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いつものビートルズ

このところ、そこらじゅうでビートルズのジャケットを眺めるはめになり、だんだんむかっ腹が立ってきました。

紙ジャケなんてものが流行ったときも、そんなものなら、俺はデカいやつ、12×12インチのほんものの紙ジャケを万の単位でもっている、いまさらグリコのオマケみたいにチャチなミニチュアはいらない、と思いました。知性だの判断力だのてえものは、近ごろでは美徳とされないのでしょうな。無意味なものを喜ぶ馬鹿さこそが経済発展の礎です。あまりお利口になると経済が萎縮します。

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それはそれとして、リマスターと騒ぐ以上は、なにかやったのかと思って、手をまわしてロハで聴きました。あたりまえでしょ。百万回聴いたものにまた金を払うほど耄碌するにはもうすこし時間がかかります。エスキモーに北極を売りつけるような詐欺は、いまどきの若い衆はいざ知らず、わたしのような判断力のある大人には通用しません。

いつものビートルズ_f0147840_23324527.jpgいいんですよ、若い衆はリマスター盤をお買いなさい。はじめてなのでしょうから。わたしと同世代であんなものを買ったら、脳軟化の禁治産者だといっているだけです。いや、わたしだって、LPで何種類も買ったことはいまでは反省していますよ。しかし、いちおう、モノ盤もそろえておきたかったのです。

さて、リマスターとやらですな。でもねえ、そこらにあふれている金融商品と同じで、買う前にちょっと暗算すれば、結果はわかります。ぜったいに得するはずがないのです。

考えてみなさい。ビートルズですよ。天下のEMIですよ。ジョージ・マーティンとジェフ・エメリックの仕事ですよ。疑似ステレオ盤なんていうのもありましたが、キャピトルが勝手にやった、ああいう無理矢理なものをのぞけば、昔だって、ちゃんとしたマスタリングでリリースされていたのです。

仮にそうじゃないとしても、同じことです。ダメなマスターだとしても、世界を席巻するぐらいの音にはなっていたのです。あるいは、マスタリング技術の善し悪しは、ヒットの足を引っ張らなかった、と言い換えてもかまいません。マスタリングなんて、所詮、どうでもいいことだったことになります。

いつものビートルズ_f0147840_2342417.jpgもうひとつ、「暗算」でわかることがあります。まったく感触の異なる音をつくったらどうなるか? EMIはテロに遭います。アナログ盤を死ぬほど聴いた世代が生きているあいだは、極端な加工はできません。せいぜい、ちょっと低音部をもちあげたり、微妙にクラックした部分を修復したり、高音部を明るくしたり、そういったディテールの加工しかできないのです。

そして、そういう小手先のゴチャゴチャをすべてゼロに戻してしまう最終兵器が控えています。MP3です。21世紀のリスナーの大多数は、圧縮された音声ファイルで音楽を聴いているのです。

かくしてPCスピーカー(あるいはポータブルMP3プレイヤー)から出てきたリマスタード・ビートルズは、1円の買い換え価格にも値しないほど、いつもと同じビートルズになっているのです。

わたしのようなオールドタイマーは「やっぱり、アナログ・リップのほうが味があるな、CDはどこまでいってもCD。このファイルはHDDふたぎだから即廃棄」とつぶやくのでした。

なーんだ、馬鹿馬鹿しい!
by songsf4s | 2009-10-07 23:32 | その他