「My friend Billy Strange-san」──回想のビリー・ストレンジ、その音楽と時代
 
現地時間の二月二十二日朝、ビリー・ストレンジさんが亡くなりました。ほかのミュージシャンとは異なり、メールを通じて親しく接した人なので、どうも勝手が違うのですが、複雑な気分はさておき、やはり、なにかを書く義務があると強く感じます。

いろいろ考えたのですが、追悼記事のかたちは今回だけにして、さらに数回、ハル・ブレインやジム・ゴードンのように、好きなプレイヤーの特集という気分で、ビリー・ストレンジが遺した音楽を聴いていこうと思います。

まずはサニー・サザン・カリフォルニアを代表するギタリストにふさわしい、明るくにぎやかなプレイから。ビリー・ストレンジ・オン・リード、ドラムはもちろんハル・ブレイン。

The Beach Boys - Surfin' USA


ライノのCowabunga! The Surf Boxのパーソネルでは、この曲のリード・ギターはカール・ウィルソンになっていて、そんな馬鹿なことがあるか、と腹を立てましたが、オフィシャル・ビリー・ストレンジ・サイトのディスコグラフィーで、ボス自身が自分のプレイであるとコンファームしています。

この追悼特集では推定は避け、できるだけ上記ディスコグラフィーにある曲を聴くことにしますが、そもそも、ビリー・ストレンジさんに連絡をとるきっかけになったのは、ある推測の結果でした。そのきっかけになったのは一曲ではないのですが、たとえば、これ。

The Ventures - Lucille


1998年から翌年にかけて、Add More Musicにつどった仲間たちと、ヴェンチャーズのほんとうのリード・ギターはだれだったのだろうということを話し合いました。

最初はキャロル・ケイさんの示唆から、トミー・テデスコの線で考えていたのですが、このあたりのトラックをしつこく聴いているうちに、ビリー・ストレンジに考えがおよびました。

当初は、そういう当てずっぽうを云って遊んでいただけだったのですが、だんだんシリアス・ゲームになってしまい、ついには「オオノ隊長」がビリー・ストレンジ氏のメール・アドレスを発見し、わたしが代表としてメールを送りました。

初期ヴェンチャーズのリード・ギターはビリー・ストレンジではないかという洞察に至ったのは、いろいろなプレイを徹底的に聴いた結果だったのですが、つぎの曲も、これはあの人ではないか、と思わせるものでした。

The Ventures - Sukiyaki


これが、ビリー・ストレンジのどの曲と似ていると思ったか、特定のトラックをあげるのはむずかしいのですが、たとえば、このスタンダード。前半はスパニッシュ・ギターですが、後半、フェンダーでのプレイが登場します。

Billy Strange - Maria Elena


もうひとつ、ビリー・ストレンジらしいバラッドのプレイを。ドラムはハル・ブレイン。みごとなアコースティック・リズム・ギターはだれでしょうか。グレン・キャンベルかトミー・テデスコかもしれません。

Billy Strange - Deep Purple


機材は異なりますが、こういうトラックをしつこく聴いていると、ヴェンチャーズのギタリストが指を動かす像が頭のなかで見えてきたのです。またヴェンチャーズにいきます。

The Ventures - Lonely Heart


かなり確信がもてたときに、ビリー・ストレンジさんのアドレスがわかったので、勇を鼓して、あなたはヴェンチャーズのセッションでプレイしませんでしたか、というメールを送りました。

そのあたりのいきさつは、『急がば廻れ99' アメリカン・ポップ・ミュージックの隠された真実』という(ボロクソにけなされたw)本に書いたので、ご興味のある方は図書館などでどうぞ。

もうこの件でわたしに噛みつく人もいなくなったので、ヴェンチャーズ・ファンも、あきらめて、ライヴだけを聴くようになったのだと考えています。スタジオとライヴは違うバンドだということさえわかっていただければ、わたしのほうはそれで文句はありません。どちらがうまいか、なんていうのは、古来、蓼食う虫も好きずきという諺があるくらいで、お好みですから(呵呵)。

なにかビリー・ストレンジさんが動いているクリップを、と探していたら、灯台もと暗し、オフィシャル・サイトで息子さんがこのクリップを紹介していました。めずらしくもモズライトを持っていますが、音はスタジオのものなので、フェンダーだろうと思います。

Billy Strange - Satisfaction


もうひとつ、アコースティック12弦ですが、こんどはほんとうにプレイしています。

Nancy Sinatra and Billy Strange - Bang Bang


だれしも生老病死は免れず、自分自身だっていつ死ぬかはわからないので、軽々に「驚いた」などという言葉を使ってはいけないとは思うのですが、しかし、今日知ったばかりで、まだ考えはまとまりません。

二度目の返信だったか、Mr. Strangeは勘弁してくれ、ビリーかウィリアムにしてほしいといわれ、では、日本の習慣にしたがって、Billy-sanと呼ばせていただくと書き送りました。

つぎの返信の冒頭は、My friend Yuji-sanでした。Yujiはわたしのファースト・ネーム。スタジオ・プレイヤーはプロフェッショナルなので、お高くとまったりはしないものですが、ビリー・ストレンジさんもその例に漏れず、わたしを歓迎してくれました。

小学校で日本語のクラスをとったので、まだ君が代の断片をかすかに覚えていると、アルファベットで君が代の歌詞の一部を書き送ってくださったのにも、ちょっと驚きました。たしか、pretty closeだと返事を差し上げたと思います。

いや、センティメンタルになることがこの稿の目的ではありません。ビリー・ストレンジという人が遺した音楽を回顧することに徹したいと考えています。次回からは、ふつうのビリー・ストレンジ特集にする予定です。


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by songsf4s | 2012-02-23 23:58 | 60年代