オールマン・ブラザーズ・バンドには、ドゥエイン・オールマンとディッキー・ベッツという二人のプレイヤーがいたので、しばしば二人のギター・オン・ギター・アンサンブルを聴くことができます。
しかし、初期の代表曲、In Memory of Elizabeth Reedできかれるギター・アンサンブルは、ジャズ・コンボのフロント、たとえばテナー・サックスとトランペットがいっしょにテーマをプレイするのに似ていて、個々のソロに突入するまでの「間借り」のようなニュアンスでした。
オールマン・ブラザーズ・バンド In Memory of Elizabeth Reed
いや、それでも複数のギターがいっしょにテーマをプレイする、などという例はそれまでに聴いたことがなかったので、In Memory of Elizabeth ReedやWhipping Postを聴いたときは、いいサウンドだなあ、と思いました。長いソロは嫌いなので、途中でほかのことを考えてしまうのがつねでしたけれど!
オールマン・ブラザーズ・バンド Whipping Post
こちらはいちおう形式としては曲がりなりにもヴォーカル曲なので、ドゥエイン・オールマンとディッキー・ベッツが同じオブリガートを入れるという形でのアンサンブルです。こういうのが好きなのですが、残念ながら、すぐ長いソロに突入してしまって、ああ、うまいなあ、と思っているうちに寝てしまったりするのでした。
◆ ほんとうのアンサンブルへ ◆◆
ギターが好きなクセに、根が外道なので、ソロはあまり好みません。長いソロを聴いて面白いと思うのはマイケル・ブルームフィールドぐらいです。ブルームフィールドも、いいものはほんの一握りにすぎませんし、それもフレージングだけではダメで、彼独特の艶のある音の出が伴っていないと面白くありません。8小節か16小節というのが、どんな楽器であれ、ソロとして適切な長さだと思います。32小節なんて、音を聴くどころか、小節数を勘定することすらできないじゃないですか!
ドゥエイン・オールマンもたしかにうまいと思うのですが、ギター・アンサンブル的観点からいうと、ディッキー・ベッツの存在のほうが大きいような気がします。だいたい、オールマンズは、スタジオでもべつにキッチリしたアレンジをするわけではなく、「生まれっぱなし」みたいなサウンドであり、その弱点を個人技でカヴァーしている、という雰囲気でした。
その印象が変わったのは、ダブル・アルバム、Eat a Peachのスタジオ録音サイドでのことです。たんに「二人のプレイヤーがいるから両方にスポットライトを当てる」という、脳味噌など必要としない原始的アレンジではなく、ポップに一歩寄った、洗練されたアレンジを彼らがはじめて試みたのは、このディッキー・ベッツ作の曲だと思います(地味なのでアクセスは少ないだろうし、ファイル・サイズも大きいので4sharedにアップした。使いにくいだろうが、あしからず)。
サンプル The Allman Brothers Band "Blue Sky"
出だしはきっちり二本のギターをアレンジしてコントロールしています。重要なのは「コントロール」=抑制です。放し飼いではアンサンブルになりません。間奏に入ったところで、先祖返りしてサルに戻ったような箇所もありますが、ソロの途中で二本をからませてくるところが、もう「生まれっぱなし」の無意識過剰考え足らずバンドではなくなりつつあることを示しています。
もうすこし聴くべきトラックはあるのですが、今夜はもはや時間切れ、中途半端ですが、オールマンズの項はもう一回つづけることにさせていただきます。
オールマン・ブラザーズ・バンド Fillmore East
The Allman Brothers at Fillmore East
オールマン・ブラザーズ Eat a Peach
Eat a Peach (Dlx) (Exp)