今日聴いたもの。
・先月録音されたラスカルズのリユニオン・ライヴ。
・『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』のOST
ラスカルズのライヴは、いやはや、でした。だってねえ、おじいさんたちがロックンロールしているだけですから。わかるでしょう? 名前が書いてなかったら、だれも見向きもしないような音楽です。
女声コーラス隊は音を外しっぱなし、Cavarierも声が出ていなくて別人のよう、おそらくは高音をヒットできないためだと思いますが、ピッチもしばしば外していて、聞き苦しいったらありません。まあ、ストーンズやビーチボーイズよりはずっとマシですが、それはストーンズがひどすぎるだけのことであって、ラスカルズがいいという意味ではありません。
ディノ・ダネリはそこそこ叩いていますが、スネアのピッチが低すぎて、若き日のキレのよさ、さわやかなサウンドとはまったく異なり、鈍重そのもの。
昔を今になす由もがな、一度土に還ったものを、いまさら霊おろしなんかするなよ、灰は灰に、です。いや、あの場にいて、みんなが元気で動いているのを見るのは、それなりの感懐があったでしょうが、要するに同窓会であって、音だけ聴いてもどうなる代物じゃござんせん。
ファンとしては、こういうふうに文句を垂れたいものでしょうが、こんな代物のURLを書くと悪法に引っかかる恐れがあるので、各自、自助努力なさってください。わたしは三カ所見つけました。おはようフェルプスくん、the rascals reunion live 2010といったキーワードで探したまえ。
それに対して、『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』のOSTは、推薦してくださった〈三河の侍大将〉に気をつかうわけではなく、素晴らしい盤でした。さすがは佐藤勝、きっちりつくってあります。気力のあるときに映画も見て、記事にしたいと思います。問題は映画ですねえ!
◆ 三色殺戮 ◆◆
さて、前回はクライマクスの前半部分で終わってしまったので、今日は後半です。
高橋英樹がカフェを出ると、神戸組の見張りがさっそく注進に走ります。その話の運びよりも、注進に走る男の表現方法が面白いのですが、そのスピード感は、スクリーン・キャプチャーではお伝えできません。ともあれ、この注進のせいで、神戸組は準備万端整えて高橋英樹を迎え撃つことが、事前に観客に明らかにされます。
ここからは文字ではなく、スクリーン・キャプチャーでいくしかありませんが、音だけでもいかがかと思い、映画から切り出してサンプルをつくってみました。
サンプル 「血潮と白狐」
高橋英樹が神戸組に乗り込むところから、河津清三郎を討ち果たすまでのシークェンスです。途中、音楽がなくなり、剣の音などの効果音だけになりますが、そういう部分もカットしてありません。わたしがとくに面白いと感じたのは、0:41あたりから下でグルグルいっている音です。たぶん、ピッチの異なる二つのティンパニーを小さく鳴らしているのだと思いますが、はっきりとはわかりません。なにを使ったのであれ、面白い音です。
河津清三郎に妻を人質にとられ、山内明は採掘権の譲渡書に署名するように迫られます。
そこへ、親分、と大声がし、注進が座敷を走り抜けてきます。高橋英樹がすぐそこまで来たのです。
高橋英樹が乗り込んでくるところは、完全な芝居がかりで、それに合わせて屋敷の構造も奇妙に歪められます。
刃が突き出されるのを予想しながら、高橋英樹は室内に入りますが……。
襖を開けても、開けても、無人の部屋がつづくばかりで、敵の姿は見あたりません。なぜ襖は青いのか? そういうのを愚問というのです。もちろん、これが鈴木清順の映画だからに決まっているじゃないですか。
高橋英樹はやっとのことで、囚われている山内明と伊藤弘子を見つけだしますが、なかなか近づけず、八方に白刃をふるって血路を切り開きます。せっかく伊藤弘子に短刀を突きつけているのだから、それで高橋英樹を脅せばいいのに、と思うのですが、われわれ同様、河津清三郎以下の悪党たちも、高橋英樹のパワーとスピードに呆気にとられ、なすべきことを忘失してしまったのでしょう。
山内明に拳銃をわたして逃がせば、あとは暴れるだけ、となります。
三下どもを蹴散らすと、画面のムードはまたしても一変します。櫓を組んでアクリル板を敷き詰めたセットでの、その筋では有名なショット。相手は親分の河津清三郎。
とまあ、大量にスクリーン・キャプチャーを使いましたが、プロットはどうでもいい、どう表現するかが鈴木清順映画では重要なのだ、という意味がおわかりいただけたかどうか。ふつうじゃない、ということだけはなんとかお伝えできたように思うのですが……。
あれこれと駄言を弄したくなりますが、ちょうど時間切れ、理屈をいうのはまたの機会とさせていただきます。