回想のビリー・ストレンジ、その音楽と時代 その10 ブルース・ジョンストン、アヴァランチーズ
 
(2012年3月25日午前10時追記 サンプルのリンクの誤りを修正しました。平伏陳謝)

どうも落ち着きと根気がなく、長い文章を書く集中力もないため、このところ更新が滞っています。お客さんの半分ぐらいは検索でいらっしゃるのだろうと思いますが、定期的に、なにか記事があがっているかとチェックされている方には申し訳ないことと思っています。

短い思いつきなら書けるので、ツイッターのほうは活溌に利用していて、フォローなさっている方にはご迷惑なことだろうと恐縮しています。むろん、ツイートに反応して、いろいろ教えてくださる方もたくさんいらっしゃるのですがね。

「ついろぐ」の統計によると、わたしのコミュニケーション率は30.1パーセントだそうです。10回に3回は、独り言ではなく、どなたかと対話するためのツイートをしているということです。これが多いのか少ないのかは微妙ですが、まあ、少ないほうではないだろうと思います。ふだんはちがいますが、ウェブ上では社交的なほうですから。

さて、ビリー・ストレンジ・ストーリーです。

1963年、ビリー・ストレンジは、エルヴィス・プレスリーの二枚のサウンドトラック盤でプレイしています。これを取り上げようと思ったのが間違いのはじまりで、気分的に落ち着かないときに、トラック・バイ・トラック・クレジットのない盤から、ビリー・ストレンジのプレイを拾い出すという厄介なことをやろうとして、更新不能に陥ってしまいました。

よって、エルヴィス・プレスリーとビリー・ザ・ボスの関わりについては、もうすこしあとで検討することにして、It Happened at the World's FairとFun in Acapulcoという二枚の盤はスキップします。

かわりに、今回は、ほとんど頭を使う必要のない、聴いた瞬間、たちどころにわかるものを並べることにします。まずは、ブルース・ジョンストンのソロ、Surfin' Around the Worldから。

以前のサーフ・ミュージック特集でも貼りつけたクリップです。エルヴィスとアン=マーグレットの絵は曲には無関係です(ただし、この映画のOSTでビリー・ストレンジはプレイした)。

Bruce Johnston - Biarritz


この右チャンネルのギターのプレイ・スタイルとサウンドをよくご記憶くだされたし。あとで、なるほどと思わせる予定なり。なんて、そういうことをいっちゃあ、なるほどなんて思わなくなるでしょうが!

どうであれ、こういうのは大好物。盛り上がるサウンド、盛り上がるプレイです。

書き忘れましたが、ドラムはもちろんハル・ブレインです。まあ、当家のお客様方にはいうまでもないことでしょうが。

ブルース・ジョンストンはこの時期、キーボード・プレイヤーでもあったので、ファズのかかったフェンダー・ピアノが彼のプレイだと考えられます。ハル・ブレインはHal Blaine and the Wrecking Crewのなかで、ブルースのプレイに讃辞を呈しています。

つぎもワイルドなものを。

Bruce Johnston - Jersey Channel Islands Part 7


これを聴くと、畏友オオノさんの疑問を思いだします。キャピトル移籍後のディック・デイルって、スタジオでプレイしたの? という恐い疑問です。まあ、あの程度のプレイなら、当時のハリウッドのエースには楽なものだったでしょう。

このブルース・ジョンストンのSurfin' 'Round the Worldにディック・デイルがクレジットされていたら、このトラックがデイルのプレイね、と深く考えずに判断してしまうでしょう。逆にいえば、ビリー・ストレンジなら、ディック・デイル・スタイルぐらい、簡単にやってみせるということです。いや、疑問は疑問のままにしておきますが!

一曲ぐらいはバラッドを。ヴォリューム・コントロールによるミュートを使ったプレイです。

Bruce Johnston - Maksha at Midnight


このアルバムは大好きなので、どの曲もみないいのですが、全部並べるのもなんなので、つぎで終わりにします。こんどはファズです。ビリー・ザ・ボスは手製のファズ・ボックスを使っていたそうです。

Bruce Johnston - Malibu


ビリー・ストレンジという人は、タイムがよくて突っ込まないせいもあって、あのころのハリウッドのギター・エースのなかでは、もっとも大人っぽいプレイができたと思います。

しかし、トミー・テデスコやグレン・キャンベルのような豪快なプレイができなかったかといえば、そんなことはありません。このアルバムは、繊細なビリー・ストレンジではなく、ワイルドなビリー・ストレンジがたっぷり聴けるという意味でも際だったものでした。

アヴァランチーズ(あれこれ検討の結果、表記を変更しました>旧知の諸兄。近年はこちらが多数派になったという判断で)というスタジオ・プロジェクトの唯一のアルバム、Ski Surfin'のリリースは1964年だと思うのですが、ビリー・ストレンジ・ディスコグラフィーでは、1963年とされています。録音は63年だったのでしょう。

これまた大好きなアルバム、「史上最高のギター・インスト・アルバム」とまでいっているので、いままでにも何度も貼りつけたのですが、やはり、ビリー・ストレンジ特集となれば、再登場させないわけにはいきません。

ビリー・ストレンジ&トミー・テデスコ・オン・ギター、ハル・ブレイン・オン・ドラムズ、アル・ディローリー・オン・キーボーズ、デイヴィッド・ゲイツ・オン・ベース、ウェイン・バーディック・オン・ペダルスティール、ディ・アヴァランチーズ!

The Avalanches - Ski Surfin'


こういうのがいちばん盛り上がります。ギターもドラムも上手くて、しかも、なにも遠慮せずに、豪快にすっ飛ばしていくのだから、うれしくなります。

ブルース・ジョンストンのBiarrizのところで、このギターのサウンドとスタイルを記憶してほしいと書いたのは、アヴァランチーズとの類似を感じていただきたいからです。同じトーン、同じスタイルだとおわかりでしょう。

何度も書きましたが、わたしはビリー・ストレンジ御大に、この曲ではどちらがどちらをプレイしたのですか、と質問しました。もう手元にLPがないとおっしゃるので、オオノさんがちゃんとCDまで送ったのですよ。しかし、あのころはトミーとはしじゅうリックを交換していたから、いまでは自分でもどちらか判断できない、とのことでした。

まあ、似てますよ、たしかに。先にいくのがビリー・ストレンジ、あとからいくのがトミー・テデスコと、かりに判断し、ずっとそう考えてきました。しかし、いま、ボスの遺言書が出てきて、Ski Surfin'では、先にトミーがいき、俺は中間部をプレイした、と書かれていたとしたら、なんだ、そうだったのか、と思う程度、それはないでしょ、思い違いざんしょ、などと食い下がったりはしません。どちらがどちらであっても驚かないほどよく似ています。

ユーチューブには、あとは、三曲をまとめた面倒なクリップがあるだけなので、ここからはサンプルにします。

サンプル The Avalanches "Along the Trail with You"

左チャンネルで豪快にコードをストロークしているのがトミー・テデスコ、右チャンネルのギターがビリー・ストレンジと考えていますが、逆だという証拠がでてきても、この場合も、なんだ、そうだったのか、といってしまうでしょう。呵呵。ミスはありますが、やはりおおいに魅力的なギター・プレイです。

もう一曲、こんどはギターというよりベース・ギター、ダンエレクトロ6弦ベース(ダノ)のプレイです。

サンプル The Avalanches "Winter Evening Nocturne"

日本をはじめ、一部の国では、エレクトリック・ベースのことを「ベース・ギター」ということがあります。「ギターのような形をしたベース」ということでしょう。

しかし、キャロル・ケイさんによると、ハリウッドのユニオンの規定では、ベース・ギターとは書かず、たんに「ベース」と書くそうです。彼女に云わせると、「ベース・ギター」というのは、ダノのことなのだそうです。

ダノはベースとして使われるわけではなく、「1オクターヴ低くチューニングするギター」として、ギターのヴァリエーションとして利用されるのだから、というのです。テナー・ギターと同じような意味で、「ベース・ギター」なのだというわけです。

この曲でも、ビリー・ストレンジはダノを、通常より低い音が出せるギターとして使っています。ベースとしては使っていません。

ある人が、エリック・クラプトンのアルバムを、誰のプレイであるとも告げずに、ジョー・パスに聴かせたのだそうです。パスは「昔、トミーたちがこういうのをよくやっていたじゃないか」といったのだとか。トミーとはもちろんトミー・テデスコです。

わたしは子どもだったので、いわゆるギター・ヒーローの時代がやってきたときは、おおいに興奮しました。しかし、この1963年に録音されたビリー・ストレンジのプレイを聴くと、ものを知らないというのは怖ろしい、トーンといい、プレイ・スタイルといい、あの程度のことなら、ビリーやトミーは軽々と、ただの「日常業務」としてやっていたじゃないか、と自分の馬鹿さ加減を嗤いました。

ビリー・ストレンジ御大に、あなたはお忘れかもしれないが、アヴァランチーズというプロジェクトがあり、あなたの名前がクレジットされている、というようなニュアンスで、質問しました。

御大は、忘れるものか、よく憶えている、あれは楽しかった、という返信を寄こされた、ということを付け加えて本日はおしまい。こういう楽しいアルバムを、三時間のセッションを三回やるだけで、軽々と完成させてしまった昔の大エースたちに心から尊敬の念が湧きます。


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by songsf4s | 2012-03-23 23:56 | 60年代