トッド・ラングレンのひとり2パート・ハーモニー その1
 
つい先日の「大滝詠一、フィル・エヴァリー、そして2パート・ハーモニー その15」という記事で、大滝詠一の変則ハーモニーには、同じころに聴いたトッド・ラングレンのハーモニーと共通のものを感じると書いた。

その時は、ほかに書くべきことがあって、トッド・ラングレンのことはあっさり片づけてしまったが、あれは長年気になっていた曲で、簡単に通り過ぎるのは本意ではなかった。今回は改めて、トッドのハーモニーを検討してみたい。

前回の「ボビー・ヴィーのひとり2パート・ハーモニー」のように、一回で、などと思ったのだが、ボビー・ヴィーだって簡単ではなかったわけで、ヴィーの倍はあろうかというトッド・ラングレンの盤は聴くだけでも手間がかかり、今日はコピーまではたどりつけなかった。

したがって、今回は助走、トッドのマルチトラッキングによるハーモニーのサンプルをすこし並べるだけに留める。

まずはソロ・デビュー盤、1970年のRuntから、やや長い組曲を。

Todd Rundgren - Baby Let's Swing/The Last Thing You Said/Don't Tie My Hands


デビュー盤の多くは、トニー&ハントのセイルズ兄弟のベースとドラム、あとはほとんどすべてトッド・ラングレンのプレイと歌というパーソネルで、Baby Let's Swingもこのトリオでやっている。

なにはともあれ、とりあえず、よくまあ重ねまくったな、である。楽器だけでも面倒なのに、ヴォーカルのオーヴァーダブも数限りなく、その根性だけでも十分に頭が下がる。

最初のBaby Let's Swingは、たとえば短いsuch A LONG LONG TIMEのラインが2パートになっているが、そういうのは一瞬にすぎない。いや、好ましいヴォーカル・アレンジで、さすがはトッド、栴檀は双葉より芳しと思う。

なお、歌詞に登場するローラとは、ローラ・ニーロのことだとか。どうでもいいといえば、どうでもいいのだが。

2曲目のThe Last Thing You Saidは、概ね、リード+2声のバックグラウンドという、ビートルズをはじめ、ロック・グループにはよくあるパターンの多重録音版である。2パートはあるが、デュオではない。いや、その部分のハーモニーも好きだが。

Everyone's heard of how you left me again
Everyone's heard about my so-called friend
They tell me I'm a fool, but I don't hear a word
'Cause the last thing you said was the last thing I heard

とくに上記4行のあたりのフォールセットによるバックグラウンド・ヴォーカルには、トッドのハーモニーの魅力がよく出ている。

最後のDon't Tie My Handsはアップテンポのロッカーで、構成は少し簡略化されるが、この曲自体が複数の曲の合成のような組み立てで、一筋縄ではいかない。

おおむねリード・パートは左チャンネルに配された2パート・ハーモニーなのだが、1声のみのバックグラウンドが加えられたりしていて、「どうだ、こういう3声の組み方はめずらしいだろ」とトッドの声が聞こえてきそうだ。

No one I wanted more
I wanted to love, to be mine
Now it turns out I have to say goodbye
And I don't see why

とくに上記のクワイアット・パートの(たぶん)2声、3声、4声と変化していくハーモニーはすばらしい。

聴けば聴くほど、ブライアン・ウィルソンのGood Vibrationsのように奥の深い構成で、手に負えない感じがしてくる。この曲だけで終わるわけにはいかないので、浅いところで切り上げ、つぎの曲へ。

こんどは72年のダブル・アルバム、Something/Anything?からカットされた、トッドの数少ないシングル・ヒットで、ラジオから流れてきた時はキャロル・キングかと思った。すべての楽器とヴォーカルがトッド自身。

Todd Rundgren - I Saw the Light


2パート、1+2、2+2などをさまざまな組み合わせを自在に織り交ぜた、これまたみごとなヴォーカル・アレンジ。

なんとまあ、よくこれだけのものを組み立てて、ひとりで録音していったものだ、と感心するが、あるいは、ひとりだからこそ、自由に組み立てられたのかもしれない。

つぎはアルバムFaithfulのオリジナル・サイドから。この曲は以前、「ギター・オン・ギター」シリーズのひとつとして、「ギター・オン・ギター5 トッド・ラングレンのLove of the Common Man」という記事で、ギター・プレイについては検討した。

Todd Rundgren - Love of the Common Man


ひとりで数本重ねていったギターのアンサンブルもみごとだが、それに呼応するように、例によってヴォーカルもきっちり重ねて、間然とするところがない。

ほかの曲と同じように、この曲もヴォーカルは何パートとはいいにくく、さまざまな組み合わせが使われているが、たとえば、We all know what comes aroundの部分のように、2パートもあって、おお、やっているな、とニッコリする。

この曲は、可能なら、そして、それがふさわしいなら、つねにハーモニックな構造を厚くしたいという、トッド・ラングレンの根源的衝動が噴出したみたいだと、愉快な気持になる。

以上、たった三曲しかあげられなかったが、次回は、トッド・ラングレンの奇妙なハーモニック・センスがもっとも濃厚にあらわれた曲を、コピーを交えて分析したい。


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Todd Rundgren
RuntおよびRunt/Ballad of Todd Rundgren
Runt/Ballad of Todd Rundgren

Something/Anything
Something/Anything

Faithful
Faithful

RuntおよびFaithfulを収録
Todd Rundgren (Original Album Classics)
Todd Rundgren (Original Album Classics)
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by songsf4s | 2014-01-30 23:01 | ハーモニー