アル・クーパーのR&Bカヴァーとオリジナル その6 A Possible Projection of the Future篇

先日、フィクションのキャラクターにまつわる場所が観光資源になっていることを書きましたが、こんな新聞記事がありました。

「真田の抜け穴跡」初の一般公開へ

これが本物かどうかはべつとして、抜け穴ぐらいはあったかもしれません。でも、「真田十勇士」は大阪落城から数百年後、「立川文庫」で創造されたキャラクターです。まだその商売のつづきをやっているのだというなら、それはそれでかまいませんが、新聞記事は事実とフィクションを区別してちょうだいな。

まあ、猿飛佐助や霧隠才蔵ぐらいになると、シャーロック・ホームズ同様、実在したと信じたくなるのかもしれませんが、そういう与太は小説家の領分、新聞はちがうことを書きましょう。

◆ And then the music begins to play ◆◆
今回はソロ5作目、A Possible Projection of the Future/Childhood's Endです。リリース当時、前作のNew York City (You're a Woman)は「まあ悪くない」ぐらいの印象でしたが、A Possible Projection of the Futureになると、きびしいところに来たと感じました。

幸い、かつて詳細に書いた(すでに時効成立の)無税米盤LP密輸大作戦のときに手に入れたので、価格はわずか2.50ドル(当時の闇ドル・レートで700円ほど)、ま、いいか、ですませました。2000円で買ったら、ちょっとムッとなっただろうと思います。

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例によって、オリジナル曲が弱く、Fly OnとLove Trapぐらいしか印象に残るものがありませんでした。いま聴き直せばすこしは印象が変わるかもしれませんが、プレイやアレンジもべつに面白いわけではなく、気の重いアルバムです。そして、結局、前作と同じように、このアルバムはR&Bカヴァーがあればそれでいいや、というところまで縮小後退しました。

前回はむやみに長くなったので、今回はウサギのなんとかぐらいの短さにしよう決意していますが、さてどうなりますやら。ではさっそく、A Possible Projection of the Future(長いなあ! さっきからスペルをまちがえてばかりいる)で唯一、強く印象に残った曲、Monkey Timeです。

サンプル Al Kooper "Monkey Time"

このアルバムの大部分はロンドンのAIRでの録音で、ドラムはバリー・モーガン、ベースはハービー・フラワーズとなっています。ロンドンは不案内なのですが、NYやナッシュヴィルやハリウッドにまさるなにかがあるのでしょうか。わたしにはよくわかりません。

バリー・モーガンという人はほかのものは知らないのでこの盤だけで判断しますが、タイムは悪くないものの、ヘッドの選択とチューニングは好みではありません。まあ、時代はこういうベタベタした音へと向かっていたわけで、このドラマーの責任ではないかもしれませんが、NYでバーナード・パーディーを呼ぶか、ハリウッドでゴードンかケルトナーを呼べば、この時期でも乾いたサウンドのスネアになったはずです。

とはいえ、ギターはいまでも好きですし、ベースも(ほかのトラックはどうであれ)この曲のヴァースは好ましいプレイです。

◆ カーティス・メイフィールド=メイジャー・ランスのオリジナル ◆◆
Monkey Timeの作者はカーティス・メイフィールドですが、歌ったのはインプレッションズではなく、メイジャー・ランスです。日本ではヒットしなかったのか、幼すぎてまだあまりラジオを聴いていなかったのか、リアルタイムでの記憶はなく、ずいぶんあとになってR&Bのオムニバスで手に入れました。

サンプル Major Lance "Monkey Time"

I've Got a Womanという例外はあるのですが、アル・クーパーのR&Bカヴァーはテンポを速くする傾向があり、これもオリジナルにたどり着いたら、緩やかなグルーヴでした。これでもダンス・チューンなので(モンキー・ダンスという名詞はなんだか気恥ずかしい響きがある)、この時代の気分が反映されたテンポなのでしょう。

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先日も書きましたが、わたしはカーティス・メイフィールドとインプレッションズのアレンジ、サウンドというのがまったく理解できません。あれだけいい曲を書いて、よくあんなほったらかしの、ただ歌いました、という無為無策ができるものだと思います。まさに「画竜点睛を欠く」です。楽曲を生かすも殺すもアレンジ、サウンドなのですから。

メイジャー・ランスもたしかカーティス・メイフィールドのプロデュースですが、たいしたことはしていないものの、インプレッションズよりはずっと音らしい音になっています。わたしがA&Rだったらもっと速くやるでしょうが、これはこれで好きです。

◆ ジョニー・リヴァーズのバラッド化カヴァー ◆◆
ヒットしたダンス・チューンをグルーヴから切り離してみたら、じつはメロディックにできていた、というのはよくあることで、ジョニー・リヴァーズはそこに目をつけ、アル・クーパーとはまったくちがう形でカヴァーしています。

このアルバムはアナログでしかもっていなくて、Oggに圧縮したあとで売ってしまいました。Oggではストリーミングができないので、そこからさらにMP3にしたため、ジェネレーションが一段落ちています。まあ、いわれなければわからないであろう程度の劣化で、PCスピーカーで聴く分には問題ない音質です。

サンプル Johnny Rivers "Monkey Time"

モンキー・ダンスなんかどこかへすっ飛んでしまった、明後日の方向への転換ですが、これはこれで楽しいアレンジだと思います。なんでもかんでもダンス・チューンにアレンジすることで売ったジョニー・“ミスター・ゴーゴー”・リヴァーズが、ダンス・チューンをバラッドにしてしまったところが笑えます。

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このLPは先日手放してしまったので、パーソネルを確認できなくなってしまいました。1打のアクセントの使い方はジム・ケルトナーのような……。精確で音もきれいな気持のよいサイドスティックです。いま、タグを見たら、コメント欄に一言「Keltner」と書いてありました。さすがは自分のやること、かゆいところに手が届きます! ということで、確認できました。

あれ? Do You Want to Danceのバラッド・ヴァージョンというのはだれのでしたっけ? ベット・ミドラーじゃなかったっけ、と思ったのですが、いま検索したら、ジョニー・リヴァーズもやはりバラッドにしていました。Monkey Timeも同じ気分でバラッド化したのでしょう。

ジョニー・リヴァーズ Do You Want to Dance


これはクレジットがなくてもガチガチにハル・ブレイン。さらに記憶は甦り、ママズ&ザ・パパズへと。

The Mamas & the Papas - Do You Want to Dance


あるもんだねえ、なんて「山号寺号」の旦那の台詞がでます。ベット・ミドラーはスタジオ録音は見あたらず、ライヴですが、やっぱりバラッド・アレンジ。



結局、みなdanceのところにべつの動詞を入れているのでしょうね。だから、踊っている視野の片隅にベッドが見えるような歌い方になるのです。

ボビー・フリーマンのオリジナルはぜんぜんそんなもんじゃないし、もっとも派手なビーチボーイズ盤(これがいちばん好き)なんか、アップテンポだし、ゴールド・スターでめいっぱいリヴァーブをかけたうえ、ティンパニーがdroon!!!だから、明朗会計健全路線です。

ボビー・フリーマン Do You Want to Dance


ビーチボーイズ Do You Want to Dance


トラップとティンパニーの両方をハル・ブレイン、ということはやはりないでしょうね。例によってティンパニーはフランク・キャップでしょうか、でも、Unsurpassed Mastersによると、Todayセッションにはキャップの名前がありません。ハルのオーヴァーダブ?

いきなりMonkey Timeに話を戻しますが、ほかにローラ・ニーロのカヴァーもあります。でも、彼女のR&Bカヴァーはべつのシリーズで取り上げようと思っているので、今回は略させていただきます。

◆ スモーキー・ロビンソンのSwept for You Baby ◆◆
A Possible Projection of the Future(やっと一発で書けた!)はカヴァーの多いアルバムで、R&Bではないものとしては、ディランのMan in Meやジミー・クリフのPlease Tell Me Whyなどもやっています。

R&Bはもう一曲、スモーキー・ロビンソンのSwept for You Babyをカヴァーしていますが、ミラクルズのボックスにも収録されないようなオブスキュアなトラックで、わたしはあまり好きではありません。よって、サンプルは略させていただきます。

スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ Swept for You Baby


聴き直してもやはりこのアルバムはちょっときびしい出来で、リリースの順番通りに買っていたら、このあたりで永のお別れになるところだったかもしれないと思います。幸いにも、リリースのときにはまたしても躊躇し、結局、1973年になって、つぎのアルバムと一緒に買ったので、こちらの不出来はそれほど気になりませんでした。

次回は、このアルバムがなかったら、アル・クーパーのキャリアはフェイドアウトだったかもしれないというきわどいタイミングでリリースされた佳作、Naked Songsへと進みます。


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by songsf4s | 2010-11-19 23:57