いまさらのようにPet Soundsを聴きなおしてみる その8 I’m Waiting for the Dayセッション
 
このところ、The Smile Sessionsをさしおいて、ジム・ゴードンをずっと聴きつづけています。FBなどで、いままで知らなかったアルバムを大量にリストアップしているところを見つけたからです。

ディレイニー&ボニーのOn Tour、ジョー・コッカーのMad Dogs & Englishmen、そしてデレク&ザ・ドミノーズのあたりから、ジミー・ゴードンは独自のスタイルを鮮明化し、「70年代のエース」の座を確実にします。

しかし、それ以前のハリウッド時代、ハル・ブレインの名代だった時代のジミーの仕事は、意識的にハルのチューニングやスタイルを模倣しているせいもあり、また、病院ないしは刑務所に閉じこめられたままのため、ご本人の証言が得られないせいもあって、依然、靄に包まれ、解明は遅々として進みません。

それでも、近ごろのリイシューではコントラクト・シートの調査結果が書かれているケースがかなりあり、すこしずつクレジットが浮上してきてはいます。

目下、Pet Soundsの話の途中ですが、ビーチボーイズ関係で新たにわかったのは、20/20とFriendsにジミーのクレジットがあるらしいということです。

とりわけ20/20にドラマーとしてクレジットされているのはジム・ゴードンのみ、としているソースがあるのですが、どうなんでしょうかねえ。まあ、ジミーもまだ二十歳かそこらで若かったせいもあるでしょうが、それにしても、彼のプレイにしてはレベルが低いと感じるトラックもあります。そもそも、後年とスタイルがちがっていて、悩んでしまうトラックばかりです。

でも、これなんか、エコーが深いせいもありますが、なかなかすばらしいドラミングです。デニス・ウィルソンの曲で、彼のヴォーカル、わたしの好むところなのですが、しかし、ここはジミーが主役、ドラミングがよく聞こえるバックトラック・オンリーを貼りつけます。

The Beach Boys - Be With Me (Backing Track)


感触として、まちがいない、ジミーのプレイだ、と納得がいくわけではないのですが、だれのプレイにせよ、いいドラミングです。

ジム・ゴードンの話は近々改めて大々的にするので、そのときまでペンディングとして、今日のPet Soundsは、そのジミーがストゥールに坐ったこのアルバム唯一のトラック、I'm Wating for the Dayです。

まずは完成品から。ステレオの最上のものより、こちらのほうがよかったので、モノで。

The Beach Boys - I'm Wating for the Day (mono)


毎度、歌の話はオミットで申し訳ないのですが、Pet Soundsであって、Pet Songsではないということで、今回もトラックに一意専心します。

この曲については、買った当初、ものすごく気になったのは、ドラムとティンパニーのコンビネーションです。いや、当時は完成品しか知らなかったのだから、シャドウ・ドラミングしながら、むずかしいなあ、よく合わせたなあ、と思っただけですが。ティンパニーはむずかしくないのですが、ドラムは裏拍のせいでタイミングをとりにくく感じます。

ほかの曲についてもいえることですが、ひとりのプレイヤーが1パスで両方いっぺんに叩いたかのように、ドラムズとティンパニーが一体化して聞こえるのは、Pet Soundsの大きな魅力のひとつだと感じます。まあ、少数派意見でしょうけれど。

といっているうちに、ステレオのいいのが見つかったので、そちらも貼りつけておきます。

The Beach Boys - I'm Wating for the Day (stereo)


この曲のパーソネルは、ブラッド・エリオットによると以下のごとし。

ドラムズ……ジム・ゴードン
ティンパニーおよびボンゴ……ゲーリー・コールマン
フェンダー・ベース……キャロル・ケイ
ウクレレ……ライル・リッツ
ギター……レイ・ポールマン
ピアノ……アル・ディローリー
オルガン……ラリー・ネクテル
フルート……ビル・グリーン、ジム・ホーン、ジェイ・ミグリオーリ
イングリッシュ・ホルン……レナード・ハートマン

同じ日の夕方からオーヴァーダブ・セッションがおこなわれ、ストリングスが録音されていますが、同時に、ライル・リッツがアップライト・ベースをプレイしたとあります。

こんどはセッション・ハイライトをどうぞ。

The Beach Boys - I'm Wating for the Day (session)


なんせ、メロディーをプレイしているのはオーボエかなあ、なんてすっとぼけたことをいってしまった人間なので(正しくはイングリッシュ・ホルン。うひゃ)、ヴォーカルをとってストリップ・ダウンしても、やっぱりパーソネルとじっさいの音のすりあわせには難渋します。

Unsurpassed Masters(ファンはしばしばSOTと呼ぶ。Sea of Tunesの略)でいろいろなテイクを聴きましたが、うーん、です。

まず些末なこと。ボンゴ? はあ? でした。どこで鳴っているのやら。

それから、ウクレレの音も拾い出せませんでした。かわりに、初期テイクからアップライト・ベースの音がしているのを確認しました。ライル・リッツがオーヴァーダブ・セッションでなにをしたかは不明ですが、最初はウクレレではなく、アップライト・ベースを弾いたとしか思えません。

上掲のセッション抄録で面白いのは、2:00ごろからの、インサートの録音です。イントロだけの録音です。ここがもっともタフなパートだと、聴いているほうも緊張します。

いやはや、さすがの天才少年のなれの果ても、最初のパスではボロボロ。自分でなぞってみて、イヤだなあ、ここは、と思いますが、ジム・ゴードンもミスったので、すこし安心しました!

しかし、ハル・ブレインを困惑させ、ジム・ゴードンのミスを誘発し(たわけではないか!)、ブライアン・ウィルソンというのは、大変なドラム・アレンジャーです。よくまあ、つぎからつぎへと、さまざまなドラムとパーカッションのコンビネーション・パターンを発明していったものだと思います。

そもそも、ティンパニーをこれほど多用したロックンロール・アルバムというのはほかにあるのでしょうか。すくなくともわたしは、昔、このアルバムを聴いて、ティンパニーに驚きました。

同じ時期にティンパニーを多用したアーティストというと、ウォーカー・ブラザーズが思い浮かびます。

The Walker Brothers - (Baby) You Don't Have To Tell Me


The Walker Brothers - In My Room


The Walker Brothers - The Sun Ain't Gonna' Shine Anymore


The Walker Brothers - Make It Easy On Yourself


The Walker Brothers - My Ship Is Coming In


いやあ、派手ですなあ。イギリスに渡ってからのウォーカーズのワーキング・モデルは、フィレーズ時代のライチャウス・ブラザーズで、こういうサウンドもスペクターがインスパイアしたものでしょう。

いや、スコットやジョンの好みだったのか、それともアレンジャーのレグ・ゲストのアイディアだったのかは知りませんが、LA時代からウォーカーズにはライチャウスのようなところがあった(ただし、フィレーズ時代ではなく、ムーングロウ時代のライチャウスだが)のもたしかです。

ビーチボーイズのティンパニーについては、Pet Soundsに先行するこの曲も落とすわけにはいきません。

The Beach Boys - Do You Wanna Dance


ゴールド・スター・レコーダーの4連エコー・チェンバーの実力テストみたいな音ですが、案外、そんなところかもしれません。ブライアンとしては、ティンパニーの実験もしたかったのでしょう。

同時期のウォーカー・ブラザーズと比較して、いや、比較しなくても、Pet Soundsにおけるティンパニーの特徴は、ドラムとの密接な連携です。まるで、ひとりのプレイヤーがドラムとティンパニーを同時に叩いたのかと思うほどです。

あるいは、まるでベースとギターの分散和音のように、本来はひとつのフレーズであったものを、ドラムとティンパニーに割り振ったかのようなアレンジ、と言い換えることもできるでしょう。

そう断言できるだけの十分な知識がわたしにはありませんが、このような、ひとりの人間のプレイと聴き紛う、ドラムとティンパニーの役割分担と緊密な連携というのは、ブライアン・ウィルソンの独創ではないでしょうか。

わたしはジム・ゴードンの大ファンであり、ロックンロール史上もっとも精密なセンス・オヴ・タイムの持ち主だったと考えていますが、さすがにまだ若かったからか、こういう変則的なパターンでのティンパニーとの連携に関しては、やはりハル・ブレインに一日の長があります。

サンプル The Beach Boys - I'm Wating for the Day (take 1)

というように、はじめのうち、ジム・ゴードンは、ブライアンのつくったフレーズをそのとおりになぞるだけで精一杯、まだ「プレイ」いえるようなものではありません。若いジミーにとっては、これはタフな曲だったことでしょう。

最終的には立派なプレイに仕上げてきますが、Pet Soundsでのハル・ブレインのみごとなティンパニーとの連携ぶりと比較すると、やはり未熟だったと思います。というより、ハルがすごいというだけのことですが。

Stack-O-TracksでHelp Me Rhondaのバッキング・トラックを聴いたとき、いったい、どこからこういうアレンジを思いついたのだろうと驚きましたが、Pet Soundsの曲は、複雑さにおいてHelp Me Rhondaの比ではなく、音世界のなかに深く潜り込んだ一瞬、めまいを感じることがあります。

この曲については、イングリッシュ・ホルンの導入、ティンパニーとドラムのコンビネーション、フルートのオブリガート、そして、最後に、わずかに鳴らされるストリングスの美しさ、こうしたすべてに強く惹かれ、同時に、この人の頭の構造はどうなっているのだろうという好奇心が沸々とわき起こってきます

最後に、できあがったバッキング・トラック

サンプル The Beach Boys - I'm Wating for the Day (stereo backing track)


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by songsf4s | 2011-11-06 23:37 | 60年代