ギター・オン・ギター6 チャーリー・バード、タル・ファーロウ、ハーブ・エリスのSo Danco Samba
タイトル
So Danco Samba
アーティスト
Charlie Byrd, Tal Farlowe and Herb Ellis
ライター
Antonio Carlos Jobim, Vinicius de Moraes
収録アルバム
Great Guitars of Jazz (DVD)
リリース年
2004年
f0147840_239124.jpg

枕のつもりで書きはじめたことが、例によってあれこれ脇道に入ったために、枕とはいえない長さになってしまいました。そこで予定を変更し、まず、ギター・オン・ギターの番外編として、三人のギタリストの共演をお聴きいただきます。いえ、みなさんお年寄りで、同窓会のようなリラックスしたプレイですから、そのつもりで、バーを下げてからお聴きください。

サンプル Charlie Byrd, Tal Farlowe and Herb Ellis "So Danco Samba"

DVDから切り出してMP3にしたものです。CDにもなっていたような気がするのですが、検索では見つかりませんでした。

f0147840_23211221.jpg

f0147840_23212224.jpg

f0147840_2321303.jpg

むろん、若いころのような押しの強いプレイ(とくにタル・ファーロウ)ができるわけではなく、それどころか、なんというか、「俺のギターを聴け」というより「おまえのプレイを聴こうじゃないか」というムードです。

しかし、落語と4ビートはお年寄りがやっても、ちゃんと味が出るのがありがたいところで、これがロックンロールだったら失笑しかできません。いや、そういうのをときおり現実に見かけるのがおそろしいところですが。

チャーリー・バードは若いころとそれほど変わらず、ハーブ・エリスはそこそこ、タル・ファーロウはもうそろそろ指が動かなくなるかな、という雰囲気です。So Danco Sambaは、もちろんチャーリー・バードの音からはじまり、ハーブ・エリスがほんの数小節だけテーマに加わったあと、まずタル・ファーロウがソロをとります。

f0147840_23215637.jpg

f0147840_2322687.jpg

f0147840_23221530.jpg

f0147840_23222362.jpg

ハイライトは、後半、ドラムとベースも消えて、チャーリー・バードとハーブ・エリスだけになる箇所です。ちょっとした打ち合わせとリハーサルだけでステージに上がっているのでしょうが、さすがは大ヴェテラン、半世紀前からいっしょにプレイしてきたようなリラックスしたアンサンブルを聴かせてくれます。

◆ モビー・グレイプの6枚シングル・デビュー ◆◆
さて、枕のはずだったのに、なぜか長くなってしまった話題です。

先日のモビー・グレイプのRounderの記事へのコメントで、tonieさんが、全曲をシングルにしたことについて、ちらっと言及なさっています。コメントに書かれたことなのだから、コメントで説明すればいいようなものですが、これがやや面倒なのです。

モビー・グレイプのレーベルであるコロンビア、すなわちCBSは、あの時代は(また極端なものを持ちだすが、誇張なので気になさらないように)いわば「ジョニー・マティスの会社」「アンディー・ウィリアムズのレーベル」でした。

f0147840_23275758.jpg

もちろん、ディランだのサイモン&ガーファンクルだのもCBSのロースターにはいたのですが、これもまあ、サウンド的には控えめな、いわば「保守路線」であって、ディランがロック寄りに傾いて、マイケル・ブルームフィールドがテレキャスをもってやってきても、デモーニッシュなランを弾かせるわけではなく、「ブルームフィールド? どこに?」状態のLike a Rolling Stoneがギリギリ精いっぱいこれ以上はないという掛け値なし、あら情けなやの「CBSロック・サウンド」でした。

サークルもCBSですが、あれもほら、フォーク・ロック風であって、ギュイーンとかゴワーンとかはやらないし、ヘヴィー・バックビートも使わないのはご存知の通り。よそから獲得したイギリスのチャド&ジェレミーも、「バックビートを入れるフォーク・デュオ」です。

なにもリストを見ず、記憶に頼って書くだけですが、1966年までにCBSがリリースした精いっぱいロック的なシングルは、バーズの8 Miles Highあたりだろうと思います。そのつぎがバッキンガムズのKind of a Dragかなあ、という感じ。

バッキンガムズ Don't You Care

(Kind of a Dragのほうが有名だが、好きなのはこちらのほう。彼らもスタジオではプレイしていないので、気にしなくてもいいのだが、それにしても、音とまったく関係ない動きをしているドラマーの左手は困る! この曲以後、多くのトラックでベースはキャロル・ケイがプレイした)

バッキンガムズ Mercy Mercy Mercy

(だれも弾いているフリなんかぜんぜんしていない! ギターはありえないコードを押さえているし、ベースは指を固定したまま、ドラムはバックビートではないところで左手を動かす。他のシングルとちがい、この曲のドラムだけは突っ込んでいないので、ジョン・グェランではないと思う。ハル・ブレインの可能性あり)

多少の例外はあるかもしれませんが、1966年までのCBSというのは、おおむねそういうレーベルでした。1967年はじめにあっては、CBSは「古くさい体質」の会社だったのです。

1967年は曲がり角の重要な年です。それなのにこんな状態では、会社の将来が危ぶまれます。年明けから世間はサイケデリック路線に突っ走りはじめていたのでありまして、66年暮れに保守の牙城リプリーズがリリースしたエレクトリック・プルーンズのI Had Too Much to Dream (Last Night)がビルボード・チャートにはいってきたのだから、CBSとしても考えざるを得ないでしょう(ただし、この曲はプロのソングライターの書いたもので、会社としては、モンキーズとさして懸隔のない、お子様タレント商売の変形と考えていたのかもしれない。たしかに、ギターのギミックは怪奇ソングの効果音の親類である)。

エレクトリック・プルーンズ 今夜は眠れない

(当時はマーシャルのアンプを直列でつないでどうしたこうしたとか、なんかすごいことを報道されていたが、このギター・ギミックもじつはリッチー・ポドラーがつくったそうで、このバンド、スタジオでなにをしたのか、わたしにはいまだにわからない。もっとも確率の高い答えは「なにもしなかった」または「カラオケにヴォーカル・オーヴァーダブをした」だろう)

ちょうどエルヴィスが登場したときと同じで、バスに乗り遅れるな、という競争になったようで、RCAはジェファーソン・エアプレイン、WBはグレイトフル・デッド、キャピトルはクウィックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスというように、メイジャー・レーベルのタレント・スカウトが、サムソナイトに札束を詰め込んで(かどうかは知らない。小切手帳を胸に、だろうなあ)サンフランシスコ詣でに励んだといいます。

f0147840_233392.jpg

ここからのCBSは過ぎたるは及ばざるがごとし的な爆走をしたのは、ざっとあの時代に彼らがリリースした盤を眺めればわかります。モビー・グレイプと同じころに、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーと契約したのはまあいいとして、チェンバーズ・ブラザーズだの、シカゴだの、雪崩れるようにそちら側へと急傾斜で転がり落ちていき、ジョニー・マティスは忘れられることになってしまいます。

とまあ、そのような「クソ、また出遅れたか」状況で獲得したモビー・グレイプをどう売り出すかというときに、あの「weirdness」の時代の狂躁状態らしいアイディアが生まれました。「いっそ、全曲をいっせいにシングル盤にしてみてはどうだ? きっと大きな話題になるぜ」とだれかがいい、だれもが正気ではなかった時代なので、そのままこの愚案は実現してしまった、というしだいです。

冷静に考えれば、そんなことをしたらどれもヒットしないとわかるはずなのですが、会社のだれかは「1964年に、ビートルズは同時に何曲ビルボードに送り込んだ?」などと、比較にもならない比較でもやったのでしょう。事故が起きるときというのは、あとで冷静に振り返れば、信じられないほど馬鹿馬鹿しい判断ミスが重なるものです。

f0147840_23544483.jpg

もちろん、グレイプが大成しなかったのは、彼ら自身の問題の結果なのでしょうが、出足で大きく失敗するというのは、どんな分野だろうときびしいハンディキャップになるので、運もなかったと思います。Somebody to Loveが大ヒットしたジェファーソン・エアプレインとは天と地の相違です。

売れているあいだは、メンバー間の確執はとりあえず取り繕うことができますが、経済的にうまくいかなければ、感情的対立は増幅されることになります。もともと、長く一緒にやってきたメンバーではなく、デビュー直前に寄せ集められたグループなので、風雪の時代をともに耐える、なんて気分にはならなかったであろうことは容易に想像がつきます。

かくしてモビー・グレイプは、「デビュー・アルバムの全曲を同時にシングルとしてリリースしたロック・グループは?」というクイズの答え、たんなる珍奇なスーヴェニアでしかなくなってしまったのでした。

f0147840_2338143.jpg

しかし、ひるがえって考えると、そもそも「アルバム」はなぜ「アルバム」と呼ばれるかといえば、複数の78回転盤をまとめて、ひとつのパッケージにしたからです。何枚も盤があるところがまさに「アルバム」なのです。

多くはクラシックの長い曲をひとまとめにしたものだから、後年の「シングル盤」とはちょっとちがうのですが、でも、複数枚のセット、という意味では、モビー・グレイプは、アルバムをばらしてシングルをつくることで、アルバムの成立過程を逆にたどった、と云えなくもありません。

以上、コメント欄で書くわけにもいかず、記事に引っ越して、書き散らし候。

話はコロッと変わりますが、今日はなぜかアダモが聴きたくなったのでした。十分に長い時間さえあれば、確率的にこの宇宙ではどんなことでも生起しうる、のだそうですが、長く生きすぎた結果、アダモが聴きたい日に遭遇してしまいました。インシャ、ラー!

サルヴァトーレ・アダモ Inch Allah


サルヴァトーレ・アダモ En blue jeans et blouson d'cuir


まちがえて青江美奈のクリップを開いたかと思ったのでした!

metalsideをフォローしましょう


モビー・グレイプ Moby Grape (1st.) with bonuses
Moby Grape
Moby Grape


Great Guitars of Jazz [DVD] [Import]
Great Guitars of Jazz [DVD] [Import]


[PR]
by songsf4s | 2010-08-26 23:54 | Guitar Instro