いまさらのようにPet Soundsを聴きなおしてみる その12 I Just Wasn't Made for These Timesセッション
 
恒例によって、本日のジム・ゴードンの一曲。盤としてはライノの70年代ヒット曲集Have a Nice Dayシリーズの一枚でもっていただけで、オリジナル・アルバムは知らず、今日はじめて、ジム・ゴードン・ディスコグラフィー・ブログスポットでパーソネルを見た曲です。

Sammy Johns - Chevy Van


これは今年の八月の「Surf'n'Rod WITHOUT (or mistakingly WITH) Hal Blaine Vol. 3」という記事に貼りつけていて、当然、そのときにも聴いたのだから、気づけよな>俺、でした。

ジム・ゴードンのシグネチャーのひとつは、フロアタムの二打または一打のアクセントで(フィルインと呼ぶのはためらうほど短いのでアクセントと呼んでおく)、この曲でも、ファースト・コーラスの最後で、フロアタムの一打をやっています。

ほんとうは、長年の懸案だったアルバムが解決したので、そちらのほうを書いたのですが、枕にしては長すぎるので、それは先送りにしました。いずれにしても、すでに何度もジム・ゴードンのプレイだと主張してきた曲の裏がとれた(らしい)というだけなのですが。

◆ たまには歌詞について ◆◆
Pet Soundsシリーズもだんだん煮詰まってきた、今回はあれこれチェックして、通し番号をまちがえたことに気づきました。「その8」がダブっていました!

さて、11回目ではなく、12回目の今回は、I Just Wasn't Made for These Timesです。まずはリリース・ヴァージョンから。

The Beach Boys - I Just Wasn't Made for These Times


たしか昔、「ダメなぼく」とかいう邦題がつけられていたと思います。ブライアン・ウィルソンのヴィデオにも同じ邦題がつけられていて、苦笑しました。

適宜「演出」するのはやむをえないと思うのですが、勘違い、ないしは、(こちらのほうが悪質だが)意図的なミスリードはやめてもらいたいものです。

この曲の中身に即していうならば、どちらかというと「あまりにもすぐれている僕」と解釈するべきでしょう。ジョン・レノンがそういう曲を書いているのはご存知ですよね。ほら、例のNo one I think is in my tree, I mean it must be high or lowです。

The Beatles - Strawberry Fields Forever


「俺の木にはだれもいない、高いか低いかのどちらかだ」というのはどう意味だ、と問われて、書いてあるそのままの意味だ、俺と同じレベルの人間はいない、ということだ、とジョンがなにかのインタヴューでいっていました。

ブライアン・ウィルソンがI Just Wasn't Made for These Timesでいいたかった(じっさいの歌詞を起こしたのはトニー・エイシャーだが、ブライアンの基本アイディアを言葉として整えて表現した)のは、ジョン・レノンがStrawberry Fields Foreverでいったのと同じようなことです。

I keep looking for a place to fit
Where I can speak my mind
I've been trying hard to find the people
That I won't leave behind

They say I got brains
But they ain't doing me no good
I wish they could

Each time things start to happen again
I think I got something good goin' for myself
But what goes wrong

Sometimes I feel very sad
Sometimes I feel very sad
(Can't find nothin' I can put my heart and soul into)
Sometimes I feel very sad
(Can't find nothin' I can put my heart and soul into)

I guess I just wasn't made for these times

Every time I get the inspiration
To go change things around
No one wants to help me look for places
Where new things might be found

Where can I turn when my fair weather friends cop out
What's it all about

Each time things start to happen again
I think I got something good goin' for myself
But what goes wrong

Sometimes I feel very sad
Sometimes I feel very sad
(Can't find nothin' I can put my heart and soul into)
Sometimes I feel very sad
(Can't find nothin' I can put my heart and soul into)

I guess I just wasn't made for these times

ファースト・ヴァースの「I've been trying hard to find the people that I won't leave behind」を、「ダメなぼく」とかいう邦題をつけた人はどう解釈したのでしょうか。これは「すぐれた自分についてこられるすぐれた人間を一所懸命に見つけようとした」と解釈するしかないでしょう。「leave behind」は、たんに「去る」こととは思えません。

それは、つぎの「They say I got brains/But they ain't doing me no good」みんな、ぼくのことを頭がキレるというけれど、というラインで、さらに明瞭になります。

トニー・エイシャーは、他の曲については、ブライアンからアイディアをきかされて、そうそう、そういうことはある、よくわかる、と思う点があったけれど、この曲のアイディアには同感できなかったといっています。エイシャーはmust be high or lowであって、not in his treeなのでしょう。たしかに、こういうことを考える人間は特殊だと思います。ブライアン・ウィルソンやジョン・レノンのように特殊な人間です。

あるいは、ビーチボーイズや会社とブライアン・ウィルソンの関係を歌っているとも読めるし、さらには、彼の音楽と世間の音楽の関係と読み替えることもできます。

この曲が予言したように、Pet Sounds just wasn't made for those timesだったのであり、長い年月をかけて、やっと、ふさわしい地位が与えられることになった、と考えてしまいます。

いや、しかし、翻ってみると、「ダメなぼく」と解釈したほうが、現代にあっては「fit in」しやすいかもしれません。

どこにも居場所がない、だれともうまくいかない、と感じている人は、昔より今のほうがずっと多いでしょう。それで、アマチュアのカヴァーの解釈が「ダメ」なほうになってしまうのではないでしょうか。

◆ またしてもアブノーマルな組み合わせ ◆◆
さて、このシリーズの主題はサウンドです。I Just Wasn't Made for These Timesにも、ブライアン・ウィルソンらしいアイディアがいくつか盛り込まれています。

やはり、セッションのほうがサウンドの理解には好都合です。いや、その前にまずパーソネルを。ブラッド・エリオットがエレクトリック・ベースとした部分を、わたしの考えで、ダンエレクトロ6弦ベース(ダノ)と変更しました。フェンダー・ベースとは根本的に異質な楽器なので、誤解のないように、という意味で。

ドラムズ、ティンパニー、ボンゴ……ハル・ブレイン
ティンパニー、ラテン・パーカッション……フランク・キャップ
アップライト・ベース……ライル・リッツ
エレクトリック・ベース……レイ・ポールマン
ギター……グレン・キャンベル、バーニー・ケッセル
ピアノ……ドン・ランディー
ハープシコード……アル・ディローリー
ハーモニカ……トミー・モーガン
テルミン……ポール・タナー
サックス……スティーヴ・ダグラス、プラズ・ジョンソン、ボビー・クライン
バリトン・サックス……ジェイ・ミグリオーリ

f0147840_23592420.jpg

それではトラッキング・セッションへ。

サンプル The Beach Boys "I Just Wasn't Made for These Times" (tracking sessions)

まず、ほう、と思うのは、セッションの冒頭で鳴っているハープシコードのサウンドです。ポップ系の曲ではダイナミック・レンジが圧縮された録音がほとんどなのですが、単独で鳴ると、本来、ハープシコードというのは、深く重いサウンドだということを思いだします。セッションのみならず、リリース・ヴァージョンでも、相対的にこの曲では重い響きになっていて、その点を好ましく思います。

イントロでは、ライル・リッツのアップライト・ベースに、トミー・モーガンのベース・ハーモニカをかぶせるという、異常な処理をしていることにも耳を引っ張られます。変なことをするものです。

いま振り返ると、昔はこの音をバリトン・サックスと聞き誤っていたようです。こんな風にかすかにベース・ハーモニカを鳴らすなんて手法は、一介のロック小僧の想定の範囲内にはありませんでした。

f0147840_0202077.jpg本来のベースらしい位置にいるのはライル・リッツのアップライトだけで、ダノのレイ・ポールマンはミュート・ギターのようなサウンドで、ベースというより、ギター・リックのようなラインを弾いています。

ダノじゃないと、こういうことはできません。キャロル・ケイさんは、ダノというのはエレクトリック・ベースではないのだ、ふつうのギターより一オクターブ低い「ベース・ギター」なのだといっていました。だから、フェンダー・ベースを「ベース・ギター」といってはいけない、あれはエレクトリック・ベースなのだ、と彼女らしく、几帳面に定義していました。

彼女がユニオンに申し入れた結果、ローカル47のコントラクト・シートでは、ダノのプレイヤーはベースではなく、ギターと書かれたそうですが、じっさい、そのように書かれたものをわたしもいくつか見ています。今回はブラッド・エリオットの「解釈」が介入したクレジットを見ているので、コントラクト・シートには、正しく、レイ・ポールマンはギターをプレイしたと書かれているのかも知れません。

パーソネルには出てこないのですが、バンジョーらしい音が鳴っていて、セッションを聴くと、どうやらグレン・キャンベルがプレイしたらしいとわかります。しかし、これは最終的なトラックでは聞こえません。

サンプル The Beach Boys "I Just Wasn't Made for These Times" (track only)

最終的にはアコースティック・ギターに変更され、小さめにミックスされたのかもしれません。もっとよく聞こえないバーニー・ケッセルのギターは、エレクトリックのようです。セッションではチラッと聞こえますが、これまたバッキング・トラックの段階ですでにほとんど聞こえなくなっています。

そうとは明記されていませんが、テルミンは、オーヴァーダブで加えられたのではないでしょうか。Unsurpassed Mastersのセッション・トラックでも聞こえず、The Pet Sounds Sessionsボックス収録の最終的なバック・トラックではじめて聞こえます。

改めて、「裸の目」で見ようとすると、ひどく異様な楽器編成に思えてくるのですが、しかし、昔を振り返ると、すぐになじんで、それ以来ずっと、ごく自然な音として聴いてきたわけで、そこがブライアンのすごいところなのかも知れないと思います。

一見、どれほど奇矯な組み合わせに見えようと、根本のところで、すべてがきれいにフィットするように意図されている、ということです。異質なものを、いったんは異質と意識させ、それでいて、すぐになじむように構築されたサウンドなのだと思います。

最後に、趣味のドラミング話。ヴァースとコーラスのつなぎ目、ファースト・ヴァースでいうと、but what goes wrongとsometimes I feelのあいだに置かれているシンプルなフィルインが、昔から妙に好きでした。

とりたててどうだというフレーズではないのに、なぜか心惹かれます。どういうことなのやら。セッションからはわかりませんが、例によって、これはブライアンがつくったフィルインなのでしょう。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう



ビーチボーイズ
ペット・サウンズ40thアニヴァーサリー・エディション(デラックス・パッケージ)(DVD付)
ペット・サウンズ40thアニヴァーサリー・エディション(デラックス・パッケージ)(DVD付)


ビーチボーイズ
The Pet Sounds Sessions
The Pet Sounds Sessions


ビーチボーイズ
Smile Sessions
Smile Sessions


ビーチボーイズ(LP)
Smile Sessions [Analog]
Smile Sessions [Analog]


サミー・ジョンズ
Golden Classics
Golden Classics
[PR]
by songsf4s | 2011-11-11 23:51 | 60年代