(Ghost) Riders in the Sky その1 by Vaughn Monroe
タイトル
(Ghost) Riders in the Sky
アーティスト
Vaughn Monroe
ライター
Stan Jones
収録アルバム
Sentimental Journey: Pop Vocal Classics Vol.2 1947-50
リリース年
1949年
他のヴァージョン
Bing Crosby, Peggy Lee, Burl Ives, Kay Starr, Dean Martin, Johnny Cash, Marty Robbins, Frankie Laine, the Ramrods, the Ventures, the Shadows, Baja Marimba Band, Dick Dale
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多少は盤を集めると、だれでも、イヤでも集まってしまう曲というのがあります。この(Ghost) Riders in the Skyもその典型で、わが家のHDDを検索した結果を見て、うんざりしました。こんなにもっているとは知りませんでした!

だれか有名な人を看板に立ててもいいのですが、もっとも代表的なヴァージョンとされるヴォーン・モンロー盤にしました。このヴァージョンは1949年のチャート・トッパーだそうです。歌詞もヴォーン・モンロー盤に依拠することにします。

◆ 幽霊牛と幽霊カウボーイ ◆◆
それではファースト・ヴァース。ゴースト・ストーリーなので、そのつもりでお読みください。

An old cowpoke went riding out one dark and windy day
Upon a ridge he rested as he went along his way
When all at once a mighty herd of red-eyed cows he saw
A'plowin' through the ragged skies and up a cloudy draw

f0147840_0115916.jpg「ある風の強い曇った日に、老いたるカウボーイが馬に乗って出かけた、途中、とある尾根で休んでいると、突然、赤い眼をした牛の群があらわれ、雲が折り重なる空の谷間を耕すように走っていった」

ragged skiesはよくわかりません。ぼろぼろの、ぼさぼさの、という意味から、厚みのある雲が折り重なっているのだろうと考えました。「雲の渓谷」は、そのもくもくと折り重なる雲のあわいをいっているのでしょう。腰を据えて検討していられるほど短い歌詞ではないので、先を急ぎます。

Yi-pi-yi-ay, Yi-pi-yi-o
Ghost riders in the sky

というのが、コーラスとみなしていいようです。イーピアイエイ、イーピアイオーというのは、カウボーイが牛を追う時のかけ声でしょう。子どものころは、EPIA、EPIOに聞こえ、なにかの略称を繰り返しているのだと思っていました。

最初のコーラスだけは、Ghost herd in the sky、「空を行く幽霊牛の群」と歌っているヴァージョンもいくつかあります。さきに幽霊カウボーイを出すのは、演出上、ぐあいがわるいという考えなのでしょう。

Their brands were still on fire and their hooves were made of steel
Their horns wuz black and shiny and their hot breaths he could feel
A bolt of fear went through him as they thundered through the sky
For he saw the riders comin' hard and he heard their mournful cry

f0147840_0142263.jpg「焼き印はまだ燃えていて、ひづめは鉄、角は黒光りし、熱い息がすぐそばで感じられるほどだった、牛の群が雷のように空を駆け抜けると、恐怖が電撃のように彼を撃った、カウボーイたちが彼のほうに向かって疾駆し、彼らの苦悶に満ちた叫び声が聞こえたのだ」

たしかに、ridersはここではじめて登場させるほうが効果的かもしれません。ファースト・コーラスでridersを登場させてしまうと、目撃しているカウボーイの恐怖が伝わらないでしょう。

どんどんいきます。サード・ヴァース。

Their faces gaunt, their eyes were blurred, and shirts all soaked with sweat
They're ridin' hard to catch that herd but they ain't caught them yet
They've got to ride forever in that range up in the sky
On horses snortin' fire, as they ride on, hear their cry

f0147840_0164884.jpg「カウボーイたちの顔はやつれ、目はどんよりし、シャツは汗でびしょびしょだった、彼らは群を捕まえようと必死に駆けていたが、まだ捕まえられずにいる、あのカウボーイたちは、空のあの放牧地で、永遠に群を追いつづけなければならないのだ、火のように息を荒げ、悲鳴を上げる馬の背にまたがって」

フォースにしてラスト・ヴァース。

As the riders loped on by him, he heard one call his name
"If you want to save your soul from hell a' ridin' on our range"
"Then cowboy change your ways today or with us you will ride"
"A-tryin' to catch the Devil's herd across these endless skies."

「カウボーイたちが彼のそばを駆け抜けようとした時、ひとりが彼の名を呼んだ、『俺たちの地獄の放牧地で馬を駆るようなことになりたくないなら、今日はべつの道を行くことだな、さもないと、俺たちといっしょに、あの悪魔の牛の群を捕まえようと、この果てしない空を永遠に駆けつづけることになるぞ』」

◆ 幽霊船と幽霊猟師 ◆◆
いったい、なにをやらかしたために、この幽霊カウボーイたちがこんな無間地獄に落とされたのかわかりませんが、さながらシジフォスの神話か、さまよえるオランダ人というところです。じっさい、ソングライターの頭には、このどちらかがあったのかもしれません。

しかし、もっと直接的な近縁性があるのは、北欧伝説のWild Hunt、「幽霊猟師」なのだそうです。H.R. Ellis Davidsonという先生の講演をもとにしたという記事によると、これはスカンディナヴィアの北からスイスにおよぶ地域につたわる民話だそうで、面白そうなので、ちょっと読んでみます。民話のつねで、さまざまなヴァリエーションがあるようですが、大筋では以下のような話だそうです。

f0147840_0361343.jpg夜の森で、大きな吠え声と叫び声が聞こえ、馬に乗った黒い人影が、犬を連れて、宙をものすごい勢いで駆け抜け、そのうしろから奇妙な魔物の群がついていく、そして、騎手は頭がないことがあるのだそうです。行列のなかの野獣のひづめと眼からは火が噴き、馬と犬は二本脚または三本脚のこともあり、知っている新仏も列のなかに混じっていることが多いのだとか。

このすさまじい群は、たまたま遭遇した人間にとっては非常に危険ですが、ときには褒美を与える場合もあるのだそうです。賢明な旅人は、この行列に出会ったら、うつぶせになって道に伏せ、運がよければ、冷たい犬の脚に踏みつけられるだけで、無事に切り抜けることができますが、愚かな者は、宙にさらわれ、家から遠く離れた場所におろされるか、ときには命を失うことになります。

◆ またしてもオーディン、ウータン ◆◆
この記事では、「ユール・ログ」、クリスマスに暖炉に入れる大きな薪が出てくるので、地域によっては、これはクリスマスの物語なのかもしれません。ご存知のように、クリスマスもまた怪談や妖精物語の季節です。

f0147840_0382110.jpgいっぽうで、騎手の首がないというところで、スリーピー・ホロウの首なし騎手の物語も連想します。この伝説があの物語に流れ込んでいるのかもしれません。

北欧伝説ですから、これが神話にむすびついていることもあり、この騎手がオーディンだとか、ウータンだとかに措定されることもあるのだとか。またしても、ワーグナーの歌劇にたどり着いてしまいました。

ワーグナーなんかにジャンプしてしまっては、とうてい他のヴァージョンの検討などするどころの騒ぎではありません。クライマクスは目睫の間に迫っているので、延長戦などしたくないのですが、これだけたくさんヴァージョンがあっては、どうにもなりません。不本意ながら、音楽的な検討は明日以降に持ち越しとさせていただきます。
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by songsf4s | 2007-10-21 23:51 | Evil Moonの歌