アル・クーパーのポップ・カヴァーとオリジナル ブラッド・スウェット&ティアーズ篇1

12回にわたるアル・クーパーのR&Bカヴァーのシリーズをやりながら、ずっとブラッド・スウェット&ティアーズのChild Is Father to the Manのことが引っかかっていました。気になるのなら、やはりきちんとしておいたほうがいいので、番外編として、このアルバムで取り上げられたカヴァーとオリジナルを検討します。

◆ ノンR&Bカヴァー ◆◆
アル・クーパーのここまでのキャリアをワン・センテンスに縮めるなら、Short Shortsのロイヤル・ティーンズのツアー・メンバーを手はじめに、ソングライターとしてThis Diamond Ringのヒットを得、ディランのHighway 61セッションでLike a Rolling Stoneのオルガンをプレイしたことから、音楽界内部で急速に知られるようになり、いくつかのセッションに呼ばれ、やがてブルーズ・プロジェクトに加わり、数枚のアルバムののちに解散します。

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次になにをやるか、ということで思いついたのが、ギター・コンボではなく、管をフィーチャーしたR&Bバンドのようなロック・グループ、ブラッド・スウェット&ティアーズです(ワーキング・モデルはバッキンガムズだろう)。しかし、奇妙なことに、そのデビュー盤であるChild Is Father to the Manには、R&Bカヴァーは収録されず、それで12回の特集にこのアルバムは登場しないことになりました。

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カヴァーがないわけではないのですが、広い意味でいってもブラック・ミュージックに分類されるものはなく、4曲のカヴァーのどれもが白人の音楽なのです。しかし、この4曲がいずれもよくぞ選んだりで、そういってはなんですが、アル・クーパーのオリジナルより一段上の面白さなのです。このアルバムからカヴァーをとったらずいぶん寂しいものになり、アル・クーパーの代表作という格付けから、「そこそこのアルバム」へと、二段ほど落とさなければならないでしょう。

◆ Morning Glory ◆◆
アルバム収録順に見ていきます。最初から「アル・クーパーのカヴァー」という看板に偽りありになってしまいますが、カヴァーのトップ・バッターはスティーヴ・カーツ(Katz。以前、本気になって調べたら、カッツではないのはもちろん、キャズでもなく、たしか、意外にもカーツだった、という記憶に頼って書いている)のリード・ヴォーカルなのです。

まあ、この人はいてもいなくても大勢に影響がなく(いや、I Love You More Than You'll Ever Knowをはじめて聴いたときは、イントロのゴミみたいなギターにおおいにめげた。だから、いると邪魔なこともある。これなら俺のほうがうまい、と優越感に浸れる、きわめて稀少なギタリストではあるが)、多少とも意味があったといえるのは、Sometimes in Winterという佳曲を書いた(セルジオ・メンデスのカヴァーがよろしい)ことぐらいなので、まあ、無視しましょう。

ヴォーカルを削除してもなお、BS&TのMorning Gloryは聴く価値があります。

ブラッド・スウェット&ティアーズ Morning Glory


ハモンドも好きでしたが、ピアノが軽い音に録れていて、おおいに好みでした。ピアノ・トリオ的な、ダイナミック・レンジの広い、重々しいピアノ・サウンドが苦手で、ピアノは軽く、パーカッシヴに鳴らしてほしいといつも思います。

ボビー・コロンビーはタイムがよく、タムタムもいい音に録れていて、ちょっとしたアクセントがすごく魅力的に響きます。ストップタイムでの、微妙に遅らせ気味のフィルインも好みです。

◆ ティム・バックリーのオリジナル ◆◆
Morning Gloryのオリジナルはティム・バックリーで、セカンド・アルバムのGoodbye and Helloに収録されています。

サンプル Tim Buckley "Morning Glory"

記憶が曖昧ですが、BS&Tヴァージョンを先に聴き、その直後ぐらいに、ティム・バックリー盤を映画『青春の光と影』(原題Changes、1969年7月公開。たしかジュディー・コリンズのBoth Sides Nowが流れ、それで『青春の光と影』になってしまったのだと思う)で聴いたのではないかと思います。Morning Gloryが収録されたアルバム、Goodbye and Helloを手に入れたのはそれから2年後ぐらいのような気がします。

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日本コロムビアからソニーにCBSの配給権が移行する時期に、いろいろなアルバムのリリースが遅れ、あとになってドッと出るという妙なことが起きたのですが、このBS&Tのデビュー盤もそこに引っかかって、リリースが遅れたのだったと思います。

記憶では、先にSuper Session、さらにLive Adventuresも輸入盤で買い(高かった。いまでも忘れられない5000円。アル・クーパー自伝によると、2枚組であっても、倍ではなく、1.5倍程度の廉価版としてリリースしたそうで、日本ではそういうものもみな単純に倍にして売っていた。天網恢々、彼らはいま不誠実な商売のツケを払っている)、そのあとで国内盤でBS&Tを買うという、リリースとは逆の順序になったと思います。

秀作のなんのと騒ぐような代物ではありませんが、『青春の光と影』という映画は、すくなくとも子どもには興味深いもので、とくにMorning Gloryが流れる場面は印象的でした。映画を見たから、ティム・バックリーのヴァージョンも手に入れようと思ったわけで、オリジナルも気に入りました。

よけいなことですが、『青春の光と影』と併映だった『ジョアンナ』(「ジョアナ」なのだが!)というのも、妙に印象に残る映画でした。とくに、はじめて見たドナルド・サザーランドという俳優にビックリして、以後、彼の名前があれば見るようにしました。

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その結果、『戦略大作戦』『マッシュ』のようなわたしにとっては本線のものばかりでなく、『コールガール』や『赤い影』(Don't Look Nowという原題で記憶し、邦題は失念してしまい、いま調べた)なども見ることになりました。『ジョアンナ』(だから「ジョアナ」なのだが!)の映画としての出来には毀誉褒貶いろいろあるでしょうが、いまでもドナルド・サザーランドの代表作のひとつと思っています。

話をティム・バックリーに戻します。あとになって(つまり、ハル・ブレインの回想記を読んで、ハリウッドのスタジオに関する認識が一変して以降)Goodbye and Helloのメンバーを見たら、なかなか興味深い組み合わせで、へえ、といってしまいました。ベースはジミー・ボンドとジム・フィールダー(BS&T)となっていて、前者はアップライト、後者はフェンダーなので、Morning Gloryは自動的にジミー・ボンドのプレイということになります。

f0147840_23165564.jpgピアノはドン・ランディー。この盤を買ったときは、ドン・ランディーがどういう人かなどということは知らないから、記憶するべきチャンスに遭遇しながら、ぜんぜん記憶しませんでした。そんなものです。

ドラムは“ファースト”・エディー・ホー、Super Sessionのドラマーです。この人の名前はむろんSuper Sessionで記憶していましたが、Morning Gloryはドラムが活躍するようなタイプの曲ではないので、ここでは精確なタイムだけを提供しています。

ついでにいうと、アルバムGoodbye and Helloのプロデューサーはジェリー・イエスター、エンジニアはブルース・ボトニック。カリンバとタンバリンでクレジットされているデイヴ・ガードとは、キングストン・トリオのデイヴ・ガード?

BS&T盤Morning Gloryも好きですが、ティム・バックリーのオリジナルのアレンジも大好きで、なんともいえない寂寥感が歌詞にふさわしく、かつてはよく聴きました。サウンドもけっこうだし、歌に関しては云えば、スティーヴ・カーツのどうでもいいヴォーカルとは桁違いに魅力的です。よく恥ずかしげもなく歌ったものだぜ>カーツ。

あと3曲あるのですが、あわてず騒がず、一回の分量を抑えつつ、次回へと。


ティム・バックリー Once I Was(これも好きだった。ドラムもいい!)



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ティム・バックリー
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by songsf4s | 2010-11-26 23:57