ローラ・ニーロのR&Bカヴァーとオリジナル6 Spanish Harlem その5
 
Spanish Harlemの残るインストものを列挙すると、サント&ジョニー、チェット・アトキンズ、アル・カイオラ、パーシー・フェイス、リオン・ラッセル、アッカー・ビルクのものがあります。やはりどれも残りものの雰囲気で、これぞというものはもうありません。

パーシー・フェイス 前半のみ


リオン・ラッセルのものは、なにかべつの曲だったら、こういうサウンドも悪くないと思ったでしょう。でも、Spanish Harlemのメロディーの美しさを引き出す方向ではなく、どちらかというと逆方向へと向かったラテン・アレンジなのです。

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リオン・ラッセルはロックンロール史上もっともすぐれたピアニストのひとりです。Spanish Harlemでのピアノ・プレイは、やっぱりリオンらしいな、とは思うのですが、一小節聴いただけで感嘆した、かつてのキレ、凄味は消えてしまい、丸みのあるプレイをしています。好みでいうなら、わたしは昔のほうをとりますが、ああいう抜き身の刀じみた鋭さ、抜けば玉散る氷の刃みたいなキレより、こちらのほうに温かみを感じる人もいらっしゃるかもしれません。

インストものについては、あとから聴きなおしてもやはりエキゾティック・ギターズとハーブ・アルパートがベストと感じます。どちらもハル・ブレインだからかもしれませんが。

オーケストラものは三種類、あまりはずさないパーシー・フェイスがいちばんつまらなくて、レス・リードとノリー・パラマーは甲乙つけがたく感じます。

いずれにしても、インストは、ヴォーカルもののように即ゴミ箱行きというひどいものはありません。しいて云うと、アッカー・ビルクのヴァージョンは嫌いですが。

◆ 二種類のママズ&パパズ ◆◆
ヴォーカルの残りも列挙でしておきます。ジェイ&ディ・アメリカンズ、トム・ジョーンズ、フレディー・スコット、ニール・ダイアモンド、そしてママズ&ザ・パパズ。

トム・ジョーンズはチープなIt's Not Unusual新録音という感じのアレンジ、サウンドで、だれかがなにかを勘違いしたために起きた事故でしょう。フレディー・スコットはオーソドクスなアレンジですが、声が渋すぎて不似合い、ジェイ&ディ・アメリカンズは元来虫が好きません。

ママズ&ザ・パパズ ライヴ(モンタレー・インターナショナル・ポップ・フェスティヴァル)


うーん、ドラマーがすべてを決める、といいたくなります。イントネーションというものの意味がわかっていないか、または、わかっていても、左手首が硬くて適度な強さでスネアをヒットすることができないのか、まったく困ったものです。ジョー・オズボーンのフェンダー・プレシジョンがブーンとくるところは、やはり楽しいのですが。

ママズ&ザ・パパズは、ほんの十数回だったか、その程度しかステージに立ったことがないそうです。売れに売れたアーティストの強みで、パブリシティーはテレビだけで十分だったのかもしれません。でも、まじめにツアーをやれば、もっと長生きできたような気もします。まあ、それができるならしていたはずで、なにかできない事情があったのでしょう。

このSpanish Harlemを聴けばわかるように、ママズ&ザ・パパズはハーモニーがどうのこうのというほどの力はないグループだったと思われます。歌えるのはキャス・エリオットとデニー・ドーハティーのふたりだけ、ジョンとミシェールのフィリップス夫妻は、枯れ木も山の賑わい程度のことしかしていません。

しかし、それでもなお、単独ではだれもとくに魅力的ではなく、グループとしての集合的な魅力があったのは間違いのないところで、そこがなんとも面妖です。また、ジョン・フィリップスというソングライターがいなければ、どこにも行き着かなかったこともまちがいありません。冷静に考えれば、我慢して四人でやるべきだったと、あとでみな後悔したのではないでしょうか。

さて、やっぱりデニー・ドーハティーとキャス・エリオットの声ばかり耳立つヴァージョンですが、ママズ&ザ・パパズはSpanish Harlemをスタジオでも録音しています。

ママズ&ザ・パパズ Spanish Harlem(スタジオ録音)


ハル・ブレインはいなかったか、いてもパーカッションをプレイしただけでしょうが、ライヴと違って、こちらはなかなかいい出来で、二番目にすぐれた歌ものSpanish Harlemだと思います。やっぱり、デニー・ドーハティーとキャス・エリオットというのはいいコンビだったのかもしれません。

◆ さてナンバー1は? ◆◆
Spanish Harlemのその1のときに、ローラ・ニーロのヴァージョンについての判断は先送りすると書きました。まとめてぜんぶ聴けば、考えが変わる可能性もあると思ったのですが、そういうことはありませんでした。ヴォーカルもののSpanish Harlemとしては、ローラ・ニーロ盤がベストだと、昔から考えています。

その1であげつらったように、歌詞のジェンダーの問題はあるのですが、面倒だから、もうレズビアンの歌だということにしてしまえば、べつに矛盾を感じずに聴くことができます。

歌声と楽曲に乖離がないSpanish Harlemはローラ・ニーロのカヴァー、つぎに居心地が悪くないのはママズ&ザ・パパズ盤、でもやっぱり、エキゾティック・ギターズやハーブ・アルパート&ザ・TJBやレス・リードやノリー・パラマーといったインストのほうがさらに好ましい、というのがわたしの結論です。


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ローラ・ニーロ
Gonna Take a Miracle
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ママズ&ザ・パパズ
If You Can Believe Your Eyes & Ears
If You Can Believe Your Eyes & Ears
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by songsf4s | 2011-01-25 23:51