いまさらのようにPet Soundsを聴きなおしてみる その4 Pet Soundsセッション
 
ちょっと紛らわしいのですが、本記事のタイトルのPet Soundsは、アルバムのことではなく、タイトル・カット、Pet Soundsという曲のほうです。

アルバムPet Soundsには2曲のインストゥルメンタルが入っていますが、Pet Soundsはそのうちのひとつ、12曲目、クローザーのCaroline, Noの直前に置かれています。

わたしの解釈では、11曲目のI Just Wasn't Made for These TimesでPet Sounds本体はおしまい、コーダ、お別れとして、インスト曲、Pet Soundsがおかれ、13曲目の、シングルではブライアン・ウィルソンの名義でリリースされたCaroline, Noは、いわばボーナスです。

というわけで、重要なのだか、重要でないのだか、よくわからない曲ですが(たしかThe Pet Sounds Sessionsのライナーでだった思うが、キャロル・ケイは、このトラックはアルバムの他の曲より劣る、といった趣旨の発言をしていて、ええ、そうなんですか、と独り言をいった)、わたしはけっこう好んできました。

まずはリリース・ヴァージョン。

The Beach Boys - Pet Sounds


お読みになるのは面倒でしょうが、いちおうパーソネルを書き写しておきます。

ピアノ……ブライアン・ウィルソン
ドラムズおよびコーク缶……リッチー・フロスト
フェンダー・ベース……キャロル・ケイ
アップライト・ベース……ライル・リッツ
ギター……トミー・テデスコ、ジェリー・コール
レズリー・リード・ギター……ビリー・ストレンジ
バリトン・サックス……ジェイ・ミグリオーリ
テナー・サックス……プラズ・ジョンソン、ジム・ホーン、ビル・グリーン
トランペット……ロイ・ケイトン

他の曲と目立って異なるのは、ブライアン自身がピアノをプレイしたことと、ドラムがハル・ブレインではなく、リッチー・フロストだということでしょう。

リッチー・フロストは50年代終わりから60年代はじめまで、リック・ネルソン・バンドのドラマーでした。ジェイムズ・バートンやジョー・オズボーンのバンドメイトだったことになりますが、キャリアはもっと長く、スタジオ・プレイヤーとして大成功はしなかったので、リック・ネルソンの週給のほうを選び、スタジオからステージへというコースをたどったのだと思います。タイムは安定しています。

Ricky Nelson - The Very Thought Of You

(Ritchie Frost on drums; James Burton on guitar; Joe Osborn on bass)

「コーク缶」(coke can)とあるので「ママ」としましたが、どうでしょうか。1、3拍目の、1は4分、3は8分2打に割っている(つまりBe My Babyのキック・ドラムと同じパターン)パーカッションがそれなのでしょうが、缶の音かなあ、と思います。

Caroline, Noでは、大きなプラスティック・ボトルをハル・ブレインが叩いたという話を読んだことがありますが、こちらも缶ではなく、プラスティック・ボトルだというなら、素直に納得するのですがね。まあ、テープかなにかでミュートすれば、缶でもこういう音になるかもしれません。

キャロル・ケイは、この曲を買っていないというわりには、さすがは、というクールなプレイで、またまた惚れます。

プロのプレイヤーにとっては退屈でしょうが、ギターの単調なリックをプレイアロングすると、けっこう楽しめます。いや、たんなる変態の倒錯心理かもしれません。Memphis Undergroundのドラムなんかやってみたいと思う人間ですから。

当然ながら、エディションごとに鳴りがずいぶんちがっていて、サンプルは、どれにしようかな状態ですが、まずはPet Sounds Sessionsに収録された、OKテイク(たぶんテイク3)の、リズム・トラック・オンリーをいってみます。ビリー・ストレンジのレズリー・リード抜きの状態です。

サンプル The Beach Boys "Pet Sounds" (backing track only)

ジェイムズ・ボンド映画のサントラのつもりで書いたもので、"Run James Run"というワーキング・タイトルだったというのだから、アルバムの他の曲とは、ちょっとテンションがちがっていたのでしょう。

そのリラックスした軽さがこの曲のよさだと思います。テイク3でOKということは、レッキング・クルーメン&ア・ウーマンにとってもパイのように楽なトラックだったのでしょう。

今回、改めてさまざまなエディションを聴いて、あれ? こんなだったのかよ、と思ったのは、つぎのミックスでした。

サンプル The Beach Boys "Pet Sounds" (first mono mix)

OKであるテイク3の最初のモノ・ミックスだそうです。このトラックの1:42あたりからの数秒間、アコースティック・ギターのコードが聞こえて、ええ! でした。

こんなの知らなかったぞ、と思って、いろいろなミックスを聴きました。失礼! たしかに、ヘッドフォンで注意深く聴けば、The Pet Sounds Sessionsのバックトラック・オンリーの段階で聞こえていました。

しかし、ビリー・ストレンジのリードが載ったノーマルなミックスでは、モノ、ステレオ、ともにこんなギターの音は聞こえません。

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後年のリミックスで、かつては聞こえなかったものが姿をあらわすのはめずらしいことではありませんが、それにしても、やはりPet Soundsは、尋常ではないほど多数、そういう音があります。

4ピースのギターバンドだと、オーヴァーダブをしたといっても多寡は知れています。たいていの音はノーマルなミックスで聞こえます。Pet Soundsの場合、編成が大きく、そして、トラックの上に分厚いハーモニーが載せられてしまうせいで、多くの音が埋もれてしまったのでしょう。

もうひとつサンプルを。こんどは、リード・ギターのオーヴァーダブのさらにオーヴァーダブ。こちらも当然、ビリー・ストレンジ御大によるものでしょう。

サンプル The Beach Boys "Pet Sounds" (second guitar overdub)

当家でも「ギター・オン・ギター」というシリーズをオン&オフでやっているぐらいでして、わたしはギターを重ねるのは大好きです。ブライアンの頭のなかでも、レズリー・ギターを重ねたサウンドが鳴っていたのでしょう。

でも、それをきれいに取り出すことができず、ビリー・ストレンジにとにかく弾いてもらって、最終目的地にたどりつこうとしたけれど、ついにイマジネーションの爆発は起こらず、安全なところでまとめることにして、撤退した、なんてあたりではないでしょうか。

書き忘れていましたが、このギターの音は、本来はハモンド・オルガンの付属品として生まれた回転スピーカー、レズリー・スピーカーにギターを通したものです。

レズリー・ギターのもっとも有名な例は、ビートルズのSomethingでしょうが、それ以前に、ブライアンがこの時点ですでにやっていました。まあ、ビートルズのほうは、この時点より以前に、Tomorrow Never Knowsで、ジョン・レノンのヴォーカルをレズリーに通すという無茶をやっていますが!

しかし、レズリーのハモンド以外への利用は、さらに時を遡行できます。

Shelley Fabares - He Don't Love Me (1964年)


このレズリー・ギターもビリー・ストレンジのプレイといわれています。ドラムはハル・ブレインだということまではわかりますが、あとは不明です。

The Ventures - Slaughter on 10tn Avenue


イントロからすでに入っていますが、途中、セカンド・ヴァースから薄く入ってきて、やがてはっきり聞こえるようになる、単音しかやらないオルガンのような音の楽器は、スティーヴ・ダグラスのサックスにピックアップを取り付け、レズリー・スピーカーに通したものだそうです(ブリッジに使われている、和音が出る楽器はオルガンなのでお間違いなきよう)。

Pet Soundsというのは、タイトルが示すように、「サウンド」の一大実験場です。ブライアンはじつにさまざまな音色を蒐集し、それをどう展示するかに腐心した、というように言い換えてもかまわないと思います。ビリー・ストレンジがプレイしたレズリー・ギターも、ブライアンが昆虫を集めるようにして集めた音色のひとつでした。

これでアップしようとしたら、下調べのときにみつけておいたクリップを忘れていたことに気づきました。2004年のライヴです。

Brian Wilson - Pet Sounds (live)


そろそろ逃げ切れなくなってきたようで、つぎからはむずかしい曲に挑戦かもしれません。自分ではじめておいて、逃げるものなにもあったものではありませんが!


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The Pet Sounds Sessions
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by songsf4s | 2011-10-27 23:19 | 60年代