いまさらのようにPet Soundsを聴きなおしてみる その6 Caroline, Noセッション
 
前回、ベスト・オヴ・ジム・ゴードン補足をやったので、気になって、すこしリストアップし、検索もしてみました。

以前と異なり、面白いブログや、賛成はできないけれど興味深い見解もあったりして、やはり、近々、大々的にやろうと思いました。補足程度ではすまず、ベスト・オヴ・ジム・ゴードン・パート2になるかもしれません。

さて、本日はまたPet Soundsにもどります。今回は、シングルではブライアン・ウィルソンの単独名義でリリースされた、アルバム・クローザーのCaroline, Noです。

毎度同じことを繰り返していますが、Pet Soundsというのは、じつにさまざまな音がコラージュされたアルバムです。

そのストリップ・ダウンを試みたThe Pet Sounds Sessionsでやっと聞こえた音というのもじつに多く、トラッキング・セッションやトラック・オンリーを聴いて、何度もアッといいました。とくに驚きに満ちた曲といくのがいくつかあり、Caroline, Noはそのひとつです。

ではまずリリース・ヴァージョンから。ブライアン・ウィルソン単独名義になったのは、ひとつには、ビーチボーイズの曲としてはきわめて異例ですが、ハーモニーがなく、ブライアンのヴォーカルだけだからでしょう。

Beach Boys - Caroline, No


録音は1966年1月31日に、ブライアンのホーム・グラウンド、ハリウッドのユナイティッド・ウェスタン・レコーダーで、チャック・ブリッツが卓についておこなわれました。

この録音のメンバーは、ビーチボーイズ研究家のブラッド・エリオットによると、以下のようになっています。ただし、楽器の呼び方はエリオットと異なっているものがあります。

ドラムズ……ハル・ブレイン
ヴァイブラフォーン……フランク・キャップ
フェンダー・ベース……キャロル・ケイ
ギター……グレン・キャンベル、バーニー・ケッセル
ハープシコード……アル・ディローリー
ウクレレ……ライル・リッツ
フルート……ビル・グリーン、ジム・ホーン、プラズ・ジョンソン、ジェイ・ミグリオーリ

オーヴァーダブ・セッション
ドラムズ……ハル・ブレイン(in vampとあるが、つまりエンディング・シークェンス入口でのフィルインのことだろう)
フェンダー・ベース……キャロル・ケイ
ハープシコード……アル・ディローリー
テナー・サックス……スティーヴ・ダグラス

またまた謎のパーソネルで、耳で聴いたものとの整合性をとるのに苦労させられます。まあ、Pet Soundsはどの曲もそうなのですが。

リリース・ヴァージョンをいつまで聴いていても、聞こえない音は永遠に聞こえないので、セッションのほうを聴きます。

サンプル The Beach Boys "Caroline, No" (highlights from tracking session)

ヴォーカルが消えてまず驚いたのは、フランク・キャップがプレイしているヴァイブラフォーンです。こんなラインだったとは、ついぞ知りませんでした。美しい。

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ハル・ブレイン(左)とフランク・キャップ

それから、フルートのラインがまた魅力的で、これまたトラッキング・セッションでの驚きでした。管楽器はみなそうですが、フルートも数本重ねたときにもっとも魅力的なサウンドになります。

ライル・リッツがウクレレをプレイしたことになっていて、だとするなら、ハープシコードとほぼ重なるような形でコードを鳴らしているのがそれでしょうか。ほかに選択肢がないからそういうことにするだけで、LPを聴いているあいだは、あれがウクレレだと思ったことはありませんでしたし、いまもってウクレレがあんな音になるかなあ、と思っています。

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ウクレレを弾くライル・リッツ。60年代のハリウッドのスタジオでは、アップライト・ベースのプレイヤーとして活躍したが、もともとはウクレレ・プレイヤーとしてスタートしたという。近年はまたウクレレに戻り、アルバムをリリースしている。

ベースはこの曲でも二本、アップライトとフェンダーに聞こえるのに、パーソネルではキャロル・ケイが二回、フェンダーを弾いたことになっています。

まあ、彼女が教則ヴィデオで実演しているように、ピックの音を消すことはある程度までは可能ですが、それでもなお、ベーシックに記録されているのはアップライトに思えます。

ハープシコードといっしょに鳴っているのはギターのような気もするのですが、しかし、グレン・キャンベルとバーニー・ケッセルはエレクトリックをプレイしたのでしょう。前者が12弦、後者が6弦だろうと思います。

この二本のギターはリリース・ヴァージョンではまったく聞こえません。それどころか、前掲のThe Pet Sounds Sessionsのセッション抄録でも、ミックスのせいで判別できません。しかし、Unsurpassed Mastersでは聞こえます。

サンプル The Beach Boys "Caroline, No" (take 3)

12弦ギターは落ち着かず、テイクの合間にTake FiveやGreen Sleevesかなにかを弾いたりしています。バーニー・ケッセルではなく、グレン・キャンベルであろうと推定するゆえんです。

いや、グレンはモズライトをはじめ三本の12弦をもっていたことがわかっていますが、ケッセルの12弦というのは見たことがない、というのも理由のひとつ。

グレン・キャンベルの12弦ギター各種
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Hamer

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Mosrite

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Ovasion Viper

ハル・ブレインはドラムズとなっていますが、最初のパスはプラスティック・ボトルで4拍目をコンとやっているのでしょう。ドラムセットを叩くのはオーヴァーダブのときです。

セッション抄録のほうで、ブライアンが、That's beautiful, Hal, couldn't be any better, reallyといっていますが、これはブライアン自身の発案になる、プラスティック・ボトルのことでしょう。

パーソネルに見あたらないものとしてはさらに、タンバリンとシンバル(のようなもの)が聞こえます。ほかに打楽器系統のプレイヤーがいないので、ハル・ブレインまたはフランク・キャップがオーヴァーダブしたのかもしれませんが、最初から聞こえていることが引っかかります。ハルがひとりですべてをやったのでしょうか。

Pet Sounds全編を貫く特徴のひとつは、意外な楽器の組み合わせですが、ヴァイブと4本のフルートの美しいコンビネーションに、プラスティック・ボトルのエコーのかかったボコンという音は、とりわけ印象に残る意外な組み合わせでした。

どうやらブライアン・ウィルソンは、あらゆる音が頭のなかで鳴っていたようで、レコーディングは、それを頭から取り出して、現実の音に置き換える作業だったようです。

しかし、というか、だから、というか、はじめは聞こえていた二本のギターが、結局、ミックス・アウトされたのは、やはり計算違いの結果なのだろうと思います。頭のなかではいい音で鳴っていたけれど、じっさいにやってみたら、どうも違う、というので、オミットされてしまったのだろうと思います。

結果的に、それでよかったと思います。ほんとうは複雑なのに、耳立つのはパーカッション、ヴァイブ、ハープシコード、フルート、そして、ブライアン・ウィルソンひとりのヴォーカル、というすっきりした仕上がりは、希望ではじまったアルバムの、失望のエンディングにふさわしいと感じます。

と、殊勝なことをいったものの、じつは、ヴォーカルが終わった直後の、ハル・ブレインの派手なフィルインが、ひょっとしたら、この曲のいちばん好きなところかもしれません。

自分がドラマーだったら、こういう、一瞬のプレイで場をさらう、というのをやってみたいと思います。いや、わたしがやっても無駄なんですが。ハル・ブレインだからこそ、抑揚のコントロールによって、印象的なフレーズとして聴かせられたのです。


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by songsf4s | 2011-11-01 23:54 | 60年代