(ヤング・)ラスカルズ全曲完全アップ計画 その05 1964年の負けゲーム
 
年表的確認をする。ビートルズがはじめてアメリカを訪れたのは1964年2月、到着二日後にエド・サリヴァン・ショウに出演して、文字通り大騒動になった。

問題はそのあとのこと。それまではイギリスの音楽関係者には難攻不落に見えていた(突破できた例外はトーネイドーズのTelstar)アメリカ市場の見えない堤防が一気に決壊して、デイヴ・クラーク5、ハーマンズ・ハーミッツ、ピーター&ゴードン、アニマルズ、ジェリー&ザ・ペイスメイカーズ、サーチャーズ、スウィンギング・ブルージーンズ、マンフレッド・マン、ゾンビーズなどなど、イギリスのグループがアメリカ音楽市場を席巻し、ビルボード・チャートからアメリカのアーティストを追い出していった。

The Searchers - 07 Needles And Pins (HQ)


サーチャーズはこの曲でアメリカ市場に到着した。フィル・スペクターのアレンジャーとアシスタントの二人、ジャック・ニーチーとソニー・ボノが書き、ジャッキー・デシャノンが歌ったヒットのカヴァー。ジャッキー・デシャノン盤はジャック・ニーチーとソニー・ボノがブースに入ったのでやや暗めのサウンドになったが、サーチャーズ盤にはそういうくどさはなく、シンプルなバッキングとハーモニーの魅力でヒットしたと思う。

ソロ・シンガーが時代遅れになったこの時、イギリスの大攻勢に対抗できるメイジャー・グループは、アメリカにはビーチボーイズと4シーズンズぐらいしか見あたらなかった。

しかし、どちらも、英国勢の「セルフ・コンテインド・バンド」のニュアンスではなく、「楽器も弾かなくはないコーラス・グループ」で、むしろ、ビートルズの衝撃波がつくりだした真空になだれ込むようにして市場を席巻しはじめたモータウンの盤のほうに、時代の胎動がある。

◆ Farmer Johnという二重のブーメラン ◆◆
新しいグループも登場したが、サーフ&ドラッグ・ミュージックであったり(ホンデルズ、ロニー&ザ・デイトナズ、トラッシュメン)、ギター・インストであったり(ピラミッズ、リヴィエラズ、さらには既存のヴェンチャーズやマーケッツもヒットを生む)、両方とも大好きな当家としては、こういうことを云うのは心苦しいが、みな昨日のサウンドの余りもの、明日のアメリカ音楽の道を照らすものではなかった。

ほとんど唯一といっていい、アメリカ産セルフ・コンテインド・バンドによる64年のヒットは、プレミアーズのFarmer Johnである。ものすごく下手なところがウケたのではないかと思うほどひどいが!

The Premiers - Farmer John (HQ)


のちにLAチカーノ・ロックなるカテゴリーができ、メキシコ系が集まったプレミアーズは、チャン・ロメロと並んでその嚆矢にして代表とみなされるようになる(それにしても、耐え難いひどさだな!)。

評論家界隈ではプレミアーズのFarmer Johnはチカーノ・ロック文脈でしか語られていないようだが、それでいいのかな、という気がチラとする。いまここでは「アメリカの敗北とカムバック」というコンテクストで考えているので、そちらのアングルから見ると、やや異なった絵が浮かんでくる。

Farmer Johnはドン&デューイのやや古い曲で、プレミアーズがカヴァーする以前に、サーチャーズがすでにセルフ・コンテインド・バンド文脈に持ち込んでいる。これは無視できない。

63年の彼らのデビュー盤に収録され、ドイツではシングル・カットされたらしいが、それより、ビートルズ同様、サーチャーズは63年にすでにアメリカでLPがリリースされ、この曲も収録されている点が目を惹く(Meet The Searchersと、タイトルは英盤と同じだが、収録曲は大きく異なる。63年8月、Kappレコードがリリース)。

The Searchers - 04 Farmer John (stereo) (HQ)


むろん、63年の時点では「英国の侵略」はまだ起きていないし、したがって当然、ビートルズもサーチャーズもアメリカではヒットを生んではいない。しかし、われわれもそうだったが、アマチュア・バンドというのは、つねにめずらしいレパートリーを探している。他人に先んじて、「つぎの時代の音楽」をカヴァーしたいものなのだ。

ドン&デューイはプレミアーズにとっては地元のデュオ、そちらのヴァージョンを耳にする機会もしばしばあっただろう。でも、リリースから何年もたったこの曲をやるための最後の一押しは、サーチャーズ盤だった可能性を感じる。

Needles and Pinsがオリジナルのアクを抜いた透明な質感、すでにフォーク・ロック的ニュアンスを感じさせる手触りを獲得して、それがアメリカのグループを刺激したように、同じくアメリカの曲に異なったニュアンスを持たせたサーチャーズのFarmer Johnは、直接的ではないにせよ、なんらかの刺激になったのではないだろうか。

◆ 鏡の反対側から見てみれば ◆◆
ブリティッシュ・インヴェイジョンとはなんだったか? 「イギリス人が解釈したアメリカ音楽を聴いて、アメリカ人がアメリカ音楽について新しいパースペクティヴを得る体験」だった、という云い方ができる。

ここでいう「アメリカ音楽」とは、個々の楽曲と、サウンド、スタイルの総体のことである。ブリティッシュ・ビートによって、アメリカ人ははじめて自分たちの音楽が鏡に映った姿を見て、そこに新たな価値を見いだしたのだ。

この巨大で痛切な体験がなにも生まないはずがない。しかし、それには多少の時間がかかるだろう。とりあえず、ビートルズの衝撃はまだアメリカ音楽の相貌を変えていない、と1964年のビルボード・チャートは語っている。

The 4 Seasons - 06 Dawn (Go Away) (HQ)


4シーズンズの1964年最大のヒット。ドラムはゲーリー・チェスターやバディー・サルツマンが叩くことが多かったらしい。ボブ・クルーとボブ・ゴーディオの考え方なのか、4シーズンズはもともとビーチボーイズよりドラム・ビートの強い音作りをしていた。コーラス・グループというスタイルは古いが、とりあえずビートの強さでは英国勢の多くに負けていない。そもそも、きれいなメロディーの曲にハーモニーと強いドラム・ビートを付ける、という4シーズンズのヒット・レシピはブリティッシュ・ビートとまったく同じものだった。
付言:ビルボード・チャートはシングル盤のレーベルの記載を反映するのだが、この時のチャートでは、アーティスト名はThe 4 Seasonsである。フランキー・ヴァリーの冠がつくのはずっとあとのことなので、その点ははじめから問題ではないが、The Four Seasonsではないことに注意を促したい。自分がつねに4シーズンズと書くのはなぜかと思ったら、昔の書き方を守っていたからだったことに、チャートを読んでいて気づいた。

しかし、このままではじり貧だと危機感を持った会社も多かったにちがいない。なにしろ、人の気分、時代の好尚にいかに添うかで売上げが決まる業界で生きてきた人びとだ。多くは、ブリティッシュ・ビート・グループに拮抗しうるタレントを求めて動きまわっていただろう。

こんなに面倒な話になるとは、書いている当人も予想していなかった。65年の分もしっかりクリップを用意したのだが、それを使うのはラスカルズがこのコンテクストの中で浮上してくる次回に。


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The Searchers - The Very Best of The Searchers
Very Best of


The 4 Seasons - Dawn (Go Away)
Dawn


Nuggets: Original Artyfacts from the First Psychedelic Era: 1965-1968
Nuggets: Original Artyfacts from the Fir
(プレミアーズのFarmer John収録)
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by songsf4s | 2016-09-25 19:02 | 60年代