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クリスマス映画1 Jingle Bell Rock by Bobby Helms(『リーサル・ウェポン』より)
タイトル
Jingle Bell Rock
アーティスト
Bobby Helms
ライター
Joe Beal, Jim Boothe
収録アルバム
Fraulein: The Classic Years
リリース年
1957年
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今日からクリスマス・スペシャル2009として、クリスマス映画を取り上げます。

「クリスマス映画」とはどういうもののことだ、なんて正面切っていわれると困るのですが、まあ、クリスマス・フレイヴァーが濃厚なのもあれば、ごく薄味なのもある、つまり、じつに多様である、と逃げをうっておきます。

たとえば、『三十四丁目の奇蹟』のように、主人公はサンタ・クロースなんていう、どこからどう見ても堂々たる「クリスマス映画」があるいっぽうで、ほんのささやかな背景としてクリスマスを利用しているだけの映画もあります。

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この箱絵コラージュはよそから拝借してきただけで、当家でこれから取り上げる予定の映画とは関係ない。いや、このなかから二本ぐらいはやるかもしれないが……。

今回はストライク・ゾーンを大きくとり、なんらかの意味でクリスマスに言及している映画、ということにして、ブラッシュ・ボールやナックルも使える余地をつくっておきます。

なにしろ、まだ見ていない映画も予定表にリストアップしているので、どこかで躓いたら、クリスマスの飾りがほんのちょっと画面に出てくるだけの「あの映画」(ヒント ロックンロール映画)なんかで穴埋めをしなければならない事態もないとはいえないのです。

あるいは、たんに飽きてしまい、箸休めに日活映画に走る、という事態も考えられなくはないので、そうなってしまったときにはどうかご容赦のほどを。

trailer


◆ ヴァージョンちがい…… ◆◆
さて、今日のクリスマス映画はご存知『リーサル・ウェポン』の第一作です。この映画は開巻早々乗りました。なんたって、Jingle Bell Rockのイントロ・リックではじまるのだから、そりゃずるいというか、これなら成功間違いなしというか、音楽の力を最大限に利用したオープニングでした。

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もちろん、絵作りとしてもけっこうな出来で、ボビー・ヘルムズの歌声に乗ってLAの夜間空撮とくるのだから、これはどんな客だって乗ります。

と、これだけ書けば、この曲は一昨年のクリスマス・スペシャルで細かく検討したことでもあるので、あとはごちゃごちゃいう必要がないような気がするのですが、なかなかどうして、当ブログではものごとがスッキリ、あっさり、瞬時に終わらないことになっています。

大昔に見たきり(もう20年以上たっているのだから愕く!)で、当時は気づいていなかったらしいのですが(気づいたとしても忘れてしまった)、今回、久しぶりに見直したら、えー、それはないじゃん、とひっくり返りました。ボビー・ヘルムズの声であることは間違いないのですが、ギターをはじめ、トラックは大きく異なっているのです。

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『リーサル・ウェポン』OSTのフロント。ただし、Jingle Bell RockはOST盤には収録されていない。挿入曲はスコアではないから、盤に収録されないこともめずらしくないが、最初と最後のクリスマス・ソングをオミットすると、このスコアは退屈。典型的な「チープ・エイティーズ・スコア」で、シンセの音にはガックリする。オーケストラはどこへ消えたのだ、と毎度毎度、映画館で叫んでいた。まあ、『リーサル・ウェポン』のスコアは、ジョルジオ・モロダーやヴァンゲリスあたりのスコアにくらべればまだしもだったが、どちらにしろ、チープ・エイティーズの産物であることに変わりはなく、マシだというだけで、すぐれているわけではない。

歌い手のキャリアが長く、レーベルを渡り歩いた場合、昔のヒット曲を再録音するというのはよくあることです。ボビー・ヘルムズもレーベルを移っています。Jingle Bell Rockはヘルムズの代表作だから当然ですが、調べてみたら、やはりやっていました。それも二度にわたってです。

いや、シンガーはそんなものだからしかたありません。でも、映画がなぜわざわざ再録音ヴァージョンを使ったのかがわかりません。ときおり、なにかの加減で使用許諾を得られないことがあるようで(『パルプ・フィクション』にド下手ライヴリー・ワンズの無惨なSurf Riderが使われたのが典型的な例。あの映画は大嫌いだが、とくにライヴリー・ワンズのSurf Riderが流れるところでは、心臓麻痺を起こしそうになった。よくまあ、あんなひどい代物を見つけ出したものだ!)、そんなあたりかもしれません。

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Bobby Helms with Jim Reeves

もちろん、出来としてはオリジナル・ヴァージョンのほうがはるかにすぐれています。そもそもオリジナルはキーがDなのに対して、再録音は(クォーターノートなので近似的にいうだけだが)Eで歌っています。この変更もよくありません。オリジナルにあった、クリスマスらしいゆったりとした気分が失われて、なんだかこせこせした雰囲気が感じられます。

しかし、感心するのは、それでもやはりグッド・フィーリンがあることで、その点はボビー・ヘルムズの明るいキャラクターのおかげなのだと思います。

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主人公の二人の刑事、マーティン・リグズ(メル・ギブソン)とロジャー・マートフ(ダニー・グローヴァー)は、重要参考人の家に着く。屋根に雪だるまの人形があることにご注意。

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この爆発はとんでもなかった!

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二人のスタントマンは、予想外の大爆発に愕いたにちがいない。パイロ・テクニシャンだって計算違いをすることはある。映画の撮影はじつに危険だ。

◆ ターニング・ポイント ◆◆
再録音盤を使ったのは大きな失点でしたが、しかし、この曲を冒頭にもってきたのは大正解で、わたしのような人間は、いい曲を使ったというだけで音楽監督に拍手を送り、よし、この映画は見るぞ、という気になります。

いや、そういうのは金を払ったときのことではなく、テレビでなにげなく見はじめたときのことですけれどね。ああいうときというのは、最初の15分ぐらいは、見るか寝るかどっちにするか迷うのですよ。どこで判断するかというと、まずなによりもキャメラの動かし方を中心とした画面作りのよしあしなのですが(ゆったりとしたパーンかなんかで、そのリズムがいいと、よし、と思う)、音楽がいい場合も、よし、ゴーだ、と即決します。

どうであれ、『リーサル・ウェポン』はアクション映画の歴史において、重要な転換点となった作品です。あの当時も感心しましたし、今回見直しても、やはりよくできていると思いました。

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気分よくスタートした映画だが、このショット(空撮で高層フラットの一室をとらえ、そのなかの人物に寄ったところで、このカットにつなげられる)のあたりで、Jingle Bell Rockは終わる。空撮のリズムとはちがうし、話に入ったのだから、歌が終わるのはいい。だが、そのあとどうするかは、非常にむずかしいということは、『狂った果実』のときにも書いた。ここも、水と油のものをぎこちなくつないでいる。シンセだけは勘弁して欲しかった!

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スコアは躓いて失望したが、映像表現には唸った。ほんのちょっと前だったら、高層ビルから人が飛び降りる、という場面では、絵はぜったいにこうはならなかった。表現の質が変わりはじめたのだ。

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いや、シナリオはそれほどいいとは思いません。しかし、メル・ギブソンには目を見張りましたし(1980年だったか、正月二日の満員立ち見で見たきりだが、『マッド・マックス』のときに、これほど身のこなしがよかったという記憶はない)、演出と編集も、留保したいところはある(とくに演出)にせよ、新しい時代の到来を告げる、といってよいレベルです。

アクション映画が現在のようなスピード感を手に入れはじめたのは、『リーサル・ウェポン』のころからだったと記憶しています。各カットが極端に短くなり、無数のカットの積み重ねによって、運動感覚をつくるようになったのです。

この映画からもう一曲と考えていたのですが、例によって時間が足りず、次回に持ち越しとさせていただきます。

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by songsf4s | 2009-11-27 23:57 | クリスマス・ソング