例によって、散歩ブログも更新しました。
若いツバメ、ウェディング・ドレス仕立てのアジサイ、ねむの木
どうやら、このようにお知らせすると、当家のお客さんの50人におひとりぐらいはあちらを訪問してくださるようで、ありがたいことです。
◆ Shake It Up Baby ◆◆
バート・バーンズ(またはラッセル・バーンズ、バート・ラッセルなど)の名前をご存知ない方でも、この曲はご存知でしょう。
アイズリー・ブラザーズ Twist and Shout
トップノーツによるオリジナルはフィル・スペクターがプロデュースしましたが、作者自身がプロデュースしたこのアイズリーズ・ヴァージョンではゲーリー・チェスターがストゥールに坐りました。
わたしはビートルズのヴァージョンから入ったので、あとからこれを聴いたときは、かなりがっかりしました。この程度かよ、とジョン・レノンのレンディションがすばらしかったことを再認識しました。あたりまえです。先行ヴァージョンのほうがすごかったら、そちらがビートルズ以上にビッグになっていたにきまっています。
しかし、公平にいって、ビートルズより数段軽いアイズリーズ・ヴァージョンは、フィル・スペクターがプロデュースしたオリジナルにくらべればずっとビートが重いのです。
トップ・ノーツ Twist and Shout
改めて並べてみて、これはフィル・スペクターにとって、ちょっとしたレッスンになったのではないかと思いました。この落差による位置エネルギーの蓄積が、ハル・ブレインという豪腕健脚に出会って、ロネッツのBe My Babyのビートを生む結果になったのではないでしょうか。わたしが二十一歳で、フィル・スペクターだったら、この失敗を肝に銘じ、いつの日か、ヘヴィー・バックビートで捲土重来を果たすと誓ったでしょう。
耳タコでしょうが、この2ヴァージョンを聴いたあとでは、また異なった展望が開けるにちがいないので、THE REAL THINGも貼り付けておきます。
ビートルズ Twist and Shout (remastered stereo)
十二歳の子どもがショックを受けるのはどのヴァージョンか、考えるまでもないでしょう。どのヴァージョンがもっともソウルフルであるかも同断。
◆ Tell Him ◆◆
バート・バーンズがどういう人物かをご紹介するために、有名な曲のたいしたことのないヴァージョンから入ることになってしまいましたが、つぎは大ヒット曲です。この日のために、「祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その6 リーバー&ストーラー篇」のときも、「その7 ガール・グループス&シンガー」のときも、取り上げずにすませたのです。
バート・バーンズ作、ジェリー・リーバー&マイク・ストーラー・プロデュース、ゲーリー・チェスター・オン・ドラムズ。
エクサイターズ Tell Him
山ほどある同じクリップのなかから最善のものを選びました。ほかはノイジーです。ヴィデオGirl Groupsでも、このプロモーション・フィルムが使われていました。なんで白熊なんだよー、ですが。
チェスターのプレイがどうのという以前に、いかにもこの時代のNYのグルーヴという感じで、わたしの場合、このあたりは後追いなのですが、無意識のうちにこういう音が体に染み込んでいたのだなと思います。わたしよりちょっと上の世代なら、こういうのは無条件でOKでしょう。
チェスターは一小節おきに四拍目をロールさせるというunusualなプレイをしています。いまでもちょっと耳を引っ張られるくらいなので、オーソドクシーの時代にはいいフックになったでしょう。エンディング近くでハイ・トーンを入れるところも含め、このアップライト・ベースも好みのプレイヤーです。名前知りたし。
◆ 心のかけらはさておき、せめてセンスのかけらを ◆◆
つぎの曲は、ジャニス・ジョプリンのヴァージョンで知ったのですが、あとからオリジナルを聴いて、そちらのほうを好きになりました。バート・バーンズ作およびプロデュース、ゲーリー・チェスター・オン・ドラムズ。
ガーネット・ミムズ&ディ・エンチャンターズ Cry Baby
こういうオーソドクスなR&B風味のほうが、わたしにはずっと好ましいものに感じられます。このガーネット・ミムズ盤がリリースされたのと同じ1963年、ハル・ブレインはフィル・スペクターのクリスマス・アルバムで、ブラシによるヘヴィー・ヒットを多用しますが、この曲ではチェスターもブラシでヘヴィー・バックビートを叩いています。たんなる偶然でしょうけれど。
ゲーリー・チェスターは関係ないのですが、いちおうジャニス・ジョプリンのヴァージョンも貼り付けておきます。
ジャニス・ジョプリン Cry Baby
わたしはジャニス・ジョプリンのファンではないので、うまいとは思うのですが、あまりなじめません。ホールディング・カンパニーにも、フルティルト・ブギー・バンドにも、子どものころから、なんなのこいつら、と怒っていました。タイムが合わないと、生理的嫌悪が先に立ってしまうものです。
ジャニス・ジョプリンの代表作は、もちろんまたしてもチェスターとは関係ありませんが、やはりバート・バーンズの曲です。ドラムとベースには耳をふさいだほうがいいと警告しておきます。って、無理か。
ジャニス・ジョプリン Piece of My Heart
こういうドラマーに対しては殺人衝動が起きます。口直しにオリジナル・ヴァージョンを貼り付けます。バート・バーンズ作&プロデュース。
アーマ・フランクリン Piece of My Heart
人はスターのみにて生くるものにあらず、サウンドも同等またはそれ以上に重要です。わたしは、ヴォーカルが出鱈目でも、アレンジとサウンドがよければそれで十分、逆に歌がすばらしくても、バンドがヘボならまったく聴く気になりません。ジャニス・ジョプリンというシンガーに、ついに興味をもたなかった所以であります。
なにが悲しくて、あんなバンドを聴かなければいけないのだ、これほど無数にすぐれたドラマーのトラックがあるというのに、と英作文の試験問題のようなことを思うのでした。
バート・バーンズとゲーリー・チェスターのトラックはまだ相当数あるのですが、本日はここまで。改めて後篇をやるなり、雑纂篇で他と入れ込みにするなりで、補足する可能性もなくはありませんが、ネグってしまうかもしれません。
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バート・バーンズ
Twist and Shout: The Bert Berns Story Vol. 1 (1960-1964)
バート・バーンズ
Bert Berns Story Mr Succes 2: 1964-1967
フィル・スペクター(トップ・ノーツのTwist and Shoutを収録)
Early Productions
ライノ・ガール・グループス・アンソロジー(Tell Him収録)
The Best Of The Girl Groups, Vol. 2
ガーネット・ミムズ&ディ・エンチャンターズ
Cry Baby
アーマ・フランクリン
Golden Classics Edition