろ』『尻餅』『言い訳座頭』『掛け取り』などの噺がかかる日で、季節にピッタリ添った世界をうらやましく思います。音楽のほうは、なかなか、そういうようにトントンとは話が運んでくれないのです。大晦日の曲はまだあるのですが、あまり気乗りのしないものばかりなので、ちょっとずらして、脇に逃げることにしました。

といっても、大昔、テレビを見ていたら、大晦日にこの曲を日本のジャズ・プレイヤーたちがやっていたので、だれしも考えることは同じなのでしょう。もちろん、初日の出を拝む習慣などアメリカにはないので、あちらではまちがっても大晦日の曲だなんて思われる気遣いだけはありませんが、曲解、拡大解釈は当ブログの得意とするところなので、勝手にadoptさせていただきます。

◆ ツグミと薔薇と日の出と ◆◆
ファースト・ヴァース。

Dear one, the world is waiting for the sunrise
Every rose is covered with dew
And while the world is waiting for the sunrise
And my heart is calling you

「世界は日の出を待っている、あらゆる薔薇が露を帯び、そして世界は日の出を待っているけれど、わたしの心はあなたを求めている」

The World Is Waiting for the Sunrise by Les Paul with Mary Ford_f0147840_016252.jpgなんだ、そういう歌詞かよ、てなもんですわ。そもそも、薔薇が露をおびるとなると、季節としては、いまごろではなく、初夏あたりでしょうか。でも、むりやりにこじつけるなら、薔薇もいろいろで、庚申薔薇なんか、四季咲きですから、いま咲いているものがあるはずです。

冒頭のDear oneは「愛しい人よ」とか「ねえ、あなた」といった呼びかけです。先代柳亭痴楽の物真似じゃあるまいし、と笑ってしまったので、略しました。

4ヴァース分の長い間奏をはさんで、セカンドおよびサード・ヴァースへ。

Dear one, the world is waiting for the sunrise
Every little rose bud is covered with dew
And my heart is calling for you
The thrush on high
His sleepy mate is calling
And my heart is calling you

「世界は日の出を待っている、あらゆる薔薇の蕾が露を帯び、そして世界は日の出を待っているけれど、わたしの心はあなたを求めている、空高くを飛ぶツグミ、つがいの相手が呼びかけている、そしてわたしの心はあなたを求める」

The World Is Waiting for the Sunrise by Les Paul with Mary Ford_f0147840_0171366.jpgセカンド・ヴァースはファーストとほとんど同じで、たんなるヴァリエーションに過ぎないから、3ヴァース構成ではなく、2ヴァース構成と見るべきなのかもしれません。

なんだって、突然、ツグミが飛び出すのかと思い、調べました。世界大百科によると「茂みに隠れて鳴くツグミは内気の象徴で、孤独な隠者にも擬せられる。しかし春告げ鳥のうちでももっとも美しい声をもち、そのさえずりによって人々に恋心を芽ばえさせるといわれる。なかでもウタツグミやクロウタドリは古代ローマ時代から愛玩され、また美味な食物とされた」のだそうです。

美味かどうかはさておき(現在は狩猟禁止!)、春告げ鳥とはまたありがたやの偶然、迎春にふさわしいですなあ。いや、サード・ヴァースの解釈としては、「そのさえずりによって人々に恋心を芽ばえさせるといわれる」という点が重要で、だから、突然、あらぬ方からこのヴァースに出現したのでしょう。『ナポレオン・ソロ』じゃあるまし、いきなり「スラッシュ」なんかが出てくるから、あわてましたよ。

いやあ、なにがウレシイといって、忙しいときの短い歌詞ほどありがたいものはありません。

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レス・ポールとギブソン・レス・ポール。ギブソン社の工房にて。

◆ アヴァンギャルドすれすれのヒット ◆◆
この曲はレス・ポールとメアリー・フォードのデュオにとって、How High the Moonにつづくヒットで、1951年にビルボード・チャートで2位までいったと資料にあります。曲が書かれたのは、さらにずっと昔のことで、1923年というから、関東大震災の年、大正12年ということになります。

レス・ポールの回想によると、ベニー・グッドマンをはじめ、ありとあらゆるアーティストがこの曲をやっていたけれど、ヒットはしなかったそうで、レス・ポールもちょっと手こずったようです。最初のヴァージョンはボツにし、手をつけてから一年後、五種類のアウトテイクを残して、やっと納得のいくヴァージョンができたといっています。

使用ギターも前作と同じ改造エピフォンで、全体のムードも近いものがあります。レス・ポールのプレイ自体は、How High the Moonほど凄味のあるものではありませんが、ディレイの効果を計算したテクニックは相変わらずで、これがほんとうに1951年かよ、と思うような「未来的」なサウンドとスタイルで、毎度ながら呆れます。当時のリスナーは、いったいなんだと思って聴いていたのかと思います。

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レス・ポールとメアリー・フォード、そして改造エピフォン

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さて、最後はあくび連発の半分眠った代物となってしまいましたが、どうにか2007年最後の記事を書き、12月のカレンダーを埋め尽くすことができました。これで正月休みに入らせていただきます、といいたいところですが、元旦にふさわしい曲もあるので、心ならずも、2008年最初の日から更新の予定です。ご用とお急ぎがなければ、あるいは、元旦早々「家にいられない」よんどころのないご事情のある方は、どうぞ当ブログにお立ち寄りあれ。それではみなさま、よいお年を。
by songsf4s | 2007-12-31 00:07 | その他