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サイモン&ガーファンクルのThe Only Living Boy in New York――Bridge Over Troubled Water40周年記念盤で
 
Bridge Over Troubled Waterというアルバムで、サウンド面から好きな曲としては、まずThe Only Living Boy in New Yorkをあげます。

ヴィデオThe Making of Bridge Over Troubled Waterで、ポール・サイモンは、これはアート・ガーファンクルが『キャッチ22』の撮影でメキシコに行っているあいだに書いたといっています。

『キャッチ22』! ヨサリアンのあのシーンがねえ。ホラー映画じゃないから、あれはちょっと怖ろしくて……。でも、あの「爆撃を売却」するシーンは爆笑でした。

『キャッチ22』より


閑話休題。アート・ガーファンクルは、うん、あれは友情についての歌だ、ポールとわたしのプライヴェートなことなので、曰く云いがたい、キャメラの前で話すつもりはないといっています。まあ、歌詞が気になる方は、アーティーのこの言葉を前提に解釈なさるといいでしょう。

Simon & Garfunkel - The Only Living Boy in New York


これはもう、なにを措いても、ハル・ブレインとジョー・オズボーンのプレイに圧倒されます。

まずジョー・オズボーンについて。あらら、そうだったの、でした。ロイ・ハリー曰く、ジョーは8弦ベースをプレイした、とか。

たしかに、オズボーンはこの曲でむやみに高い音をつかっています。たとえば、00:50あたり、「I can gather all the news I need on weather report」の直後をお聴きあれ。

このパッセージは、たんに高いだけでなく、ジョー・オズボーンにしてはきわめてめずらしいコード・プレイになっています。

オズボーンは高音部の使い方のうまいプレイヤーで、高い音を使っていることはわかっていても、それはいつものことだと思っていましたが、考えてみると、この2本の弦によるコード・プレイは、フェンダー・プレシジョンでは無理かもしれません。

われわれは先入観の助けによって日常生活を大過なく送っているので、つい精神のモードを切り替えるのを忘れてしまいます。ジョー・オズボーンといえば、あの塗りのはげたヴィンティジ・フェンダー・プレシジョンしか思い浮かばず、8弦ベースをプレイしたなどとは考えもしませんでした。音を聴くときは心を無に、っていっても、無理なのですが!

どうであれ、オズボーンはすばらしくも美しいサウンドをつくっていて、それだけで、やっぱりこの人はすごい、と思います。いい音を出せる人というのは、ホンモノです。

また、オズボーンは、あとでBass Player誌のためにこの曲でのプレイを再演することになり、苦労したといっています。ロイ・ハリーが複数のテイクを編集したため、つなぎめで、現実には弾けないパッセージが生まれてしまったというのです。好事家は、それがどこなのか、子細に検証なさってはいかがでしょうか。わたしは放棄します!

ロイ・ハリーは、ハル・ブレインは使いはじめたばかりの巨大なセットをプレイした、われわれは、あのセットになにができるか実験をした、といっています。

これはむろん「オクトプラス・セット」のことです。8個のコンサート・タムを並べた史上初のモンスター・セットでした。8個、ということは、ちゃんとチューニングすれば、ドレミファソラシドを叩けるということです。だから「コンサート」つまり「音階のある」タムタムなのです。

いやあ、それにしても、ロウ・ピッチ・タムなんか、すげえ音で録れていて、背筋に戦慄が走ります。この曲はできるだけ近年のマスタリングの盤を、いい環境で聴くほうがいいと思います。ハル・ブレインとロイ・ハリーに「ブラヴォー!」と云いたくなります。ドラムというのは、エンジニアがマヌケだと、ぜんぜんいい音にならないものなのです。

ヴォーカルの録音でも、妙なことをやっています。バックグラウンドのHere I amは、もちろんポール・サイモンとアート・ガーファンクルがオーヴァーダブしたものです。

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しかし、問題は「どうやったか」です。ロイ・ハリーは、エコー・チェンバーに「通す」のではなく、エコー・チェンバーの「中に入って」歌うようにいったのだそうです。LAで録音したといっています。

中に入れるタイプというと、どういうエコーチェンバーか(ゴールド・スターにあったEMI製プレート・エコーに入るのは非常にむずかしいと思う)、どこのスタジオなのか、ちょっと気になります。まあ、サンセット&ガウワーのCBSスタジオにあったのでしょうね。CBSはインディペンダント・スタジオを使わせたがらない会社でしたから。

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Bridge Over Troubled Waterは、リリースのときに熱心に聴き、その後、ボックスのリマスターでまたていねいに聴き直しました。なぜ、子どものときに面白いと思ったか、明解にわかったのは、CDで聴いたときのことでした。やはり、精緻なサウンド構築に、自然に耳が引き寄せられていたのです。

サイモン&ガーファンクルのようなヴォーカル・デュオをつかまえて、サウンド構築がすごい、などといっては申し訳ありませんが、でも、音楽は詰まるところ音の手触りです。ロイ・ハリーはたいしたものだと、このThe Only Living Boy in New Yorkでも感服しました。


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by songsf4s | 2011-12-05 23:35 | 60年代