ニック・デカロのItalian Graffitiのオリジナル9 Canned Music

どうせだれも聴かないからすぐに消すことになるだろうといった、前回のアラン・プライスのBetween Today and Yesterdayは、多くはないものの、ふつうにアクセスがあり、あらら、でした。

どうせだれも聴くものか、という野村ボヤキ節のコピーが興味を惹いたのか、そこまでいうなら聴いてやるか、という同情票なのか、なんだかわかりませんが、とりあえず消すわけにはいかないぐらいにはアクセスされています。いや、だからといって、傑作の、名作のと、空疎な言辞を弄して、蒙昧なメー盤犬の仲間入りはしませんけれどね。まあ、35年間聴いているのだから、それほど悪い曲ではないだろうと思います。

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アルバム自体も、アラン・プライスの代表作であることはまちがいありません。でも、代表作だろうがなんだろうが、興味のないシンガーのものは、傑作も駄作も同じ価値しかないのです。メー盤犬の耐えがたい愚昧さは、この簡単な真実に気づかないところにあります。関係ないやつの盤は、たんに関係ないだけであって、傑作も駄作もないのです。闘牛の額のような愚劣、といった詩人はだれでしたっけ?

◆ Canned Music ◆◆
ニック・デカーロのItalian Graffiti、今日はB面の4曲目、Canned Musicです。当然、この曲もあるだろうと思ったのに、クリップがないので、自前サンプルをアップしました。アナログ・リップです。ぜんぜんノイジーではないので、たぶん、いわなければわからないだろうと思いますが。

サンプル Nick DeCaro "Canned Music"

先日のWhile the City Sleepsほどではないにしても、これまたオリジナルから遠ざかったサウンドになっています。オリジナルは作者ダン・ヒックス自身のヴァージョン。

サンプル Dan Hicks "Canned Music"

さあて困ったぞ。わたしが先に聴いたのはニック・デカーロのカヴァーのほうで、ダン・ヒックスのオリジナルは数年前にはじめて聴きました。こういう先後は印象を左右してしまうことが多くて困るのです。先の勝ち、後の負け、となることが多いでしょう。

ダン・ヒックスのオリジナルを聴いての第一印象は、なんだブルーズじゃんか、でした。そして、連想したのがこの曲。

ニルソン Put the Lime in the Coconut


ニルソンのほうはさらに単調で、呪文化がいっそう進行していますが、でも、似たような手触りのある曲です。この曲、ドラムはジム・ゴードンなのか、ジム・ケルトナーなのか、さすがに気持のいいグルーヴです。

オリジナルとカヴァーのCanned Musicをくらべてみて、気になったのは、ニック・デカーロはどうやって単調な呪文ではなく、ふつうの曲のように聞かせるのに成功したのか、です。

テキトーなあてずっぽうを云うだけなので、あまり本気にせず、読み流していただきたいのですが、ひとつはもちろんテンポです。ニック・デカーロはダン・ヒックスより少し速くしていますし、そのうえ、ドラムがはっきりしたバックビートを叩いていることが、輪郭を明瞭にするのに寄与しています。

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ニック・デカーロの歌い方も「楷書」で、崩していないので、呪文ではなく、メロディーとして認識しやすくなっていると感じます。おっそろしくスクェアな歌い方をしています。まあ、素人は妙に崩さないほうが無難ですけれどね。ニック・デカーロの歌い方が真四角だと認識したのは、語りに近いダン・ヒックスのグズグズの崩し方を聴いたからなのですが。

もちろん、アレンジもシンプルなブルーズのゴツゴツした構造を覆い隠すのに役立っています。こういうふうに、ブルーズに甘味を与えるアレンジというのは、伊勢佐木町ブルースみたいになってしまう危険と隣り合わせていて、案外むずかしいと思うのですが、ニック・デカーロはうまくやったと思います。

ニック・デカーロは、恐ろしく層の厚いハリウッド・アレンジャー陣のなかでは、よくいって3Aクラス、とても大リーガーとはいえませんが、こういうアレンジをたくさん書ければ、ビリー・メイ、ネルソン・リドル、ゴードン・ジェンキンズといったキングたちには及ぶべくもないにしても、アーニー・フリーマンの足元ににじり寄るぐらいのところまではいけたのではないでしょうか。

ニック・デカーロのCanned Musicはよくできている、ということを確認したうえでいいますが、最近はダン・ヒックス盤のほうが好きです。はじめの違和感が薄れると、呪文がきいてきて、単調さの美を感じるようになってきたようです。

ということで、この曲も勝負なし、双方に、お互いとは異なった魅力が備わっています。


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イタリアン・グラフィティ
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ダン・ヒックス
ダン・ヒックスとホット・リックス(紙ジャケット仕様)
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by songsf4s | 2010-12-21 23:56