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カーティス・メイフィールド・ソングブック3 I'm So Proud

I'm So Proudは話が枝分かれしてしまう面倒な曲なのですが、早くやってしまわないと、あとで苦労しそうなので、腹をくくって挑戦します。

まずはオリジナルのインプレッションズ・ヴァージョン。

インプレッションズ


ストレートなバラッドで、あまりいじりようがなかったのだろうと想像します。インプレッションズのアレンジが単調になってしまうのは、ひょっとしたら、カーティス・メイフィールドがそういうタイプの曲を書くからなのか、なんてことをいいたくなります。

仮にそうだとしても、このトランペットはなんなの、いらないでしょ、ということだけはいっておきます。どうしてこういうマヌケな譜面を書き、マヌケなプレイをするのでしょうか。トランペットが出てくるたびにコケます。

◆ 主たる材料 ◆◆
大物にいくまえに、中間のところを片づけます。

メイン・イングリーディエント


メインになるイングリーディエントは砂糖だったのね、というアレンジで、ここまで甘いと、甘味処に入り、汁粉を注文しておいて、いまさら、甘すぎる、とクレームをつけるわけにもいかねーか、というあきらめの心境です。でも、管と弦はなし、リズム・セクションだけで甘くしてあったら、好みだったかもしれません。オーボエだけは、なんとかしてくれ、と泣きが入りますが。

以上、地ならし終わり。ここからが八甲田山死の彷徨です。

◆ トッド・ラングレンの4段変速R&Bメドレー ◆◆
わたしがこの曲を知ったのは、トッド・ラングレンのカヴァーによります。

トッド・ラングレン I'm So Proud~Ooh Baby Baby~La La Means I Love Youライヴ


ほんとうは、このあとにさらにトッド自身のI Saw the Lightも接続されているのですが、このクリップでは聴けません。

どちらがいいかは微妙なところですが、とにかく、同じメドレーのスタジオ・ヴァージョンをサンプルにします。4曲をメドレーにし、どの曲もたぶんフル・ヴァース歌っているので、ランニング・タイムは10:36です。お聴きになるなら覚悟してからどうぞ。

ただし、I'm So Proudは最初にやっているので、そこだけ聴く、という手もありますが、そうすると、あとの展開がわからなくなるので、お時間と根気があれば、全曲通しで聴いておいていただければ好都合と愚考仕り候。いずれもトッドがハンド・ピッキングした佳曲です。

サンプル Todd Rundgren "Medley: I'm So Proud/Ooh Baby Baby/La La Means I Love You/Cool Jerk"

これが収録されたA Wizard, A True Starというアルバムは、トッド・ラングレンの諸作のなかでも群を抜く退屈さで、オリジナル曲はほぼ全滅といっていいと思います。このR&Bメドレーをのぞくと、ベスト・テープをつくったときに入れたのは、大マケにマケてJust One Victoryだけでした。

しかし、オリジナル曲の壊滅状態をおぎなうかのように、このカヴァー4曲のメドレーは魅力的でした。こういうのは、やはりやってみたくなるものなのでしょう。

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◆ 「リズム・セクション」はdrum'n'bassならず ◆◆
イントロのテナー(スタジオ、ライヴ、ともにトッド自身がプレイしたのだったと思う)をのぞけば、リズム・セクションだけの編成ですが、あ、そのまえにちょっと脇道。このあいだ、英語と日本語の両方で、立てつづけに「リズム・セクション」という言葉の非伝統的な用法を見たので、注釈しておきます。

最近のお子様のなかには、日米ともに、ドラムとベース「だけ」を「リズム・セクション」と呼ぶのだと考えている新派がいらっしゃるようです。伝統的なこの語の用法は違います。

「管楽器や弦楽器をのぞくパート」です。具体的には、ドラムとベースはもちろん、ギター、ピアノ、オルガン、パーカッションといった楽器のプレイヤーが構成するのが「リズム・セクション」です。ジャズのほうでいいはじめたことでしょう。

こういう定義じゃないと、「4リズム+4管の8人編成」といった決まり切った言い回しが理解できなくなるでしょう。ドラムとベースだけで4人ということはふつうはありません。4リズムの内訳は、多くの場合、ドラム、ベース、ピアノ、ギター、4管は、たとえばテナー、アルト、トロンボーン、トランペットなどという編成が考えられます。

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しかし、これでは語として不都合なことがあり、もっとも重要なロックンロール楽器である、ドラムとベースだけをまとめていうときは、われわれはしばしば「リズム隊」という用語を使っています。これで、注釈がなくても、かつてのAMM-BBSでは通用しました。「この盤はハルとジョーのリズム隊です」なんて、よく書いたものです。しかし、これに相当する英語は知りません。drum'n'bassという言葉はニュアンス、意味、用法が違いますからね。それでアメリカのお子様も、rhythm sectionという伝統的な熟語を誤用したのかもしれません。

話を戻します。トッド・ラングレンのI'm So Proudが成功したのは、やはりアレンジのセンスのおかげです。イントロはべつとして、あとはリズム・セクションだけの編成ですが、シンセを薄く入れて甘みを加え、苦みとのバランスをうまくとっています。お呼びでないトランペットがないだけでも安心して聴けます!

そう書いてあるのを読んだことがないので、ほかの人はあまり感じないのかもしれませんが、わたしはトッドのヴォーカル・アレンジも好きです。この曲もトッドらしいアレンジで、それも魅力のひとつになっています。まあ、しばしば自分で全パートを歌うので、アレンジ譜の問題というより、声の質の問題のほうが大きいかもしれませんが。

◆ さらに脇道をさぐって ◆◆
「カーティス・メイフィールド・ソングブック」という文脈のなかでは、話はこれで終わりといえば終わりです。しかし、メドレーの残りの曲を無視できないのが悪い癖で、いちおう出所を書いておきます。なお、今日のサンプルはトッド・ラングレンのメドレーのみで、ここから下はクリップだけです。

2曲目のOoh Baby Babyは、いわずと知れたスモーキー・ロビンソンの代表作。

スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ Ooh Baby Baby


スモーキー・ロビンソンのレンディションは圧倒的で、オリジナルにここまでやられてしまうと、カヴァーは苦戦を強いられます。それでもカヴァーしたくなるだけの魅力のある歌で、リンダ・ロンシュタット盤でこの曲を知った方もいらっしゃるでしょう。トッドのカヴァーもなかなか魅力的で、ならぬカヴァーするがカヴァー(ん?)といった無理矢理な印象はありません。

3曲目のLa La Means I Love Youは、フィリー・ソウル初期の立役者、デルフォニックスがオリジナルです。作者はトム・ベルとウィリアム・ハート。ベルにとってもまた初期のヒット。

デルフォニックス La La Means I Love You


最初にこれを聴いたときは、遅いなあ、と思いましたが、慣れると、悪くないヴァージョンと考えるようになりました。左チャンネルを占領しているいかにもフィリーというストリングスがポイントなのですが、わたしは、日によって、いいと思ったり、ショボイと思ったりします。人数僅少を面白いと感じたり、貧乏たらしいと感じたり、自分の精神状態が反映してしまうのでしょう。

わたしの判定は、4.5:5.5でトッドの勝ちです。テンポはトッドの判断が正しいと感じます。速くしたおかげで、過度の甘さに辟易することがなく、ロッカ・バラッドのさわやかさを獲得しています。まあ、フィリーの好きな方というのは、深夜のスケコマシ的ムードをよしとするのでしょうけれど。

締めのレヴ・アップ、Cool Jerkはキャピトルズのヒットです。といっても、このグループの曲はこれしかもっていませんが。

キャピトルズ Cool Jerk


本来、ジャークというステップのためのダンス・チューンなので、テンポはこれくらいが適当でしょう。いえ、ダンス・チューンか否かとは関係なく、トッドのヴァージョンは速すぎて面白みがありません。メドレーで、徐々に速くしていくというアレンジにしたため、最後は失敗してしまったというあたりです。まあ、シャレだから、それでいいのですが。

すでにロス・タイムに入っているのですが、さらにオマケで、Cool Jerkを2ヴァージョン。

ゴーゴーズ Cool Jerk


1990年のリリースだそうで、このあたりの音楽などまったく知りませんが、なかなかけっこうなヴァージョンで、ひょっとしたらキャピトルズよりいいかもしれません。

クリエイション Cool Jerk


いかにもブリティッシュ・ビート・グループらしいサウンド。どうせなら、スモール・フェイシーズあたりがやったら、もっと面白かったのではないでしょうか。スティーヴ・マリオットの歌でこの曲が聴きたくなりました。

これ以上枝分かれして八幡の藪知らずになるまえに、今日はこれにておしまい。


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by songsf4s | 2010-12-03 23:30