Now Listening プロコール・ハルム「All This and More」ボックス
 
今日は終日出かけていたので、軽くプロコール・ハルムのボックスについて。

昔は好きなドラマーがたくさんいました。その後、だんだんストライク・ゾーンが狭まってしまったのですが、ざっと見渡して、ドラマーが嫌いだったバンドは、大人の目で見ても、やはり、ドラマーが下手なうえに魅力がないし(チャーリー・ワッツ、ジンジャー・ベイカー)、ドラマーが好きだったバンドは、上手いか(ボビー・エリオット、ジョン・ボーナム)、または、下手でも魅力がある(デイヴ・クラーク、キース・ムーン)と感じ、とどのつまりが、小学校、中学校の自分の好みに、修正を加える必要はまったく感じません。

とりわけ、プロコール・ハルムのB・J・ウィルソンは、昔も今もドラミングを聴く喜びを与えてくれます。

まずは一曲、セカンド・アルバムからそのオープナー、Quite Rightly So



デビュー・ヒット、A Whiter Shade of Pale(海外ではAWSoPと略す。オーソップと発音するのだろう)はセッション・ドラマーによるものでした。直後にメンバーの入れ替えがあり、かつてブルッカーとR&Bバンド(パラマウンツ)でプレイしたB・J・ウィルソンとロビン・トロワーが呼ばれ、結局、パラマウンツ+マシュー・フィッシャーといった感じで最初の3枚のアルバムが録音されます。

デビュー盤のアルバム・トラックにもいくつかいいプレイがあり、自分のバンドのドラマーといっしょに、すごいすごいと騒いでまわりました。ファーストから一曲。マシュー・フィッシャー作、悔い改めよワルプルギス、別名、Jun, clasical elegance

Procol Harum - Repent Walpurgis


わたしはスネアで16分のパラディドルを叩くBJが大好きです。彼の最大の特徴はそこにあります。うまく分析できないのですが、ひとつは、弱く入って出口は強く、というクレッシェンドを使っている(ハル・ブレインもよくやる)から、目立つのだと思います。

たとえば、これはセッション・ワークですが、ジョー・コッカーのWith a Little Help from My Friendsでも、そういう16分のパラディドルが出てきます。



ユーチューブにはこの曲のライヴがいくつかありますが、Mad Dogs and Englishmenツアーは、ジム・ゴードンとジム・ケルトナーの史上最強ダブル・ドラムによる凄絶なプレイ、ひとつは馬鹿もいい加減にしろという、ボロボロ・ツアー・バンドによるテレビ・ライヴ(たぶん)、もうひとつはこれまたひどさもひどし、小学生のようなツアー・バンドによるウッドストックのライヴです。

Mad Dogs and Englishmen - With a Little Help


完全にイッちゃっているジム・ゴードンがすげえものです。畢生の名演。ミュージカル・ダイレクターはリオン・ラッセル、彼はギターとピアノもプレイしました。ベースはカール・レイドル。豪華ツアー・バンドでした。

ジム・ケルトナーは、このツアーでずっとジム・ゴードンのとなりでプレイしたのは、いい勉強になったと回顧しています。

しかし、上手い人というのは、16分のパラディドルで似たような抑揚を使うものです。並べてみて感心してしまいました。

ジム・ゴードンはいちおう参考にB・J・ウィルソンのプレイを聴かされたのでしょう。たぶん、それで、この曲については、BJのパラディドルのイントネーションを引き写してみたのではないでしょうか。あっさり、きれいに、コピーしたと思います。

だれかのプレイをいいと思って、一丁やってみるかと、ほんとうに精確にコピーできるのは、上手い人だけです。いや、後半に登場する、二人のユニゾンによる、フォルテシモのロールは、BJの引き写しなんかではなく、「二人のジム」にしかできない強烈なプレイだと思います。

◆ All This and Moreボックス ◆◆
よけいなことばかり書いているから、肝心なAll This and Moreボックスについてふれる余裕があまりなくなってしまいました。

3枚のCDとDVDによるこのボックスは、基本的にはライヴ・ボックスという感じです。ベスト盤部分もあるので、徹底性に欠け、それが欠点といえるでしょう。だって、もうベスト盤も、アウトテイク盤も、われわれはみな聴いたわけで、あとはライヴでのプレイにしか興味がないのはわかりきったことです。

ベスト盤で注釈しておくべきは、Repent Walpurgisは、当時のLPと同じ短縮版が収録されているということ、それから、In the Wee Small Hours of Six Penceは、シングル・ヴァージョンが収録されている、ということぐらいでしょうか。

Procol Harum - In the Wee Small Hours of Six Pence


このクリップは45ヴァージョンです。マシュー・フィッシャーのオルガンも、B・J・ウィルソンも活躍しないので、はっきりいってこのヴァージョンはよくないと思います。とくに、あたくしはゲーリー・ブルッカーのヴォーカルごときには毫も興味がない人間ですから。

プロコール・ハルムとは、わたしの観点からは、マシュー・フィッシャーのハモンドとB・J・ウィルソンのドラムなのであって、あとはなんだって適当なものでかまわないのです。

30周年記念ボックスから、アウトテイクのほうのIn the Wee Small Hours of Six Penceを。

サンプル Procol Harum "In the Wee Small Hours of Six Pence"

一カ所、フィルインの途中でスティック同士を叩き合わせるミスをしていますが、こちらのほうがずっと変なプレイで、なかなか楽しめます。ドラミングはやはりチャレンジングであるべきなのです(とハル・ブレインのキャリアはわれわれに訴えかける)。

マシューはいつものようにすばらしいドロウ・バー・セッティングによる、この人にしかできないプレイをしています。

◆ オーセンティシティーの力強さ ◆◆
さて、肝心のライヴ・トラックですが、BJのプレイは、いいものもあれば、それほどでもないものもあります。CDでは、ディスク3のオープナー、New Lamps for Oldなんか、感銘を受けました。子どものころからずっと好きだった人がここにいます。

DVDは最近の録音のほうが時間が長いのですが、はじめのほうに数曲、1974年の録音があり、BJのドラミングを見ることができます。このDVDからの画像ではないのですが、以下のようなラインアップによるものです。

Procol Harum - The Unquiet Zone


BJといえばカウベル・プレイが気になりますが、DVDのオープナー、Bringing Home the Baconで派手なカウベルを聴けます。やっぱりドラマーは動いているところを見るのがいちばんです。

いつのことだったか、1972年だったように思いますが、武道館でBJを見ました。驚いたのは、スネアを胸の高さにセッティングしていたことでした。いつもそうというわけではないのですが、たまに異様に高くするときがあり、All This and Moreボックス収録のクリップでは、そういう状態を見ることができます。

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こうしてよく見ると、スネアを高くセッティングするのではなく、ストゥールを異様に低くしているのだとわかります。まあ、結果は同じことですが。教師についたら、こんな叩き方は即座に直されてしまうでしょうが、すでにできあがった上手い人は、好きなようにやればいいのです。

そろそろタイム・イズ・タイト。BJ没後のクリップが3分の2ほどを占めていますが、数曲でマシュー・フィッシャーがハモンドをプレイしています。他のメンバーはぞっとするほどひどいのですが、マシューがいると、やはり鶏群の一鶴、掃き溜めの鶴、すばらしい音がにじみ出てきて、そこだけは感銘を受けます。

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いつも、ハモンドはドロウ・バー・セッティングで決まると考え、このブログでも何度もそれを強調してきましたが、All This and Moreボックスを聴いても、年来の考えは間違いではなかったと感じます。

しかし、同時に、ドロウ・バーは重要だけれど、やはりそれだけではないことを確認しもします。たいした抑揚などつけられない楽器なのに、やはりプレイヤーによって大きな違いが生まれることを、マシュー・フィッシャーのプレイは教えてくれます。

いわずもがなですが、それ以外のトラック、つまり、BJもマシューもいないものは、DVDから削り取りたくなります。凡庸なドラム、退屈なヴォーカル、くだらないギター、「闘牛の額のような愚劣」そのものです。


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by songsf4s | 2011-08-03 23:48 | 60年代