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Hal Blaine Takes You to Surfin' Vol. 2
 
本日も引きつづき、ハル・ブレインがプレイしたサーフ&ドラッグ・チューンないしはビーチ&ビキニ・チューンです。

まずは、わたしが知るかぎり、唯一ソングライター・クレジットにハル・ブレインの名前がある曲を。ハル・ブレイン、ブルース・ジョンストン共作、アルバム、Surfin' Around the Worldより、ブルース・ジョンストン、Down Under



「下のほう」とは、地図の南のほうのことで、つまりオーストラリアでサーフィンしようという歌です。

キンクスのAustraliaという曲に、We'll surf like they do in the USA, we'll fly down to Sydney for a holiday, on a sunny Christmas day in Australiaというラインがありましたが(いやっていうほどシングアロングしたので、たぶん死ぬまで忘れない)、ブルース・ジョンストンはそれよりもずっと以前に、南半球でのサーフィンを歌っていたことになります。

ハル・ブレインはHal Blaine & the Wrecking Crewのなかでブルース・ジョンストンにふれ、ビーチボーイズの仕事をする以前、すでにブルースとはいっしょにやったことがあった、才能あるキーボード・プレイヤーだった、といっています。

ハル・ブレインがビーチボーイズの仕事をしたのはいつか、という問題があるのですが、これが微妙なんです。多数派は1963年1月録音のSurfin' USAから、という立場だろうと思います。



しかし、これはディテールを忘れてしまったのですが、もう少し以前の曲からすでにプレイしているとしているソースもありました。そういうことをきっちり検討しはじめると、また話が面倒になるので、今日のところは切り上げます。

Surfin' USAについてはいくつかのパーソネルを見ましたが、たとえばライノのCowabunga the Surf Boxの記載は納得がいきません。そうしたデータにもとづくわたしの推定は、ドラムズ=ハル・ブレイン、ベース=レイ・ポールマン、ギター=ビリー・ストレンジおよびキャロル・ケイです。これが初期ビーチボーイズの基本パーソネルでしょう。つまり、実体はヴェンチャーズ!

つぎはちょいとナックルボール、というほどひねくれていませんが、アヴァランシェーズ、Ski Surfin'



この曲については、以前、Ski Surfin' by Avalanchesなる記事に詳細に書いたので、ここではごく簡単に。

ギターはビリー・ストレンジとトミー・テデスコという両エース、この曲ではヴァースを弾いているのがビリー・ザ・ボス、あとから登場し、豪快なピッキングを見せるのがトミー・テデスコと推定しています。

キーボードはグレン・キャンベルをスターにしたキャピトル・レコードのインハウス・プロデューサー、アル・ディローリー、ベースがのちにブレッドで有名になるデイヴィッド・ゲイツ、ペダル・スティールがウェイン・バーディックです。

あたくしは子どものころからのギター・インスト・ファンですが、この曲をタイトルとしたアヴァランシェーズの唯一のアルバムは、星の数ほどあるギター・インストのベスト3には間違いなく入れます。トップといっちゃったってかまわないのですが。

ハル・ブレインが録音した四万曲のうち、いくつあるでしょうか。ほんの一握りであることは間違いないでしょう。ハル・ブレインのドラム・ソロのあるギター・インスト、Tボーンズ、White Water Wipe Out



Tボーンズは、よそのレーベルが、マーケッツとかラウターズといった、テキトーにでっちあげた架空のインスト・バンドで儲けているのを黙って見ている手はないと、リバティーがつくった自前の架空バンドです。実質的によそのバンドと同じバンドなのに、なぜかヒットが出ませんでした。

結局、マーケッツやラウターズの生みの親であり、それまではロサンジェルス特有の音楽だったサーフ・ミュージックを、最初にナショナル・チャートに送り込んだ(Surfer's Stomp)ジョー・サラシーノを招いて、やっとのことでNo Matter What Shape (Your Stomack's in)という大ヒットが生まれます。

ヒットかミスかの岐れめはどこにあるかわかったものではありませんが、このBoss Drag at the Beachというアルバムに収録された曲と、のちのヒット作をくらべると、ギター・インストはギターが活躍しすぎると失敗する、というパラドキシカルな原則を思いつきます。

結局、ギター・インストというのは、派手なギター・プレイを聴かせるものではなく、トータルなサウンドを聴かせるものなのだろうと思います。

といっても、わたしは派手なギターが好きなので、ヒットしようとしまいと、ギターが豪快にすっ飛ばすギター・インストは、おおいにけっこうだと思います。ということで、成功しなかったTボーンズの曲をもうひとつ。

Tボーンズ Haulin' Henry


途中から左チャンネルに入ってくるギターはだれでしょうか。こういうタイプの強引なプレイは、よくグレン・キャンベルがやっていましたが、この曲のギターはグレンよりピッキングが荒っぽいと感じます。ひょっとしてジェリー・コール?

前回も今回も、全力疾走の曲が多いので、ここらですこし遅めの曲を。ブルース&テリー、Don't Run Away



ヴァースはブルース・ジョンストン、ブリッジはテリー・メルチャーのヴォーカル。こういう曲でも手加減なしで、がんがんフィルインを投入してくるのがハル・ブレインらしいところです。

ブルース・ジョンストンも多くの場合、ハル・ブレインですが、テリー・メルチャーは、ハルの信奉者といっていいほどだったようです。CBSのプロデューサーとしてバーズをデビューさせたときは、もちろんハル・ブレインがストゥールに坐っていました。

そこまでは当然として、ずっと後年、Easy Riderのころだったか、またロジャー・マギンに、つぎのアルバムではハルを呼ぼう、といったそうです。まあ、半分は、例によって「ヒットのお守り」みたいな験かつぎだったのでしょうが。

つづいて、ハル・ブレインをキングに押し上げたフィル・スペクターのシングルで、アレンジャーをつとめたジャック・ニーチーが、レコーディング・アーティストとしてヒットさせた、めずらしいオーケストラ・サーフ・インスト、The Lonely Surfer



最初にリードをとるのはダノですが、プレイヤーはたしかビル・ピットマン、6thを入れつつのリズム・ギターはトミー・テデスコだったと思います。さすがはジャック・ニーチー、サーフ・ミュージックの歴史のなかでも、とりわけ異色あるヒット・シングルを残しました。フレンチ・ホルンが効果的。

つぎはふたたびブルース&テリーがらみで、彼らがすべてお膳立てをし、パット・ブーンのヴォーカルだけをのせたバラッド。

パット・ブーン Beach Girl


どういう企画だったのかと思いますが、まあ、時代からズレにズレてしまったパット・ブーンをなんとかすることはできないか、という話だったのでしょう。

さすがに、ブルース&テリーのつくったトラックおよび彼らのバックグラウンド・ヴォーカルと衝突するような愚かなことはしていませんが、やはりアーティスト・イメージというのはいかんともしがたいと感じます。あの姿でサーフ・バラッドはないでしょう。

ビーチボーイズ・ファンはお気づきでしょうが、この曲がベースにしたのはおそらくブライアン・ウィルソンのあの曲。もちろん、ハル・ブレインがストゥールに坐りました。

ビーチボーイズ Don't Worry Baby


どちらも間奏がギター・カッティングだけというのがすごいものです。まあ、これでも用は足りてしまうのですが。

リストアップした曲はまだ相当数残っているので、あと一、二回はこのシリーズをつづけようと思っています。


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ブルース・ジョンストン
Surfin' 'round the World!
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ブルース&テリー
The Best Of Bruce & Terry
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アヴァランシェーズ
Ski Surfin
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ビーチボーイズ
Surfin Safari / Surfin Usa
Surfin' Safari / Surfin' USA


ビーチボーイズ
Surfer Girl / Shut Down 2
Surfer Girl / Shut Down 2


ジャック・ニーチー
Jack Nitzsche Story: Hearing Is Believing
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パット・ブーン
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by songsf4s | 2011-07-25 23:55 | ドラマー特集