【ブリティッシュ・ビート根問い】サーチャーズ篇6 1963年の6
 
◆ Saints & Searchers ◆◆
B面3曲目の作者はSugar and Spiceと同じくフレッド・ナイティンゲール、すなわちトニー・ハッチなので、サーチャーズがオリジナルと考えて大丈夫だろう。Sugar and SpiceのB面としてリリースされた。AB面両方いただいて、プロデューサー冥利に尽きるというものだ!

クリップはフランス語版しかなく、これが笑っちゃいそうな、どうにもこうにも気分の出ないヴァージョンなので、まともな英語版をサンプルにした。

サンプル The Searchers - Saints and Searchers

しかし、この曲は純粋なオリジナルではなく、タイトルからもわかるように、そして、歌詞の冒頭がそのまま引き写しになっていることからわかるように、このスタンダード曲を下敷きにしている。

Fats Domino - When the Saints Go Marchin' In


クレジットを見なくても、アール・パーマーとたちどころにわかるプレイで、彼の発明になる「スツチャカ」リズムが楽しい。

あまたある「聖者が町にやってくる」のなかでも、とくにファッツ・ドミノ盤を貼り付けたのは恣意的な選択ではない。ドラムのクリス・カーティスがファッツ・ドミノのファンで、サーチャーズはこのヴァージョンを下敷きにしてSaint and Searchersをアレンジしたからだ。

◆ Cherry Stones ◆◆
この曲のタイトルは、本来はCherrystoneと一語で、しかも単数形なのだが、サーチャーズは転記の際に間違えたのか、どの盤でもCherry Stonesとしている。

タイトルが間違っているせいで同定を過ったのか、あるいはサーチャーズの盤のどれかがすでに誤記していて、それを引き写しただけなのか、Discogsはソングライター・クレジットを間違え、Cherry Stonesという曲の作者であるジョン・ジェロームという人をクレジットしている。こちらはジョージア・ギブスとボブ・クロスビー(ビングの兄)がオリジナルらしく、販売サイトで試聴したが、やはりぜんぜん違う曲だった。やれやれ!

しつこく繰り返すと、正しいタイトルはCherrystone、作者はドナルドとリチャードのアドリシ・ブラザーズ、オリジナルを歌ったのもこのデュオ。アドリシ・ブラザーズはこの曲をタイトルにしたアルバムを1959年にデルファイからリリースしている。

アドリシ・ブラザーズというと、アソシエイションがヒットさせたNever My Loveが有名だが、50年代にはまだそういう雰囲気ではなかったようだ。

The Searchers - Cherry Stones


The Addrisi Brothers - Cherrystone 1959


サーチャーズ盤はアドリシ兄弟盤のストレート・カヴァーで、手触りを変えずにやっている。明らかにエヴァリー・ブラザーズ・スタイルの模倣だが、エヴァリーズにあてて書かれたわけではないらしい。

「ロックンロール・ニュアンスを強めたエヴァリーズ」という雰囲気が気に入って、サーチャーズはこの曲をカヴァーしたのではないだろうか。

◆ All My Sorrows ◆◆
All My Sorrowsも由来がちょっとねじ曲がった曲だ。そのせいで記憶違いをし、一瞬、おおいに戸惑った。たくさんヴァージョンを知っているつもりだったのだが、HDDを検索したら、サーチャーズのほかには、キングトン・トリオとシャドウズのヴァージョンしか見つからなかったのだ。

どれをオリジナルとみなすかはさておき、サーチャーズがベースにしたのはキングストン・トリオのヴァージョンではないかと思う。

The Searchers - All My Sorrows


The Kington Trio - All My Sorrows


All My Sorrowsは、そもそもAll My Trialsから派生したもので、わたしがいっぱいもっているような気がしたのは、この二種類の曲の両方を合わせてのことだった。それで、検索結果に3ヴァージョンしか出てこず、ビックリしたのである。

捜索範囲をAll My Trialsにまで広げると、たちまちヴァージョンは増える。

PP&M - All My Trials


Joan Baez - All My Trials


歌詞も雰囲気も「漕げよマイケル」Michael Row the Boat Ashoreによく似ている。トラッドというのは、あっちで融合し、こっちで分離し、ということを繰り返しているのだろう。

The Highwaymen - Michael (Row the Boat Ashore)


こういうものの場合、誕生の経緯もよくわからないのだから、著作権もあいまいだったりして、誰を作者と呼べばいいのかよくわからない。

サーチャーズのAll My Sorrowsの作者はライムライターズのグレン・ヤーブロウとなっているが、ヤーブロウのヴァージョンも、ライムライターズのヴァージョンも見つからなかった。

イギリスで最初にこの曲をカヴァーしたのはつぎのグループだった模様。1961年リリースの彼らのデビュー・アルバムThe Shadowsに収録された。

The Shadows - All My Sorrows


シャドウズのAll My Sorrowsの場合は、デイヴ・ガード、ボブ・シェイン、ニック・レイノルズ、すなわち、キングストン・トリオの三人が作者としてクレジットされている。

こういうことだろう。

作者不明のトラッド曲は、アレンジないしはアダプトをした人間がソングライターとしてクレジットされる。だから、シャドウズの四人の名前だってかまわなかったのだが、彼らはそうとは考えず、キングトン・トリオの三人がほんとうの作者だと思ったのだろう。同様に、サーチャーズは著作権管理団体などで調べて、グレン・ヤーブロウが作者だと信じたと考えられる。

ということで、いろいろゴチャゴチャしたが、All My Sorrowsは、All My Trialsと同じ根から出てきた異なる像にすぎない。サーチャーズはここでもまた、「フォーク・ロックの始祖」への準備をしたわけで、その面において意味のあるカヴァーといえる。

いい曲なのだが、どのヴァージョンもくそ真面目で、へこたれてしまう。よって中和剤を投入する。各種ノヴェルティー・ソングでヒット・アフター・ヒット、頑固一徹、生涯一お馬鹿シンガーを貫いた偉人のヴァージョンを。

Ray Stevens - All My Trials


ワウ・ギターの間奏というアイディアがすんばらしいのことあるよ!

◆ Hungry for Love ◆◆
サーチャーズのセカンド・アルバム最後の曲は、イギリスのソングライター、ゴードン・ミルズの作で、オリジナルは確定できなかったものの、サーチャーズのヴァージョンと同年にシングルとしてリリースされた、ジョニー・キッド&ザ・パイレーツ盤がオリジナルである可能性が高い。

The Searchers - Hungry for Love


Johnny Kidd & The Pirates - Hungry for Love


またしても一聴明らかなことを書くが、対照的なスタイルのバンドが、それぞれの持ち味を出したヴァージョンが並んだ。サーチャーズはあくまでも軽快に、パイレーツはベースを強調し、サーチャーズより重いサウンドにしている。

まだ小学生だったせいかもしれないが、当時、ジョニー・キッド&ザ・パイレーツなんてバンドは、盤を見たこともなければ、ラジオで流れたのを聴いたこともなく、名前すら知らなかった。

日本では、ビートルズ以前は、イギリス音楽というのはクリフ・リチャードに指折って、あとは誰がいるの? ぐらいの感じだった。ジョニー・キッド&ザ・パイレーツは50年代終わりから活動していたせいで、「イギリスの侵略」後も、日本では顧みられなかったのかもしれない。

しかし、そういうキャリアだから、このシリーズの対象となる資格は十分にもっている。いずれ詳しく検討することになると思う。

以上でサーチャーズのセカンド・アルバム、Sugar and Spiceを完了し、次回からサード・アルバムに入る。


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The Best of Johnny Kidd & The Pirates
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by songsf4s | 2014-02-21 23:13 | ブリティシュ・インヴェイジョン