追悼・木村威夫 鈴木清順監督『悪太郎』 その1

このところ、昼間歩くことがなく、今日、久しぶりに出かけたら、いやもう百花繚乱。下を見れば花ニラ、菫、姫踊り子草、ヒメツルソバ、菜の花、雪柳が満開、上を見れば白木蓮、木蓮(早い株なのだろう)、辛夷ときて、染井吉野も三分から五分と、大変な騒ぎです。花ではありませんが、諸処の生け垣の黒鉄黐も赤く芽吹き、わが家では海棠と鈴蘭水仙が咲きはじめました。

昨夜、オークション出品を終えたあとで、この三日ほどちびちび再見していた鈴木清順の『悪太郎』を見ました。あと15分でおわりというところで、用事を思いだしてブラウザーを起動し、検索しました。まったくべつの事柄を検索していたのですが、結果を眺めていて、木村威夫、美術監督、享年九十一の文字が目に入り、すぐさま新聞サイトで確認しました。

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昨年亡くなったわが亡父が1921年生まれ、木村威夫は1918年生まれなのだから、一大意外事にはなりようがないのですが、九十をすぎて初監督作品を撮るような人なので、なんとなく百まで生きそうな気がしてしまい、この死は思いがけないものになりました。

◆ 木村威夫記事一覧 ◆◆
これから何回かにわたって木村威夫の仕事を見ていくつもりですが、そのまえに、当家の記事のなかで木村美術にふれたものを列挙しておきます。ほんの刺身のつま程度でふれたものは省き、古いものから新しいものという順で並べてあります。

東京流れ者 by 渡哲也 (OST 『東京流れ者』より その1)

東京流れ者 by 渡哲也 (OST 『東京流れ者』より その2)

『東京流れ者』訂正

Nikkatsuの復活 その2

『乳母車』(石原裕次郎主演、田坂具隆監督、1956年日活映画)の美術 その1

『乳母車』(石原裕次郎主演、田坂具隆監督、1956年日活映画)の美術 その2

『乳母車』(石原裕次郎主演、田坂具隆監督、1956年日活映画)の美術 その3

『乳母車』(石原裕次郎主演、田坂具隆監督、1956年日活映画)の美術 その4

『乳母車』(石原裕次郎主演、田坂具隆監督、1956年日活映画)の美術 その5

『真白き富士の嶺』および『狂った果実』の補足+『霧笛が俺を呼んでいる』予告篇のみ

霧笛が俺を呼んでいる』 その1

『霧笛が俺を呼んでいる』その2 バンド・ホテル

『霧笛が俺を呼んでいる』 その3 突堤と病院

『霧笛が俺を呼んでいる』 その4 「バンド」と日本

『霧笛が俺を呼んでいる』 その5 木村威夫タッチのナイトクラブ

『霧笛が俺を呼んでいる』 その6

『霧笛が俺を呼んでいる』 その7

鎌倉駅と『乳母車』(石原裕次郎、芦川いづみ主演、田坂具隆監督、1956年日活映画)

いやはや、ずいぶん書いたものです。映画関係者では、もっとも頻繁に言及した人物だと思います。

◆ 二人の挑発者 ◆◆
木村威夫が美術を担当した映画は二百数十本におよぶそうです。それだけの数があっては、木村威夫著・荒川邦彦編の大著『映画美術 擬景・借景・嘘百景』をもってしても、とてもひとつひとつの映画について細かく言及するわけにはいきません。ごく一部の重要な映画だけを取り上げています。

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鈴木清順作品であっても、ディテールについて言及しているのはほんの一握り、そのなかの一本はすでに取り上げた『東京流れ者』です。これは「映画美術開眼」ともいうべき作品だそうで、なるほど、クラブ〈アルル〉は、いかにも木村威夫らしい大胆不敵な挑戦的デザインでした。

『悪太郎』は、鈴木清順、木村威夫という、二人の大胆不敵なチャレンジャーが最初に出会った映画です。この映画を最初に見たのは1972年、池袋文芸座地下での鈴木清順シネマテークでのことでした。じつは、それっきりで、再見することはなく、今回が二度目でした。

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いや、つまらないから再見しなかったのではありません。72年のシネマテークのときは、たしかに、プログラムを見て、これはぜひ見たいわけでもないから(アクションものではないし、キャストにも惹かれなかった)、睡魔に襲われたら寝てよし(オールナイトなので)という気分で見ました。

しかし、これが予想外に面白い映画だったし、まだ十八歳だったわたしは、和泉雅子もいいじゃない、とその気になってしまいました。いやはや。浅丘ルリ子一辺倒だったわたしは、このシネマテークで松原智恵子や和泉雅子の贔屓になりました。清順を見るはずが、女優を見たようなものです。でも、『殺しの烙印』で南原宏治もすごいなと思いました。

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なんとかまとまりのある文章を書けるのではないかと思ってはじめたのですが、今日はセ・リーグの開幕などもあって、あまり時間をとれず、そろそろタイム・アウトです。例によって最初は予告篇程度、次回から本格的に『悪太郎』を見ようと思います。

いま、また検索して、訃報ではなく、すこしは意味のある追悼記事が見つかりました。木村威夫の人物が多少とも伝わってくる記事はこれくらいしかありません。また、『刺青一代』や『肉体の門』といった重要な映画に言及したのもこの記事だけです。


映画美術―擬景・借景・嘘百景
映画美術―擬景・借景・嘘百景
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by songsf4s | 2010-03-26 23:38 | 追悼