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追悼 エタ・ジェイムズ 前編
 
昨日は、ジョニー・オーティス追悼を書いて、眠って起きたら、今朝は、そのジョニー・オーティスの後押しでデビューしたエタ・ジェイムズの訃報を読むことになりました。

以前から具合が悪いと伝えられていたので、大意外事というわけではないのですが、タイミングがタイミングなので、先日、玉木宏樹氏と別宮貞雄氏の訃報が重なったときと同様、こういうこともあるのだな、と慨嘆しました。

追悼記事ばかりで恐縮ですが、やはり、昨日の今日なので、エタ・ジェイムズのほうも書かないと寝覚めが悪いような気がします。

主として、以下の三種のアルバムから曲を選ぶことにします。初期の録音を網羅したThe Complete Modern & Kent Recordings、チェス時代の編集盤The Chess Box、同じくチェス時代のアルバム、Tell Mama: The Complete Muscle Shoals Sessions。

昨日はジョニー・オーティスの記事でエタ・ジェイムズの初期の代表作であるWallflower (Roll with Me Henry)のクリップは貼りつけたので、それは略して、初期の録音から好みのものを。

Etta James - Good Rockin' Daddy


Wallflower同様、いかにも初期R&Bらしい性的暗喩(というか、直喩といいたくなるが!)を用いた曲です。

ひとつ、昨日の記事で記憶違いがありました。Wallflower (Roll with Me Henry)のほうが、ハンク・バラード(とジョニー・オーティスが書いた)のWork With Me, Annieのアンサー・ソングだったということです。昨日の記事では逆のように書いてしまいました。陳謝。

ジョニー・オーティスにスカウトされたとき、エタ・ジェイムズはまだ14歳だったそうです。歌を聴くかぎり、とてもそうは思えませんが、まあ、シャンテルズのアーリーン・スミスなども、とうてい年齢相応の歌には思えず、そういうタイプのシンガーもいる、というだけのことでしょう。

1960年、エタ・ジェイムズはチェスと契約します。うまみのある白人市場を強く意識したのか、レナード・チェスはエタ・ジェイムズをバラッド・シンガーとして扱います。そういうのはまったく趣味ではないので、チェス初期は丸ごとオミットして、すこし時間を飛ばします。

シュガー・パイ・デサントとの強力なデュオによる、1965年の疑似モータウン・サウンド。

Etta James & Sugar Pie DeSanto - Do I Make Myself Clear?


この時期のエタ・ジェイムズはどこで録音していたのでしょうか。チェスだから、ふつうに考えればシカゴということになりますが、彼女はLA生まれ、デビューもLAのジョニー・オーティスによって、ですから、ちょっと悩ましいところです。なんにしても、けっこうなグルーヴで、これならマッスル・ショールズにいくまでもなかったのに、と思わせます。

フェイク・モータウンのつぎは、フェイク・スタックスといってみましょう。タイトルからわかるように、ウィルソン・ピケットの634-5789のアンサー・ソングです。

Etta James - 842-3089 (Call My Name)


音を聴いても、やはりウィルソン・ピケットのヒットを下敷きにしているのは明白です。せっかくだから、ウィルソン・ピケットの本歌のほうも貼りつけます。ライターはエディー・フロイドとスティーヴ・クロッパー。

Wilson Pickett - 634-5789 (Soulsville, USA)


このあと、エタ・ジェイムズはマッスル・ショールズで録音することになります。つまり、ロジャー・ホーキンズとデイヴ・フッドのグルーヴで歌う、ということです。そして、彼女の代表作が生まれました。

Etta James - Tell Mama


ロジャー・ホーキンズもアヴェレージ以上のプレイをしていますが、この曲で目立つのはデイヴ・フッドのベースのほうです。バンドのグルーヴがいいと、すぐれたシンガーはストレートに反応するもので、それがこの秀作を生んだと感じます。

つぎはマッスル・ショールズ・セッションが生み出したもうひとつのヒット曲。Tell Mamaと同様のメンバーによる録音です。

Etta James - Security


この「ゆるめのタイト」という矛盾した表現をしたくなる独特のグルーヴがロジャー・ホーキンズの味で、なんともいえない魅力があります。タイトな人はいくらでもいるのですが、ルースそうでタイト、タイトそうでルースという、微妙なグルーヴをもつドラマーは、ほんの一握りしかいないでしょう。

さらにマッスル・ショールズ録音から。近年のリマスター盤で陽の目を見た未発表曲。

Etta James - You Got It


一曲ぐらいはバラッドを入れないとまずいかもしれないので、マッスル・ショールズで録ったこのスタンダードを。これまた当時はアルバムからオミットされたトラックです。

Etta James - Misty


途中から4ビートになるのですが、NYやハリウッドの4ビートとはずいぶんちがっていて、あはは、です。ロジャー・ホーキンズも4ビートにしては左手が重すぎるし、管も妙なアクセントで、やっぱりここは南部だなあ、と思います。

上記の二曲についてはパーソネルがはっきりしないようですが、他のトラックと同じく、ドラムとベースに関してはロジャー・ホーキンズとデイヴ・フッドと見て大丈夫でしょう。

この稿を書きはじめる前にリストアップしたものはあと五曲残っていて、とうてい全部はやれそうもないので、残りは次回ということにして、本日はこれまで。


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ジョニー・オーティス
Midnight at the Barrelhouse: 1945-57
Midnight at the Barrelhouse: 1945-57


エタ・ジェイムズ
The Complete Modern & Kent Recordings
Complete Modern & Kent Recordings


エタ・ジェイムズ(チェス時代のボックス)
Chess Box
Chess Box


エタ・ジェイムズ(レーベルを横断するボックス)
Heart & Soul/Retrospective
Heart & Soul/Retrospective


エタ・ジェイムズ
Tell Mama: The Complete Muscle Shoals Sessions
Tell Mama: Comp Muscle Shoals Sessions


エタ・ジェイムズ
Her Best : The Chess 50th Anniversary Collection
Her Best : The Chess 50th Anniversary Collection


ウィルソン・ピケット
Original Album Series
Original Album Series
by songsf4s | 2012-01-21 23:57 | 追悼