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佐藤勝「メイン・テーマ」(東宝映画『ゴジラ対メカゴジラ』より その1)
つい先日、伊福部昭の自衛隊マーチないしはゴジラのテーマの『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』エンド・タイトル・ヴァージョンを取り上げましたが、あれは前ふりのようなもので、つぎのゴジラの本命は、今日の『ゴジラ対メカゴジラ』だったのです。

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しかし、 『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』のときもかなり困惑しましたが、今回はもっと「すごい」ので、困惑も一段と深く、ほとんど混迷の域に達しそうなほどです。

だいたい、60年代終わりから70年代前半のゴジラ映画は、わたしの好みからいうと、どん底に落ちこんでいて、いまだにあまり見たいとは思わないのです。『ゴジラ対メカゴジラ』は1974年公開ですから、じつにもう逆風ここにきわまれりの時期につくられています。どれくらいの逆風かというと、つぎの『メカゴジラの逆襲』でゴジラ映画は打ち切りになってしまうほどの冬の時代なのです(9年後、『ゴジラ』The Return of Godzillaで復活する)。

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平田昭彦、小泉博、佐原健二などの昔なじみが出演しているのがささやかなお楽しみではある。

この時期のゴジラ映画はほとんど見ていないのに、なにかをいうのは具合が悪いのですが、なぜ見たくないかというと、子ども向けを通り越して「幼児向け」になってしまったかのようなつくりで、小学生も赤面してしまうような場面があったりするからです。

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しかし、平田昭彦、小泉博、ともに老け役、ともにプロフェッサーである。かつては志村喬がやった役を平田昭彦や小泉博がやる時代になったのだ。

いや、『怪獣総進撃』『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃 』『ゴジラ対ヘドラ』『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』『ゴジラ対メガロ』などはいまだに見ていないので、ほんとうに「幼児向け」かどうかはたしかめていませんが、中学のときにへこたれて、ゴジラにサヨナラをいったのは、「I'm too old for this」と見切ったからです。

それから40年以上たち、多少の幼児退行ははじまっているかもしれませんが、まだ着ぐるみのレスリングを面白いと感じるほど十分には年をとっていないようです。

◆ エキゾティカ・ウチナー ◆◆
ということで、今回は映画の内容は棚上げにして、もっぱら佐藤勝のスコアに注目することにします。

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これがいちばん好きなわけではありませんが、順番なので、まず、東宝ロゴから、アヴァン・タイトルでアンギラスが登場するシーンにかけて流れるトラックを。

サンプル 佐藤勝「オープニング(M1)」

ゴジラ映画の文脈、いやつまり、伊福部昭的管弦楽をイメージしていると、いきなり猫だましを喰らってしまいます。アメリカのオーケストラ音楽の文脈におけば、多くの人は「ジャングル・エキゾティカ」に分類するであろうタイプのサウンドですから。これはもっとも異色あるゴジラ映画のオープニングではないでしょうか。

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しかし、この映画を取り上げようと思ったのは、その直後、オープニング・クレジットで流れる曲のせいです。一聴、「へへえ、さすがは佐藤勝、またしてもエキゾティカ・ジャポネじゃん」でした。いや、正確には「エキゾティカ・ウチナー」かもしれませんが。

サンプル 佐藤勝「メインタイトル(M2タイトルT2+M2T1)」

ゴジラ・シリーズのどこかに、まだエキゾティカが隠れているにちがいないとは思っていましたが、これほどのジェムがあるとは予想していなかったので、欣喜雀躍でした。こういう曲を発見したくて、レスリングはイヤだなあ、と思いながら、ゴジラを見ているわけでしてね。この数日、ずっとこのメロディーを口ずさんでいます。

邦画のシリーズものの安易なところで、『ゴジラ対メカゴジラ』は、沖縄海洋博(まさかお忘れではなかろうが)にひっかけて、沖縄を主要な舞台にしたからこういう曲調になったのですが、おかげで、わたしがゴジラ映画(およびシリーズ外の東宝特撮もの)に求める、あの南方的なサウンドが必要になり、いかにも佐藤勝らしい、オーケストラによる叙情的なエキゾティカの誕生となったしだいです。

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沖縄海洋博に便乗したのは、まあ、よくあるパターンですが、狛犬というか、鬼瓦というか、あの「シーサー」という魔除けをモティーフにしたモンスターをつくっちゃったところが、すごいですわ。いじましくて、なんだか涙が出てきそうです。まあ、エビラよりはマシかもしれませんが。いや、どっちもどっちだなあ。

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◆ 今宵二人でマンボを踊らん ◆◆
佐藤勝は、『ゴジラの逆襲』でも、伊福部昭とはずいぶん異なったタッチの音をつくり、 『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』ではもっとラディカルに、ゴジラ映画としては外道といいたくなるようなスコアを書いた人なので、『ゴジラ対メカゴジラ』もゴジラ・ファンの意表をつくようなスコアになっています。

メカゴジラのテーマ


これなんか、のけぞっちゃいましたよ。東宝ロゴに使われているテーマの変奏曲で、長い分だけ、こちらのほうがジャングル・エキゾティカらしさが横溢しています。って、この音楽でゴジラ映画の売りものである、怪獣どうし(いや、この映画の場合、片方はロボットだが)のレスリングをやっちゃうのだから、ゴジラ・ファンのなかには腹を立てた方もいらっしゃるのではないかと思います。わたしは、おおいに楽しみました。ゴジラ映画の音楽のなかでも、とりわけ楽しい楽曲だと思います。

映画の内容にはふれないのだから、簡単に終わるかと思ったのですが、もう2曲ほどふれたいキューがあるので、次回も『ゴジラ対メカゴジラ』のスコアをつづけます。


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by songsf4s | 2010-09-14 23:53 | 映画・TV音楽