佐藤勝「シーコーラル」(東宝映画『ゴジラ対メカゴジラ』より その2)
 
いやはや、東宝特撮映画のタイトル付けの独創性たるやすばらしいもので、他の追随を許しません。あまりすごいので、タイトルを覚えることもできなければ、タイトルを見て中身を思いだすのもむずかしいほどで、『怪獣総進撃』と『オール怪獣大進撃』なんて、いまだに区別ができません!

ひどいのはメカゴジラ関係、なかでも個性的なのは、『ゴジラ対メカゴジラ』(1974年)と『ゴジラVSメカゴジラ』(1993年)と『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)の三本です。ちがいは「対」と「VS」と「×」だけ、意味は同じだし、形だって似ています! 英語版はどうしたかというと、

『ゴジラ対メカゴジラ』(1974)→Godzilla vs. the Bionic Monster a.k.a. Godzilla vs. the Cosmic Monster a.k.a. Godzilla vs. Mechagodzilla

『ゴジラVSメカゴジラ』(1993)→Godzilla vs. Mechagodzilla II

『ゴジラ×メカゴジラ』(2002)→Godzilla Against Mechagodzilla

という調子で、苦しんだ痕跡歴然たり。しかし、IIのあとを素直にIIIにしてくれれば、英題はスッキリとわかりやすくなったでしょうにね。いや、問題は、メカゴジラの登場するものがほかにもあることです。それで素直にIIIとはできなかった可能性があります。

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まあ、そんなことはたいていの人にとってはどうでもいいことで、全部見ようなどと不埒なことを考えなければ、どれほどタイトルが紛らわしくてもかまわないのですが!

でも、メカゴジラって、子どもには人気があるのでしょうかね。とりたてて面白いキャラクターには思えないのですが。とくに、どの作品だったか、東京湾の底から回収したゴジラの骨(第一作で死んだあのゴジラのもの!)からとったDNAをロボットに組み込むというのが、チンプンカンプンで悶絶してしまいました。

そうするとなにかいいことがあるという説明すらなされないので、客が自力で想像しなければいけないらしいのですが、わたしの想像力ではまったくなんのメリットも思いつきませんでした。

そもそも、どうやってDNAとメカゴジラのプロセシング・ユニットを結合するのか、そのへんの技術的細部も想像を絶しています。はっきりいえば、リモコンなのだから、能動的に動く必要すらなく、はじめからDNAなんかの入りこむ余地は絶無なのはハッキリしています。プロットに変化を与えたいなら、人間と機械のインターフェイスでトラブルが起きるとか、単純なリモコンではなく、人間の脳と電気的に接続して、操作者の精神状態がロボットの動きに反映され、それがトラブルの原因になるとか、もうすこしマシな設定ぐらい、だれでもたちどころに五つ六つは思いつきます。

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ひょっとしたら、『2001年宇宙の旅』で、HAL9000コンピューターが異常を起こしたのを真似したかったのだけれど、生物学やコンピューター・サイエンスの知識がゼロ以下だったということかもしれません。HALが人間のように話すのには、コンピューター・サイエンスの裏付けがあったのですがね。いや、DNA組み込みメカゴジラの登場するあの映画が、中学生以上を対象にしていると仮定しての話であって、幼児向けなのだとしたら、DNAだろうがCIAだろうがFBIだろうが、なにをロボットに組み込もうとどうでもいいのですが。

◆ 仕切り直し ◆◆
前回の記事で、こういう順番にするまずいことになるかもしれない、と危惧したのですが、じっさい、そのとおりになってしまいました。最初にあげたサンプルは、とくにいいわけではなく、「ゴジラ映画のオープニングにしてはすごく変わっている」にすぎません。

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あの記事の眼目、『ゴジラ対メカゴジラ』を取り上げようと思った理由は、2番目のサンプルのほうにあります。オープニングは付けたり、主役はメイン・タイトルのほうなのですが、サンプルのアクセスは、付けたりのほうに集中してしまいました。よって、やり直します。

サンプル 佐藤勝「メインタイトル(M2タイトルT2+M2T1)」

これはいい、と手を打ったのは、こちらの曲のほうです。

◆ 謎の人、ベルベラ・リーン ◆◆
『ゴジラ対メカゴジラ』のスコアを書いた佐藤勝は、自身にとっては最初のゴジラものである『ゴジラの逆襲』でも、〈湖畔のふたり〉という曲を劇中に使っていますが、『ゴジラ対メカゴジラ』にも「歌謡曲」が登場します。

佐藤勝作曲、福田純作詞、ベルベラ・リーン唱「ミヤラビの祈り」


クリップをご覧になれば想像がつくと思うのですが、これはシーサーのモンスター「キング・シーサー」を太古の眠りから呼び覚ます歌で、モスラの歌のようなものです。

しかし、これは微妙ですねえ。コーラスのメロディーがメイジャーに行くところは魅力的だったりするのですが、それ以外はとくにどうということはなく、「湖畔のふたり」のようにキャッチーではありません。まあ、星野みよ子の「湖畔のふたり」は、映画から切り出したゴジラ来襲アナウンス入りのサンプル低音質ヴァージョンと併せると、当家のサンプルの最大の「ヒット曲」で、そういうものと比較するのはフェアではないかも知れません。

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星野みよ子同様、この「ミヤラビの祈り」を歌ったベルベラ・リーンという歌い手についても、なにもわかりませんでした。ウェブ上にはまったくバイオがないのです。当時のプログラムなどには紹介が載っているかもしれないので、ご存知の方がいらしたら、ぜひご教示をお願いいたします。沖縄出身の新人シンガーだったのでしょうか。

グーグルで「ベルベラ・リーン」のキーワードで画像検索をかけると、ゴジラやメカゴジラなど、怪獣の写真ばかりが並んでしまい、女性にはあまりにもお気の毒なので、ちゃんとご自分の顔で登場できるようにと祈って、スクリーン・ショットとお名前をセットにしてみます。はたしてどうなりますか。

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ベルベラ・リーン

ただの歌謡曲、なんて言葉で片づけてはなにもいったことにならないので、いま、ベルベラ・リーン歌う「ミヤラビの祈り」を数回聴き直し、検討してみました。曲もまあクリシェではあるのですが、それよりも問題なのは、あの時期の歌謡曲のサウンドをあまりにもストレートに反映しすぎたことだと感じます。

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ベルベラ・リーン

古代の伝承で霊おろしのようなことをするシーンであり、霊的な作用をもつ歌という設定ですからね、時代の音につきすぎてはリアリティーがなくなります。「モスラの歌」の超時代性に負けているのです。サウンドの味わいというレベルでいっても、『ゴジラの逆襲』の「湖畔のふたり」ほどの感興はもたらされず、ひどく俗っぽい印象になってしまっています。メロディーはこのままでも、アレンジを変えれば、ずいぶん異なったものになったのではないでしょうか。

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もうひとつベルベラ・リーン

◆ さらにエキゾティカ ◆◆
『拳銃無頼帖 抜き射ちの竜』でふれたように、低予算の邦画というのは、タイアップだらけになり、劇中でコマーシャルを見るはめになったものです(いや、たとえばジェイムズ・ボンド・シリーズなどでも、CMが巧妙かつ大量に仕込まれているのだが)。

『ゴジラ対メカゴジラ』で、なんかタイアップくさいなあ、と思ったのは、このショットです。

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これだけならまだしも、べつにいわなくてもいいところで、「この《さんふらわあ》を使うとは敵も思わないだろう」などと、わざとらしい台詞をいうので、タイアップとすぐにわかってしまいます。

いや、そんなことはどうでもよくて、このあたりで流れる曲がなかなか好ましいのです。前回の轍を踏まないように、今日は映画のなかでの順番を無視して、好きな順にサンプルをおきます。

サンプル 佐藤勝「シーコーラル(M16)」

「メイン・タイトル」同様、沖縄スケールを取り込んだものですが、こちらのほうはよりスロウで、ソフトなアレンジになっています。

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よけいなことですが、coral seaはあるものの、sea coralというのはききませんな。まるでland coralというのがあって、区別が必要だといわんばかりです。サンゴはふつう海のものだから、これは「隠れた」トートロジーでしょう。

もう一曲、同じく「さんふらわあ」船上のシーンで流れる曲です。

サンプル 佐藤勝「海路の陽光(M14)」

レストランのシーンなので、そのハウス・バンドの演奏という雰囲気ですが、映画からは、現実音なのか、スコアなのかは判断できませんでした。短い断片ですが、なかなかいいムードの4ビートのキューです。

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これでおわってしまってはあんまりだから、ざっと、どういう映画なのか、紹介しようかと思ったのですが、書きはじめると、きっとあら探しになるからやめておきます。佐藤勝の音楽の付録だと思うしかないでしょう。いや、そういう意味では、もうすこし観光映画風にして欲しかったところですが。

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by songsf4s | 2010-09-15 23:59 | 映画・TV音楽