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カーティス・メイフィールド・ソングブック1 You Must Believe Me

ライヴのほうはしばしば聴いているのですが、昨日、じつに久しぶりにスタジオ録音のほうで、デレク&ザ・ドミノーズのWhy Does Love Got to Be So Sadを聴きました。

「ベスト・オヴ・ジム・ゴードン」には、ライヴのほうをリストアップし、スタジオ盤はオミットしてしまったのですが、両方とも入れておくべきでした。どちらのジム・ゴードンも、神が降り立ち、悪魔が取り憑いたビートを叩いています。彼の20年弱のプロ人生のなかでも、何回あったかという絶好調の日です。

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どちらもYouTubeにクリップがあるのですが、ドラムはやはり音質が悪いと興趣半減または「全減」で、あまり面白くありません。音像がボケて、スティックがいつヘッドをヒットしたのかが曖昧になってしまうからでしょう。

ベスト・オヴ・ジム・ゴードン再公開予告篇として、256kbpsファイルをサンプルにしました。

サンプル Derek & the Dominos feat. Jim Gordon on drums "Why Does Love Got to Be So Sad" (original rev-up studio ver.)

◆ 他人がなんといおうと ◆◆
なにもアイディアが浮かばなくなったので、以前、準備しかけて途中で投げ出してしまった企画を棚からおろして、しばらくカーティス・メイフィールド・ソングブックなるものをやります。

ただし、まじめにやると鬱を誘発するので、テキトーにやります。順序は考えません。羊が草を食べながら歩くように、思いつきで目の前のものを取り上げ、なにかミスをしたら、あとで補足することにして、厳密性は放棄します。どっちが先かと録音デイトを調べたりもせず、たぶんこっちが先だろう、ぐらいの言い方をします。

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ソングブックなので、オリジナルがポイントではなく、カヴァーのほうに重心があります。カーティス・メイフィールドが書いた曲のオリジナルであるインプレッションズ・ヴァージョンは、わたしにとってはみな退屈なサウンドで、これほどソングブックを組む意味のあるソングライターはいないってくらいなのです。

一回目だからといって、とくに重要な曲を選んだわけではなく、たんなる思いつきで、ろくにヒットもしなかったであろうYou Must Believe Meをいってみます。いえ、嫌いな曲など取り上げないに決まっているわけで、けっこう好きなのですが。

YouTubeにはインプレッションズ・ヴァージョンのクリップもないありさまで、やむをえず自前サンプルをアップしました。

サンプル The Impressions "You Must Believe Me"

これをはじめて聴いたときは、あんまり遅いんで、ボールがホームベース上に来るまで待ちきれず、泳いで空振り三振しました。安田か松本か(古すぎる)という超遅球で、たいていの人はタイミングがとれずに三振でしょう。

最初に聴いたヴァージョンはどれだか記憶がハッキリしないのですが、とりあえずホリーズをいってみましょう。

ホリーズ


どっちのドラマーがうまいかというなら、インプレッションズで叩いたドラマーです。ホリーズのボビー・エリオットは、60年代のビートグループのドラマーとしてはもっともタイムの安定しているプレイヤーのひとりですが、このころはまだ若く、やや不安定なところが散見します。

いっぽうインプレッションズのドラマーはタイムも安定しているし、しばしば使っているフロアタムまで流すフィルインも、みなまずまずといえます。ホリーズと決定的に違うのは、音の手ざわりです。スネアおよびバックビートについては両者のあいだに大きな違いは感じられませんが、タムタムはエリオットのほうが重く派手な音で録音されていて、より「現代的」です。1965年を「現代」といえるなら、の話ですが!

トニー・ヒックスはうまいプレイヤーではありませんが、この曲に関しては、すこし歪ませたトーンの選択が時代のムードに合っていて、好ましく感じます。

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どちらもリリースの時点では聴いていませんが、かりにホリーズ盤がリリースされたときに、両者を聴きくらべたとしても、やはり、ホリーズのほうはいい曲だと感じ、インプレッションズの音はあまりにも古すぎると、一顧だにしなかったでしょう。

こういう感じ方の変化というのが、ポップ・ミュージックの音の手ざわりを変貌させていく原動力であるのはご存知の通りです。ドラムもベースも、重いほうへ、重いほうへと変化して、いまの音にたどり着いているのですから。

つぎのクリップは、ゾンビーズのBBCセッションに収録されたもので、当然、スタジオ・ライブです。モノなのはYouTubeだからではなく、80年代にライノがLPとしてリリースしたときからそうです。AM放送用だから昔のBBC音源はモノなのです。

ゾンビーズ


つづいて、スティーヴ・ウィンウッドのヴォーカルでスペンサー・デイヴィス・グループのヴァージョン。ホリーズも、ゾンビーズも、SDGも、ほぼ同時期のリリースのはずで、当時のブリティッシュ・ビート・グループがいかにカーティス・メイフィールドを好んだかが、こんなところにもあらわれています。

サンプル The Spencer Davis Group feat. Steve Winwood "You Must Believe Me"

イギリスのグループはいずれも水準以上のプレイをしていますが、アメリカは唖然とするプレイで対抗します。Psychotic Reactionのカウント・ファイヴ。

カウント・ファイヴ


フィルインでこれだけ派手に突っ込んでいるのに、全体としてはそこそこ辻褄を合わせているのだから、驚きます。ここまでくるといわゆるひとつの才能かもしれません。自前の演奏だとこうなってしまうわけで、なぜハル・ブレインが必要とされたかが、こういうお子様バンドのプレイを聴くと逆によくわかります。

最後に、ドン・コヴェイのクリップ。ただし、近年のリメイクです。60年代のものは、インプレッションズよりずっとホリーズやゾンビーズに近いアレンジで、ひょっとしたら、ブリティッシュ・ビート・グループは、インプレッションズ・ヴァージョンではなく、ドン・コヴェイ盤を参照したのかもしれません。

ドン・コヴェイ(1993年再録音)




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by songsf4s | 2010-12-01 21:00