ハーマンズ・ハーミッツとは誰のことだったのか: ピーター・ヌーンとバリー・ウィットワムの論争 後編
 

クレム・カッティーニとヴィック・フリックとジミー・ペイジ以外に、ピーター・ヌーンがハーミッツの録音に参加したとしていたのは、ハービー・フラワーズとジョン・ポール・ジョーンズという二人のベース・プレイヤーです。

フラワーズ(初期のエルトン・ジョンの盤で名前を知った。エルトン・ジョンが好きだったアル・クーパーにもフラワーズとやったトラックがある)については、たんに名前が挙げられただけで、それ以上の言及はないので、only a couple of sessionsだったペイジと似たようなものなのかもしれません。

しかし、ジョン・ポール・ジョーンズについては、多くのトラックでプレイしただけでなく、アレンジも彼がやったし、ドイツ・ツアーでプレイしたことさえあった、といっています。たしかに、多少ともゼップを聴いたことがあると、これはジョーンズのベースかもしれない、と感じる曲がずいぶんあります。

この曲もジョン・ポール・ジョーンズかもしれません。

Herman's Hermitsr - Mrs. Brown, You've Got a Lovely Daughter


たいていのアメリカ人はgotを「ガット」のように発音するのですが、イギリスの場合、「ゴット」に近い発音する人がよくいます。ペトゥラ・クラークがそうですし、ピーター・ヌーンの発音も「ゴット」のように聞こえます。

ハーミッツの最大の弱点だった、といわれたバリー・ウィットワムは、現在もハーマンズ・ハーミッツの名前を使ってツアーをしているそうです。その点について聞かれたピーター・ヌーンは、当然ながら、愉快には思っていない口ぶりでした。

いや、腹を立てているというより、憫笑のニュアンスです。タイムが悪くてスタジオではプレイさせなかった(ピーター・ヌーンは、ウィットワムは「89パーセントのトラックで不在だった」といっている)といわれたあげく、プレイもしなかった人間がハーマンズ・ハーミッツを名乗ってツアーをしているのだから呆れたものだ、とまでいわれたバリー・ウィットワムは、当然ながら腹を立てたようです。

ウィットワム自身からも反論があったようですが、そちらは読めず、擁護者のウィットワム支持の発言しか見つかりませんでした。しかし、公平にいって、名前を盗んだといわれても仕方のない状況(しいてウィットワムに同情的にいうなら、所有者が明確でないのをいいことに無断で居座った、というあたり)ですから、擁護者の意見には見るべきものがありませんでした。

ちょっと音楽を。のちにカーペンターズがカヴァーしたハーミッツのヒット。

Herman's Hermits - There's a Kind of Hush


ドラムは地味にやっていますが、精確なタイムで文句がありません。好みのタイプです。

バリー・ウィットワムの擁護者は、リンゴ・スターはたとえ何曲かでプレイしなかったにせよ、やはりビートルズのメンバーであることにかわりはない、などと無意味なことをいっています。

それはそのとおりですが、リンゴ・スターは、だれかを雇い、ビートルズと名乗ってツアーなんかしていません。比較されるべきは、お人好しのロジャー・マギンが、バンド名の権利者をはっきりさせておかなかったために、バーズの名前をドラムのマイケル・クラークに盗まれた事件でしょう。

クラークは「89パーセントのトラックで不在だった」ウィットワムを通り越して、99パーセントのトラックで不在だったはずですし、当然、リード・ヴォーカルもとったことがないのに、そういう人間が無縁の輩を雇い、バーズを名乗ってツアーをしたのだから、無茶苦茶です。

裁判所が名前の権利をクラークに与えたといったところで、それはたんなる法律上の問題にすぎず、音楽的に見れば、明白な盗みであることは、だれにだってわかります。

また音楽を。バリー・ウィットワムがストゥールに坐ったライヴです。

Herman's Hermits - You Won't Be Leaving


うーむ。このクリップで聴くかぎりでは、マイケル・クラークにくらべれば、バリー・ウィットワムははるかにドラマーらしくやっていると思います。いや、他のライヴ録音で、16分で驚くべき走り方をしたのを聴いたことがありますが。

ウィットワムも、ハーミッツを名乗ってツアーをしていることには良心の呵責を感じているのでしょう。ただ、ほかに生活する方法がなくて、そういうことをしているのだと想像します。だからピーター・ヌーンの軽蔑がひとしおこたえたにちがいありません。

そもそも、「人物はすごくいいけれど、タイムが悪くてスタジオでは使えなかった」なんて、わたしだったら、死んでもいわれたくありません。「あいつは最低の野郎で、何度も殺してやろうと思ったけれど、ドラムは悪魔のように上手くて、ついに首にできなかった」といわれたいじゃないですか、ドラマーとしては!

Herman's Hermits - The End of the World


ピーター・ヌーンはこの曲がフェイヴだといっています。スキーター・デイヴィスのヒット・ヴァージョンより、ジュリー・ロンドン盤のほうが好きですが、ハーミッツ・ヴァージョンも悪くありません。ヴォリューム・コントロールでミュートしながらのギターがなかなかけっこうなサウンドです。

これはオミットのつもりだったのですが、久しぶりに聴いたら、やはり捨てがたく感じたので、最後にもう一曲。

Herman's Hermits - No Milk Today


マージー・ビートをはじめとする初期ブリティッシュ・ビートは、自分が本格的に音楽に傾斜し、プラモデルを買うのをやめ、小遣いをすべて音楽関係に投入しはじめたときに聴いたので、ギター・インスト同様、無条件で好ましく感じます。

この際、ジェリー&ザ・ペイスメイカーズ、サーチャーズ、スウィンギング・ブルー・ジーンズ、ピーター&ゴードン、ゾンビーズと一気に駆け抜けるか、なんて思わなくもないのですが、ほかにやるべきことがあるので、それはやめておきます。

要するに、ハーミッツだって、べつに悪いことはない、むしろ、いまのほうが、時代がまたぐるっとまわって、こういう徹底したポップ指向を軽侮する人は少なくなったのではないかと思うのですが、まあ、よそさんのことはわからないので、このへんでおしまい。


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ハーマンズ・ハーミッツ
Very Best of
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by songsf4s | 2011-09-11 23:53 | ブリティシュ・インヴェイジョン