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The Better of the Dave Clark Five オブスキュア・トラックから見たDC5 その1
 
今回からしばらく、デイヴ・クラーク・ファイヴのトラックの棚卸しをしようと思います。

ベスト・オヴではなく、ベター・オヴ・ザ・デイヴ・クラーク・ファイヴという変なタイトルにしたのは、かならずしも有名なヒット曲を並べるわけではない、あまり知られていない佳曲を中心に聴く、という意味です。

いや、DC5の場合、この、有名ではない、すなわち、オブスキュアな佳曲というのが山ほどあって、呆然とするほどです。彼らの64年から66年にかけてのアルバムより佳曲含有率が高いのはビートルズだけではないかと思うほどです。

そのデイヴ・クラークがすっかり忘れられたについては、いくつかの理由があると思いますが、そのあたりはおいおい考えていくことにして、まずは一曲行きます。

Glad All Overでもなく、Bits and Piecesでもなく、Do You Love Meでも、Anyway You Want Itでもないので、コケないようにシート・ベルトをしめてください。いや、逆か。シート・ベルトをゆるめてリラックスしてください。バラッドです。デイヴ・クラーク&マイク・スミス作。

The Dave Clark Five - Forever and a Day


DC5のメンバーはみな曲を書き(ただし、ベースのリック・ハクスリーの曲というのは記憶にないが)、それぞれにいいものがありますが、やはりメイン・ライターはデイヴ・クラーク御大とマイク・スミスでしょう。マイク・スミスはスティーヴ・ウィンウッドとどっちがすごいか、というぐらいの歌い手で、そちらの系統の派手な曲を連想しがちですが、バラッドがまたじつにうまいのです。コードの扱いが独特で、やはりピアニスト的だと感じます。

順序が後先になりましたが、The Complete History of the Dave Clark Fiveという7枚シリーズのCDがありまして、これをVol.1から順次プレイヤーに載せ、適当に見つくろっていく、という安直な方針でやります。

ただし、これは必ずしもクロノロジカル・オーダーではありません。このシリーズは米盤LPをベースにしているようですが、アメリカでのリリースはイギリスより遅れたために、順序が混乱しているうえ、映画の都合など、さまざまな理由からダブって収録されている曲もあります。

CD1枚にLP3枚分のトラックが収録されていて、最低限、各LPから一曲ずつぐらいは拾いたいと思いますが、どうなりますやら。最後のあたりはあまりよくないのでオミットし、真ん中あたりを厚く盛ることになりそうです。

いや、それにしても、知られざる好バラッドの多いこと、とても二回や三回では終わりそうもありません。

それでは二曲目。今度もバラッドですが、ミディアム・テンポでバックビート付きです。デイヴ・クラーク&ロン・ライアン作。

The Dave Clark Five - Sometimes


いまになって、あわてて、ロン・ライアンてだれよ、と調べました。ファン・サイトにロン・ライアン・インタヴューがあり、これで完璧にわかりました。

簡単にいうと、初期にDC5のメンバーだったミック・ライアンの兄弟(たぶん兄)で、別のバンドでギターとヴォーカルをやっていた人だそうです。のちにライオット・スクォドをつくりますが、そのドラマーがミッチ・ミッチェルだったと。

ロン・ライアンの話は非常に興味深いもので、DC5ファンと当時のロンドン・シーンに関心のある方は読んで損はないでしょう。

面白いのは、DC5はUSベースで最高のランクだったそうで、なんだか、日本の話を読んでいるようです。日本の場合、ジャズのほうにそういう人が多いのですが、ロック系でも、たとえばスパイダースなどは米軍キャンプの仕事をしたという話を読んだ記憶があります。

また、デイヴ・クラークはドラムを叩かなかったのではないか、という疑いを、ライアンは一笑に付しています(チラッとその疑いが生じる曲もわずかにあるが、わたしはDCはスタジオでプレイしたと考えている)。

そのくだりで話題になった曲を貼りつけます。バラッドばかりでは退屈するので、こんどはロッカーです。デイヴ・クラーク&マイク・スミス作。

The Dave Clark Five - No Time to Lose


もちろんロン・ライアンは、この曲もDC自身が叩いた、と証言しています。ちょっと手こずってテイクを重ねたが、最後はきめた、と。ユーチューブの音質では魅力が伝わりませんが、本物を聴くと、ドラム小僧は燃えます。

Do You Love MeかTwist and Shoutの焼き直しのようなシンプルな曲ですが、たしかに、このドラム・イントロはちょっとしたものです。DCにはこういうガッツがあるから、マックス・ワインバーグやわたしのような当時の子ども(いっしょにしてすまん>マックス)は、DCのプレイに惚れて、ドラマーになりたい、と切に願ったのです。

ファン・サイトにはQ&Aがあり、彼らは自分たちでプレイしたのか、なんて設問もありますが、アンサーは「断じて絶対にイエス!!!」となっています。そういう疑いがもたれた理由のひとつは、残された映像がみなリップ・シンクだからだそうです。

また、同時代のバンドに比べて、コード進行が複雑な曲が多く、ストイックでプロフェッショナルなプレイ・スタイルであることも、疑いをもたれる原因なのだとか。

このあたりは長年のファンにとっては非常に興味深いところです。ギターのレニー・デイヴィッドソンなんか、ソロは極度にシンプル、でも、バッキングではときおり光るプレイがあって、おや、と疑いが湧きます、ホントに。

またデイヴ・クラークのドラミングというのが面白いのです。けっこうミスをするのですが、タイムはきちんとしています。彼がいうように「バディー・リッチなどではない」のですが、当時のロック・コンボのドラマーとしては優秀で、プロデューサー的センスのすぐれたドラミング設計をしています。たんに、たとえばDo You Love Meにあらわれたように、ドラミング設計意図をつねに百パーセント実現するだけのテクニックを持ち合わせていなかったにすぎません。

バンドのドラマーはテクニックで勝負するわけではなく、タイムとキャラクターが重要です。その意味で、デイヴ・クラークは立派なレジデント・ドラマーでした。なにしろ彼自身がプロデューサーであり、マネージャーだったのだから、理想的な状況でもありました。

ふたたびバラッドを。デイヴ・クラークと、サックスのデニス・ペイトン作。

The Dave Clark Five - To Me


リード・ヴォーカルはマイク・スミスには聞こえません。ひょっとして、デニス・ペイトン自身がリードをとったのでしょうか。マイクをくわえて生まれてきたようなマイク・スミスに匹敵する技量ではありませんが、おおいに魅力的な声で、スミスの厚みのある声といいコントラストをなしています。

DC5はしばしば集団になって疾走するようなヴォーカル・アレンジをするので、サウンドの塊として聴いてしまうのですが、その気で聴くと、スミス以外の声が前に出ている曲もかなりあります。しかし、全体的にはよくミックスして、個々の声の違いを意識しないことも多く、この点はDC5のひとつの特徴であり、魅力でもあると感じます。

つぎもまたミディアム・バラッドです。デイヴ・クラーク&レニー・デイヴィッドソン作。

The Dave Clark Five - Everybody Knows (I Still Love You)


リードはマイク・スミスだと思うのですが、三人ほどが団子になって歌っているところがあり、はっきりしません。一番目立つのはスミスの声だというだけです。

DC5の後年のヒットに、Everybody Knowsという曲があって、まぎらわしいのですが、こちらは(I Still Love You)がくっついています。どちらもいい曲なので、たぶんもう一曲のほうもこのシリーズでご紹介することになるでしょう。

どなたもご存知の初期のバラッド・ヒット、日本ではDC5はこの曲だけと思われているBecauseはオミットしましたが、アメリカでの三枚目ぐらいからバラッドの佳曲がつぎつぎと登場し、ため息が出るような豊穣がはじまります。

つぎは、のちに映画『五人の週末』にも登場することになるバラッドの秀作です。デイヴ・クラーク&レニー・デイヴィッドソン作。映画からとったクリップで。

Dave Clark Five - When (from a John Boorman film "Having a Wild Weekend")


デイヴ・クラーク自身が書いたラインでしょうか、ファースト・ヴァースを聴くたびにちょっとしたセンティメントを感じます。

When the world looks dark all around you
All you need is love, I know
All your doubts and fears will disappear
And turn into song

すべての疑いと恐れは消え、やがてそれは歌へと昇華されるだろう、というのですからね。ロックンロールの歌詞のなかでももっとも好きなラインのひとつです。われわれ子どもにとって、音楽とはまさしく、疑いと恐れを雲散霧消させるための装置だったのですから。

しかし、DC5ではだれがヴォーカル・アレンジをしていたのでしょうか。わたしは正統的なハーモニーというのは好まず、ビーチボーイズやアソシエイションのヴォーカル・アレンジには退屈してしまいます。

それはたぶん、ロックンロールにのめり込んだ小学校の終わりが、ブリティッシュ・ビート・グループの全盛にぶつかったためだと思います。ジョン&ポールを筆頭とする、彼らのイレギュラーなヴォーカル・アレンジがつねに身近にあったせいであり、とりわけDC5のハーモニーを死ぬほど繰り返し聴いたからなのだと思います。

Whenも変なハーモニーが大きな魅力になっていますが、つぎも、ハーモニーが変なところに行くので、メランコリーが気にならなくなる曲です。同じくデイヴ・クラーク&レニー・デイヴィッドソン作。

Dave Clark Five - Crying Over You


メロディーを歌っているのはマイク・スミスだと思います。ハーモニーのほうはだれの声かはわかりませんが(レニー・デイヴィッドソンか?)、これが典型的なDC5スタイル・ヴォーカル・アレンジだとわたしは考えています。

ただし、しばしばワン・ノート・サンバ状態のシングル・ノートのお経じみたラインになるのは、たとえば、ピーター&ゴードンやサーチャーズなども使っている手法です。DC5の場合、それが固有のスタイルに聞こえるほどなのです。

バラッドで静かに終わる予定だったのですが、ごく初期のラウド&ヘヴィー・ヒットに戻って今回は終わることにします。デイヴ・クラーク&マイク・スミス作。

Dave Clark Five - Bits and Pieces


この曲をビートの面からではなく、ハーモニーの面から聴くという外道なことをやると、DC5って変なバンドだなあ、と思います。左チャンネルは間違いなくマイク・スミスですが、右はマイクのダブルなのか、あるいは別人なのか。まあ、ストップタイムでシャウトするところを聴くと、右もマイクのようですが。

だれがハーモニーを歌ったのであれ、こういう曲調で、こういうコーラスをやってしまうというのは、よく考えるとかなりunusualなことです。当時はモノーラル盤しか知らなかったので、ぼんやり聴き過ごしていましたが、ステレオ・ミックスをはじめて聴いたときは、えー、こんなだったのかよー、と驚きました。

いやはや、DC5は語っても語っても語り尽くせず、中途半端なところですが、以下は次回へと。


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by songsf4s | 2011-09-03 23:51 | ブリティシュ・インヴェイジョン