ドナルド・ダック・ダン逝く
 
すでに日本のメディアでも報じられたように、MG'sのダック・ダンが、ツアーで訪れていた東京で急死しました。享年七十。死因は発表されたのか否かすら知りません。取り立てて重大な疾患はなかったということなので、心臓か脳でしょうか。

毎度のことながら、スタジオ・プレイヤーの代表作を選ぶのは七転八倒します。数が多すぎるし、そもそもなにか大きな美点がなければ名を残すようなことはないわけで、並べて聴いてみると、すばらしいトラックが目白押しで、選択に苦慮します。

深く考えずに、60年代のスタックス・レコード・ベスト・ヒット集縮小版のようなものになったら、それはそれでしかたない、と腹をくくって、ノンシャランにトラックを並べることにします。

ダック・ダンはMG'sのベースだった、そして、MG'sといえばGreen Onionである、と反射的にお考えになるでしょうが、彼がMG'sに加わったのは1965年なので、あの曲ではプレイしていません。

ダック・ダンのディスコグラフィーに登場する最初の大ヒットは、スタックスではなく、アトランティックからのリリースでした。アトランティックのアーティストがメンフィスに来て録音したのです。

Wilson Pickett - In the Midnight Hour


画面に映っているのはちがうバンドですが、音はスタジオ録音、MG'sとマーキーズのプレイです。

ウィルソン・ピケットのキャリア全体を見渡すと、スタックスではなく、アメリカンやフェイムで録音したトラックのほうがはるかに多く(ドゥエイン・オールマンがプレイしたクライテリアのものもある)、MG'sとやったのは一握りですが、わたしはやはり、ピケットというと、この曲と634-5789 (Soulville USA)を思い浮かべます。ともにMG'sとマーキーズのバッキングで、どちらの曲も作者のひとりはスティーヴ・クロッパーです。

不思議なことに、Green Onionの大ヒットがあったにもかかわらず、MG'sはその後、自己名義のアルバムを長いあいだリリースせず、スタックスのハウス・バンドに徹します。

スタインバーグからダック・ダンに交代した65年からMG'sのほんとうの活躍がはじまるのですが、そのセカンド・アルバムのソングライター・クレジットのほとんどすべてにスタインバーグの名前があるので、ダック・ダンのトラックは1、2曲なのだろうと思います。

そのつぎのアルバム、And Nowはあまり面白くないのでとばすと、つぎはクリスマス・アルバムで、ちょっとメイン・ラインからはずれてしまいますが、このアルバムでは、ダック・ダンのプレイとしても、この曲が印象に残っています。

Booker T. & the MG's - We Wish You A Merry Christmas


この野太さこそがまさにダック・ダン!

In the Midnight Hourに勝るほど無数のカヴァーがあるこのスタンダードもダック・ダンのプレイでした。

Eddie Floyd - Knock On Wood


スタックス・レコードを代表するシンガーだったオーティス・レディングもMG'sと無数のレコーディングをしています。のちにMG'sのヒット曲、Time Is Tightに化けることになるこの曲を。

Otis Redding - I Can't Turn You Loose


同じくスタックスを代表するアーティストですが、子どものころ、オーティスよりずっと熱心に聴いたのは、このデュオでした。

Sam & Dave - Soul Man


この曲のベースは好きでした。いまでも、ダック・ダンといえば、まず思い浮かべる曲のひとつです。

今度はライヴ、それもバラッドを。中学の時に買ったサム&デイヴのLPに収録されていて、よく聴いた曲です。MG'sはスタックスの屋台骨を支えていたので、60年代には、よほど大事なツアーでないと、よそには行かなかったそうです。

Sam & Dave - When Something Is Wrong With My Baby


女性シンガーがまだゼロだったのに気づいたので、オーティス・レディングとのデュエットもやったこの人の代表作を。

Carla Thomas - B-A-B-Y


つぎはストレートなブルーズを。アルバート・キングはスタックスと契約していた時期があり、このときに代表作となるものをリリースしています。プロデューサーはたぶんアル・ジャクソン。むろん、ストゥールに坐ったのも彼でしょう。

Albert King - Born Under a Bad Sign


あまりブルーズは聴かない人間なのですが、このBorn Under a Bad Signをタイトル・トラックにしたLPはいいアルバムだと思います。

こんどは白人デュオとのスタジオ・ワーク。彼らにとってはこれがデビュー盤でした。

Delaney & Bonnie - It's Been a Long Time Coming


バッキングはこのあたりで切り上げ、以下、MG'sのトラックを少し並べてみることにします。

Green Onionはもちろん子どものときに知っていましたが、リアルタイムで記憶のあるMG'sのチャート・ヒットというと、この曲あたりが最初ではなかったかと思います。ラスカルズのビルボード・チャート・トッパーのカヴァー。

Booker T. & The MG's - Groovin'


MG'sがいかにもMG'sらしくなり、ヒットを連発するのはこのあたりからだったのではないでしょうか。60年代終わりから70年代はじめが、わたしにとっては「MG'sの季節」でした。

MG'sとしても、スタックスとしてもめずらしい、白人ポップ的な、明るくノーテンキなトラックを。

Booker T & The MG's - Be Young, Be Foolish, Be Happy


このBe Young, Be Foolish, Be Happyが収録されたSoul LimboはMG'sの代表作と見ています。つぎは、このアルバムからシングル・カットされた、クリント・イーストウッド主演のウェスタン『奴らを高く吊るせ』のテーマ曲。OSTではなく、このMG'sのカヴァーのほうがヒットしました。

サンプル Booker T. & the MG's - Hang 'Em High

奴らを高く吊るせの翌年、1969年にはヒットが二つありますが、まずはサイモン&ガーファンクルのカヴァー。ダック・ダンとアル・ジャクソンのイントロがむちゃくちゃにかっこよくて、子どものときに大好きでした。

Booker T. & The MG's - Mrs. Robinson


ポール・マッカートニーはダック・ダンのファンで、66年だったか、もうアビー・ロードの薄い音は嫌だといって、スタックスのスタジオで録音することにし、予約したことがあるそうです。

驚いた会社は、ポールのベースの録音スタイルをドラスティックに変更し、ジェフ・エメリックが卓に坐ったPaperback Writerが誕生したのだという伝説もあるほどです(ビートルズがスタックスのスタジオを予約した書類が存在するそうだが、まだそのコピーというのを見ていない)。

MG'sのほうは、そのへんのことをよくわかっていなかったようですが、ダック・ダンはビートルズが好きで、ビートルズ・カヴァーで埋め尽くされたMG'sのアルバム、McLemore Avenue誕生の原動力となったようです。

メドレーばかりでみな長くて困るのですが、短いクリップがあったので、それをおきます。McLemore Avenueから。

Booker T. & the MGs - You Never Give Me Your Money


すこし時間をさかのぼって、Green Onionと並ぶMG'sの代表作を。何度も書いていますが、FENの夕方の番組、Kantoh Sceneというものがあって、70年代の一時期、ずっとこの曲をエンディング・テーマにしていたので、毎日のように聴いていました。17:58ごろにかかったので、これを聴くと、いまでもなんとなく空腹の幻想のようなものを感じます。呵々。

Booker T. & The MG's - Time Is Tight (45 ver.)


もう一曲、やはりKantoh Sceneのエンディング・テーマに使われたトラックを。

Booker T. & The MG's - Hip Hug-Her


こういうサウンドがいちばんダック・ダンらしいと感じます。

70年代なかば以降、ドナルド・ダック・ダンの仕事はスタックスの外へと広がっていきますが、ブルーズ・ブラザーズをはじめとするそうしたトラック群は、60年代育ちには、やはり「余生」に感じられます。いや、思い立って、そういうトラックを集めて記事を書くかも知れませんが、本日のところはここまで。

すでに75年に没したアル・ジャクソンとともに、ドナルド・ダック・ダンに安らかな眠りを。


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by songsf4s | 2012-05-15 23:55 | 60年代