ふつうの音楽ファンにはあまり関係ないのですが、先日、ゴールド・スターのことを書いたときに、写真が欲しくて検索したら、エラいところに飛び込みました。
1966年のゴールド・スター
ブログなんですが、記事はひとつだけしかありません。でも、そのひとつが、レッキング・クルーの映画(DVDか配信にして!)から、1966年のソニー&シェール・セッションの容子を詳細に起こしたもので、ドン・ピークの解説によります。
ジム・ゴードンがトラップではなく、マレットだというのが、アッハッハです。ヴァイブとシロフォン。66年ではまだ二十歳そこそこ、駆け出しだったからしかたありません。ハル・ブレインの推薦があったからですが、大学生の年齢で、あの狭き門を通り抜けたのだからやっぱり神童。
いろいろ不思議なことだらけのセッションですが、ギターが、ドン・ピーク、バーニー・ケッセルまではいいとして、マック・レベナック(ドクター・ジョン)とマイク・ポスト(『ロックフォードの事件簿』など、多数のTV OSTを書いた)というのがなんたってヘンテコリンです。スペクター同様、ソニー・ボノも複数のプレイヤーにコードを弾かせるスタイルだったので、むずかしいことは不要でしょうが、なんでドクター・ジョンなのー、でした。
スタジオ・レイアウトなんてものを起こした図もめずらしいので、あのあたりがお好きな方はご自分でご覧になってみてください。使用マイクも書いてあります。RCA、シュア、ゼンハイザーの使い分けがわかります。
◆ ゴスペル ◆◆
アル・クーパーのR&Bカヴァー、今回はソロ6作目、Naked Songsです。アルバムの出来としては、当時は、2作目のYou'll Never Know Who Your Friends Areとどっちがいいかと思ったほどで、どちらを代表作とするかは好みの問題だろうと思います。
しかし、カヴァーという観点からは、Naked Songsはそれほど面白いものではありません(アネット・ピーコックのBeen and Goneがとんでもないout of contextで、昔から、これはいったいなんなの、と思っていたが、インタヴューで疑問氷解。had a short affair with Annetteだとか。おいおい! ついでにいうと、Jolieはクウィンシー・ジョーンズの娘とのaffairの産物だそうな。できた曲を彼女に聴かせたら、彼女が父親に聴かせ、父親はjust like peeking through a keyholeと感想を述べたとか。おいおい×2!)。それだけオリジナルの粒がそろっていたということなので、それでいいのですが、このシリーズにとっては不都合です。
そもそもR&Bと明快に云える曲はなく、その方面では、ゴスペルとブルーズに分類できる曲しかカヴァーしていません。まずゴスペルのほう、Touch the Hem of His Garmentから。
サンプル Al Kooper "Touch the Hem of His Garment"
うーん、ゴスペルというのは、チラッとかすったことすらない分野で、わたしにはいいとも悪いともいいようがありません。
garmentは長衣、hemは端、そしてここでheといっている人物はキリストです。
オリジナルはサム・クック、ソウル・スターラーズ時代最末期の録音。
わたしはサム・クックが大好きですが、ソウル・スターラーズ時代にはまったく興味がなく、盤を買ったこともありません。ただ、この曲だけは、メインストリーム転向後のベスト盤に収録されているので、知っていました。つまり、ゴスペル味はきわめて稀薄だということです。じっさい、アル・クーパーのヴァージョンより、サム・クックのオリジナルのほうがずっとポップな仕上がりです。
記憶で書きますが、このトラックはニューオーリンズ録音で、ドラム・ストゥールに坐ったのはアール・パーマーだったと思います。
◆ Dig some blues? ◆◆
Naked Songs収録のブルーズは、As the Years Go Passing Byです。
アル・クーパー As the Years Go Passing By
これはだれのものが代表的ヴァージョンなのか知りませんが、ほかに知っているのはアルバート・キングとエリック・バードン&ディ・アニマルズのものだけです。どちらもそれほど魅力的ではないので、お初のものをいってみます。
Boz Scaggs with Booker T. & the MG's - As the Years Go Passing By
オーティス・ラッシュ As the Years Go Passing By
うーむ。わたしはアル・クーパーより、このオーティス・ラッシュ盤のほうが好きです。
ブルーズはみな似ているといってしまうとそれまでのなのですが、バターフィールド・ブルーズ・バンドのI Got a Mind to Give Up Livingを連想しました。
ポール・バターフィールド・ブルーズ・バンド I've Got a Mind to Give Up Living
わたしはこの曲でマイケル・ブルームフィールドのファンになりました。これを聴くと、Work SongとEast-Westも聴かないとおさまらなくなるのですが、まあ、やめておきましょう。
ゴールデン・カップスがマモル・マヌーのヴォーカルで、可愛くカヴァーしていたのも思いだしました。ギタリストはやってみたくなる曲だから、エディ藩の希望だったのじゃないでしょうか。
ゴールデン・カップス I Got a Mind to Give Up Living
それにしても、よほどよく聴いたらしく、歌詞はほとんど記憶していました。
◆ CBSラスト・アルバム ◆◆
以上、Naked Songs収録のカヴァー曲の出来は、たいしたことがありません。かわりにオリジナルの楽曲を揃えることができたので、天秤は「秀作」のほうへと傾きました。
ただし、当時、このアルバムが売れたとは思えませんし、アル・クーパーは、すでにレコーディング・アーティストとしての未来に大きな希望はもっていなかったのではないでしょうか。
Naked Songs収録曲のなかにはアトランタのスタジオで録音したものがあります。つまり、Sounds of the Southレーベルが発足し、レーナード・スキナードのレコーディングがはじまっていたということです。
アル・クーパーのキャリアは、プロデューサー、ビジネスマンのほうへと重心が移ったわけで、万事が目論見通りにいけば、Naked Songsはラスト・アルバムになったかもしれません。現実にはそうはならなかったので、このシリーズはまだつづくことになります。
アル・クーパー Naked Songs
赤心の歌
サム・クック
Portrait of a Legend 1951-1964
アルバート・キング
Born Under a Bad Sign
ポール・バターフィールド・ブルーズ・バンド
East-West