- タイトル
- Stranger in Paradise
- アーティスト
- Johnny Smith
- ライター
- Robert Wright, George Forrest(原曲はAlexander Borodin)
- 収録アルバム
- The Complete Roost: Johnny Smith Small Group Sessions 1952-1964
- リリース年
- 不詳
- 他のヴァージョン
- The Ventures (as "Ten Seconds to Heaven"), Edmund Ros, Hugo Montenegro, Percy Faith, Stanley Black, Frank DeVol & His Orchestra, the Fantastic Strings Orchestra, Martin Denny, Arthur Lyman, the Tymes, the Four Aces, the Supremes, OST ("Kismet"), Wes Montgomery, George Shearing & the Montgomery Brothers
久しぶりに、「ふつうの」更新などやってみようかと思います。この記事を書こうと思った動機は、ひとえに、畏友オオノさんのブログ「Yxx Txxxを聴こう」(右側にリンクあり)で、「だったん人の踊り / Stranger in Paradise」という記事を読み、カラヤンとベルリン・フィルによる原曲「だったん人の踊り」を聴いたことに尽きます。まずはともあれ、この曲を思い出せてくださった「隊長」に敬礼!
◆ ヴェンチャーズ ◆◆
わたしがこの曲を知ったのは、小学校六年、熱烈なヴェンチャーズ・ファンだった時期に、Ten Seconds to Heaven(邦題「パラダイス・ア・ゴーゴー」)としてでした。このヴァージョンはいま聴いてもすごく魅力的で、ヴェンチャーズの全カタログのなかで、ベスト・テンに入れます。いまではもうなくしてしまいましたが、EPに収録されていたという記憶があります。アメリカではシングルのみだったのか、アルバムに収録された記録がうちにはありません。
ヴェンチャーズ盤Stranger in Paradiseのどこが魅力的か。インストなので、まずは、トレモロ、リヴァーブ、さらには、もうひとつなにかを重ねたような、リードギターのキラキラした音色です。シャドウズを聴いていても思いますが、ギター・インスト・バンドは、なんといってもまず、ギターのサウンドです。
この時期になると、わたしにはヴェンチャーズのプレイヤーが推測できなくなります。ベースはだれなんでしょうか。ラインの作り方、グルーヴ、ともにそこそこ好みです。アレンジに目を向けると、後半の転調がなかなか効果的。ドラムはメルでしょうかね。とくによくもないけれど、無難にやっています。
◆ ジョニー・スミス ◆◆
ジミーではないのでお間違いなきよう。ジョニー・スミスはギタリストです。って、わが家に彼の盤はありません。一度聴いてみたいと思っていたのですが、最近、ウェブで遭遇し、けっこういいじゃん、と思ったのであります。そういうものなので、看板に立てるのは具合が悪いのですが、ヴェンチャーズでは(わたしにとっては)当たり前すぎてつまらない、ではだれだ、と考えると、このジョニー・スミス盤になってしまったのです。録音、リリース・デイトは不明。ポップ系ならともかく、ジャズ系の録音年代測定は、わたしはやりません。でも、モノだということは五〇年代を指し示しています。
盤がないから、すべてが謎で、メンバーもわかりませんが、ドラムとベースのグルーヴは悪くありません。ジャズにしてはいい部類でしょう。
◆ エキゾティカ ◆◆
多忙で調べものをする時間がなく、なにもわからないまま書くことになり、申し訳ありません。オオノさんは、この曲がクラシック「だったん人の踊り」からStranger in Paradiseに化けたのは、ミュージカル『キスメット』のテーマになったときからだろうと書いていらっしゃいます。映画のシーンを見、歌詞を聴くと、そのとおりなのだろう、と思えてきます。ミュージカルだから、歌詞が台詞類似のものになっているわけで、それがシーンに合っているのです。
この曲がポップ・ソングとして人気を得たのは、メロディー・ラインのもつエキゾティズムのおかげでしょう。当然、ラウンジ系の録音がたくさんあります。どれがどうと、着順を決められるほど聴き込んでいないので、順不同というか、プレイヤーにドラッグした順に見ていきます。
当家では何度か取り上げたバンド・リーダー、エドムンド・ロスは、いきなり銅鑼をかますという「オーセンティックな」エキゾティカ処理をしていて、ゲテが好きなわたしは思わず嬉しくなってしまいます。しかし、ゲテは銅鑼のみ、あとは総じてオーソドクスなラテン風味のラウンジです。悪くはありませんが、もうひと味ほしいところです。
アーサー・ライマンはスロウなレンディションです。どうでしょうねえ。これはこれでいいのかもしれませんが、わたしはもうすこしテンポが速いほうが好きです。
マーティン・デニーは、霧笛をイメージしたような、おそらくはサックスのうなりではじまります。テンポはアーサー・ライマンと似たようなものですが、こちらにはバード・コールがあるので、ニコニコしてしまいます。
◆ 日本産エキゾティカ? ◆◆
これもまったく正体を知らないのですが、ファンタスティック・ストリングス・オーケストラという名義のStranger in Paradiseが検索で引っかかりました。某ブログによると(ここ以外にこのオーケストラに言及しているところはない)、72年にリリースされた日本製エキゾティカだそうです。へえ、そういうのがあったんですねえ。
こんな時期に、日本でエキゾティカをやってみようと考えた方は、ちょっとした先駆者で、日本ビクターの担当ディレクター氏のお名前を知りたいところです。面白い話があるのではないでしょうか。お客さんのなかに、このShadow of Your SmileというLPをお持ちの方がいらしたら、ちょいとジャケットをひっくり返して、録音データなどをご教示いただけないでしょうか? お待ちしていますよ。
フェンダーベースのグルーヴもけっこうですし、ドラムもまずまず、しかし面白いのは、一部にエレクトリックな処理が忍び込んでいることで、やがて細野晴臣がエキゾティカからテクノへとたどった道筋を予見しているかのごとくです。ノコギリ(ミュージカル・ソーといわなきゃいかんのでしたっけ)かはたまたテレミンかという、「お化け」サウンドが、エキゾティカというより、コミカルな味になっているところがやや珍で、エキゾティカとしては訛っていると感じますが、リギッドにオーセンティシティーを要求する分野ではなく、もともと雑食性なのだから、これはこれで独自のエキゾティカといっていいでしょう。
きっと中古屋では安いでしょうから、みなさん、発掘に精を出してみましょう。って、こういうことを書くから値段がつりあがるのか。
◆ ラウンジ系 ◆◆
エキゾティカ群にくらべると、ハリウッドのアレンジャー、オーケストラ・リーダーである(そして、たしか映画音楽もやっていたと思う)フランク・ディヴォールになると、ぐっと上品になります。ハリウッドというところは、こういう音楽をつくらせると天下無敵です。インフラストラクチャーが音楽をつくるのです。いや、具体的にはやはり録音がよくて、しかも金をかけているから、弦にスケール感があり、立体的な音像になっているところが賞味のしどころでしょう。
立体的ということでは、パーシー・フェイスのほうが上かもしれません。Stranger in Paradiseは、ちょっとマントヴァーニが混入して、フォルテシモ過多ですが、例によってフレンチホルンの使い方なんぞは、なかなかオツです。
英国ラウンジ界の重鎮、スタンリー・ブラックのStranger in Paradiseは、当家では何度か取り上げたアルバム、Tropical Moonlightに収録で、上品なラテン・ピアノ。わたしはけっこう好きです。良くも悪くも、ニオイが強くなく、無色透明なところがいいのです。
◆ ジョージ・シアリング、ウェス・モンゴメリー ◆◆
仕事の中断は一時間と決めたそのリミットが迫っているので、急ぎに急ぎます。ウェス・モンゴメリーは2種類、アルバムFingerpickin'収録のものと、ジョージ・シアリングとモンゴメリー兄弟の共演盤のものです。やはり前者のほうが楽しめます。初期のものなので、オクターヴ奏法がないおかげで、そういってはなんですが、ギターインストらしい魅力があるのです。
晩年のウェスのサウンドの純化は、じつにもって呆れけえるほどすげえものだ、と感心しますが、神棚に祀ってそれでおしまい。ふだん楽しむのだったら、オクターヴはあまり使わない初期のノーマルなプレイのほうがずっとマシ。オクターヴ奏法は、「うまい」と感心するだけで、面白いとか楽しいとか、そういうもんじゃありません。アクロバットと音楽とどちらが好きか、といわれたら、わたしの場合、サーカスは遠慮します。
ジョージ・シアリングはそれほど得手ではありません。グルーヴがトロいなあ、と思ったのですが、1961年、しかもジャズだから、まあ、やむをえません。ジャンルで差別はしない平等主義を貫くなら、この程度では「グルーヴ」とかなんとかいうのは十年早い。ロイ・ナップ・パーカッション・スクールにでもいって、基礎から勉強でしょう。
◆ 歌もの ◆◆
フォー・エイシーズはかのLove Is A Many-Splendored Thingのグループなので、何匹目かのドジョウ狙いのアレンジです。いつもいつもあのド派手アレンジばかりとはいかないと思うのですがねえ。まあ、ちょっと笑えるので、座布団は取り上げずにおきます。
どちらかというと、わたしにはタイムズ・ヴァージョンのほうが好ましく思えます。主としてリードヴォーカルの声の問題なのですが。
トニー・ベネットも悪くはありません。バックグラウンド・コーラスのアレンジおよびサウンド、いや、録音、音像というべきか、そのへんもなかなか好みです。
スプリームズは、うーん、ま、いらないでしょう。もともと好きではないのですが、ダイアナ・ロスの声は、最近、うちではエンガチョです。
以上、ものすごい駆け足、調べものもいっさい省いてしまい、相済みません。カラヤンとベルリン・フィルもちょっとしたものなので、ぜひ、オオノ隊長のブログにいらっしゃり、試聴なさるよう、お勧めします。